![]() カンヌでパルムドールを受賞した、言わずと知れた名作『パリ、テキサス』の監督・ 脚本コンビ、ヴィム・ヴェンダースとサム・シェパード。彼らが20年ぶりにタッグを 組んだ本作。主演にも、ヴェンダース念願のサム・シェパードが登場している。 落ちぶれた西部劇俳優ハワード・スペンス(サム・シェパード)は、ある日突然撮影 現場から逃走し、30年間音信不通だったネバダ州の母の元へ向かう。思いもかけず、 母から子どもの存在を知らされたハワードは、父の遺した車を走らせ、モンタナのかつ ての恋人のもとへ向かうのだった・・。 ヴェンダースの念願だったというこの作品の製作が資金面から頓挫したとき、気分転 換の為にわずか16日間で撮られたのが『ランド・オブ・プレンティ』。ミシェル・ウィリ アムズ主演のこの作品に感銘を受けてから、ずっと観たいと思っていた。期待に違わぬ、 素晴らしい作品でした。 ★以下ネタバレします★ 主演のサム・シェパードはもちろん文句なしの存在感なのだけれど、私が感銘を受け たのは三人の女優たち。ハワードの母を演じたエヴァ・マリー・セイントは、往年の名 女優だという。30年ぶりに会う息子に対する距離感がいい。恨み言を並べるわけでも、 涙の再会に積もる話を添えるわけでもない。ただ淡々とそこに立つ息子を受け入れ、 寝床と食事を用意し、匿い、また見送る。一見醒めた親子関係に見えるけれど、息子の 記事を収集し続けた一冊のスクラップブックに、十分すぎる愛情が込められている。 ハワードの元恋人ドリーンを演じるのは、これもアメリカが誇る大女優、ジェシカ・ ラング。私生活でもサム・シェパードのパートナーである彼女、皺は増えてもスタイル を維持し、美しくまとめた髪は色香が匂い立つよう。任されたダイナーには古いポスター、 「ジンジャーエール」その声を聞いただけで、長い長い年月を瞬時に飛び越えられるほど 思っている男にさえ執着しない。こんなに魅力的な女なら、郵便配達も二度ベルを鳴ら すだろう。 息子の存在を知り、結婚を申し込んできたハワードを一喝する場面の彼女の演技は 圧巻。老境にさしかかり、人生に迷ったからって勝手なことを言わないで!私には私の、 息子には息子の人生がある!甘えないでよ!とばかりに突き放しながらその刹那、熱く 熱く抱き合うふたり。愛憎という言葉があるけれど、ハワードを憎みながらハワード を愛した、何年経っても昇華しきれない思いが溢れ出したような演技には感動させら れる。突然父親の存在を知らされた息子から「fuckしたんだろ」と罵倒される場面の 表情もいい。「あれはfuckじゃない、Make Loveよ」そう叫びたい気持ちをグっと 押さえ、母親として、息子の混乱を引き受ける彼女。 ![]() 『マディソン郡の橋』は、やっぱりこのコンビで観たかったなぁ、と思うのは私だけ だろうか? そして、ハワードの娘スカイを演じたサラ・ポーリー。青い骨壷を抱えた不思議な 雰囲気のこの少女、ミシェルだったらどうかな・・、と思わないでもないけれど、ずっと 求め続けた父を目の前に、思いを告げる彼女は美しく、ハワードを包み込むような母性 さえ感じてしまった。 この三人の女性に共通する強さ。逃げ出したトレイラーに残った「Don't come knocking(原題)」のボードが表すハワードの身勝手さとは対照的に、異性である 息子、元恋人、父に対する彼女たちの姿勢は、私自身の人生訓「決して逃げず、引き受け、 愛し、立ち去る」これを体現しているようで、理想の女性像を見たような思いだった。 ![]() 音楽も非常に印象的。『パリ、テキサス』ではライ・クーダー、『ランド・オブ・プレン ティ』ではレナード・コーエンのスコアが耳に残った。そして本作でも、T=ボーン・ バーネットが、美しい映像の背景としての音楽を奏でてくれる。 ユタ、ネバダ、モンタナ州というアメリカ北西部の乾いた風景、青空に映える星条旗 が眩しい。『ランド・オブ〜』でも星条旗は象徴的に使われていたが、本作でも主人公 たちを見守るようにはためくのが印象的だった。 (『アメリカ、家族のいる風景』監督:ヴィム・ヴェンダース/ 主演:サム・シェパード、ジェシカ・ラング/2004・米、独) ![]() |
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こんにちは! こちらこそご無沙汰してましたっ。
