底なし沼~『ペーパーボーイ 真夏の引力』

THE PAPERBOY
1969年の夏、フロリダ州モート郡。ジャック(ザック・エフロン)は水泳選手
としての将来を棒に振り、大学を中退して実家に戻っていた。父親(スコット・
グレン)の経営する地方紙の手伝いをしていた彼の元に、フロリダの大手新聞
で記者をしている兄ウォード(マシュー・マコノヒー)が、同僚の黒人記者ヤード
リー(デヴィッド・オイェロウォ)とともに帰省する。
アメリカ、恐るべし。アメリカ映画、恐るべし。いやはや、凄い映画でした。
これは、今年一番の怪作かも・・・。大阪では既に上映終わっていたのですが、
運よく神戸で鑑賞。うだるような真夏、映画館の暗闇の中で観るにふさわしい
映画。血と、汗と、様々な体液が混ざり合い、ねっとりと湿って肌にまとわりつく
感覚。想像を絶する展開は 「衝撃」 以上のダメージをもたらし、底なし沼のよ
うな 「闇」 を体感した。ポリティカル・コレクトネスやモラルとは無縁のようでい
て、人間の根源的な 「飢え」 についても考えさせられる物語。参りました。
監督は 『プレシャス』 のリー・ダニエルズ。Good Job!!

ピンクを基調にしたポスターに、我らがアイドル、ザック・エフロン。ペーパー
ボーイ(新聞配達)が年上の女性にひと夏の恋をする、、、なんて甘いプロット
を想像していた私は、大やけどを負ってしまった。彼が恋するのは、「性欲の強
いバービー人形」 シャーロット(ニコール・キッドマン)。オスカー女優になっても、
ここまで異形な役にチャレンジする彼女の女優魂。素晴らしい。「オシッ○は私
がかける!!」 オーラル込みのエア・セック○といい、凄過ぎる。
幼い頃に母に棄てられ、人間関係が巧く築けないジャックに、シャーロットが
スコールの中 「男と女が寝るのは、自然なことなのよ」 とダンスしながらささ
やく場面は、数少ない心安らぐ時間。彼女はジャックにとって、母であり、恋人
であり・・・。アニタ(メイシー・グレイ)の言う通り、「憧憬」 そのものだった。
ジョン・キューザックの全身狂気パラノイア演技もさることながら、マシュー・
マコノヒーには平伏したい。人種差別の根強い南部の田舎町に、何故彼は黒
人の同僚と帰省したのか。彼の顔の傷跡は? 独身なのはなぜ? 何故最後、
ヒラリーに無抵抗だったのか? 「自分自身を憎んでいる」 なんて、悲し過ぎ
るよ・・・。

そして何よりも強烈だったのは、沼の奥地で未開人のように暮らすプア・ホ
ワイトたちの姿。ここ、ホントにアメリカなの? と叫びたいくらい、隔絶された
野蛮な生活を営む人々がいる・・・。とにかく、何もかもが過剰で、目がくらむ
ほど。こういう作品に出会えるから、映画館通いは止められない。
( 『ペーパーボーイ 真夏の引力』 監督・製作・共同脚本:リー・ダニエルズ/
主演:ザック・エフロン、マシュー・マコノヒー、ニコール・キッドマン/2012・USA)
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テーマ : この映画がすごい!!
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『ペーパーボーイ―真夏の引力』を新宿武蔵野館で見ました。
(1)印象的だった『プレシャス』の監督リー・ダニエルズの作品でもあり、ニコール・キッドマンが出演するというので、
2013-09-12 08:02 :
映画的・絵画的・音楽的
ペーパーボーイ 真夏の引力@一ツ橋ホール
2013-09-12 08:08 :
あーうぃ だにぇっと
なんたって、ニコールにブッタマゲタ!
2013-09-12 09:07 :
或る日の出来事
白人たちの長い暑い夏
公式サイト。原題:The Paperboy。ピート・デクスター原作、リー・ダニエルズ監督。ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジョン・キ ...
2013-09-12 10:58 :
佐藤秀の徒然幻視録
数々の映画賞を席巻した『プレシャス』のリー・ダニエルズ監督が、ピート・デクスターのベストセラー小説を映画化したクライム・サスペンス。ある殺人事件を調査する兄弟が、事件の...
2013-09-12 11:00 :
パピとママ映画のblog
きょうはコレ↑を観て参りました。
3分の2あたりまではウソも隠しもなく
すんごくいい感じで久しぶりに「これはめっけもん!」と
意気込んだんですけれど、あのエンディング ...
