輪廻する六重奏~『クラウドアトラス』

CLOUD ATLAS
世紀をまたぎ、国も性別も超えて転生する魂たち。6つの時代の異なる場所
で起こる出来事を並行して描きつつ、ひとつの命題に光を当てる壮大な物語。
「何故、人は同じ過ちを何度も何度も繰り返し、それでも命を繋いでゆくのか」
この作品、ウォシャウスキー姉弟とトム・ティクヴァが組み、3人で共同監督
したというところに興味を持った(トム・ティクヴァは音楽も担当)。豪華キャスト
は特殊メイクを施され、一人が何役もこなしているのには驚き。エンドロールで
配役の 「種明かし」 がされるまで、気付かなかった役もあるほど。元祖 「ヒ
ュー様」 ことラブコメの帝王ヒュー・グラントが、真面目な役(笑)を演じている
のも観どころのひとつ。上映時間はほぼ3時間、確かに長い映画ではあるが、
決して観て損はない。

私が一番惹かれたのは、1936年、「クラウドアトラス六重奏」を生み出した
作曲家志望の男、フロビシャー(ベン・ウィショー)の物語。ベン・ウィショーっ
て、なんとも言えない魅力のある俳優さんですね。。
I believe there is a another world waiting for us,
A better world. And I'll be waiting for you there.
どこかによりよい世界があって、僕らを待っていると信じている
そこで君を待っているよ
そして一番のサプライズは、アジア代表ペ・ドゥナが、「最重要」と言っても
いいほどの役どころだったこと。予告編やポスターでは、特に大きな扱いで
はないので、これは嬉しい驚きだった。
クローン人間ソンミ(ペ・ドゥナ)は、そのやわらかく透明な声で繰り返す。
「我々の命は、我々自身のものではない」 と。韻を踏んだ美しいフレーズは
耳に心地よく、頭の中にすぅ・・・っと入ってくる。
Our lives are not our own. From womb to tomb,
we are bound to others.
Past and present. And by each crime and every kindness,
we birth our future.
私たちの命は 私たち自身のものではない
子宮から墓まで 私たちは誰かとつながる
過去と現在。そして全ての罪と思いやりが、私たちの未来を産む
Fear, belief, love phenomena that determined
the course of our lives.
These forces begin long before we are born and continue
after we perish.
恐怖、信念、愛の現象--私たちの人生を決定づける出来事
それらは私たちが生まれる前に始まっていて、死んだ後も続いてゆく

最近の私は、輪廻なんてない、前世も来世も関係ない、死んだら終わり、
「無」だ。と、思い込もうとしていた。もう、この辛い人生を繰り返したくない、と。
でも、この映画を観て・・・。人は何度も何度も過ちを繰り返しながら、生まれ
変わって巡り逢う存在なのかなぁ、とまた思い始めている。死は扉に過ぎず、
扉を開けた新しい世界で 「あの人」 が待っている・・・。愛はずっと続くんだ、
と。
Yours eternally,
( 『クラウドアトラス』 監督・製作・脚本:ラナ&アンディ・ウォシャウスキー、
トム・ティクヴァ/2012・独、米、香港、シンガポール/主演:トム・ハンクス、
ハル・ベリー、ジム・スタージェス、ペ・ドゥナ、ベン・ウィショー、ヒュー・グラント)
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trackback
いくつもの時代の話が並行して描かれ、しかも、同じ俳優がそれぞれの時代時代において、別の役を演じているという、ややこしさ…。
2013-03-27 08:42 :
或る日の出来事
【=18 うち今年の試写会2】 昨日は台風並、いや台風以上の風が吹きまくっていた、春一番とかがこんな暴風になるなんて自分には記憶が無いのだけど・・・
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2013-03-27 09:45 :
労組書記長(←元)社労士 ビール片手にうろうろと〜
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2013-03-27 11:21 :
佐藤秀の徒然幻視録
クラウド アトラス@ワーナーブラザース映画試写室
2013-03-27 11:24 :
あーうぃ だにぇっと
たしかウォシャウスキー兄弟監督だと記憶していたんですけど、いつの間に姉弟監督に変わってしまったんでしょうか?劇場で流されてる宣伝&解説映像を観てアレ???夫婦監督じゃ ...
