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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

ミリオンダラー・ダディ~『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』

ネブラスカ








 Nebraska


 モンタナでAV機器販売店を営む、冴えない中年男デイヴィッド(ウィル・フォ
ーテ)
は、父ウディ(ブルース・ダーン)ネブラスカを目指してドライヴする。
ウディは100万ドルの懸賞に当選したと思い込み、歩いてでもネブラスカに行
くと言い張るのだ。根負けし、渋々ながら父に寄り添うデイヴィッドだったが・・・。

 アレクサンダー・ペインの映画は大好き。大きな事件は起こらないし、スリル
もサスペンスも大恋愛もないけれど、人生における大切なことはちゃんと描か
れている。そしてそれらは大抵、悲哀に満ちているのに、そこはかとないおか
しみ
も感じさせる。そんな彼の映画の魅力は、彼自身が書く脚本に依るところ
が大きいのでは、と思ってきた。本作は、脚本のクレジットが監督でないことに
驚いたが、アレクサンダー・ペイン節は健在。カンヌ映画祭男優賞受賞、アカ
デミー賞6部門ノミネート
も納得の秀作。今年のベスト作の1本

ネブラスカ2

 とにかく、地味な映画である。今回は、ジャック・ニコルソンもジョージ・クル
ーニーもいない。出てくるのは中年か、老人ばかり。しかも舞台は中西部モン
タナ、ワイオミング、サウスダコタ
を経て、アメリカの田舎の代名詞・ネブラス
。そして極めつけは、なんと全編モノクロ映画なのである。どんだけ・・・(笑)。

 心優しいデイヴィッドを見つめながら、身につまされるような、我が身を振り
返って考えさせられもする映画
だった。無口で呑んだくれの父、子どもには無
関心で、何を考えているのかわからない父
。内心うんざりしながらも、デイヴィ
ッドは父と二人きりで過ごすうち、父のことを何も知らない自分に気付く。

 子どもは 「親」 である両親しか知らないけれど、親にも 「それまでの」、親
になる前の人生がある
のだ。どんな恋愛をして、結婚に至ったのか。どうして
逃げるように酒ばかり飲むのか
。何故100万ドルにこだわるのか。「新車が欲
しい。お前たちに残したい」 とウディは言う。お父さん、本当は、故郷=ネブラ
スカに帰りたかったんじゃないの?
 と私は思う。ラスト、ウディがもしや死んで
しまうのでは、、とちょっとドキドキしてしまったけれど、そこはアレクサンダー・
ペイン。やってくれました!

ネブラスカ3

 何もないけれど、全てが在るような、広大なアメリカの風景。まだ健在だけれ
ど、年々老いてゆく実家の両親のことを思いながら、私自身も、いつか子ども
に支えられて旅をすることになるのかな
、などと考える。親子って、互いを気遣
っていても、なかなかそれを口に出して言う機会はない
もの。が、そのきっか
けを与えてくれるんだな。珠玉のロードムービー、と言ってしまおう。

 ( 『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』 監督:アレクサンダー・ペイン
      主演:ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ/2013・USA)
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2014-04-09 : 映画 : コメント : 6 : トラックバック : 26
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2014-04-21 16:52 : kintyre's Diary 新館
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「Nebraska」 2013 USA ウディ・グラントに「華麗なるギャツビー/1974」「庭から昇ったロケット雲/2007」のブルース・ダーン。 デイビッド・グラントに「ロック・オブ・エイジス/2012」のウィル・フォーテ。 ケイト・グラントに「アバウト・シュミット/2002」のジューン・スキップ。 ロス・グラントにボブ・オデンカーク。 エド・ピグラムに「ブッシュ/2008」...
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映画評「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」
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2015-03-19 17:23 : ポコアポコヤ 映画倉庫
ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅
【概略】 100万ドルの賞金に当たったと信じ込む父・ウディを見兼ねた息子のデイビッドは、骨折り損だと分かりながらも彼を車に乗せて旅に出る。 ドラマ 頑固者で少々痴呆気味の父親ウディと、彼の無茶旅に付き合う事になった息子との物語。 全編モノクロなのですが、これが味わいがあってよかった。 ただ、なんかなあ。息子デイビットの献身が、あまりにも優しすぎると言うか普通ここまで出来...
2015-04-11 08:16 : いやいやえん
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過激なまでに地味な作品
真紅さん、

この作品は過激なまでに地味でしたね。出演する女優たちも驚くほど色気がなく(笑)。そうした演出の過激さもあり、『サイドウェイ』より本作の方がより上だと感じました。ラストが心にしみました。
2014-04-16 23:14 : Ken-U URL : 編集
Ken-Uさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
お久しぶりですね。変わらず映画ご覧になっているようでうれしいです。
過激、確かに。タイトルからして最強ですよね(笑)。
私この映画、3月1日(土)朝9時の回で観たんですが、ほぼ満席だったんです。
映画の日の朝のとっぱちから、わざわざこんな過激なまでに地味な映画を観にやってくる人がこんなにいるんだ、、と心強かったです。
同志~、みたいな。。
ラストもよかったですね^^
2014-04-17 21:22 : 真紅 URL : 編集
真紅さん、こんばんは。
アカデミー関連では、この作品が一番好きでした!
地味ではあるけれど、この作品に流れる微妙な空気感がすごく良かったです。
ゆるゆるに見えて、実は目線も鋭いんですよね。皮肉も効いてるし。
私も上の方同様、『サイドウェイ』よりこちらの方が好きでした!
アレクサンダー・ペインの中でもこれが一番好き。
2014-05-22 00:26 : とらねこ URL : 編集
とらねこさん、こんばんは~。コメントありがとうございます。
私も、この映画かなりお気に入りです。
う~ん、『サイドウェイ』も『ファミリー・ツリー』もこれもかなり好きなので、私は甲乙つけがたいかな。
あと、アカデミー賞の候補にこれが入っているっていうのはすごくうれしいですね~。
作品賞候補の中では、私はまだ『her』を観ていないのですよ。。カレン・Oにはすでにやられているのですが^^
この時期、いい新作映画たくさん観られてうれしいよね~。
2014-05-22 18:53 : 真紅 URL : 編集
真紅さーん、なんだかちょっと久しぶりです^^
ここんところ、見る映画が、重なってなかったみたい。

これ、凄く評判良いよねー真紅さんも、とってもお気に入りみたいだから、それほどノレなかった私は、ちょっぴり淋しい気持ち。

まだこの映画を楽しめるほど、私は心が成熟してないというか、寛容さを身につけてないみたい・・・とほほ。
2015-03-19 17:24 : latifa URL : 編集
latifaさん、こんばんは~。コメント&TBありがとうございます。
ほんと、お久しぶり^^
レスが遅くなってごめんなさいね、忙しくて夜PC開く時間がなくて・・・。

で、この映画だけど大好きだったよ。
でもね、おうち鑑賞だとどうだろう?
いい映画に画面の大きさなんて関係ないとも言えるけど、劇場鑑賞だからこその感慨、みたいなのもあるよね。
ふむふむ、イマイチだったんだね・・・。
後ほど伺いますね!
2015-03-22 21:36 : 真紅 URL : 編集
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