天国への段取り~『エンディングノート』

日本の高度成長期を支え、「会社大好き」 「段取り命」 の熱血サラリーマン
だった父・砂田知昭。67歳で退職した直後、進行性の胃ガンを宣告される。余命
半年。彼は自分の「死」 さえも段取ろうと、「エンディングノート」をつけ始める。
是枝裕和監督の助監督をしていたという砂田麻美監督が、自らの父の最期の
日々をホームビデオに収め、劇場用映画に編集したドキュメンタリー。
観ていた間中、私の頭の中にあったのは「何て幸せな人(たち)なんだろう」って
ことだった。ユーモアがあって、明るくてやさしくて家族思いなお父さん。高度成長
期、日本が右肩上がりだった頃に丸の内にお勤めし、専務まで上りつめたお父さ
ん。三人の子どもと孫に恵まれ、家族皆を愛し、愛されたお父さん。。

病名を告知され、余命を宣告されるガンという病気は、「段取る」という意味で
は好都合な病気なのかもしれない。不慮の事故や災害に遭って亡くなる人は、
自分の葬儀のシミュレーションなんてなかなかできるものじゃない。家族や妻
に「ありがとう、愛してるよ」 と言えたこのお父さんは、何て幸せなんだろう!
もちろん、心残りはたくさんあるだろう。妻のこと、結婚しない末娘(監督)のこ
と。94歳で独り暮らしをする母のこと。何よりも、まだ幼い孫たちのこと。
しかし、この映画に登場する、素人であるはずの女性たちのフォトジェニック
なこと! 妻はもちろん、長女、そして名古屋で一人暮らしをしているお祖母ち
ゃんの、なんとも凛とした美しさ! そういえば砂田家の孫は全員女の子、、女
が強い女系家族なんですね。お父さん、女運がいいなあ(笑)。
「段取り外の三人目」 兄と七つ違いの末っ子である監督は、恐らく、このお父
さんに有り余るほどの愛情を注がれて育ったのだろう。死を見つめている映画
なのに、笑いが絶えず、希望を感じる作品なのはナゼ? それは多分、父と娘
の間にある絶対的な信頼関係と、120%の愛情とで撮り上げられたフィルムだ
から、なのだと思う。結局のところ、「死に様」 っていうのはその人の「生き様」
そのものなのかもしれない。
そういえば、今年は平野勝之っていう「しあせなバカタレ」が撮った私的ドキュ
メンタリーも観たなぁ。どちらの作品も甲乙つけ難い、記憶に残る作品だった。