2013-03-27 11:27 :
カノンな日々
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(以下ネタバレも含めての感想・・・)
19世紀から文明崩壊後の24世紀にかかる六つの時代と場所を同時並
2013-03-27 15:22 :
世事熟視〜コソダチP
【出演】
トム・ハンクス
ハル・ベリー
ジム・ブロードベント
【ストーリー】
主人公の男を軸として、波乱に満ちた航海物語、幻の名曲の誕生秘話、原子力発電所の陰謀、人殺し...
2013-03-27 18:25 :
西京極 紫の館
Cloud Atlas [CD]6つの物語がシンクロする壮大な物語「クラウド アトラス」。今まで見たことがないような構成にびっくり。ウォシャウスキーが兄弟ではなく“姉弟”になったことに驚い ...
2013-03-27 19:36 :
映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
この作品は6つの時代を生き続ける人間の時空を超えた魂である。「マトリックス」「スピード・レーサー」などのラナ&アンディウォシャウスキー姉弟と、「ラン・ローラ・ラン」のト...
2013-03-27 20:50 :
パピとママ映画のblog
オープニング早々、鑑賞者は混乱に陥る。
時代バラバラの物語が次々とキックオフされ、翻弄される。
原作本が「統合されないバラバラのプロット」的に批判されてた記事を見ていたこ...
2013-03-27 22:54 :
日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜
☆マトリックスのスタッフが作ったことといい、なんか、「空気人形」のパクりみたいな韓国人アンドロイドみたいのが出てきていたので、あまりそそらなかったのだが、観に行った。
2013-03-28 00:30 :
『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭
ジョウ・シュンが出てるなんて知らなかったよ。
2013-03-28 00:32 :
だらだら無気力ブログ!
ランキングクリックしてね ←please click
3時間の大作というので覚悟して観に行ったけど、、、長い
うーむ これは好き嫌い分かれるな〜
6つの時代が時系列関係なく出て来て...
2013-03-28 00:33 :
我想一個人映画美的女人blog
原題: CLOUD ATLAS
監督: ラナ・ウォシャウスキー 、トム・ティクヴァ 、アンディ・ウォシャウスキー
出演: トム・ハンクス 、ハル・ベリー 、ジム・ブロードベント 、ヒューゴ・ウ...
2013-03-28 06:33 :
Nice One!! @goo
良くも悪くも人は他者とつながっている今の行動が未来を作る公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/cloudatlas原作: クラウド・アトラス (デイヴィッド・ミッチェル
2013-03-28 20:27 :
風に吹かれて
☆☆☆☆- (10段階評価で 8)
3月16日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター5にて 13:25の回を鑑賞。
2013-03-28 20:44 :
みはいる・BのB
登場人物のひとり、若き作曲家ロバート・フロビシャーが作曲するのが「クラウド アト
2013-03-30 22:31 :
はらやんの映画徒然草
2013年3月23日(土) 16:05~ チネ9 料金:1000円(チネチッタデー) パンフレット:未確認 時空を超えた「バベル」 『クラウド アトラス』公式サイト 「スピード・レーサー」(俺...
2013-04-01 22:47 :
ダイターンクラッシュ!!
