私写真の系譜3~『メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年』
 忘れ難いポートレイトがある。

メモワール2

 20年近く前に切り抜いた、色褪せた古い新聞記事痩せこけた身体赤ん坊
を抱いたその女性は、何かを訴えかけているようにも、虚空を見つめているよう
にも感じられる。
 彼女のによって撮られたその写真は、粗悪な新聞紙に転写され、手のひら
よりも小さなサイズ
に閉じ込められてもなお、その眼差しが私を捉える

 この写真を撮影したのは、オーストリア在住写真家・古屋誠一だ。亡き妻・
クリスティーネ
と過ごした8年足らずの日々を、『メモワール』 と題した写真集
のシリーズ
として発表している。

メモワール

 写真家であり小説家でもある小林紀晴が、古屋誠一(と彼の写真)に魅せら
れ、20年の歳月をかけた取材を結実させたノンフィクション

 欧州に渡った古屋はクリスティーネという女性と出逢い結婚、子を成す。しか
し彼女は心を病み、自ら命を絶った屋上から身を投げた妻の姿を、古屋は
する。その写真に、小林は捉えられたのだ。彼が古屋に近づくことは、「写真
とは何か?」
 という、自らのアイデンティティにも関わる問いかけに対する、
えを探る旅
であった。

 写真を撮れば、否応なく被写体との関係性が浮かぶ。被写体を晒し、生業に
する
ということ、それに群がる 「呪われた眼」 を持つ私(たち)。 写真がもつ
本質的な罪と、その罪を自覚しながら、満身創痍を受けようとする者。胸が
詰まる
。読み進めるのが辛くなるほどに。

 写真が写す 「真」 とは、撮る人の内側なのだ。

◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆

 この本を書評で取り上げてくれた、いとうせいこう氏に感謝します。

 ( 『メモワール 写真家・古屋誠一との二〇年』 小林紀晴・著/2012・集英社)
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

[2014/01/21 11:22] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<『永遠の0』 | ホーム | 黙祷>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL
http://thinkingdays.blog42.fc2.com/tb.php/1455-9041ab0f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

Recent Entries

Categories

What's New?

真紅

Author:真紅
Every cloud has a silver lining.

Recent Comments

Recent TrackBacks

Archives

My Favorite

Search this site

RSS

Thank You!