無法、不滅、あるいは伝説~『欲望のバージニア』

LAWLESS
1931年、禁酒法時代のアメリカ。バージニア州フランクリンで、自らを 「不
死身」 と称する三兄弟がいた。長兄ハワード(ジェイソン・クラーク)、次兄フォ
レスト(トム・ハーディ)、そして末弟のジャック(シャイア・ラブーフ)。彼らは密
造酒で商売し、酒場を営んでいた。そこに、シカゴから流れてきた女・マギー
(ジェシカ・チャステイン)が現れる。
大阪では単館での上映で、ほとんど話題になっていなかった本作。いやこれ
が滅法面白かった! 個人的にはベスト作に入れてしまうかも? と思ったほ
ど。予備知識もなく、主演俳優さえ知らぬまま観たのに、こんな快作に出会うと
は、うれしい限り。
ソフト帽をかぶり、銃を手にしたギャングのような男たちの抗争劇であり、その
男と酒場でタバコをふかす、ワケありの女との純愛物語でもあり。そしてまだ若
く、残酷になり切れない男と、聖職者の娘との初々しい青春物語でもある。そし
てこれがまた、実話に基づく物語だというのだから・・・。アメリカという国の、底
知れぬ「物語層」の厚さを感じる。

とにかく、この映画の見所は役者が皆素晴らしいこと! 長兄ジェイソン・ク
ラークは 『ゼロ・ダーク・サーティ』 でジェシカ・チャステインと共演したのも記
憶に新しい。ゲイリー・オールドマンが 「狂犬」 してるのも久々に観た!
すっかりお馴染みになったガイ・ピアースの偏執的悪役ぶり、シャイア・ラブー
フがヘタレでいじられキャラの末っ子にハマっている。相変わらずの白い肌、赤
い唇がなんとも小悪魔なミア・ワシコウスカ。『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/
宿命』 のデイン・デハーンが、いい役だったのもうれしかったなぁ。彼、10代
の頃のレオナルド・ディカプリオに似ていますね。
そしてなんと言っても、この映画は次兄フォレスト=トム・ハーディのためにあ
ると言っても過言ではない。寡黙で屈強、向かうところ敵なしなのに、女には
何故かオクテ。初めて会った時、雷に打たれたようにマギーに心奪われたのに、
いつまでも彼女を”見”守るだけのうぶな男。もう、このフォレストのキャラクター
が素敵過ぎて・・・。オトメゴコロを射抜かれた。ジェシカ・チャスティンは、今ハリ
ウッドで一番脂が乗った女優ですね。文句なしに美しい! フォレストとマギー
の会話、聴き惚れます。

バージニア州は東海岸に接する州だけれど、文化的には南部なのか? 人種
差別が激しいこともさり気なく描写されている。マギーがやってきたという「シカゴ」
という街の響きからアル・カポネの風貌が浮かび、アンタッチャブルな復讐劇を
予感させる。『マディソン郡の橋』 に出てきた、屋根付きの橋が見えるのも面白
い。アメリカの原風景のような埃っぽい田舎町、カントリーでありながらカントリー
っぽくない音楽、美しく流れるような会話。音楽と脚本を担当したのは、ニック・ケ
イヴ。才人ですね、憶えておこう。
( 『欲望のバージニア』 監督:ジョン・ヒルコート/2012・USA/
主演:シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ジェシカ・チャステイン)
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trackback
禁酒法時代のアメリカ・バージニア州を舞台に密造酒ビジネスで名を馳せた実在の人物、伝説的アウトロー3兄弟と悪徳取締官の壮絶な抗争のドラマを描くアクション・クライム・サスペ ...
2013-08-08 21:41 :
カノンな日々
Lawless(film review) 『欲望のバージニア(原題:Lawles
2013-08-08 22:28 :
Days of Books, Films
(原題:Lawless)
----あれっ。これもギャング映画だ。
ちょっと前にも『L.A.ギャングストーリー』というのがなかった?
「そうだね。
ただ、物語の背景となっている時代が違うし、
描
2013-08-08 22:32 :
ラムの大通り
共同体の象徴としての不死身
公式サイト。原題:Lawless。マット・ボンデュラント原作、ジョン・ヒルコート監督。シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ガイ・ピアース、ミア・ワシコ ...
