選択肢のない人生~『かぞくのくに』
かぞくのくに

 1997年、東京在日朝鮮人二世リエ(安藤サクラ)は、両親とともに兄ソン
ホ(井浦新)
の帰りを待っていた。北朝鮮「帰国」した兄は、病気治療のため
25年ぶりに日本の土を踏むのだ・・・。

 自らの家族をテーマに、ドキュメンタリー作品を発表してきた映像作家、ヤン
・ヨンヒ監督
初のフィクション。テーマは変わらず、自らの家族。物理的に引き裂
かれ、「離散」状態にある家族の悲哀を静かに描きながら、「鎖国」状態にある
国で暮らすことの理不尽さ、バラバラになってしまった家族に対するどうしようも
ないもどかしさを、観るものに訴えかけてくる。

かぞくのくに2

 家族と再会しても、言葉少なで、感情を表に出そうとしないソンホ。監視係
(ヤン・イクチュン!)
に見張られながらも、日本のビールを味わい、同級生た
ちと束の間の時を過ごす。25年の年月は、ソンホから多くのものを奪い去っ
た。だからこそ、時折爆発寸前になる感情を抑えている彼の表情や、静かに、
ささやくように歌う『白いブランコ』 が胸に迫る。

 お前はこんなの持って いろんな国に行けよ

 あの国ではな どう生き延びるか それ以外は考えない 思考停止 楽だぞ

 でもお前は いろんなことを考えて 好きなように生きるんだ


 あの国も あなたも 大嫌い

 あなたの嫌いなあの国で あなたのお兄さんも 私も 生きていくのです

 死ぬまで



 主人公たちがつぶやく、重いセリフの数々。ズシリ、と胸に落ちてくる。

かぞくのくに3

 安藤サクラ、井浦新、そしてヤン・イクチュンがそれぞれに素晴らしい。い
つまでもいつまでも、兄を乗せて去ってゆく車に追いすがるリエ。生木が裂
かれるような痛み。慟哭


 兄の「遺言」を胸に、肩を怒らせてスーツケースを引くリエ。家族を描いた、
本当に小さな小さな映画。あまりにも低予算に感じられて、監督が気の毒
に思えるほどだった。いやだからこそ、こんなにもシンプル芯の強い作品
に成り得たのかもしれない。監督の前2作、ドキュメンタリー作品も観てみた
いと思う。

 君は憶えているかしら あの白いブランコ・・・

 ( 『かぞくのくに』 監督・脚本:ヤン・ヨンヒ/2012・日本/
      主演:安藤サクラ、井浦新、京野ことみ、宮崎美子、ヤン・イクチュン
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[2012/08/28 20:41] | 映画 | トラックバック(18) | コメント(2) |
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コメント
真紅さん、こんにちは。
この作品、台詞の数は少ないですけどその配置にセンスを感じさせます。とくに、脇のヤン・イクチュンに重い言葉を吐かせる。よかったです。
前2作もおススメです。まずは「ディア・ピョンヤン」からいかがでしょうか。当時いろいろいわれた 万景峰号ですが、それが北朝鮮の港に着くときの光景がいまだに忘れられません。本作の背景を垣間見ることもできますよ。
[2012/08/29 01:08] URL | Ken-U #- [ 編集 ]
Ken-Uさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
変わらず映画はご覧になっているのですね。うれしいです。
さて。そうなんです。この映画セリフそんなに多くない(てか非常に少ない)のですが、少数精鋭というか必要最低限で研ぎ澄まされてましたね。
だからとても心に重く響きました。私の下手な感想よりも、セリフをそのまま書き記して置きたいと思いました。
監督の前2作も、本作の公開記念に劇場でリバイバルされてたのですが、時間が厳しくて断念してます。
DVDになってるのかな、、前から気になる作品だったので、いつか是非観たいです。
その代わりにというか、今日原作『ディア・ピョンヤン/家族は離れたらアカンのや』っていう本をゲットしてきたので、まずは読んでみたいと思ってます。
[2012/08/29 21:20] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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