乗り越え、受け継ぐもの~『タペストリーホワイト』
20061202233540.jpg

 1970年代の札幌・東京を舞台に、愛するものたちを喪った一人の女性の、魂の
彷徨と再生を描く長編小説
。札幌で美しい自然と共に育った少女・洋子には、4歳
年上の姉・希枝子がいた。真面目一辺倒で優等生な姉の部屋から、ある日聴き慣れ
ないメロディー
が流れてくる。「明日もあなたは私を愛してくれているのでしょうか?

 大崎善生さんのいつもの小説のように、理不尽に見える死と、それを乗り越えて
続いていく生
とが描かれています。静謐で透明感のある文体もいつもの手触りです。
各章にはそれぞれキャロル・キングのアルバム『タペストリー』の曲名が与えられ、
主人公・洋子はこのアルバムの曲たちと人生を共にします

20061202233615.jpg  Carole King Tapestry

 洋子に与えられた運命は、あまりに過酷としか言いようがありません。たった一人
の姉と、たった一人の友達であり、生涯でただ一人愛し、愛された人を奪われるの
ですから。それも同じ理由、同じ方法で。姉たちの世代が遺した「学園紛争」という嵐の
置き土産は、高校の床のタイルのように剥がされ、修復されることなく荒廃した教師
と生徒の間の信頼関係と、内ゲバという陰惨な狂気でした。

 洋子の運命に胸を痛めこそすれ、涙は一滴もこぼれませんでした、最後の一行を
読むまでは


 精神的にも身体的にも「底を打った」洋子を立ち直らせたのは母の愛であり、自然
であり、自分を受け入れてくれる他者の愛情でした。激動の日々が過ぎ、穏やかで
満ち足りた日常を取り戻したとき、彼女が自分の娘に伝えようとしたのもまた
あり、恋することの素晴らしさでした。たとえ若い恋に破れ、愛を喪っても、時が
過ぎればまた愛だけが傷を癒し、愛だけが人を救うことができる
。亡き姉に似た娘
に「恋をしなさい」と語りかける洋子。そこには過酷な運命を受け入れ逃げることなく、
次の世代に引き継ぐべき愛を得た彼女の強さがあります

読み終わり、止めどなく涙が溢れました。

 白い雪のようなカバーがとても美しい本です。カバー内側の写真もまた、美しい

(『タペストリーホワイト大崎善生・著/文藝春秋・2006)
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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

[2006/12/02 23:43] | 読書 | トラックバック(2) | コメント(6) |
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コメント
おはようございます~
わ~新作お読みになったのですね
ブックカバー今回も素敵ですよね。
毎回センスを感じさせますよね。
真紅さんの感想も良かったようなので
読むのを期待して待ちたいと思います。
図書館での順番待ちなので時間がかかりそうですがまた舞い戻ってきますね♪。ではでは
[2006/12/03 07:02] URL | みみこ #mQop/nM. [ 編集 ]
みみこさま、こんにちは!コメントありがとうございます。
この作品、とても短い長編小説(変な表現ですが)なので、すぐに読めますよ。
いつもの大崎さんテイストでした。最後の一行で静かに涙してしまいました。
待ち遠しいですね!最近エッセイ集も出たので、私も図書館にリクエストに行かなくては。
みみこさまの感想も楽しみにしておりますね。またお話しましょう、ありがとうございました。
[2006/12/03 18:48] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
おお~!このアルバムに入っている『It's Too Late』が『イルマーレ』でかかって、すごい良かったのですよ。偶然。
[2006/12/04 22:35] URL | チュチュ姫 #- [ 編集 ]
チュチュ姫さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私、このアルバム持ってなかったので迷わずポチしました(笑)。
「It's too late」は第三章のタイトルだったわ。
また来てね。ではでは。
[2006/12/04 23:05] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
こちらにも。
最後のシーン良かったですよね。
私は出産のあたりから
涙腺が弱かったのですが・・。
心の傷はいつか癒えるときがあるのですよね。
素敵な恋を娘にもして欲しいな~
なんて思いましたよ。
あ・・エッセイですが今度予約してみますね。
[2007/01/15 11:43] URL | みみこ #mQop/nM. [ 編集 ]
みみこさま、こちらにもコメントありがとうございます。TBもありがとうございました。
今から出かけるので、また今夜にでもお伺いしますね。
最後の一行、涙が溢れて止まりませんでした。
みみこさま、お嬢さんがいらっしゃるのですね。いいなぁ~、私も娘が欲しいです。叶わぬ願いですが。。
エッセイ、読み易いけれど読み応えはあり、オススメですよ。
また感想を楽しみにしております♪
[2007/01/15 13:12] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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