ヒース主演で再映画化希望~『グレート・ギャツビー』
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 村上春樹「人生で巡り会った中でもっとも重要な本」と位置づけ、「60歳になった
ら翻訳する」
と公言してきたスコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』
満を持してというよりは、村上氏は60歳になるのを待ちきれずに一気に訳してしま
った、とあとがきで述べている。訳者書き下ろしの小冊子(20年代ニューヨークガイド)
付の愛蔵版と、新書サイズの通常版が発売されている。愛蔵版は図書館で借り、通常
版を購入。

 私は野崎孝氏の旧訳は未読なので比較はできないけれど、確かに80年前の小説だ
とは思えないほど現代に生きている話として訳出されていると思う。村上氏が心を
砕いたという冒頭と結末部分も、特に後者は文学史上に残る「名文」と呼ばれるにふさ
わしいとも思う、個人的には「波のような」名文だと感じた。

 ストーリーは、ジェイ・ギャツビーという男の一夏の悲恋物語を、語り部である
ニック・キャラウェイが回想する形をとっている。ギャツビーのファーストネーム
である「ジェイ」は村上氏の初期三部作に登場する「ジェイズ・バー」のバーテンの名
であるし、ギャツビーの部屋でデイジーが山のような衣装を前に「なんて美しいシャツ
でしょう」
と泣く場面は『トニー滝谷』そっくり。いかに村上氏がこの小説に影響を受
けているかが伺える。

 確かに傑作であるだろうし翻訳も素晴らしいのだけれど、どうしてもひっかかっ
てしまうのが「オールド・スポート」という言葉。ギャツビーの口癖であるこの気取っ
た、いかにも胡散臭い言い回しを村上氏はそのままカタカナで訳出している。そし
て「訳者あとがき」でこの問題について「20年考えても適当な訳語はみつからなかった」
と述べているのだが、翻訳としてそれで果たしていのだろうか・・とどうしても考え
てしまう。もちろん村上氏はプロ中のプロの翻訳家であることは重々承知している
けれども、この決着のつけ方は私としては残念だ。作品の中の重要なキーワード
して使われているのならば尚更、日本語として意味の無いカタカナで訳出するとい
うのは如何なものか。英語の知識が豊富な読者には「オールド・スポート」でもすんな
りと受け入れられるのかもしれない、でももし映画の字幕翻訳だったら、「オールド・
スポート」は絶対あり得ないと思う。この「オールド・スポート」問題について受け入
れるか受け入れないかが、ハルキストの踏み絵のようにさえ感じてしまう。

 そしてこの小説は、1974年にロバート・レッドフォード主演で映画化されている。
邦題は『華麗なるギャツビー』。新訳で甦ったこの傑作を、新しいキャストで観てみた
いとつい思ってしまい妄想開始(笑)。
 まず、主役のジェイ・ギャツビーにはヒース・レジャー。たった一人の女のため
に成り上がり、命まで捧げる男の純情を是非ともヒースに表現してもらいたい。
一歩間違えば漫才師になってしまうギャツビーの衣装(ピンクのスーツや銀色のシャツ、
金色のネクタイ)も、ヒースにかっこよく着こなしてもらおう。そんなギャツビー
を見守るニック・キャラウェイはもちろんジェイク・ジレンホール!いいとこのお
坊ちゃんであり、真面目なニックのキャラにはジェイクがぴったり。ナレーション
ももちろんジェイクでお願いしたい。 
 そしてギャツビーの「夢の女」デイジージェニファー・コネリー。小説ではデイジー
の髪は黒、となっているので、ブルネットのジェニファーなら違和感なし。本物の
上流階級出身であるデイジーの夫トムにはライアン・ゴズリング。その他、ジョー
ダン・ベイカー
シャーリーズ・セロンウィルソン夫妻にはコリン・ファース
ケイト・ウィンスレット。・・って、ちょっと豪華すぎますかね

(『グレート・ギャツビースコット・フィッツジェラルド著、村上春樹・訳、
  中央公論社・2006/
 "THE GREAT GATSBY" by Francis Scott Fitzgerald・1925・USA)
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[2007/01/10 20:37] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(8) |
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コメント
新しいギャッツビーが観れそうですねぇ~♪

私、ロバート・レッドフォードというと、この作品が最初に出てきてしまうくらい・・・この作品を強烈に覚えているのですが・・・
なるほど、確かに似合いそうです!

