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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

聖少女~『イーダ』

イーダ2

 ポーランドの寒村。修道院で育った孤児アンナ(アガタ・チュシェブホフス
カ)
は、修道女となる誓願式の直前、シスターから叔母の存在を知らされる。
たった一人の身内であるその叔母、ヴァンダ(アガタ・クレシャ)は、初対面の
アンナに対し顔色ひとつ変えず、こう告げる。

 「あなたの名前はイーダ・レベンシュタイン。ユダヤ人よ」

 全編モノクロ、スタンダードサイズのスクリーンで描かれる、あるユダヤ人
少女の魂の軌跡
。全てのカットがそのまま絵画のような映像美。研ぎ澄まさ
れた数少ないセリフに、80分というランタイムながら、これほどに静謐かつ
雄弁な映画
を知らない。アート映画という枠に嵌めこんでしまうには余りに
惜しい、本年必見の佳作。どうしても劇場で観たかった。

イーダ3

 世俗を知らない、清貧で敬虔で美しい少女イーダ酒とタバコが手放せず、
「アバズレ」 と自称するヴァンダ。姉に生き写しのイーダを見た瞬間、ヴァン
ダの時計は逆回転を始める。血の繋がりだけが接点の叔母と姪は、大切な
家族の 「最期」 を知るための、短い旅を始める。「神など存在しない」 こ
とを証明するために


 しかしどれほど否定しようと、遠ざかろうと悪態をつこうと、彼らは 「神」 
の御手
から逃れることはできない。一人生き残ったヴァンダは、その罪悪感
と孤独
ゆえに、結局は自ら神の懐に飛び込む。彼女は救われたのか? 
れは誰にもわからない


イーダ4

 ホロコーストを巡るポーランドの内情に向き合いつつ、映画は一人の少女
の岐路
にフォーカスする。 「海を見に行こう」 「それからどうするの?」 
「犬を飼って、結婚して子どもを作ろう」 「それからどうするの?」 
イーダは
わかっていたのだ、人々が 「幸せ」 と呼ぶ平穏な日々の中に、自らの居場
所はないことを
。それでも彼女は迷う。ベールをつけながら、何度も何度も振
り返る。望めばひととき、得られるであろう 「幸せ」 を。

 ラストシーン。固定されていたカメラは、歩きだすイーダを正面から捉え続
ける( 『キムチを売る女 が思い出される)。自由を知った彼女は、それで
神の下で生きる道を選択するのか。すれ違う車のヘッドライトが、イーダの
迷いを瞬間、照らしては去る。

イーダ




  IDA


 ( 『イーダ』 監督・共同脚本:パヴェウ・パヴリコフスキ
      主演:アガタ・チュシェブホフスカ、アガタ・クレシャ/2013・ポーランド、デンマーク)
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テーマ : 心に残る映画
ジャンル : 映画

2014-09-26 : 映画 : コメント : 4 : トラックバック : 5
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『イーダ』 (2013) / ポーランド・デンマーク
監督・脚本: パベウ・パブリコフスキ 出演: アガタ・クレシャ 、アガタ・チュシェブホフスカ 鑑賞劇場: シアターイメージフォーラム 公式サイトはこちら。 60年代初頭のポーランド。孤児として修道院で育った少女アンナは、初めて会ったおばから自分の本当の名...
2014-09-27 07:14 : Nice One!! @goo
イーダ ★★★★
1960年代のポーランドを舞台に若い修道女が出生の秘密をたどる旅を描き、トロント国際映画祭など各映画祭で好評を博したヒューマンドラマ。自分がユダヤ人であることを告げられたヒロインが、両親の死の真相を知るべく過去をひもといてゆくさまをつづる。監督は『マイ・サ...
2014-10-18 01:01 : パピとママ映画のblog
100歳の華麗なる冒険/イーダ
ギンレイホールの2本立て上映で5月4日(月・祝日)午後鑑賞。
2015-05-05 10:07 : あーうぃ だにぇっと
『イーダ』をギンレイホールで観て、飯田橋だからいいだを見るのだふじき★★(ネタバレあり)
五つ星評価で【★★宗教感覚が違うって事だろうけど、日本人だからそんなんは親身になって考えられへん】 うつらうつらした。 修道女のアンナは彼女が実はイーダという名前でユ ...
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非公開コメント

素晴らしかったですねえこれ。
文句のつけようがないです。
終わり方も、そこでいい! ってところでちゃんと終わってましたし。
映画ってこのくらいシンプルで十分なような気がするんですよね。
2014-09-27 07:24 : rose_chocolat URL : 編集
rose_chocolatさん、こんばんは。コメント&TBありがとうございます。
本当に、観てよかった、観に行ってよかったと思える作品でした。
まだ余韻が残っています。

シンプルでも、傑作足り得るんですよね。十分。
これオスカーの外国語映画賞最有力って声もあるようです^^
2014-09-27 22:18 : 真紅 URL : 編集
No title
真紅さーん、you-tubeで、若干変な翻訳ではあったけど、これ、見れたの!!
すっごく良かったよ。
映像も雰囲気も最高♪
私の好みの映画だったー。

でも、COLD~さっき知ったんだけれど、なんと監督のご両親の、ほぼ実話だって言うのを知って、衝撃。
それを知ったら、★一つくらいアップしちゃったよ・・・
こちらのイーダは、監督の祖母の実話(どこを、どう使ったのかは謎なんだけど・・)らしいとか。

この監督さんの映像とか凄く素敵で気に入っちゃったので、他の映画もこれから見てみようと思います!
2020-11-28 16:05 : latifa URL : 編集
No title
latifaさん、こんばんは。こちらにもありがとう。
おお~、ご覧になったのね?
>若干変な翻訳
セリフが少ないから無問題よね。
この映画、本当に素晴らしいよね。。アカデミー賞授賞式のときの監督のスピーチにノックアウトされたわ。

『cold war』そうそう、監督のご両親のことが基になっているんだよね。
(当然、脚色はあるし全てその通りではないにしろ)
最後に、「両親へ」ってキャプションが出るでしょう? もう、涙、涙よ。

>こちらのイーダは、監督の祖母の実話(どこを、どう使ったのかは謎なんだけど・・)らしいとか。
え、そうなん?? 知らなかった。。

監督の映画、私も次回作楽しみにしてます!
2020-11-30 17:49 : 真紅 URL : 編集
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