17日のことですが、映画「クラウド アトラス」を鑑賞しました。
1849年 航海の物語 1936年 高名な作曲家と弟子の物語 1973年 原子力発電所の陰謀
2012年 編集者の奇妙な冒険 2144年 クロ
2013-04-02 23:19 :
笑う社会人の生活
1849年、太平洋諸島。若き弁護士に治療を施すドクター・ヘンリー・グース(トム・ハンクス)だったが、その目は邪悪な光をたたえていた。1973年のサンフランシスコ。原子力発電所の従
2013-04-04 23:40 :
beatitude
SFと「輪廻転生」というテーマを上手くまとめあげた作品だと思います。一見、複雑で脈絡なく進んで行くように見えてしまう物語も6つの時代を巧みに繋ぎ合わせられており、その繋が
2013-07-11 09:26 :
いやいやえん
CLOUD ATLAS
2012年
アメリカ
172分
ドラマ/アドベンチャー/SF
PG12
劇場公開(2013/03/15)
監督:
ラナ・ウォシャウスキー
トム・ティクヴァ
アンディ・ウォシャウスキー
製作:...
2013-07-18 02:39 :
銀幕大帝α
監督:ラナ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキー
出演:
トム・ハンクス
(ドクター・ヘンリー・グース/安ホテルの支配人/アイザック・サックス
2013-09-02 22:12 :
タケヤと愉快な仲間達
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年ドイツ=アメリカ=香港=シンガポール合作映画 監督アンディ・ウォシャウスキー、ラナ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ
ネタバレあり
2014-01-10 10:58 :
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
コメントの投稿
真紅さま
こんばんは!この作品面白そうですね
見て見たくなりました
ベン・ウィショーは魅力的な俳優ですよね
“パフューム”の方へTB させて戴きました
人間は愚かで いつまでたっても未熟…
もちろん私のことですが…^^;
私も色々辛いと思う経験をしてきましたが
何とか通り過ぎて来ました
通り過ぎてしまえば 何かしら得るところがあったように思えます
“もっとああすれば…もっとこうであれば”と考えて結論づけたことをやり直すには人生は短すぎます
マエストロ・カラヤンが「自分のこの溢れる情熱を必ずや来世で燃やし続ける」というようなことを言った…と耳にしたことがあります
素晴らしい才能と燃えたぎる情熱を燃焼しきるには人生は短か過ぎたのでしょう
この後悔に満ちた魂に少しでも安らぎを与えることが出来るのだとしたら
それは来世でもう一度ステップアップのチャンスをつかむことなのかもしれませんね
もう一度縁ある人と巡り会って…
こんばんは!この作品面白そうですね
見て見たくなりました
ベン・ウィショーは魅力的な俳優ですよね
“パフューム”の方へTB させて戴きました
人間は愚かで いつまでたっても未熟…
もちろん私のことですが…^^;
私も色々辛いと思う経験をしてきましたが
何とか通り過ぎて来ました
通り過ぎてしまえば 何かしら得るところがあったように思えます
“もっとああすれば…もっとこうであれば”と考えて結論づけたことをやり直すには人生は短すぎます
マエストロ・カラヤンが「自分のこの溢れる情熱を必ずや来世で燃やし続ける」というようなことを言った…と耳にしたことがあります
素晴らしい才能と燃えたぎる情熱を燃焼しきるには人生は短か過ぎたのでしょう
この後悔に満ちた魂に少しでも安らぎを与えることが出来るのだとしたら
それは来世でもう一度ステップアップのチャンスをつかむことなのかもしれませんね
もう一度縁ある人と巡り会って…
2013-03-29 00:27 :
Maria URL :
編集
Mariaさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
『パヒューム』にもTBありがとうございました。