それにしても・・豪華キャスト!
いいですねぇ~♪
[2007/01/10 21:31] URL | D #k0GcsowQ [ 編集 ]
Dさま、たくさんのコメントありがとうございます。
おお、さすがは・・!『華麗なるギャツビー』ご覧になっているのですね。
私は残念ながら未見なのですが、レッドフォードとミア・ファローの写真は何度も目にしました。
『嵐が丘』や『高慢と偏見』のように、名作は何度も映像化されますから、この作品も是非再映画化して欲しいと思いますよね。
ヒース、絶対ハマると思うなぁぁ。
(豪華キャスト・・、好きな男優を揃えているだけ、という説も、笑)
[2007/01/10 21:48] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、明けましておめでとうございます。
PCも復活して良かったですね!
グレート・ギャッツビーは大昔に野崎氏の訳で読んでいるのですが、すっかり忘れてしまってまして(^^;)
是非とも村上氏の新訳で読み直してみたいと思います。
真紅さん版キャストでの映画化もその豪華なメンツだけでワクワクしますね。
監督はどなたがいいでしょうね~♪

そうそう、先日ネットでミシェル・ウィリアムズのインタビュー記事を目にして、ざっと読んでいたら「Haruki Murakami」の文字が目に飛び込んできて、詳しく読んでみるとミシェルが今一番好きな作家として村上氏の名前を挙げていました。
おおー!となんだか嬉しくなったのですが、海外でもその名が当たり前に取り上げられるのは本当にスゴイ事ですね。
ミシェルは村上氏の本を愛してる~!!と言ってました!素晴らしい(笑)
村上氏の本は短編やエッセイばかりを読んでいましたが、今年はちゃんと長編も読んでみようと思います。

それでは長々と失礼しました。今年もよろしくお願いします。
[2007/01/10 22:09] URL | ルカ #- [ 編集 ]
ルカさま、こんにちは。あけましておめでとうございます。旧年中はお世話になりました。
コメントありがとうございます。
記事の中でも書いたのですが、この作品、本当に現代の言葉を使って訳されていますので、古臭い感じは全く受けませんでした。
野崎孝氏も当然素晴らしい翻訳をされていると思うのですが、まぁ村上氏のこの作品への思い入れは半端じゃないです。
是非読んでみて下さい。短めの長編小説ですし、スイスイと読めると思います。
監督は・・、アンソニー・ミンゲラとか(ギャツビーがジュード・ロウで、ウィルソンがPSHになりそう、笑)

