哀愁のビル・マーレイ~『ブロークン・フラワーズ』
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 この作品も、昨年見逃して非常に悔しかった。ジム・ジャームッシュ×ビル・
マーレイ
とくれば、面白くないわけがないだろう。そんなわけで期待度100%で
DVD鑑賞したのだけれど、キリアン=キトゥン・マーフィーによる「母を訪ねて
三千里」で滂沱の涙を流した後では、ちょっと分が悪かったかもしれない。


 コンピュータ関係の仕事で大成功したダン・ジョンストン(ビル・マーレイ)は、
悠々自適の生活を送る中年男。一緒に暮らす恋人が「あなたとはもう暮らせない」と
出て行ったその日、ピンク色の封筒が届く。「20年前に別れた後、あなたの息子を
一人で育てました」。タイプされたその手紙の差出人は不明。ダンは世話好きな
隣人ウィンストンの段取りにより、かつての恋人たちを訪ねる旅に出る・・。
フォーカス・フューチャーズのロゴに、タイプライターを打つ音が重なるオー
プニング。ジム・ジャームッシュ監督・脚本による、カンヌ映画祭審査員特別
大賞(グランプリ)受賞作。


★以下、ネタバレご注意★

 しかし、ビル・マーレイの存在感と言うかとぼけた味わいと言うか、ただそこ
にいるだけで何かが伝わってくる(というか笑える)様は、まさに人間国宝?モノ。
存在自体がすでに芸術品
であり、オスカー像も彼の前では意味のない彫像になっ
てしまうかもしれない。フレッド・ペリーのジャージをさり気なく、色違いで
お着替えするのもご愛嬌。
 彼の昔の女たちも、喜怒哀楽、それぞれの迎え方で個性を際立たせる。その中
のひとり、ジェシカ・ラングはプロットが少し似ているアメリカ、家族のいる風景
にも出演していた。彼女たちそれぞれがピンク色のアイテムを持ち、少しずつ何
かを隠し、少しだけ嘘をついているような風情
。誰が差出人であってもおかしく
はない展開に、ダンと同様、観ているこちらも迷子のような気分になってくる。

 一人の家族の誕生や死によって、自分の周りの世界が以前とはまったく変わっ
て見えた経験はないだろうか? 「息子」という未知な家族の出現によって、凪いで
いたダンの日常世界も変わっていく
。バスの中の若い男(『イノセント・ラブのボビー
兄、カールトン役のライアン・ドノフー!)に「もしや彼が?」と向けてしまう視線。
事故死した元恋人、ミシェル・ペペの墓前で、初めて涙を流すダン。彼はこの時
初めて、限りある人生や人との絆、失われていく時間について思いを馳せたのか
もしれない。


 そしてラスト、二本ラインのジャージを着た二人の少年に対し、ダンが感じた
こと。カメラは360度回転しながらダンの表情を捉える(このアングルは『アメリカ、
家族のいる風景』でもサム・シェパードを捉えていた)。
「過去は去り、未来はこれからどうにでもなる。大切なのは現在だ」。人生の黄昏時
を迎えた一人の男が、自分を知った瞬間。彼のこれからの人生も、そう悪くはな
い。今まで通り飄々と生きていながらも、彼の中では何かが違う。それでいい。

 この作品も、例に漏れず音楽が素晴らしい。サウンドトラック、欲しいです。

★おまけ★ ライアン・ドノフー
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 私の男前センサーがビビッと反応!
 この作品ではチョイ役ですが
 「カルバン・クラインのモデル?」
 とバスの中で騒がれてました。


『ブロークンフラワーズ』監督:ジム・ジャームッシュ
        主演:ビル・マーレイ、ジェフリー・ライト/2005・USA)
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[2007/01/19 22:03] | DVD/WOWOW | トラックバック(9) | コメント(8) |
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コメント
こんばんは♪
これも、近くのシネコンで上映されていたので、
喜んで観に行った1本でした。
独特の、間合いを外したユルさと、
それぞれの人生を生きてきた女たちの個性と、
相手によってお花の種類(というか、見た目のゴージャスさ)が変わるのが、
その相手に対する緊張の度合いの違いのようで、
次はどんなピンク?と思いながら観てました。

