失われた記憶を求めて~『ぼくを探しに』
ぼくを探しに






 ATTILA MARCEL


 幼い頃に両親を亡くし、声を失ったまま成長した青年ポール(ギョーム・グイ)
は、双子のような伯母姉妹(ベルナデット・ラフォン&エレーヌ・ヴァンサン)
よって愛情深く(過保護に)、ピアニストになるべく育てられた。33歳の誕生日
を迎えたポールは、同じアパートに住むマダム・プルースト(アンヌ・ル・ニ)
出逢う。

 迷子のまま成長したような青年が、魔女のようにミステリアスな女性の処方
するハーブティーを飲み、少しずつ失われた記憶を取り戻してゆく。封じ込め
られた記憶=真実は、必ずしも幸福の呼び水ではない。バラ色の人生などあ
り得ない
ことを知っているからこそ、シルヴァン・ショメ監督は実は切なく哀しい
物語
を、カラフルかつポップに彩る。アニメーション作家であるという監督の作
品は初見。キュートでユーモラスなだけでない、ハードな現実を描きながらも、
ある意味人生賛歌でもある。素晴らしい作品でした。この映画、大好きです。

ぼくを探しに2

 登場人物が皆、魅力的。目を見開いて眠る主人公ポール、回想される若
く美しい母、盲目のピアノ調律師
、そして何と言っても、アニー&アンナ伯母
さん! 一人は 母の身終い のエレーヌ・ヴァンサン。そしてもう一人は、
エンドロール後にこの映画を捧げられているベルナデット・ラフォン。遺作
なったようで、残念。まだまだお若いと思ったけれど・・・。ご冥福をお祈りし
ます。

 この映画がマルセル・プルースト 『失われた時を求めて』 に着想を得
ているのは誰もがわかることだけれど、私は 「西加奈子の小説みたい」 だ
と思った。あかとみどりが印象的な色彩、プロレスラーが登場すること、ユニ
ークな登場人物たち
、そして何より、人生を肯定していること。

 原題は、ギョーム・グイが二役を演じているポールの父の名であり、最後
にポールが取り戻したものが 「人生そのもの」 だと考えれば、彼の人生に
欠けていたのは長年恋焦がれていた 「母」 よりもむしろ、だったのだと
わかる。

ぼくを探しに3

 声や音楽が、どれだけ人生の救いになっていることか。雨が奏でるウクレレ、
カエルたちのバンド
、そしてコンクールのYAMAHA。それらはポールや私たち
が辿る人生の 「環」 を、やさしく包んでいるのだった。

 ( 『ぼくを探しに』 監督・脚本・音楽:シルヴァン・ショメ/2013・仏/
     主演:ギョーム・グイ、アンヌ・ル・ニ、ベルナデット・ラフォン、エレーヌ・ヴァンサン
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[2014/09/10 21:44] | 映画 | トラックバック(12) | コメント(2) |
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コメント
真紅さーん、こんにちは!
もうそろそろ、真紅さんのお誕生日かな?^^
蟹座だったよねー、ちょっと早いけど、おめでとう(^^)/

で、これ。
いやー、私が変なところを気にし過ぎなのかもしれないけど、なんか中国人の部分とか、妙に気になっちゃって。
あと脱法ハーブとかを、つい連想しちゃったりもして・・・。

そういうのが全然引っかからなかったら、もっと楽しめたんだけどなー。
[2015/06/26 15:26] URL | latifa #SFo5/nok [ 編集 ]
latifaさん、こんばんは、、なのかおはよう、なのか中途半端な時間です^^;
コメント&TBありがとう。レスが遅くなってしまってごめんね~。
誕生日、ありがとう!! 覚えててくれたのね~ウレシイ。。
そうそう、蟹座よ~7月だけど。
誕生月って何かとお得で、楽しみだわ♪

これ、ちょっとシュールな映画でしたね。
私は、あんまり気になるところはなかったかな?
後で行きます(^O^)/
[2015/06/30 04:23] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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