儚く淡く、夢のように~『ヴァージン・スーサイズ』
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 王妃に会う前に、キルスティン・ダンスト×ソフィア・コッポラのコラボレーション
の始まりを観ておきたくて、DVDにて鑑賞。
 1970年代、アメリカ・ミシガン郊外の住宅街。並木の前に建つリズボン家には、
17歳から13歳までの、年子の美しい5人姉妹が住んでいた。彼女たちに憧れ、彼女
たちを見守り、20数年間記憶にとどめ続ける近隣の少年たちを語り部に、ある夏
の悲劇が白昼夢のような繊細なタッチで描かれる。ソフィア・コッポラの第一回
監督作品。
本作と『ロスト・イン・トランズレーション』、そして現在公開中の
『マリー・アントワネット』とで、監督の「少女三部作」が完結するという。
 
 監督自らがオリジナル脚本を手がけた『ロスト・イン・トランズレーション』で
は、スカーレット・ヨハンソン演じる主人公シャーロットに、監督自身が投影
れていた。本作の主人公である5人姉妹はそれぞれ美しいが、金髪の長い髪に碧
い瞳、揃いの制服やドレス姿は一卵性双生児たちのような、不思議で独特な空気
を醸し出している。映画全体を彩る少女性、「ガーリー」な雰囲気は、その時期を
通り過ぎたものにとってはごく当たり前の、心地よい風景にほかならないだろう。
彼女たちは監督の分身というよりはむしろ、繊細さと大胆さ、天使と悪魔が同居
したような儚さと危うさの二面性をもつ、10代の少女そのものを体現している。
13歳の末娘セシリアの投身自殺をきっかけに、その静かで光に満ちた彼女たちの
日常は少しずつ、確実に狂ってゆく。

 公開当時、この作品がどのような評価のされ方をしたのか定かでないが、少女
たちの集団自殺
というショッキングな題材であるだけに、賛否両論があったであ
ろうことは想像に難くない。厳しすぎる母、頼りない父、「○○ガエルは絶滅危惧種
よ」と自らを滅び行くものたちに例えて救いを求める末娘、汚染され、伐採される
木を守ろうとする姉たち、、と、少女たちの心の不可解さや自殺の原因を推測し
ていくこともこの映画の一つの観方であるのかもしれないけれど、私はそうはし
たくない。テーマや描かれ方がどうであれ、思春期の一瞬を切り取り、永遠に焼
き付けることに見事に成功しているこの映画の、ゆらめく空気の中でただ、浸っ
ていたいのだ。


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 奔放な四女ラックスを演じたキルスティン・ダンストが素晴らしい。細くしなやか
な少女の身体に、どことなく冷めた心惹かれる表情。スパイダーマン』シリーズ
の彼女の印象が強いため、こんなに美しいひとだったのかと驚く。彼女が王妃
を演じると聞いて耳を疑った自分を反省。彼女をおもちゃのように捨て、心を病
むことになるトリップを演じたジョシュ・ハーネット、若くて輝いているけれど、
あの髪型はいただけない。その他のキャスト、ジェームズ・ウッズ、キャサリン・
ターナー、マイケル・パレ、スコット・グレン、ダニー・デヴィートなどなど、
さすがの面々であるのは監督の父親人脈だろうか。

 そして70年代を象徴する音楽がまた耳に残る。4姉妹と少年たちが、電話をか
けあいレコードで会話する場面は秀逸。トリップとラックスがもっとも幸せだっ
た時に流れる、10cc『I'm not in Love』がうれしい。

 生を断ち切ることでイノセンスを閉じ込め、果てしない夢のように、淡く輝く
少女たち。
思い出に変わることなく、少年たちの記憶の中に永遠に生き続けるよ
うに、私もこの映画を忘れないだろう。

『ヴァージン・スーサイズ』監督:ソフィア・コッポラ
   主演:キルスティン・ダンスト、ジョシュ・ハーネット/1999・USA)
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テーマ:心に残る映画 - ジャンル:映画