2013-08-08 22:45 :
佐藤秀の徒然幻視録
評価:★★★☆【3.5点】(10)
主人公たちの敵役はもっと憎々しい暴君にした方が、、、(笑)
2013-08-08 23:33 :
映画1ヵ月フリーパスポートもらうぞ〜
1931年、禁酒法時代のバージニア州フランクリン。
無法の街では、ボンデュラント3兄弟が密造酒ビジネスで幅を利かせていた。
そんな時、新たに着任した特別補佐官レイクス(ガイ・
2013-08-09 00:10 :
心のままに映画の風景
きょうはコレ↑を観て参りました。
3分の2あたりまではウソも隠しもなく
すんごくいい感じで久しぶりに「これはめっけもん!」と
意気込んだんですけれど、あのエンディング ...
2013-08-09 07:04 :
映画と暮らす、日々に暮らす。
『欲望のバージニア』---LAWLESS---2012年(アメリカ)監督: ジョン・ヒルコート
出演: シャイア・ラブーフ 、トム・ハーディ 、ゲイリー・オールドマン、ミア・ワシコウスカ 、ジェシカ...
2013-08-09 22:55 :
こんな映画見ました〜
不死身のボンデュラント兄弟公式サイト http://yokubou.gaga.ne.jp6月29日公開実話の映画化 原作: 欲望のバージニア (マット・ボンデュラント/集英社文庫)監督: ジョン・ヒル
2013-08-11 14:53 :
風に吹かれて
シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ジェシカ・チャステインら豪華キャストが共演し、アメリカ禁酒法時代に実際にあった復讐劇を映画化。1931年、バージニア州。密造酒ビジネスで
2013-09-16 19:39 :
パピとママ映画のblog
監督:ジョン・ヒルコート 出演:シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ゲイリー・オールドマン 、ミア・ワシコウスカ 、ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ガイ・ピアース
【解説】
禁酒法時代のアメリカを舞台に、密造酒の業界においてその名をとどろか...
2013-10-27 17:23 :
タケヤと愉快な仲間達
シャイア・ラブーフさん最近見ないよねって思ってたらここに出てた。他にトム・ハーディ、ガイ・ピアーズ、ゲイリー・オールドマン、ジェシカ・チャステイン、ミア・ワシコウスカさんらが共演。
1931年、バージニア。金融恐慌で失業者が溢れる一方、禁酒法の時代に、最も密造酒造りが盛んであったこの地域で、酒の密造で荒稼ぎをしていた3兄弟がいた。だがそこに冷血な悪徳連邦取締官が赴任。権力を笠に、密造業者た...
2013-11-16 09:34 :
いやいやえん
13-58.欲望のバージニア■原題:Lawless■上映時間:115分■製作年、国:2012年、アメリカ■料金:1,800円■観賞日:7月6日、新宿バルト9(新宿三丁目)
□監督:ジョン・ヒルコート◆シャイア・ラブーフ◆トム・ハーディ◆ジェイソン・クラーク◆ガイ・ピアース◆ジェ...
2013-12-24 23:26 :
kintyre's Diary 新館
私の中では2013年公開作品で五本の指に入る傑作。何がどう良かったかを上手く伝える事がレビューの一つの在り方だから、それをきちんと自分の中で咀嚼できずここに至るまで書けなかった。どうしてこんなにいいと思ったのか、今でも上手く伝える事ができないかもしれない。
何故この作品にこんなに心惹かれたのか…?
それは、実話を元にした物語が、まるでフィクションのように壮大なロマンのハーモニーを奏で...
