落ちる ~『さよなら渓谷』
さよなら渓谷

 静かな渓谷の町で暮らす尾崎(大西信満)とかなこ(真木よう子)夫婦。一見、
仲睦まじいふたりにはしかし、昏い秘密があった。

 吉田修一の同名小説(未読)の映画化。モスクワ映画祭審査員特別賞受賞
話題の作品。

 絶賛されているだけに、原作者と監督の 「美意識」 が反映された佳作である
とは思う。しかし、残念ながら私の心にはさほど響かなかった。多分、本作は男性
に支持されるタイプの映画
なのではないかと思う。実際、シアターは男性の 「お
ひとりさま」 多し
。真木よう子のファンなのだろうか。

さよなら渓谷2

 人間というのは一筋縄では語れない、不可解な存在だと思う。皆がみな、「幸
せ」
 になるために生きているものでもない。むしろ 「不幸せ」 になろうと、自分
を罰しながら生きているつもりの人間
もいる。人間がそうなのだから、夫婦だって
似たようなもの
。100組の夫婦がいれば、100通りの関係がある。尾崎とかなこも、
渡辺(大森南朋)とその妻(鶴田真由)も、「ひと組の夫婦」に過ぎない。

 若かりし頃の、身を滅ぼすほどの激情も、時がゆけば穏やかに凪ぐ。どれほど
過去に苛まれようと、空腹を覚えればそれを満たし、まぐわうことで誤魔化すこと
もできるのが人間というもの
。人生の全てを賭けていた(つもり)のものを奪われ
ても、命まで失くしてしまうわけでもない。それを 「悲しい性(さが)」 と捉えるか、
「だから人生は素晴らしい」 と捉えるのか。

 吊り橋から飛び降りてしまえば、全てが終わる、しかし敢えて留まることを選
び、苦しみ続けることを自らに課す人間もいる。死、よりも辛い 「罰」もし、あ
の日に戻れるのなら--
「あなた」 はどうしますか?

さよなら渓谷3

 主演の三人はいづれも力演。彼らの脇を固めるのも、邦画では 「お馴染み」 の
役者たち
なので、安心して観ていられる。特に短い出演時間ながら、新井浩文
相変わらず強烈な印象を残してくれる。そして、なんと言ってもすごいのは真木よう
子の 「胸」
 ですね。。。「もち」 みたい。つきたての。
 とまれ、文字通りの 「体当たり」 演技全身全霊を役に捧げた彼女には、最大
級の賛辞
を贈りたい。

 ( 『さよなら渓谷』 監督・共同脚本:大森立嗣/2013・日本/
        主演:真木よう子、大西信満、大森南朋、鈴木杏、井浦新、新井浩文
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テーマ:邦画 - ジャンル:映画

【2013/07/09 08:24】 | 映画 | トラックバック(19) | コメント(11)
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コメント
こちらではまだ公開されていませんが
観に行く予定ではあります。
原作感想拙記事お持ちしました。

真紅さん記事拝読しまして
「やはりなぁ~」(^ ^)
懸念ぶち当たる可能性大。(再^^)

この原作からも前作「悪人」からも立ち上る
「オトコ視点の優位さ」にワタクシはどうも
ザワザワしてしょうがないの。
ただ著者の巧みな語り口に最後まで
もっていかれる。^^;

見たいようにしか見ない
感じたいようにしか感じない
辛さにうごめいている自分さえ
容認し抱きしめてしまう。
人間ってほんとやっかいだよ。(笑)
【2013/07/09 09:19】 URL | vivajiji #kzLu3bv6[ 編集]
vivajijiさん、こちらにもコメント&TBありがとうございます。
実は、記事アップは後回しにして(挙げてない映画がたまってるので)、
姐さんチに「観ましたよ~」とコメント行こうかな? とも思ったのですが。
さっさとアップしてしまうことにしました。

原作は未読なんですけれども。。
>「オトコ視点の優位さ」

う~ん、これね。。
女性でこの物語に共感できる人って、少ないと思うんですよね。
真木よう子さんの熱演は買うところなんですが、彼女に感情移入するにはちょっとヘビーに過ぎます。

幸せになったって、いいのにね。
もっと自分を甘やかしてもいいのに。
主人公たちに、そう言いたかったです。
【2013/07/09 20:27】 URL | 真紅 #V5.g6cOI[ 編集]
こんばんは。
これは映画を観た後に、原作を読んでみました。

かなこは被害者なので、実際にその立場にならないと題材的には確かに女性がすんなり賛成できるとは言い難いのかもしれません。そういう立場の方たちが声を振り絞ったことが結集した役のように感じました。
何年経っても許せないものは許せないというかね・・・。

