過去への旅~『ザ・マスター』
ザ・マスター







 THE MASTER


 第二次大戦水兵として従軍していたフレディ(ホアキン・フェニックス)は、
退役後もアルコール依存から抜け出せずにいた。職を転々としながら放浪して
いた彼は、密航した船中で新興宗教団体 「ザ・コーズ」 の 「マスター」
ンカスター(フィリップ・シーモア・ホフマン)
と出会う。

 ヴェネチア映画祭銀獅子賞男優賞を受賞した、ポール・トーマス・アンダ
ーソン(PTA)待望の新作
。いやはや、凄いものを観てしまった・・・。ホアキン・
フェニックスの 「狂犬」 ぶり
と、フィリップ・シーモア・ホフマンの 「美声」 だ
けでも一見の価値あり。二人のシーンは全て 「ガチンコ相撲」 で、手に汗握
る。ホアキンって、こんなに凄い俳優だったんだ・・・。

 しかしこの作品は、賛否両論、毀誉褒貶あるのもむべなるかな、という感じ。
観終わって、カタルシスも明確なメッセージも感じられず、当惑される方もいら
っしゃるだろう。個人的には文句なしで 「熱烈支持」 させていただくが、「偉
大なる失敗作」
 だと言えなくもない。映画好きの方々には、是非ご自身の目
で、判別式を立てていただきたい。

ザ・マスター2

 結局この映画は、マスター(教祖)フレディとの 「愛憎の物語」 なのだろ
うか? 彼らの間にあったのは疑似的な父子関係であり、マスターがフレディ
に施す 「治療」 の過程は、行為を伴わないセ●クスそのものに見える(「ま
ばたきするな」
)。魂の永遠を信じ、「来世で会おう」 という言葉とともに別れ
る二人は、いわゆる 「ソウルメイト」 なのだろうか。

 PTAは新興宗教を断罪するわけではない。そこに描かれるのは、過剰にし
か生きられない、「何か」 にすがらねば生きられない人々
だ。その 「何か」 
が、フレディにとってはアルコールであり、教祖であり、ドリス・デイの幻影
あった。

 映像はあくまで美しく、クラシックで格調高い。青い海に残る船跡が、目に
焼き付いて離れない。PTAのこだわり、タランティーノやスピルバーグの映画
にも通じる 「しつこさ」 が、スクリーンからガンガン伝わって来て痺れる。そ
れは、映画のためならどこまでも 「残酷」 になれる、ということ。

ザ・マスター3

 謎の多い映画でもある。 「砂の女」 を抱いて眠るフレディ。全ては彼が観た
だったのか、それとも彼は母なる 「海」 に抱かれ、子宮に還ってゆくのか、
生まれ変わるために

 それにしても 「中国行きのスロー・ボート」 である。『マグノリア』 の空から
降ってくるカエル
といい、PTAと村上春樹って、つくづくシンクロしてると思う。春
樹さんも、この映画どこかでご覧になったかな? 気に入って下さると、うれしい
のだけれど。

 ( 『ザ・マスター』 監督・製作・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
     主演:ホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン/2012・USA)
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コメント
真紅さん、

ぼくも昨日この作品をみてきました。確かに、予想とは違ってカタルシスを感じることのない作品でした。それでもPTAらしい、濃い映画です。熱烈支持いたします。
[2013/03/31 19:21] URL | Ken-U #- [ 編集 ]
Ken-Uさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
お久しぶりですね。

おお~、「熱烈支持」、Ken-Uさんと私とで2票ですね♪
PTAのこの「濃厚さ」は、一体どこからやってくるのか?
これからも、目が離せない監督です。
[2013/03/31 21:47] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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