>『マディソン郡の橋』は、やっぱりこのコンビで観たかったなぁ あぁ、それいいですね〜。 観たいかも。 それにしてもやっぱりこの映画は女性がよかったですよね。 本当に強いのはオンナなんだなーってしみじみ思います。 で、男はいつまでたっても男の子。 母性の偉大さを感じます。 ではではまた、今後ともよろしくお願いします〜。 mambotaxiさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
私、『マディソン郡の橋』の原作を読んだ後で「サム&ジェシカで映画化を!」キャンペーンを一人でやってました(笑)。 イーストウッド&ストリープもまぁ、よかったですけどね・・。「今からでもリメイクを!」キャンペーンやろうかな、また一人で(笑)。 本当に、この作品女性がよかったですね!私もあんな風に、地に足がしっかりついた女になりたいです。 また遊びにいらして下さいね、ありがとうございました。 こちらにも失礼致します。
わ、これも結局観に行けず終いだった作品ですが、もうDVDで出ているのですね! 女性に注目・・とのことで、楽しみです。 「この世の果ての家」、ポチっとしました! 武田さま、こちらにもコメント、ありがとうございます!
そうなんです、この作品、いつの間にか準新作になっていました(お店によってはまだ新作扱いかも)。 よかったですよ〜。ヴェンダースに対する苦手意識が消えていて、自分で驚きました。 『ランド・オブ〜』のおかげだわ〜。。 おお、『この世の果ての家』読まれるのですね!あの世界観に浸って下さいませ〜、素晴らしいですよ。 武田さまの感想、楽しみにしておりますね♪ ではでは、また遊びにいらして下さい。ありがとうございました。 真紅さん、こんにちは。またお邪魔します。
この作品、ほんと素晴らしかったですね。 アメリカの風景の中にそれぞれの人物の孤独が染み込んでいるような、ヴェンダース独特の映像と音楽がすごく美しくて。 ランド・オブ〜同様、希望を感じるラストにもジーンときました。 女性達、良かったですよね!現状を受け入れ、優しく強く愛を持ってしっかりと生きていく・・・、こうありたいと思いますね、ほんと。 今年はこの作品やBBM、「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」などカウボーイ物?がとても強く印象に残る年でした。 それでは、またお邪魔させて下さいね。
【2006/11/26 15:54】
URL | ルカ #-[ 編集]
ルカさま、こんにちは。コメントありがとうございます!
そうなんですよ〜、私この作品劇場には行けなかったのですが、DVDで観ても本当によかったです。 ジェシカ・ラングが特によかったと思ったのですが、あれはサム・シェパードが彼女に「あて書き」したのかな?とか思ったり・・。 あの三人が「Where is Howard? who is Howard?」と楽しそうに唄いながら去っていくラストシーンも大好きでした。 記事の中に書きたかったのですが。。 『メルキアデス〜』は未見なのですが、トミー・リー・ジョーンズが監督してるのですよね。楽しみに観ます! ではでは、またいらして下さいね!ありがとうございました。 TBありがとう。
「決して逃げず、引き受け、愛し、立ち去る」 素敵な人生訓ですね。 運命を引き受けよ、けれど、執着するな、とも読み替えられると思いますね。 kimionさま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
そうなのです、自分のなすべきことは責任もって引き受けるけれど、そのことに執着はしない、ということでもあると私も思います。 この作品の女性たち、本当に素敵でした。私も頑張ります(笑)。 ではでは、また是非いらして下さい。ありがとうございました。 真紅さん、こんにちは。
新作枠はずれたので観ました。とーっても良かったです。「パリ、テキサス」にかぶる部分がたくさんありましたが、ヴィム・ヴェンダースの優しいまなざしにホロリとさせられました。 真紅さんの「迷う男、強い女」と「決して逃げず、引き受け、愛し、立ち去る」が全てを言い得ていてこれ以上の言葉はいらないなあと思いました。ハワードの視点で描かれていますが主役は、スペンス夫人であり、ドリーンであり、スカイであり、アンバーでもあります。彼女たちの存在があってこそハワードは自分の人生を見つめ直すことができるのだと思います。女性は強く大きく柔らかい。 そしてやっぱり、旅するシーンがいいなあ。音楽がまた絶妙。 息子を探して旅立つハワードと「ハワードは何処行った?ハワードって誰?」と歌いながら旅立つアール、スカイ、アンバー達の行く手の空はどこまでも青い。対するサターに連れ戻される車から見えるのは人工のネオンの輝き、、、。 