2014-01-15 16:25 :
ここなつ映画レビュー
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督ジョン・ヒルコート
ネタバレあり
2014-07-02 10:07 :
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
コメントの投稿
こんにちは
トム・ハーディが強くて、いい男で、女がほっておかないような男なのに、やけにウブなのが可愛らしかったですね。
アメリカ南部というのは色んな定義があるようで、バージニアは広義の南部に属するけれど、ディープサウスではなく、その周辺州という位置づけでしょうか。でも映画の舞台になっている、海岸から離れた山間部には南部の文化が色濃く残っているようです。
アメリカ南部というのは色んな定義があるようで、バージニアは広義の南部に属するけれど、ディープサウスではなく、その周辺州という位置づけでしょうか。でも映画の舞台になっている、海岸から離れた山間部には南部の文化が色濃く残っているようです。
真紅さん、TB・コメントありがとうございました。
スッポンポンになったマギーを見て
思わず出た・・・「何する気だ。」。
何する気だ、という発想に落ち着く
あんなオクテ男も今じゃ「絶滅種」。
あれもT・ハーディが演るからいいのですがね。
(^ ^)
ラスト、大いにユルユルしちゃいましたが
雰囲気バッチリの良作でしたね。
>アメリカという国の、底
知れぬ「物語層」の厚さを感じる。
そうなんです!それなんですよ~
私はソレに惹かれ続けて今があるんです。
ところで
インド映画「ランショー」
観逃しちゃいました~
かなり高評価だったようですね。
そうですか~とぼとぼ~(残念)
スッポンポンになったマギーを見て
思わず出た・・・「何する気だ。」。
何する気だ、という発想に落ち着く
あんなオクテ男も今じゃ「絶滅種」。
あれもT・ハーディが演るからいいのですがね。
(^ ^)
ラスト、大いにユルユルしちゃいましたが
雰囲気バッチリの良作でしたね。
>アメリカという国の、底
知れぬ「物語層」の厚さを感じる。
そうなんです!それなんですよ~
私はソレに惹かれ続けて今があるんです。
ところで
インド映画「ランショー」
観逃しちゃいました~
かなり高評価だったようですね。
そうですか~とぼとぼ~(残念)
訂正です。
「ランチョー」、でございました。(ぺこり)
「ランチョー」、でございました。(ぺこり)
雄さん、こんにちは♪ コメント&TBありがとうございます。
そうなんです、もう、トム・ハーディが素敵すぎて。。
今までは出演作品を観ても何とも思わなかったのですが、本作は色気全開でしたね。
アメリカって、東部、南部、中西部、西海岸と地域性も文化も様々で面白いです。
厳密に区分けされているわけでなく、本作の舞台のように中西部と南部のミックスのような雰囲気も面白かったですね。
背景を調べたくなる映画でした。
そうなんです、もう、トム・ハーディが素敵すぎて。。
今までは出演作品を観ても何とも思わなかったのですが、本作は色気全開でしたね。
アメリカって、東部、南部、中西部、西海岸と地域性も文化も様々で面白いです。
厳密に区分けされているわけでなく、本作の舞台のように中西部と南部のミックスのような雰囲気も面白かったですね。
背景を調べたくなる映画でした。
vivajijiさん、こんにちは! こちらこそコメント&TBありがとうございます。
何する気、、ってわかっとるやろ!!と思わずツッコミを入れてしまいました(笑)。
フォレストが入院した時、「俺たちが守る」って言うとマギーが「WE?」って言うところもよかった~。
俺たちじゃなくてアナタでしょ、という。。。
あ~、もうホント、観てから3日くらいフォレスト熱が出ていました。
やはり、腐ってもハリウッドですね。
アメリカ映画はやはり、懐が大きいと言うか、人材も題材も尽きませんね。
リメイクも多くなってきてますが、こういう映画を観るとホント、すごいな~って思いますね。
札幌では、もう終わってしまったのですね。。『きっと、うまくいく』。
私はとても面白く観ました。勧善懲悪ですけど、うまくできてるな~、と。
また機会があれば是非♪
私も、『ペーパーボーイ』なんとか間に合わせます!
何する気、、ってわかっとるやろ!!と思わずツッコミを入れてしまいました(笑)。
フォレストが入院した時、「俺たちが守る」って言うとマギーが「WE?」って言うところもよかった~。
俺たちじゃなくてアナタでしょ、という。。。
あ~、もうホント、観てから3日くらいフォレスト熱が出ていました。
やはり、腐ってもハリウッドですね。
アメリカ映画はやはり、懐が大きいと言うか、人材も題材も尽きませんね。
リメイクも多くなってきてますが、こういう映画を観るとホント、すごいな~って思いますね。
札幌では、もう終わってしまったのですね。。『きっと、うまくいく』。
私はとても面白く観ました。勧善懲悪ですけど、うまくできてるな~、と。
また機会があれば是非♪
私も、『ペーパーボーイ』なんとか間に合わせます!