あの1月の朝を忘れない~『さよなら子供たち』

AU REVOIR LES ENFANTS
1944年、第二次大戦下のフランス。パリから遠く離れたカソリックの私立学
校で、寄宿生活を送る少年たち。ジュリアン(ガスパール・マネス)は、寡黙で
謎めいた雰囲気の転校生ボネ(ラファエル・フェジト)の秘密に気づく。
ヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞した、1987年のフランス映画。ルイ・マ
ル監督の自伝的作品と言われている。公開時、地元のミニシアターで母と観
た記憶がある。当時まだ学生だった私は、この映画の内容の半分も理解でき
ていなかったと思う。しかし、ずっと心に引っかかっていた作品を、実に20数年
ぶりに再見。そして、感動・・・。この映画、真紅の殿堂入りです。

戦場も強制収容所も出てこないけれど、これはルイ・マル監督渾身の反戦映画
だと思う。 製作・脚本も担当した彼の、祖国への、喪った友と恩師への、そして
平和への、ありったけの思いが込められている。しかし決して声高ではなく、少年
たちの日常と心情を穏やか過ぎるほど淡々と描きながら、人間の善悪の根源を、
観る者に問いかけてくる。
寒々とした森の風景、腕白少年たちのいたずらや悪ふざけ。煙草を吸う一方で、
寝小便が治らない思春期のジュリアン。告解、祈り、ゲシュタポの圧力と恐怖。
人として当たり前の行為が罪とされる、「戦争」という名の極悪。蔑まれ、差別さ
れる人々、その気高い魂。彼らを匿うものと密告するもの、富めるものと貧しい
もの。少年の瞳に映る、この世界の矛盾。それでも、全てを越えて芽生える友情、
その永遠。
厳しい時代にも、映画という娯楽が人々につかの間の笑いと平安をもたらして
いるのが嬉しい。人種も宗教も職業も、貧富の差も越えて、皆が肩を並べて観
入るチャップリンの上映会。映画って本当に素晴らしい。