主人公の実人生と俳優という虚構の人生がオーバーラップするかのような撮影中の映画のラストシーンの使い方、面白いなあ。 原題の「Don’t come knocking」は男たちの自己防衛の盾でしたね。車の中でサターがクロスワードを解きながら言う台詞「Nothing changed 何も変わらない」に見せるハワードの表情は満ち足りていました。 見終わってフワっと暖かい気持ちにさせられる映画でした。「ランド〜」でも思ったけど、ヴェンダースって心優しい人なのでしょうね。 アール役のガブリエル・マン(ちょっと素敵)、どこかで見た顔だと思ったら、マット・ディモン主演の「ボーン」シリーズでCIA情報局員を演じていました。 「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」、借りてきました。カウボーイ(ハット)物、楽しみです。 先日、びあんこさんのところで、真紅さんのお名前を叫んでしまいました(イノセントラブの件で)。すみませんでした。
【2006/12/07 15:23】
URL | kママ #7iSbDyII[ 編集]
kママさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
この作品、私も大好きなので気に入っていただけてと〜ってもうれしいです。 ヴェンダースに成り代わり、お礼申し上げます(笑) 「決して逃げず、引き受け、愛し、立ち去る」これは私の人生訓なんですけど、これは映画『めぐりあう時間たち』の最後のモノローグなんですよ。 あの作品も大好きなんで、いつか再見して何か書きたいです。 ヴェンダースがやさしい人、というのは私も感じます。若い頃は苦手意識があったのですが、私も丸くなったのかなぁ。。 『メルキアデス〜』もとってもよかったのですよ!映画館で観たかったと思いました。 この作品も、監督のトミー・リー・ジョーンズの人柄がよく出ていると思いました。 また是非感想をお聞かせ下さいね。 それから、びあんこさんのお宅で私の名前を?!全然知りませんでした、早速チェックに行ってきます(笑) ではでは、また寄ってみて下さいね。ありがとうございました。 真紅さん、こんにちは☆
ついに観ることができたのでご報告に来ました。 シェパード様がお目当てでしたが、サラ・ポーリーにやられました(笑) ナスターシャ・キンスキーが大好きなので観た「めぐり逢う大地」のサラよりも、いい感じでした。 女性達の強さしなやかさを観ていて、いつしか情けない男達を励ましたくなってしまいましたよ。 lime-fizzさま、こんにちは。コメントありがとうございます。
私も、サラ・ポーリーは『スイート・ヒア・アフター』や『死ぬまでにしたい10のこと』より、ず〜っと素敵になってると思いましたよ! 歯並びが気になっていたのですが、矯正したようですね。 女は強くてしなやか!な映画でしたね。大好きです。 また遊びにいらして下さいね。ありがとうございました。 真紅さん。
この作品にも、TBとコメントをありがとうございました。 DVDになったら観ようと思っていたのに、 結局WOWOWの放送まで後回しになってしまいました。 ジェシカ・ラングの役柄は、しっかりと肚を括る女が多いような気がします。 『ロブ・ロイ』のスコットランドの英雄の妻といい、 ドラマの『新しい私』では、長年連れ添った夫がある日突然、性転換手術をしたいと言う男の妻といい、 いつも、きりっとした表情で男を見据え、 悲しみや迷いを飲み込みながら、笑ってしゃきっと立っている・・・ そんな大人の女に憧れる、単なるオバサンのわたし・・・ 悠雅さま、こんにちは。コメントとTBをありがとうございます。
ジェシカ・ラングはハリウッドの「いい女代表」ですね。 夫がサム・シェパードなんだから、もう文句なし、最強。 いや〜、悠雅さまは「単なるオバサン」なんかでは決してないですよ! PCを華麗に使いこなし、仕事を持ち、家族を支える。 素晴らしいではないですか・・。尊敬しておりますよ。 私こそ頑張らねば!ではでは、またお伺いしますね。 ![]() |
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| 真紅のthinkingdays |
★コメント・TB・拍手大歓迎です!★コメント・TBともに管理人の承認後、表示されます。記事は基本的にネタバレありです。作品Indexもご活用下さい。どうぞご贔屓に♪
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