[2007/01/26 13:57] | DVD/WOWOW | トラックバック(3) | コメント(8) |
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コメント
真紅さん、こんばんは。
これ、未見なので次回レンタルはこれに決めました!そうか、「少女三部作」ですか。「ロスト・イン・トランスレーション」も割と好きな映画です。「いかにも外国人監督が撮った舞台としての日本」というのではなかったし、主人公2人にもとても共感できる映画だったので。(キンキン声のアナ・ファリスも出てましたよね)
ソフィアは「ゴッド・ファーザー」で女優として見て将来を楽しみにしていたら、いつの間にか監督になっていたという感じ、これからも楽しみです。
キルスティンは「インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア」で子供ながらすごい存在感でその演技はトムやブラピを凌駕していたと思う。私的にはその後が「スパイダーマン」だったので同じ人とは気付かず、分かった時は驚きましたよ。強そうだし(笑)、、、守られなくても大丈夫?
「モナリザ・スマイル」も1番印象的だったのはマギーお姉ちゃんだったし。
見たらまたお邪魔しますね。
[2007/01/27 17:42] URL | kママ #7iSbDyII [ 編集 ]
kママさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
この作品、好き嫌いが分かれると思うのです・・。気に入っていただけるといいのですが。
私は好きです。特に音楽がよくて、またまたサントラが欲しくなって困ってます(苦笑)。
私、『インタビュー~』は未見なのですよ~。すっごい話題作だったのにどうして観てないのか、自分でも謎です。
でもニール・ジョーダンだし、観ねば!と思っています。
キルスティンは『若草物語』にも四女役で出ているのですが、全く憶えてないんです。
あとはやっぱり大傑作『エターナル・サンシャイン』ですかね。
結構いい女優さんですね、王妃も楽しみです。
ではでは、また遊びにいらして下さい!
[2007/01/27 20:04] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こんにちは。
気に入りました!私好みの映画です。
かつて少女だったことと、かつて少年だったことを覚えている人なら胸に響く映画でしょう。
「永遠の少女たち」の記憶を心に留めて生き続ける、これは少年たちの物語でもありますね。
少女たちと少年たちが唯一、心を通い合わせる事ができたと思える電話のシーン、その後に起きる永遠に理解する事のできない悲劇。
そしてあの70年代の空気感、自分自身の郷愁も相まって思わず涙が、、。
シーンを際立たせる音楽も最高!「Alone Again 」は勿論、サントラには入ってないけどビージーズの「Run to Me」、CDラックをひっくりかえして探してしまいました~。
ソフィア・コッポラの長編第一作、才能あふれる上手い映画だと思いました。俳優たちも年齢を上手に生かして演じていたし、脇も豪華ベテラン揃い。掘り出し物です、真紅さん、教えてくれてありがとうございます!
若きダースベイダーじゃなくて、ヘイデン・クリステンセンが秀才ジェイクの役でちょこっと出てましたね。可愛かった。
[2007/02/02 13:12] URL | kママ #7iSbDyII [ 編集 ]
kママさま、こんにちは!コメントありがとうございます。
気に入られたのですね~、よかった~。。
私も今日、この映画のサントラをレンタルしてきました。(ホントは買いたいんですけど、笑)
一曲目が『ハロー、イッツミー(特定の英単語を禁止設定してるのでカタカナ表記になり、すみません)』なんですよ~。あのシーン、よかったですよね。
ヘイデン、あの秀才くんの役だったのですね。出てると後で知り、どの子?と思っておりました。
キルスティン・ダンスト本人も、この作品が自身の出演作の中でハイライトだと語っています。
本当に、あのMJが嘘のように(笑)、綺麗で魅力的でしたよね。
王妃もよかったですが、やはりこの作品の彼女には及びもつきません。
またお話して下さいね。ではでは!
[2007/02/02 13:47] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
少年たちの記憶の中の少女たちは淡い光に包まれた特別な存在だったんでしょうね。
キラキラ輝く美しい彼女たちが最後に選んだ道があまりにも悲しいので
鑑賞後の感想としては全てOKというわけにはどうしてもいかないんですけど
女性監督ならではの独特な雰囲気のある作品、映像は素敵でした。

ジョシュのヘアスタイル、やっぱり真紅さんもついてきましたね(笑)
あれはないでしょう~~!と思ったんですけど
モテ男くんはあの時代あんな格好していたのかな?なんてね。
[2007/09/04 00:47] URL | ジュン #6ZS2/17k [ 編集 ]
ジュンさま、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます。
ラストがあれですから、この映画は賛否分かれると思います。
でも私は音楽と映像と雰囲気が、なんとも言えず好きでした。
サントラ、ずっと欲しいと思っています。
ソフィア・コッポラの才能を感じさせる映画でした。
キキもこの映画が一番綺麗に撮られていると思います。
ジョシュね~、ヘアメイクさんに突っ込まなかったんでしょうかね(笑)
あの髪だけがちょっといただけなかったです!
ではでは、またお伺いします~。
[2007/09/04 08:18] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
これ、ミシガンが舞台なんですよね。最近観たのでTBしまーす。
[2008/11/09 08:04] URL | chuchu #- [ 編集 ]
chuchuさま、こちらにもコメ&TBありがとう。
後ほど伺いますね~。
[2008/11/10 09:38] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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『ヴァージン・スーサイズ』
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[2007/03/29 14:01] Sweet* Days
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[2007/09/04 00:47] BLACK&WHITE
『ヴァージン・スーサイズ』-なんだったんだろう?
Virgin Suicides 『マリー・アントワネット』が結構良かったので、同じコッポラ=ダンスト作品であるこの映画、興味があって借りたんですけど、...
[2008/11/09 08:05] 姫のお楽しみ袋 
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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