お隣さんの、ジェフリー・ライト。『楽園をください』では
とってもかっこいい役だったけれど、
もしDVDがレンタルできそうなら、『エンジェルス・イン・アメリカ』も、ちょっと長いけど、
1度ご覧になってみてください。
豪華キャストの競演は特に面白いし、
『オペラ座の怪人』のパトリック・ウィルソンが、
迫真の演技を観せてくれます。
[2007/01/20 22:12] URL | 悠雅 #- [ 編集 ]
悠雅さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
この映画もお近くで観られたのですね~、な、なんとうらやましい!
ビル・マーレイいいですよね。。私が昔の女なら、シャロン・ストーンの迎え方がいいです(笑)
『エンジェルス・イン・アメリカ』もレンタルでみつけてずっと気になっているのですが、結構貸し出し中のことが多いのです。
あれは映画でなく、TVのミニシリーズなのですよね。
エマとか、名優さんがたくさんご出演で・・。
機会を作って是非観たいと思います。
あ、それに私『オペラ座の怪人』も実は未見なんです・・。
悠雅さまが「あり得ないほどはまった作品」、早く観なければ~。。
ではでは、また遊びにいらして下さいませ!
[2007/01/20 22:28] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さま、TBとコメントいただきありがとうございました。
そうなんです、この映画、一瞬だけ意識が・・(笑)
エチオピアジャズを真面目にBGMにするビル・マーレイが可笑しくて。
シャロン・ストーンの迎え方、いいですねえ。この映画の彼女、ものすごく綺麗でハっとしました。
バスの中の若者、カールトンでしたか!!
[2007/01/21 01:01] URL | 武田 #4ARdecsc [ 編集 ]
武田さま、こちらにもコメントとTB、ありがとうございます。
(『プルート~』にもTB、ありがとうございました)
私、シャロン・ストーン見たらつい「どのへん整形したんやろ・・」という疑惑のまなざしを送ってしまいます(ごめんよ~)。
カールトンはねぇ、もう私の中の男前感知センサーが黙ってない(笑)。
音楽もよかったですよね。確かに笑えました。
また旧宅のほうにもお邪魔させて下さいね。よろしくお願いします!
[2007/01/21 17:49] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんにちわです♪♪♪

えー、大量・長文のTB、ご免なさいです。
「しょの①」から「しょの③」までの三部構成のレビューなので、お暇な時にでも斜め読みしてくらさい。
むむ! 「しょの②」のTBがダブってしまった! 済みません。

>彼はこの時初めて、限りある人生や人との絆、失われていく時間について思いを馳せたのかもしれない。

ほぼ取り返しのつかない年になってからだと、相当強いショックであります。カゴメにも覚えがあるとですもん(涙) 。

色々と酷評もされているこの作品ですが、カゴメはとても楽しめて興味深く6回も観たですよ。
[2007/03/16 18:22] URL | カゴメ #- [ 編集 ]
カゴメさま、こんにちは!コメントとTBをありがとうございます。
その3までアップされたらお邪魔しようと思ってたところでした。
レビュー、待ってましたよ~♪
若い頃は人生の限りなんて考えもせず、ある時突然取り返しがつかないことに気付くのですよね。
え~、この映画酷評されているのですか!まぁビル・マーレイのユルさで眠気を催した人もいるでしょうね(笑)
6回は凄い。でも本当にいい映画は、何度でも観たいですよね。
後ほどお伺いしますね、ではでは~。
[2007/03/16 19:26] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こんばんは、この映画のビル・マーレイの存在感はすごかったですね。「ゴーストバスターズ」もよかったし、「コーヒー&シガレッツ」も感激しました。
あと、シャロン・ストーンが限りなく懐かしかったです。でも、ほんまにいい女優だと思います。
それでは、またよろしく」!!
[2007/04/06 21:48] URL | David Gilmour #- [ 編集 ]
David Gilmourさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
ビル・マーレイって大好きです。勝手に人間国宝指定してしまいました。
シャロン・ストーン、この映画ではとっても綺麗でしたね。
最近『ボビー』を観たらシワシワでビックリしてしまいました・・。
でも、それはそれでまた味わい深いです。
こちらこそ、またお邪魔させて下さいね。ではでは~。
[2007/04/07 06:12] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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[2007/03/16 17:56] ★☆カゴメのシネマ洞☆★
★「ブロークン・フラワーズ」をテッテ的に読み解く! しょの?★
「ブロークン・フラワーズ」(2005) 米 BROKEN FLOWERS監督:ジム・ジャームッシュ&nbsp;&nbsp; 製作:ジョン・キリク&nbsp; ステイシー・スミス&nbsp;&nbsp; 脚本:ジム・ジャームッシュ&nbsp;&nbsp; 撮影:フレデリック・エルムズ&nbsp;&nbsp; プロダクションデザイン....
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[2007/12/16 21:33] ☆彡映画鑑賞日記☆彡
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[2011/06/04 21:29] さとみの映画大好き!
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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