この映画、あまり評判はよくないのですがポイントを絞って観ると案外楽しめる作品だと思います。
しかし少し長いですので、お時間厳しいようでしたらDVDででもOKだと思いますよ。
私も、同じ過ちを繰り返し、いつまでたっても後悔ばかりの毎日です。
しかし思うに、人生が辛いのは、自分と他人を比べるからなのでしょうね・・・。
カラヤンが、そんなことをおっしゃっていたのですね。
彼も輪廻転生を信じていたのでしょうか。
確かに、人生は短いです。しかし今生は必ず次の人生に繋がると考えれば、死ぬ瞬間まで人は成長できるのかもしれません。
来世では、もう間違いたくないです。
神様に「次は絶対、間違いません」と誓ってから生まれ変わりたいな~。
『パヒューム』にもTBありがとうございました。
この映画、あまり評判はよくないのですがポイントを絞って観ると案外楽しめる作品だと思います。
しかし少し長いですので、お時間厳しいようでしたらDVDででもOKだと思いますよ。
私も、同じ過ちを繰り返し、いつまでたっても後悔ばかりの毎日です。
しかし思うに、人生が辛いのは、自分と他人を比べるからなのでしょうね・・・。
カラヤンが、そんなことをおっしゃっていたのですね。
彼も輪廻転生を信じていたのでしょうか。
確かに、人生は短いです。しかし今生は必ず次の人生に繋がると考えれば、死ぬ瞬間まで人は成長できるのかもしれません。
来世では、もう間違いたくないです。
神様に「次は絶対、間違いません」と誓ってから生まれ変わりたいな~。
こちらにも。
本当、ベン・ウィショーって、あそこだけかと思ったのに…。まさか、あの人が!この人まで!なんて、最後ですごいビックリしましたね。
どれも特殊メイクでやっている、というところが良かったですよね。どこまでがCGなのか、特殊メイクなのかは分からないんですが。男女の性別も年齢差も、顔つきもまるで違う人物に化けちゃって…。
でも一番ビックリしたのは、ウォシャウスキー兄弟が姉弟になったことでしたね(笑)あそこはCG使ってませんw
真紅さんがピックアップされた、あの陶器のお皿が部屋に飛び散るシーン、思わずトム・ティクヴァ『香水』思い出しますね。
私はもっとトム・ティクヴァっぽさが堪能したかった感じです。
本当、ベン・ウィショーって、あそこだけかと思ったのに…。まさか、あの人が!この人まで!なんて、最後ですごいビックリしましたね。
どれも特殊メイクでやっている、というところが良かったですよね。どこまでがCGなのか、特殊メイクなのかは分からないんですが。男女の性別も年齢差も、顔つきもまるで違う人物に化けちゃって…。
でも一番ビックリしたのは、ウォシャウスキー兄弟が姉弟になったことでしたね(笑)あそこはCG使ってませんw
真紅さんがピックアップされた、あの陶器のお皿が部屋に飛び散るシーン、思わずトム・ティクヴァ『香水』思い出しますね。
私はもっとトム・ティクヴァっぽさが堪能したかった感じです。
とらねこさん、こちらにもありがとうございます。
この映画長過ぎるせいか、観てる人少ないですよね?
私も、実は途中寝てしまってました(汗)。
ウォシャウスキーさん、性別は変わっても映画製作への情熱は変わらないようですね。
キャスト皆さん七変化でよかったのですが、トム・ハンクスだけ何やってもトム・ハンクスだったような(笑)。
ベン・ウィショー、好きだわ。。ちょっと癖がある役を、これからもバンバン演じて欲しいですね。
私も、トム・テクヴァっていうことで観に行ったようなものかも?です。
彼には、これからも彼にしか撮れない!っていう映画をみせて欲しいものです。
私はね~、『ヘヴン』が大好きなんですよね。。
この映画長過ぎるせいか、観てる人少ないですよね?
私も、実は途中寝てしまってました(汗)。
ウォシャウスキーさん、性別は変わっても映画製作への情熱は変わらないようですね。
キャスト皆さん七変化でよかったのですが、トム・ハンクスだけ何やってもトム・ハンクスだったような(笑)。
ベン・ウィショー、好きだわ。。ちょっと癖がある役を、これからもバンバン演じて欲しいですね。
私も、トム・テクヴァっていうことで観に行ったようなものかも?です。
彼には、これからも彼にしか撮れない!っていう映画をみせて欲しいものです。
私はね~、『ヘヴン』が大好きなんですよね。。