2013-09-12 13:40 :
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壮絶で辛すぎる ひと夏の経験ニコールのビッチぶりがすごい!公式サイト http://paperboy-movie.jp原作: ペーパーボーイ (ピート・デクスター著/集英社文庫)監督: リー・ダニエル
2013-09-12 14:14 :
風に吹かれて
『プレシャス』のリー・ダニエルズ監督がピート・デクスターのベストセラー小説をザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザックらの豪華 ...
2013-09-12 14:42 :
カノンな日々
4日のことですが、映画「ペーパーボーイ 真夏の引力」を鑑賞しました。
青年ジャックは新聞記者の兄ウォードが以前起こった殺人事件で死刑の判決が出た人間が
実は無罪かもしれな
2013-09-12 18:32 :
笑う社会人の生活
テアトル梅田で見て来ました。1969年のフロリダ州。大学を中退し父の会社で新聞配達をしてるいたいけな青年ジャックくん。母親は幼い頃に家を出て行き、一緒に暮らす父の恋人とは馴
2013-09-12 20:38 :
はるみのひとり言
この方々が凄いんですけど・・・
予想していたのと全然違ってました
これは・・・えーと・・・。サスペンス?と思いきや?
一応サスペンス??うーむ・・・。
ストーリーよりも
2013-09-12 20:41 :
♪HAVE A NICE DAY♪
フロリダ発、青春残酷物語。
ある殺人事件を巡る、マザコン少年の最初で最後の究極の恋の物語。
キービジュアル以外の内容の予備知識無しで観たので、てっきり爽やかな青春成長ス...
2013-09-12 21:59 :
ノラネコの呑んで観るシネマ
この映画のタイトルの頭の部分に「林家」と付けるだけで、なんだか芸能人の誕生日をスラスラと言えるような気がしてしまうのは、僕だけでしょうか?
・・・はい、いきなり ...
2013-09-12 22:48 :
映画大陸
「The Paperboy」 2012 USA
1969年、フロリダ。人生の目標を失ったジャックは大学を中退し、地方新聞のオーナーである父親を手伝い新聞配達で退屈な日常をやり過ごしている。ある日、新聞
2013-09-12 23:49 :
ヨーロッパ映画を観よう!
1969年。場所はフロリダ州モート郡の田舎町。
そこで一癖も二癖もある面々が集合する。
殺人事件の死刑囚に冤罪の可能性があるとしてべく、新聞記者2人(マシュー・マコノヒー、デヴ...
2013-09-13 07:00 :
日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜
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トロント映画祭観客賞ほか、数々の映画賞を席巻した「プレシャス」の監督、リー・ダニエルズが、
ピート・デクスターのベストセラー
2013-09-13 07:34 :
我想一個人映画美的女人blog
1969年、真夏のフロリダ州モート郡。
大学を中退したジャック(ザック・エフロン)は、父親が経営するローカル新聞の会社で、配達を手伝うだけの退屈な日々を送っていた。
ある日
2013-09-14 14:52 :
心のままに映画の風景
ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒーにジョン・キューザック。
日経の評価も高く、アメリカ南部を舞台に、このメンバーで繰り広げられるサスペンスというので
見てきました。
マシュー・マコノヒー主演の硬派サスペンス「リンカーン弁護士」を...
2013-09-27 14:06 :
映画の話でコーヒーブレイク
覗いてはいけない、禁断の闇
またまたお久しぶりです。ようやくシネマに出かけて来ました。7月末以来です。気になっていた映画はほとんど終了してしまい、、、、。この作品も来週までということを知り、慌てて観に行って来ました。
暑いこの時期にお薦めですかね。じ...
2013-09-29 22:30 :
銅版画制作の日々
13-62.ペーパーボーイ 真夏の引力■原題:The Paperboy■製作年、国:2012年、アメリカ■上映時間:101分■料金:1,000円■観賞日:8月1日、新宿武蔵野館(新宿)
□監督・脚本・製作:リー・ダニエルズ□原作・脚本:ピート・デクスター◆ニコール・キッドマン◆...
2013-12-29 18:20 :
kintyre's Diary 新館
ニコール・キッドマンがけばい年増女を演じてます。そして彼女に恋するのが新聞配達のザック・エフロン。
ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザック。
記者のウォード・ジャンセンは、黒人の同僚と、実家で新聞配達を手伝う弟のジャックとともに、白人保安官殺害事件の調査を開始する。3人は恋人の無罪を信じるシャーロットを伴い、容疑者ヒラリーと刑務所で接触を試みる...
