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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

素朴な人生~『桃(タオ)さんのしあわせ』

桃さんのしあわせ




 桃姐

 A SIMPLE LIFE


 60年間、同じ家庭で住み込みの家政婦として働く春桃(タオさん:ディニー・
イップ)
。家族の多くは外国へ移住し、香港に残るのは映画プロデューサーの
ロジャー(アンディ・ラウ)
だけ。ある日、桃さんは脳卒中で倒れてしまう。

 本作のプロデューサー、ロジャー・リーの実体験に基づく物語。ヴェネチア国
際映画祭
においてディニー・イップが主演女優賞を受賞、中華圏の国々で大ヒ
ット
したという話題作。シアターは、立ち見が出る盛況ぶり。素晴らしい作品
した。これは 「やさしさについての映画」 です。必見

桃さんのしあわせ2

 スクリーンに向かいながら、終わって欲しくない、ずっとずっとこの映画を観
続けていたい
と願った。この映画が終わるのは、きっと桃さんとロジャーが「永
遠のお別れ」
 をする時なのだろう、とわかってしまったから。

 なぜか懐かしい気分だった。桃さんにも、ロジャーにも、どこかで会ったこと
があるような
、彼らを知っているような気持ちになった。それはきっと、彼らの
存在が 「やさしさ」 そのものであるから。それはかつて私がもらった、祖母
や母や、叔父や叔母からのやさしさ
なのだろう。

 各国の映画賞が証明するまでもなく、主演二人の演技が素晴らしい。いや、
演技を超えた、二人の存在そのもの、が。この映画の中で、ディニー・イップは
桃さんの、アンディ・ラウはロジャーの人生を
、間違いなく生きている。技術や
理屈ではなく、ただ心が満たされたと感じる映画がある。老いや死を描いた、
地味と言えばあまりにも地味な映画なのに、暗さや悲惨さは微塵もない。肉体
は消えても、桃さんの魂はずっとロジャーを見守っていると、ラストシーンは教
えてくれる。

桃さんのしあわせ3

 桃さんとロジャー二人のシーンは全て名シーン、と言っても過言ではない。
あ・うんの呼吸の食卓、プレミア上映会で手をつなぐ二人、老人ホームでロジャ
ーを待っている桃さんの表情
。 「僕と桃さんは運がいい」 とロジャーは言う。
伴侶を持たない二人が、親子以上の絆で結ばれてゆく様は、人間の善性を信
じさせてくれる。この映画を観られてよかった。

□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ 

 サモ・ハンアンソニー・ウォンの顔が観られるのもうれしい。キョン(チャップ
マン・トー
)が、歯医者さんだったのには笑った。娯楽映画とは言えないけれど、
久しぶりに、しみじみ香港映画観たな~、って気がしたのだった。

 ( 『桃(タオ)さんのしあわせ』 監督・製作:許鞍華アン・ホイ
        主演:劉徳華アンディ・ラウ、葉嫻ディニー・イップ/2011・香港)
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2012-11-06 : 映画 : コメント : 6 : トラックバック : 12
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桃(タオ)さんのしあわせ(桃姐)
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【桃姐/A SIMPLE LIFE】 2012/10/13公開 中国/香港 119分監督:アン・ホイ出演:アンディ・ラウ、ディニー・イップ、チン・ハイルー、ワン・フーリー、チョン・プイ、アンソニー・ウォン、サ...
2013-05-20 12:50 : ★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★
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なんか、すごく良かったです・・・。久しぶりの5つ★
2013-06-12 16:03 : ポコアポコヤ 映画倉庫
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2013-09-02 07:00 : soramove
映画評「桃(タオ)さんのしあわせ」
☆☆☆☆(8点/10点満点中) 2011年香港映画 監督アン・ホイ ネタバレあり
2013-09-11 13:29 : プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
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こんばんは。
きょう、雪虫が飛んでいるのを見ました。
この虫飛ぶとそろそろ雪降るよ~のサイン。
道滑るので映画館へ行くのがおっくうになる季節が
もうすぐそこに来てます、あ~あ。(^ ^)

本作こちらではいつものキノで
12月中旬からです。
楽しみにしております。
2012-11-06 17:42 : vivajiji URL : 編集
立ち見でしたか!(ビックリ)
真紅さん、こんばんは。
派手さや過度な演出はない作品ですが心に染み入る優しさあふれる作品でしたね。
ギャラなしで出演したアンディ・ラウは本作のプロデューサーでもありますが
彼がプロデュースする作品はかなりの確率で良作だと感じています。

桃姐の作る料理はどれも美味しそうでしたね。
牛タン、私も食べたかったわー。
毎日彼女のお料理を食べることができるロジャーは幸せだと思ってしまいました。
味だけでなく体のことも考えてくれていますしね。
主演の2人、他の作品でも親子役などをやっているようですが。実年齢はひとまわりちょっとしか
違わないのですよねぇ。
2012-11-06 19:14 : sabunori URL : 編集
Re: タイトルなし
vivajijiさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
お返事遅くなりまして申し訳ありません。
いよいよ冬が始まりますね。。