原作も映画もですが、3人の視点のつながりが何となくぎくしゃくしている感じはしました。
不協和音とまではいかないですが、そのぎこちなさは、同じく真木よう子さん×渓谷の『ゆれる』を思い出させます。
【2013/07/09 23:35】 URL | rose_chocolat #ZBcm6ONk[ 編集]
rose_chocolatさん、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。
原作、私も読んでみたいと思いました。
吉田修一さんは、2、3冊しか読んでいないのですが『横道世之介』が大好きです。

この記事のタイトル「落ちる」とつけたのですが(「堕ちる」と迷いながら)、実は『ゆれる』が念頭にありました。
あの映画も兄弟(男二人)と女性を巡る物語でしたね。
女性はどちらも真木よう子さん。渓谷に吊り橋と、男性一人の表情で断ち切られるラストシーン、など、類似点がたくさんありますね。
私の中で『ゆれる』はかなり大きな(印象深い)作品なのですが、好きな映画か?と言われると好きではないです。
そんなところも両作品は似ているな、と思います。
【2013/07/10 15:42】 URL | 真紅 #V5.g6cOI[ 編集]
真紅さん、こんばんは。
きょう、観てまいりました。
力作。
真木よう子はじめ役者もまぁよかった。
ほぼ原作に則ったつくり・・・
で~も、なんだかなぁ~
モヤモヤ~ってしてます、いま。(笑)
【2013/07/26 18:46】 URL | vivajiji #kzLu3bv6[ 編集]
vivajijiさん、こんにちは! コメント&TBありがとうございます。
ご覧になりましたね^^

この映画観て、「スッキリ」できる人ってなかなかいない気がします。
特に女性は・・・。
おっしゃるように力作ではありますが、なんとも評価し難い映画だと思います。
まぁ、評価は評論家の方々にお任せするとして。
私たちは感じたいように感じ、観たいように観ましょうか。
後ほど伺います。
【2013/07/27 11:24】 URL | 真紅 #V5.g6cOI[ 編集]
お邪魔します~~
そういえば、この年、真木さん、
父になる・・にも出演していたんだよね。
確かにこの作品の彼女体当たりで、評価は
するけど、感情移入は難しいよね。
そもそも、あの過去は、女性には辛すぎてね、
痛々しかったよ。
それにしても病院シーン、痩せていてビックリ。
レンタル屋で、隣に吉田作品の世之介があったんだけどそちらにしておけばよかったよ・・・・・笑
【2014/05/01 18:08】 URL | みみこ #mQop/nM.[ 編集]
みみこさん、おはようございます~。コメント&TBありがとうございます。
この映画かなり評価されて、真木さん主演女優賞とかたくさん獲ってましたね。
彼女の熱演は素晴らしいのですが、題材が・・・。
なかなか難しい作品ですよね。
『世之介』みみこさんまだ観てなかったっけ??
それは是非ぜひ~♪
あれは本当に大好きな映画です。原作も好きだけど。。
そういえばどちらも吉田さんなんだね。すんごい両極端^^;
【2014/05/02 10:33】 URL | 真紅 #V5.g6cOI[ 編集]
真紅さん、こんにちは^^
これ、すっきりしないよね・・・確かに・・・。

なんかさー、最後に、もう無理だろうこの夫婦って思っていた、大森夫婦が、あんなにアッサリ、、っていうのが、途中は丁寧に作っている割に、すごく安易に感じて残念だったな。

おっぱいだけど、餅っぽいよね。
でも、思ったより、一杯見せてはいなかったよね?
あんなに細いのに、胸は凄くて、ほーんとに羨ましいわ。
最強なバディー
【2014/10/15 12:50】 URL | latifa #SFo5/nok[ 編集]
latifaさん、こんばんは~。コメント&TBありがとうございます。
この映画、すっかりlatifaさんとはお話したものと勘違いしていたわ。。
そうそう、これ、もやもや映画。
私も、大森夫妻は「???」だったなぁ、、特に奥さんの言動が。
国内外で受賞した映画だけど、マイベストには入れなかったんだ。
好きな映画じゃないから・・・。

真木さん、そう、胸凄いんだけど、ああいう体型の人って服がないだろうな、と思う。
最近の服ってすごい細身じゃない? あれだけ胸があったら、シャツとかサイズがないんじゃない? 特注?
余計なお世話か(笑)。
でも私、個人的には胸は大きくなくていいんだ。子ども用のお茶碗くらいあればいいよ。
【2014/10/15 22:07】 URL | 真紅 #V5.g6cOI[ 編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2014/10/16 23:13】 | #[ 編集]
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