2014-03-25 09:32 :
いやいやえん
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督リー・ダニエルズ
ネタバレあり
2014-08-03 11:07 :
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
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そうです、まさにねっとり感にじわじわ苛まれ
翻弄されもう勘弁してよという間も与えず
過激な映像が目に飛び込んでくる・・・
監督の見せ方語り方に脱帽作品。
心が汗まみれになる怪作でございましたね。
いや~~~な映画の部類なんでしょうけれど
目が離せない、ある種、プワゾン映画。
ほんに映画は一筋縄ではくくれない魅力あり。
(笑)
翻弄されもう勘弁してよという間も与えず
過激な映像が目に飛び込んでくる・・・
監督の見せ方語り方に脱帽作品。
心が汗まみれになる怪作でございましたね。
いや~~~な映画の部類なんでしょうけれど
目が離せない、ある種、プワゾン映画。
ほんに映画は一筋縄ではくくれない魅力あり。
(笑)
vivajijiさん、おはようございます。コメント&TBありがとうございます。
>心が汗まみれ
いや~、まさに言い得て妙、でございます。
これホント怪作だと思うんですが、原作があるのですね。
まさか実話?ってことはないですね(笑)。
マシュー・マコノヒーってすっかり曲者俳優になりましたね~。
私、昔『評決のとき』に感動したもので^^
これからも見守っていきますわ♪
あと、リー・ダニエルズの次回作にも注目!ですね。
>心が汗まみれ
いや~、まさに言い得て妙、でございます。
これホント怪作だと思うんですが、原作があるのですね。
まさか実話?ってことはないですね(笑)。
マシュー・マコノヒーってすっかり曲者俳優になりましたね~。
私、昔『評決のとき』に感動したもので^^
これからも見守っていきますわ♪
あと、リー・ダニエルズの次回作にも注目!ですね。
真紅さん、ご無沙汰しております。
この作品のじっとり湿度の高い感じはまさに底なし沼でしたね。
キャラが本当に皆個性的!ニコールのあの数々の演技、よくあんなことこんなことやりましたよね(笑)。で、沼地に行ってからのスッピンでの哀れさが際立ちました。
そしてマシュー・マコノヒー、最高でしたね!あの哀しい性が強烈な色気を孕んで目に飛び込んできました。彼は『マジック・マイク』も良かったし、今更彼にハマっています。
神戸で観られたなんて良いな。たまには違う環境での映画鑑賞も乙ですよね♪
この作品のじっとり湿度の高い感じはまさに底なし沼でしたね。
キャラが本当に皆個性的!ニコールのあの数々の演技、よくあんなことこんなことやりましたよね(笑)。で、沼地に行ってからのスッピンでの哀れさが際立ちました。
そしてマシュー・マコノヒー、最高でしたね!あの哀しい性が強烈な色気を孕んで目に飛び込んできました。彼は『マジック・マイク』も良かったし、今更彼にハマっています。
神戸で観られたなんて良いな。たまには違う環境での映画鑑賞も乙ですよね♪
リュカさん、こんばんは~。コメントありがとうございます。
ほんと、お久しぶりですね~。たまには顔出して下さいよ^^
さてこの映画ですが、かなりの衝撃作でしたが観てよかったです。
マシュー・マコ様といえば、昔むかし、『評決のとき』(だっけ? 黒人の少女の弁護するお話)に大・感動したものです。
『マジック・マイク』 最高やったよね。。。
この映画の後に、『タイピスト!』 上映だったのですよ。
観てから帰ればよかったな~。しくしく
最近梅田が遠いわ~。特にスカイビル方面。
あ、『サイド・エフェクト』は観ました! 次アップ予定です。
面白かったよね~。ソダーバーグ~、引退、まじか? みたいな。。。
ほんと、お久しぶりですね~。たまには顔出して下さいよ^^
さてこの映画ですが、かなりの衝撃作でしたが観てよかったです。
マシュー・マコ様といえば、昔むかし、『評決のとき』(だっけ? 黒人の少女の弁護するお話)に大・感動したものです。
『マジック・マイク』 最高やったよね。。。
この映画の後に、『タイピスト!』 上映だったのですよ。
観てから帰ればよかったな~。しくしく
最近梅田が遠いわ~。特にスカイビル方面。
あ、『サイド・エフェクト』は観ました! 次アップ予定です。
面白かったよね~。ソダーバーグ~、引退、まじか? みたいな。。。