そして、ミシェル情報、ありがとうございます!うわ~、ミシェルが読んでいるということはヒースもきっと読んでますよねぇ、うれしいなぁ♪
村上春樹の長編は、アーヴィングがお好きならきっと受け入れやすいと思います。
『ねじまき鳥クロニクル』なんていかがでしょう?長いけれど、力作ですよ。何度も読み返しました。
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いいたします!
[2007/01/10 22:48] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん★待って、待って、待っていたのよ(笑)。真紅さんが「村上ギャツビー」をいつ書いてくださるのかと。
中学生の頃、新聞で発見してとても感銘を受けた言葉。『お前が誰かを批判したくなったときにはね、この世の人が皆、お前のように恵まれた立場にはないということを 思い出してみるように』
この言葉が、小説「グレート・ギャツビー」の冒頭の言葉であるということを知ったのは、後に映画「華麗なるギャツビー」を見て、それから原作を読んだ時でした。この話自体は好きじゃありませんでした。よく理解できてなかった、というのもその理由(今回の村上訳によって、この物語が本当によく理解できましたから!)だけど、主人公のふたり(ギャツビー&デイジー)のことをどうしても好きになれなかったからです。それは、大人になって、この素晴しい翻訳でまた読んでみてもやっぱり同じだったけど、でもどうして私がこの物語から心が離れないのか、それは(村上さん自身も「息を呑むほど素晴しい」と言っている)この「冒頭の言葉」があるからです。普通だったら「絶対に我慢ならないはずの男」ギャツビーを、この物語の語り部であるニックは(父親に言われた冒頭の言葉のとおり)決して批判しない、そのニックの姿勢に最大の魅力を感じるからなのです。人を判断する時、基準になるのは自分。自分と比べていいか悪いか。人を悪くいうのは簡単です。相手がどういう立場かなんて、普通は考えたりしない。でも・・・もしかしたら、自分が批判しようと思う相手は、自分よりもずっと悪い条件の中でずっと努力して生きてきたのかもしれない・・・そういう「ものの考え方」をこの物語は教えてくれます。大切なこと。村上春樹さんによって、この小説が再び脚光を浴びたことはとてもいいことだと、心から思いました★ただし・・・「オールド・スポート」については真紅さんと同感です♪そしてそして・・・真紅さんも通常版をお買いになったのね!私もなんです。でも買った後で、「3倍の値がしてても愛憎版を買うべし!」という書評を読んで、すごく後悔しました(笑)。
この作品がヒース&ジェイクでリメイクされたら・・・素敵すぎ!もう、嬉しくて嬉しくて想像しただけで目が廻りそう~!!
もっといっぱい語り合いたいけど・・・ここらへんにしときます。ありがとうございました★★★
[2007/01/10 23:03] URL | メグ #- [ 編集 ]
メグさま、こんにちは。お待たせしました(笑)、コメントありがとうございます。
野崎訳読まれているのですね。映画もご覧になっているのね。すごい~。。
デイジーは確かに、酷い女ですね。好きになれる人は少ないんじゃないかな。
でもギャツビーに対しては、好きというのとは少し違うのですが・・、ニックと同じような気持ちで見て(読んで?)しまいます。
私もニックという人物、彼の語り口に一番魅力を感じます。だからジェイクに演じてほしいわ(照)
メグさんは冒頭の一文にやられたのですね。私はどちらかというと結びのほうが好きです。もちろん、冒頭と結び以外にも、美しい文章はたくさんありましたが。
この小説は何度も読み返せば読み返すほどに輝きを増すタイプの物語だと思います。
だから手軽に読める通常版でいいじゃないですか(笑)、というのは半ば冗談ですが、書評した方はどうして愛蔵版を買うべし、とおっしゃったのでしょうね?
もちろん、愛蔵版のほうを所有できるに越したことはないですけれども・・。
私は通常版でもいいと思いますよ。
本当に、リメイクされたら素晴らしいですね。ヒースは絶対、ギャツビーにハマルと思うのですが。
またいつでも語り合いましょう。ではでは。
[2007/01/11 06:35] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん、こんばんは。
とっても今更なんですがまたこちらにお邪魔いたします。
ギャッツビー早々に読んでいたのに今頃になりまして・・。
さくさく読めて面白かったです!オールド・スポートに関してもそういう意味だと分かったので違和感は感じませんでした。
でも、村上氏がこの小説にものすごく入れ込む程の真の醍醐味のような物はやはり原文を読める人にしか分からないのかもな~とも思いました。
大好きな本を原文で味わえるのって本当に羨ましいです。意味はなんとか分かっても楽しみ味わうなんて、しょせん無理な話で・・。

それから、明日村上氏翻訳のレイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」が発売になるようですね。
私この小説大好きなので、村上氏による新訳すごく楽しみです!
真紅さんにおすすめしていただいた「ねじまき鳥クロニクル」も買ってはいるのですが、読む時間がなかなかなくて・・。はやく腰を据えてじっくり読みたいです。
それでは~。
[2007/03/08 00:43] URL | ルカ #- [ 編集 ]
ルカさま、こんにちは。いえいえ「今頃」などとおっしゃらず!コメントありがとうございます。
確かに、原文で物語を味わえたら一番いいですよね・・。
原文に惚れ込んだ村上氏が、ひとりでも多くの読者にその素晴らしさを届けたいと奮闘してくれた力作だと思うのですが、私もこの小説の素晴らしさを本当に理解できたか・・というと自信がありません。
『ロング・グッドバイ』は私は未読なので、これもすごく楽しみです♪
読了後、何か記事に書きたくなるようなものだといいのですが・・。きっとそうですよね。
村上氏の小説は、どれも何度か読み返しているのですが、『ねじまき鳥』は一番多く読み返しているかもしれません。
長い長い小説ですので、どうかゆっくり楽しんで下さい。ルカさまに気に入っていただけるとうれしいのですが・・。
ではでは、また遊びにいらして下さい!
[2007/03/08 01:32] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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「グレート・ギャツビー」後編・小説野崎孝訳と村上春樹訳
今回は映画より小説に焦点をあてながら話を進めて行きたい。 しかし結局昨日の如く支離滅裂になることは請け合い。 映画「ギャツビー」を再観し一度は目を通したはずの小説「ギャツビー」を読み直す。これは野崎孝訳であった。村上春樹氏は「永遠の名作はあっても、永遠
[2007/01/11 10:21] 藍空放浪記
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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