この作品、地味ですが私は素晴らしいと思いました。
今年のベスト作の一本だと思います。

シアターキノ、、例の、、仏頂面の館主がいらっしゃるミニシアターですね^^
雪が降ろうが槍が降ろうが館主の愛想が悪かろうが、姐さんはきっと映画館通いされるでしょうから~。。
是非ご覧下さいませ。感想、楽しみにしておりますね♪ 
あ、雪道はくれぐれもお気をつけて!
2012-11-08 07:27 : 真紅 URL : 編集
Re: 立ち見でしたか!(ビックリ)
sabunoriさん、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます。
お返事が遅くなってごめんなさいね~。

ガーデンシネマに上映30分前に着いたのですが、整理券番号が89番でビックリしました。
それでも最前列にしっかり座った私(笑)。

アンディ、ギャラなしってどんだけ男前なんだか。。。
ここ数年、アンディ主演作は日本でもたくさん観られましたよね~。
それに比べてトニーの映画は、、全部、王家衛のせい?(泣笑)
しかし新作のトレイラーがエラいことカッコよかったので、許しますが。。

「また手術したいの?!」とか言いながら牛タンを調理するタオさんがね~。
あの台所で立ったままご飯食べる姿とか、、ホント、料理は愛情ですね。
ディニー・イップの老けっぷりは見事でした。

ああ~、もう一回観てもいいと思うくらい、私は好きな作品でしたわ。。
2012-11-08 07:28 : 真紅 URL : 編集
はじめまして、 とても素敵な映画ですね。

桃さんが家族同然であると云う描写は随所に見受けられ、リハビリを受けている間にも、アメリカから若旦那のお母さんが見舞いに来たりします。
 桃さんが完治して施設を出られたら、もう家政婦に戻らず暮らせるように一人暮らし用の部屋を用意してやれと若旦那に指示したりします。若旦那もそのつもりでいたようで、彼らが賃貸しているアパートの中で(資産家だなあ)、家賃を滞納している悪質な賃借人を立ち退かせて、桃さん用にリフォームしてあげようとする。

 麗しいエピソードなのでしょうが、ちょっとこれは如何なものか。
 そりゃあ、大奥様にとっても桃さんは家族同然であるのでしょう。出来るだけの便宜を図ってあげたいと考えても悪いことではない。
 でも観ている側としては、そこまで思いやる動機がいまいち実感できませんでした。資産家の一族が全員そろって人情家であっても構わないとは思いマスが……。
 逆に、家賃を滞納して追い出される人の方が可哀想に思えてしまいました(笑)

 これは「六〇年」と云う積み重ねた年月が観ている側に伝わりづらいからなのでしょうか。本作には回想シーンなどと云うものが一切ありませんし。
 一応、アルバムの中の古い写真だとか、若旦那の旧友達が少年時代の桃さんとの思い出を語る場面もあるのですが、個人的にはそこまで感情移入できる演出には感じられませんでした。

 桃さんが施設で過ごす期間を表す為に、香港での新年の花火や、中秋節と、季節が移り変わるイベントの様子が挿入されるのが、ちょっと興味深かったです。
 そうやって介護施設も次第に慣れてくると「住めば都」になるのはイイが、やはり老人ばかりだと、せっかく知り合った仲間の中にも亡くなってしまったり、転院していなくなる人も出てくると云う描写が哀しい。施設とは、お迎えが来るのを待っているだけの場所のようにも感じられる。なんか嫌ですねえ。
 桃さんも施設から出られるようになる前に、病状悪化で再入院、そして手術となる。もはや医者も手の施しようがない。
 病院でカップ麺をすすりながらつきそう若旦那の介護が涙ぐましいですが、やがて臨終の時はやって来る。実話ベースだと容赦なしです。

 桃さん亡き後は、家政婦を雇うことなく、一人暮らしの若旦那。帰宅しても家の中は暗いままと云う描写が切ないです。
 淡々としたドラマ展開はそれなりに味わい深いですが、『海洋天堂』ほど胸に迫るような印象はではなかったのが惜しい。
 どちらかと云うと、劇中で描かれる「老い」と介護施設の方がリアルで忘れ難かったデス。
2013-09-20 20:13 : 浅野祐都 URL : 編集
浅野祐都さん、はじめまして。コメントありがとうございます。
この映画、私は大好きなんです。

どの映画もそうだと思いますが、観てどう感じるか、感じないかは人それぞれ・・・。
どんな感想があってもいいと思っています。
そして、映画を観て「どう思ったか、何を感じたか」を、言葉にできなくても別にいいとも思っています。
むしろ、簡単に感想など書けない、言葉にできない作品のほうが、心に長く残ったりするものではないでしょうか。

私にとっては、この映画はまさにそんな感じです(感想は書いてますが^^)
何故かはわからないのですが、思い出しただけでもう涙が出てくるんですよ・・・。
(私がただ「やさしさ」というものに飢えているだけかもしれませんが)

浅野さんのコメントを読んで、ああ、そうだったあそこはああいう場面だったなー、とか、思い出しました。
『海洋天堂』は残念ながら未見なのですが、この映画以上に胸に迫るのですね。
それはかなり危険ですね(笑)。

実際の介護ってもって生々しく残酷だと思うのですが、この映画は介護を描いたのではなく、「やさしさ」についての映画だと思うのです。
忘れ難い映画です。
2013-09-23 09:51 : 真紅 URL : 編集
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