俺はわるくない/Trash ~『苦役列車』

19歳の北町貫多(森山未來)は、父親の犯した性犯罪のために一家離散、中卒
以来日雇い人足で生計を立てる孤独な青年。読書が唯一の趣味で、古書店でア
ルバイトする女子大生・康子(前田敦子)に憧れを抱いていた。ある日、彼は現場
で同い年の専門学校生・日下部正二(高良健吾)と出会う。
私小説作家・西村賢太氏による、芥川賞受賞作の映画化。『モテキ』から一転、
全身役者・森山未來がこれ以上ないほど自意識をこじらせた屈折率100%の青
年を、悶々と演じている。もがきながらの「青春の日々」。監督は山下敦弘。
「友達なんかいらない」
前のめりの猫背、いじけた目つき、ゆがんだ口元。ひっきりなしにハイライトを
吸い、安酒をあおって家賃を踏み倒す。江戸っ子であることだけが唯一誇れる
アイデンティティであり、自分以外は「田舎者」とさげすむ、どうしようもない不健
康な心身を持つ貫多は、現代ならさしずめ「ウザイ」の一言で周囲から抹殺させ
られそうな痛いキャラクター。「お前は本当に扱いにくい奴だなぁ」 正二の溜息
が、リアル過ぎて困ってしまう。

1986年という、日本中がキラキラと輝いていた時代。しかし、あの頃を感じさ
せるアイテムは正二の着る「Mr.Junko」のトレーナーと、「コネクレイジーめが
!」 と貫多に罵倒される、正二の彼女(勘違い女)くらい。東京(法政大学)に
も、康子みたいに地味な女子大生がいたのだなぁ。あっちゃんってサウスポー
なんですね。演技している姿を初めてみたけど、自然体に演出されていて結構
好感した。
そして一番の瞠目ポイントは、高橋先輩を演じたマキタスポーツ。最初、「誰
このおじさん? 泉谷しげるか?」 とか思ってしまって、すみませんでしたっ!
熱唱する姿に釘付け。こんなおじさん、いるよね~。あとは「動物ごっこ」ですね。
唖然、の後ひたすら爆笑。
少し(かなり?)ズレてて、でも絶対「いそう」な社会の辺境を形作る人々。お
もろうて、やがて哀しき・・・、違うか? 個人的には、あの「底抜け」落ちはいら
ないんじゃないかと思うけれど。

