紫煙の向こうのダンディズム~『グッドナイト&グッドラック』
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 1953年、アメリカではいわゆる「赤狩り」、共産主義者の排斥活動が上院議員
マッカーシーの下で激しさを増していた。CBSの報道キャスター、エド・マロー
ディヴィッド・ストラザーン)と彼を支えるスタッフたちが、本当の自由を守る
ために不当な権力に立ち向かった、実話に基づく物語


「赤狩り」と言えば、数年前のアカデミー賞授賞式を思い出します。この時代に
密告者としてハリウッドから追放されたエリア・カザン監督が名誉賞を受賞し、
壇上に上がった彼を迎えた会場の反応が印象的でした。スタンディング・オベー
ションする人、座ったまま拍手する人、ブーイングはしないまでも身じろぎもしな
い人、それぞれが混在していて、ハリウッドでもこの問題は終ったわけではないのだ
な、と感じたものです。

 感動大作というわけでは決してないけれど、物凄く上品でシンプル、巧くまとま
った映画
、という印象を受けます。ジョージ・クルーニー監督素晴らしいじゃな
いですか・・
題材からして、もっと緊迫したサスペンス仕立ての映画にもできた
と思うのですが、劇中に流れるジャズ・ヴォーカルのように心地よく、淡々と物語
は流れていきます。最初と最後に、エド・マローがスピーチに立つパーティのシーン
が挿入されるので、マローvs.マッカーシーの対決がどうなったか、ハラハラせず
に安心して観ることができます。アカデミー賞はじめ多くの映画賞で評価されたの
も納得です。

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 主演のディヴィッド・ストラザーンもいいです。いつもタバコをくゆらせ(番組
中はもちろん、CBS会長と面談するときでさえタバコを持っている
!)、ほとんど
無表情でニュースを伝えるそのアンカーマンぶり。最後の決めセリフ「グッドナイト
、&グッドラック
」と言うときもニコリともせず、逆にちょっと俯き加減になると
ころもまた渋いです。彼はハリウッドで、決してメインストリームの俳優ではなかっ
と思うのですが、こうして主演を張っても全く見劣りしない。ハリウッドの俳優
の層の厚さを感じますね。2006年のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた5作品
中、これで4作品『グッドナイト&グッドラック』『カポーティ』『ウォーク・ザ・ライン
ブロークバック・マウンテン』を観ましたが(もう一作は『ハッスル&フロー』主演:
テレンス・ハワード)、誰が受賞してもおかしくない、本当にレベルの高い主演男優
たち
だと思います。
 マローの盟友であり、プロデューサーのフレッドを演じたのは監督・脚本も兼任
ジョージ・クルーニーハリウッドでもっともセクシーな男に選出されるほどの
いい男ぶりと色気をここでは封印して、モノクロの美しい映像の中で静かに権力と
闘う男を演じています。スティーブン・ソダーバーグと組んだ製作会社セクション・
エイトは解散するようですが、今後も彼の監督作品を観たいですね

 ジョーロバート・ダウニー・Jr)とシャーリーパトリシア・クラークソン)が
夫婦であることを隠している、社内結婚はご法度、というエピソードには驚きました。
アメリカ、全然自由の国じゃないじゃん(笑)。

 ジャーナリズムの中核にありながら、スポンサーに支配されるテレビという媒体
内包せざるを得ない問題や、自由を守るために異端者を排斥することが逆に万人の
自由を奪うことになる
、という現代にも通じる、まさしく『See it Now』な問題が
提起された社会派の作品でした。とは言ってもガチガチの硬派な映画と言うよりは、
男たちのダンディズムをクールに描いた秀作、という感じでしょうか。ジョージ・
クルーニーがキング・オブ・ハリウッドの座に君臨していることも納得、の一本です。

(『グッドナイト&グッドラック』監督:ジョージ・クルーニー
  主演:ディヴィッド・ストラザーン、ジョージ・クルーニー/2005・USA)
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[2006/11/26 06:18] | DVD/WOWOW | トラックバック(1) | コメント(4) |
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コメント
真紅さま、こんばんは~♪
ご覧になられたのですね~。これ、大人しか出てこない、ひじょうに硬派でダンディズムいっぱいの作品でしたね~。男も女もカッコよくて、いいよなぁこれ・・と思ったのを思い出しました。
ジョージの美意識がわかりますよね。こういう時代に、これをしっかり作ってしまうジョージはやはりいい男なのねと思います。(なんか、ジョージだけ煙草吸ってなかったようでしたけれど>笑)
[2006/11/26 18:33] URL | 武田 #qs0owOX6 [ 編集 ]
武田さま、こんにちは。コメントありがとうございます。
この作品、母から「絶対観なさいよ!」と厳命されていたので、レンタル初日に借りに走りました(笑)。
大人の映画でしたね~、惚れ惚れでした。
ジョージ・クルーニーがタバコ吸ってなかった?!それは気付かなかったな~。。
あの、キューを膝を叩くことで知らせるのもいい感じでしたよね。手作り感いっぱいで。
ほんま、ええ男や・・。この作品を観て、やっと彼のジョーク「アン・リーって奴は共産主義者だ」がわかりました(笑)
ではでは、またお話しましょう!ありがとうございました。
[2006/11/26 18:56] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
真紅さん★この作品、公開してすぐに見に行きました。『追憶』を生涯ベスト1に掲げるメグとしましては、マッカーシズムを題材にした映画は見逃すわけにはまいりません。そしてこの作品の出来のすばらしさ。「リベラリズム」が死語になってしまったようなこの時代にあえてこのようなテーマの作品を撮ったジョージ・クルーニーに私は最大限の敬意を表します♪マッカーシー本人の映像を使用するために全編をモノクロで撮るというアイデアがいいですよね。この映画の最後にエド・マローが報道番組制作者協会で行なった演説は、全文がこの映画のパンフレットに掲載されていて、暗記するほど何度も読みました。
・・・なんて難しい感想はさておき、イカす男たちばっかりの映画ってホントいいですよねぇ~~★
[2006/11/26 21:20] URL | メグ #- [ 編集 ]
メグさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
私もこの作品は劇場に足を運びたかったのですが、上映館が少なかったですよね。
以前他の方から「(モノクロなので)字幕が読み難かった」というコメントをいただいたのですが、DVDでははっきり読めました。
あのモノクロの映像、美しかったですよね。当時の映像と違和感がなかったですし。
私も、ジョージ・クルーニーはレッドフォードと合い通じるところがあるなぁと思っていたところでした。
まぁ、一番の関心事は、彼が身を固めるのか否か、と言うことなんですけどね(笑)
ではでは、またお話しましょう。ありがとうございました。
[2006/11/27 00:54] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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グッドナイト&グッドラック
2005年 アメリカ 2006年4月公開 評価:★★★★監督:ジョージ・クルーニ
[2006/12/26 18:21] 銀の森のゴブリン
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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