海鳴り~『私の男』
私の男

 天災により家族を喪った少女・花(二階堂ふみ)は、遠縁の男・淳悟(浅野忠信)
に引き取られる。オホーツクに面した北の街で、父と娘として生きる二人だった
が・・・。

 桜庭一樹直木賞を受賞した同名小説を、熊切和嘉が映像化。原作は、なん
とも言えない 「匂い」 のする小説だった。血の匂い、爛々と咲く花の匂い、おし
べとめしべが擦れ合う匂い
。この映画からは、原作以上に様々な 「臭い」 が
漂う。舐めた指の臭い、安いラブホテルの臭い、人が死ぬときの腐った臭い

 狂った浅野忠信が帰ってきた。怖いもの知らずで、はち切れそうな肢体の無敵
少女
を連れて。その名は二階堂ふみ。降臨モスクワ国際映画祭グランプリ&最
優秀主演男優賞受賞作


私の男2

 そしてまた、この映画はも凄い。うなるような、きしむような流氷の鳴く音
背徳の呼び声のような、不気味な咆哮。雪と氷に閉ざされた、北海道パートが
素晴らしい。特に流氷上のシーンは息もできないほど。命がけの迫真の演技
少女が全身全霊で守ろうとした関係。それは自らの存在証明でもある。不気味
なほどの強烈なテンション
で展開した北海道から、舞台は東京へ。淳悟の焦燥
は暴発し、親子の距離は加速してゆく。庇護された少女は美しく成長し、男は
やさぐれて精気を失う。

 この映画は、モラルやタブーを世に問う類の作品ではなく、欲しいものを純粋
に 「所有」 することにのみ命を賭けた、男女の真剣勝負
を描いているのだろ
う。両者の間に勝ち負けはない。ただ、客観的にどちらが 「勝者」 であるかは、
ラストシーンを見れば明白。自信満々に微笑んでみせる花。うつろな表情で、か
つて自分の手の中にいた女を見つめる淳悟。残酷なのは若さ、と言うよりもむし
ろ、過ぎ去ってゆく時間は誰にも止められない、という真理なのかもしれない。

 かくて花は 「私の男」 として淳悟を所有し、淳悟はかつて娘だった女の魅力
に抗えず、されるがままに、弄ばれるように花に隷属する。未来永劫。

私の男3

 『私の男』 監督:熊切和嘉/主演:浅野忠信、二階堂ふみ/2014・日本)
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