平日朝一のシアターはガラガラ。まぁ、朝っぱらから「苦役」なんてタイトル
の映画を観に行こうなんてモノ好きは少ないよね。山下監督仕事だから、私
は絶対に観たかったけどね。観てよかったです。
( 『苦役列車』 監督:山下敦弘/主演:森山未來、高良健吾、前田敦子/2012・日本)
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前田敦子に体当たり列車
公式サイト。西村賢太原作、山下敦弘監督、森山未來、高良健吾、前田敦子、マキタスポーツ、田口トモロヲ、中村朝佳、野嵜好美。原作者の自伝的な1986年の ...
2012-07-24 11:45 :
佐藤秀の徒然幻視録
苦役列車@東映第一試写室
2012-07-24 11:50 :
あーうぃ だにぇっと
□作品オフィシャルサイト 「苦役列車」□監督 山下敦弘 □脚本 いまおかしんじ□原作 西村賢太 □キャスト 森山未來、高良健吾、前田敦子、田口トモロヲ、マキタスポーツ■鑑賞日 7月16日(月)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★ (5★満点、☆は0.?...
2012-07-24 12:04 :
京の昼寝~♪
芥川賞受賞時の会見がとても風変わりで印象的だった西村賢太さんのその受賞作である「苦役列車」を森山未來さんを主演に山下敦弘監督が映画化した作品です。山下敦弘監督といえば ...
2012-07-24 18:13 :
カノンな日々
社会の底辺で生きる主人公のひねくれた青春を描く「苦役列車」。映画オリジナルのヒロイン役の前田敦子が意外にも好演だ。80年代の東京。中卒の19歳の貫多は、日雇い労働で得た金を ...
2012-07-24 19:18 :
映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
この憎めないダメ男をナメんなよ!
友ナシ、金ナシ、女ナシがナンボのもんじゃい。ろくでナシがナンボのもんじゃい。夢がないヤツよりは数百倍マシな人生を送っとるわ!
ダメ男に ...
2012-07-24 21:36 :
こねたみっくす
生きる事は難しい。
日雇い労働で生きる若者の青春を描き、第144回芥川賞を受賞した西村賢太の私小説「苦役列車」を、「マイ・バック・ページ」の山下敦弘監督が映画化。
昭和末期を舞台に、金も友も失い...
2012-07-24 22:43 :
ノラネコの呑んで観るシネマ
う~ん、全く共感できる部分が無かったので、面白く思えなかったけど、森山未來の演技が凄い。
2012-07-24 22:48 :
だらだら無気力ブログ!
----この映画、原作は芥川賞受賞だけど、
かなりエグイ内容だよね。
見るからに不潔そうなんだけど…。
「うん。でも作っちゃった。
この映画は、映画とは何かをあらゆる方向から
考えさせてくれる
ぼくにとっては刺激的な作品だったね」
----あらゆる方向からって?
「
?...
2012-07-24 23:06 :
ラムの大通り
第144回芥川賞を受賞した西村賢太の私小説を『マイ・バック・ページ』の山下敦弘監督が映画化。中卒で日雇い仕事でその日暮らし、金が入ると酒と風俗に全て消えて行くというどうしようもない青年の恋と友情を描いている。主演は『モテキ』の森山未來。共演に『軽蔑』の...
2012-07-24 23:39 :
LOVE Cinemas 調布
今回は「Yahoo!映画ユーザーレビュアー」試写会に招かれた、客席は満席だ。映画上映後には山下敦弘監督と観客のティーチインが行われた。
映画の話
1980年代後半。19歳の北町貫多(森山未來)は日雇い労働で得た金を酒に使い果たし、家賃も払えない生活を送っ...
2012-07-24 23:57 :
新・辛口映画館
映画「苦役列車」観に行ってきました。第144回芥川賞を受賞した西村賢太の同名私小説を実写映画化した作品。映画のタイトルに反して、作中に列車の類は一切出てきません(苦笑)...
2012-07-26 02:53 :
タナウツネット雑記ブログ
『苦役列車』を渋谷TOEIで見てきました。
(1)本作は、私小説作家・西村賢太氏の芥川賞受賞作(2010年)を映画化したものです。
19歳の主人公・北町貫多(森山未來)は、父親が性犯罪を犯したことから故郷にいられなくなり、東京に出てきて日雇い労働者として働いてい...
2012-07-26 04:49 :
映画的・絵画的・音楽的
苦役列車 渋谷TOEI
1980年代後半。19歳の北町貫多(森山未來)は日雇い労働で得た金を酒に使い果たし、
家賃も払えない生活を送っていた。
他人を避けながら孤独に暮らす貫多だったが、職場で専門学校生...
2012-07-28 22:16 :
単館系
昔はいっぱいあったよなあ、同じようなところでグダグダ、グダグダしているだけの青春映画。
藤田敏八の一連の青春映画とか、神代辰巳の「アフリカの光」とかね。
そうそう。グダグダしてないで早くアフリカ行っちまえよショーケン、とか声をかけたくなるような映画。
...
2012-07-31 21:47 :
【映画がはねたら、都バスに乗って】
お金も学歴もなく、彼女もいないダメ男だけど、どこか人間臭くて放っておけない19歳の日雇い労働者の主人公、北町貫多のバイト生活をユーモラスに描いた青春映画。芥川賞受賞小説を、山下敦弘監督が、森山未來、高良健吾、前田敦子と旬のキャストを揃えて映画化。
まず...
2012-08-13 11:00 :
パピとママ映画のblog
友ナシ、金ナシ、
女ナシ。
この愛すべき、
ろくでナシ
−感想−
尿瓶片手にゲラ笑いするマエアツ。
手の甲を舐められて「ちょ、何!?」と引きまくるマエアツ。
サヨナラの挨拶代
2013-01-13 01:16 :
銀幕大帝α
☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・山下敦弘
ネタバレあり
2014-01-12 10:35 :
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
コメントの投稿
いつもTB貼り逃げで、すみません。
出来栄えも良いし、森山未來も大好演でしたが、それ故に嫌悪感が先だって褒める心境には至りませんでしたよ^^;
しかし、無味乾燥な映画評に徹しておるわがほうと違い、真紅さんの文章は読んでいて楽しくなりますね。本記事の切れ味、実に素晴らしいです。
コメントは最小限になりそうですが、今年もよろしくお願い致します。
出来栄えも良いし、森山未來も大好演でしたが、それ故に嫌悪感が先だって褒める心境には至りませんでしたよ^^;
しかし、無味乾燥な映画評に徹しておるわがほうと違い、真紅さんの文章は読んでいて楽しくなりますね。本記事の切れ味、実に素晴らしいです。
コメントは最小限になりそうですが、今年もよろしくお願い致します。
オカピーさん、こんばんは! コメント&TBありがとうございます。
TBのみでも、当方全く気にしておりません! TBお返しして、記事拝読するのとても楽しみにしておりますので。
嫌悪感、、そうですよねー。
原作を読んだときから、主人公が「田舎者」をバカにするのがムカついて、、。
「江戸っ子がそんなに偉いんかー?」と言い返したいくらいでしたよ!
>本記事の切れ味、実に素晴らしいです
え~マジですか? 褒めてもらうってうれしいですね(笑)。
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いします~。
TBのみでも、当方全く気にしておりません! TBお返しして、記事拝読するのとても楽しみにしておりますので。
嫌悪感、、そうですよねー。
原作を読んだときから、主人公が「田舎者」をバカにするのがムカついて、、。
「江戸っ子がそんなに偉いんかー?」と言い返したいくらいでしたよ!
>本記事の切れ味、実に素晴らしいです
え~マジですか? 褒めてもらうってうれしいですね(笑)。
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いします~。