主人公ジュリアンと、ボネ役の少年の表情が秀逸。幼い彼らから、監督は一
体、どうやってあの演技を引き出したのか。そして、彼らがほのかな憧れを抱く
ピアノ講師、この(柔らかさと鋭さが絶妙にブレンドされている)横顔は・・・。イレ
ーヌ・ジャコブじゃないか! なんと、彼女はこの作品が映画デビュー作だという。
知らなかった。なんて素敵なサプライズ。
物語はハッピーエンドを迎えることなく、時代の流れに抗えぬまま悲劇的に幕
を閉じる。「さよなら、子どもたち」 。高潔なままで去ってゆく校長先生、その声
を、姿を、耳と目に焼き付ける子どもたち。涙が溢れる。さようなら、さようなら、
さようなら・・・。
その素晴らしさを、言葉では表し難い静かなる名作。必見。
( 『さよなら子供たち』 監督・製作・脚本:ルイ・マル/
主演:ガスパール・マネス、ラファエル・フェジト/1987・仏、西独、伊)
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コメントの投稿
真紅さん、おはようございます。
観る時期ってホントだいじ。私など
「あの頃私はアホでした」鑑賞群だらけ。
子どもたちを通して周りの大人たちも見える。
丁寧に紡いで、いくばくかの毒・・切なさ。
ルイ・マル、その辺のさじ加減、実にうまい。
閑話休題。
「TIGER」を知らない田舎者の私、
観た途端、「ティガー」って。(- -)^^
服屋さんですか?ってホラ
世事疎いのにもほどがあるって
真紅さん、笑って許して。カハハ。(笑)
観る時期ってホントだいじ。私など
「あの頃私はアホでした」鑑賞群だらけ。
子どもたちを通して周りの大人たちも見える。
丁寧に紡いで、いくばくかの毒・・切なさ。
ルイ・マル、その辺のさじ加減、実にうまい。
閑話休題。
「TIGER」を知らない田舎者の私、
観た途端、「ティガー」って。(- -)^^
服屋さんですか?ってホラ
世事疎いのにもほどがあるって
真紅さん、笑って許して。カハハ。(笑)
vivajijiさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうなんです。私も、学生時代に観た映画はほとんど理解できてないと思います。
でも、やっぱり若いうちに「何でも」観たり体験することって大事だなぁとも思いました。
記憶の片隅に引っ掛かっていることを、大人になって追体験することで理解が深まるってこと、あるなぁって。
ルイ・マルって、もう亡くなって随分経つのですね。。
でも、作品は色あせない。素晴らしいことだと思います。
「TIGER」ですが、これ全くのローカルネタなので、ご存知の方は関西在住のごくごく一部だと思いますよ。
北欧の100円ショップと呼ばれているらしく、雑貨屋さんですね。
日本進出第一号が大阪で、これから全国展開するのかな?
早く買い物してみたいです♪
そうなんです。私も、学生時代に観た映画はほとんど理解できてないと思います。
でも、やっぱり若いうちに「何でも」観たり体験することって大事だなぁとも思いました。
記憶の片隅に引っ掛かっていることを、大人になって追体験することで理解が深まるってこと、あるなぁって。
ルイ・マルって、もう亡くなって随分経つのですね。。
でも、作品は色あせない。素晴らしいことだと思います。
「TIGER」ですが、これ全くのローカルネタなので、ご存知の方は関西在住のごくごく一部だと思いますよ。
北欧の100円ショップと呼ばれているらしく、雑貨屋さんですね。
日本進出第一号が大阪で、これから全国展開するのかな?
早く買い物してみたいです♪
主演の2人が素晴らしい
真紅さん、こんばんは。
これは私もかなり心に残る作品でした。
タイトルの「さよなら子供たち」が先生の最後に発する言葉だったというのが・・・。(涙)
「静かなる反戦映画」の1つだと思います。
(他には邦画「Tomorrow」などもその1つ)
私はこの作品を劇場で鑑賞したとき、真紅さんよりはだいぶ大人だったので(笑)
それほど理解できなかったという記憶はなかったのですが
今もう1度観たらまた違った思いが沸いてくるのかもしれませんね。
ところで「TIGER」、すごいことになっているようですねー。
シネマートに行くたびに頭をかすめるのですが
人の多さを想像しただけで近づけません。
いつになったら落ち着くのやら・・・。
これは私もかなり心に残る作品でした。
タイトルの「さよなら子供たち」が先生の最後に発する言葉だったというのが・・・。(涙)
「静かなる反戦映画」の1つだと思います。
(他には邦画「Tomorrow」などもその1つ)
私はこの作品を劇場で鑑賞したとき、真紅さんよりはだいぶ大人だったので(笑)
それほど理解できなかったという記憶はなかったのですが
今もう1度観たらまた違った思いが沸いてくるのかもしれませんね。
ところで「TIGER」、すごいことになっているようですねー。
シネマートに行くたびに頭をかすめるのですが
人の多さを想像しただけで近づけません。
いつになったら落ち着くのやら・・・。
sabunoriさん、こんばんは! コメントありがとうございます~。
>(他には邦画「Tomorrow」などもその1つ)
わ、この映画知らないです。。
と思って検索してみたら、黒木和雄監督の作品なんですね。。
『父と暮らせば』は涙滂沱でした。
う~ん、そういえば「戦争三部作」って昨年NHKBSで放映されていたような気が・・・。いつか絶対観ますね。
私も、学生と言っても「大」がつく学生でしたから(笑)。
学生時代、結構映画は観たのですが田舎だったのでほぼハリウッド映画だったんですよね~。
ああ~、若い頃、もっといろんなジャンルの映画が観たかったなぁ。
「TIGER」、品薄&入場制限で当分は避けたほうがよさそうですね。
ガラス張りなんで店内ガン見してたのですが、雑貨屋さんはあふれかえるくらいの品があってナンボ!
いつか大量入荷されると信じて、ちょくちょく覗いてみようと思います~。
>(他には邦画「Tomorrow」などもその1つ)
わ、この映画知らないです。。
と思って検索してみたら、黒木和雄監督の作品なんですね。。
『父と暮らせば』は涙滂沱でした。
う~ん、そういえば「戦争三部作」って昨年NHKBSで放映されていたような気が・・・。いつか絶対観ますね。
私も、学生と言っても「大」がつく学生でしたから(笑)。
学生時代、結構映画は観たのですが田舎だったのでほぼハリウッド映画だったんですよね~。
ああ~、若い頃、もっといろんなジャンルの映画が観たかったなぁ。
「TIGER」、品薄&入場制限で当分は避けたほうがよさそうですね。
ガラス張りなんで店内ガン見してたのですが、雑貨屋さんはあふれかえるくらいの品があってナンボ!
いつか大量入荷されると信じて、ちょくちょく覗いてみようと思います~。