( 『エンディングノート』 監督・撮影・編集:砂田麻美/2011・日本)
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公式サイト。是枝裕和製作、砂田麻美監督。砂田監督の父、砂田知昭氏とその家族のドキュメンタリー。
砂田知昭氏死去 元関東電化工業専務(47NEWS)砂田 知昭氏(すなだ・ともあき= ...
2011-11-21 11:19 :
佐藤秀の徒然幻視録
是枝裕和監督の弟子である砂田麻美監督が、ガン宣告を受けた自身の父と遺される家族との最期の日々をカメラに収めたドキュメンタリーだ。熱血営業マンとしてならした砂田知昭さんは、自らの死までの段取りをエンディングノートの形で書き記そうと決めるのだった…。死を目...
2011-11-21 11:53 :
LOVE Cinemas 調布
ドキュメンタリー映画が続きます。
おフランスのちびちゃい子どもたちのお次は
67才までしっかり勤め上げた日本のある会社員が主人公。
お名前は砂田知昭さん。
会社をめで ...
2011-11-21 15:15 :
映画と暮らす、日々に暮らす。
『エンディングノート(映画)』9月7日@シネマート六本木。
東京新聞の試写で長女を除く4人で鑑賞。
応募はがきに“3人の娘の父親です”と書いたら電話がかかってきた。
取材依頼だったのでいいですよと答え4人で行くことになった。
取材といっても、映画みてア...
2011-11-21 17:00 :
あーうぃ だにぇっと
ガンを告知された父の姿を見守る、笑って泣けるドキュメンタリーの秀作。ユーモアの中に浮かび上がるのは家族の強い絆だ。大企業の熱血営業マンだった砂田知昭氏は、退職してまも ...
2011-11-21 19:57 :
映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
無事に定年を迎えて第二の人生を歩み始めた矢先に医者からガン宣告を受け、病と向き合い最期の締め括りとして人生を総括しようとする父・砂田知昭さんの姿をそれを見守る家族たち ...
2011-11-21 21:48 :
カノンな日々
娘の声で綴られる、亡き父の最期の旅立ち。
「エンディングノート」とは、遺言状ほど肩肘張らない、自らの死を如何に迎えるかに関する覚書の様な物。
戦後日本を支え、世界有数の豊かな国に育て上げた、所謂...
2011-11-21 22:08 :
ノラネコの呑んで観るシネマ
□作品オフィシャルサイト 「エンディングノート」□監督 砂田麻美 □キャスト 砂田知昭■鑑賞日 11月19日(土)■劇場 109CINEMAS川崎■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)<感想> 映画は所詮作られたものだ。 こういう映像を見?...
2011-11-29 12:41 :
京の昼寝~♪
わたくし終活に大忙し
いきなり関係ないけど
Google日本語入力、しゅうかつが変換できるんですね・・・・
がんの宣告を受けた監督の父を追ったドキュメンタリーだそうです。
公開時期ではエンディングノ...
2011-12-13 21:44 :
単館系
監督の父がステージIVの末期癌を宣告されてから、亡くなるまでの様子を記録したドキュメント。
自分も父を末期癌で亡くしているところが似た境遇で、映画の中の砂田さんの言葉や考えを通して、自分の父はどんなことを思っていたんだろう、と改めて考えてしまいました。...
2012-01-09 21:39 :
まてぃの徒然映画+雑記
うますぎない?
映画が?
映画が。
砂田麻美監督は初めての作品だけど、プロデュースを是枝裕和監督がしているからね。いいアドバイスを受けているんでしょうね。
これまでに撮り貯めてきた家族ビデオも活用しながら、末期ガンの告知をされた、監督自身の父親の最期の日...
2012-07-31 21:57 :
【映画がはねたら、都バスに乗って】
コメントの投稿
真紅さん、こんにちは。
TB・コメントありがとうございました。
ほんとにここまできちんと段取り組めて
遂行できる日本のお父さんはなかなか
いないでしょう。決して砂田氏は普段でも
メシ・フロ・ネルではなかったのではと想像。
「あの人は一人では生きていけないから」と
“思わせ”うまく操縦したあの奥様も賢い。(笑)
園子温監督作へのコメントも感謝です。
何せコアなファン多し、とのことでしたので
この私でさえ内心ビクつきながら記事に。^^
前作「冷たい熱帯魚」も観ようかと思っていたの
ですが今じゃスルーしてほっとしている次第。
映画はたとえ闇や恐怖を描いていても
キレイなもの観たい!これ人情。ですよね?
(笑)
TB・コメントありがとうございました。
ほんとにここまできちんと段取り組めて
遂行できる日本のお父さんはなかなか
いないでしょう。決して砂田氏は普段でも
メシ・フロ・ネルではなかったのではと想像。
「あの人は一人では生きていけないから」と
“思わせ”うまく操縦したあの奥様も賢い。(笑)
園子温監督作へのコメントも感謝です。
何せコアなファン多し、とのことでしたので
この私でさえ内心ビクつきながら記事に。^^
前作「冷たい熱帯魚」も観ようかと思っていたの
ですが今じゃスルーしてほっとしている次第。
映画はたとえ闇や恐怖を描いていても
キレイなもの観たい!これ人情。ですよね?
(笑)
お邪魔します~未見ですが・・。
ドキュメンタリーも結構御覧になっていますね。
これ、新聞記事で観たことあります。
確かに自分で自分の最後の段取りができるってことは幸せなことですよね。さようならもきちんと言いたいでしょうし。
自分だったら・・・自分の家族だったらと考えてしまいがちなのでなかなかこういうテーマを
観に行けない自分ですが、本当は考えなければいけないことかもしれませんよね。
写真Bradley Cooperになっているんですね☆目の保養になります・・・ではでは。
ドキュメンタリーも結構御覧になっていますね。
これ、新聞記事で観たことあります。
確かに自分で自分の最後の段取りができるってことは幸せなことですよね。さようならもきちんと言いたいでしょうし。
自分だったら・・・自分の家族だったらと考えてしまいがちなのでなかなかこういうテーマを
観に行けない自分ですが、本当は考えなければいけないことかもしれませんよね。
写真Bradley Cooperになっているんですね☆目の保養になります・・・ではでは。
2011-11-21 17:42 :
みみこ URL :
編集
vivajijiさん、こんばんは♪ こちらこそコメント&TBありがとうございます。
このお父さん、凄く冷静でしたよね。。
ガンを宣告されたりしたら、怒りとか悲嘆とか、「死を受容するための5段階」みたいなのがあると聞くのですが。
このお父さん最初から、本当に取り乱したりすることなく、日常の延長として死を捉え、受け容れているところが印象的でした。
もちろん、「そりゃ夜中にいろいろ考えるよ・・」ともおっしゃっていましたから、内なる葛藤は図り知れませんが。
本当に、素敵なご家族でした。
園子温監督作、お付き合いのあるブロガーさんはほとんど観ていらっしゃるので、皆さんの感想をチラ見させていただいてる状態です(笑)。
『恋の罪』、今のところ賛否両論のようですが私は多分スルーです。DVDで何か観て(免疫つけて)から挑戦します!
そうですね、私も人並みに人情はあるほうだと思いますので・・・。フフフ。
このお父さん、凄く冷静でしたよね。。
ガンを宣告されたりしたら、怒りとか悲嘆とか、「死を受容するための5段階」みたいなのがあると聞くのですが。
このお父さん最初から、本当に取り乱したりすることなく、日常の延長として死を捉え、受け容れているところが印象的でした。
もちろん、「そりゃ夜中にいろいろ考えるよ・・」ともおっしゃっていましたから、内なる葛藤は図り知れませんが。
本当に、素敵なご家族でした。
園子温監督作、お付き合いのあるブロガーさんはほとんど観ていらっしゃるので、皆さんの感想をチラ見させていただいてる状態です(笑)。
『恋の罪』、今のところ賛否両論のようですが私は多分スルーです。DVDで何か観て(免疫つけて)から挑戦します!
そうですね、私も人並みに人情はあるほうだと思いますので・・・。フフフ。
みみこさん、こんばんは♪ コメントありがとうございます。
ドキュメンタリーはフランスの『小さな哲学者たち』も観たかったのですが。。
本作はテレビ(NHK?)でも取り上げられていたそうですね。
とってもいい作品でしたよ。。すっごく温かいの。オススメです。
かなりアッパー・ミドルクラスなご家庭なんですが、嫁・姑とか夫婦の倦怠期とかもサラリと触れられているし、ただの家族讃歌ではないところも素晴らしいです。
私は両親がまだ健在なので、親のこともいろいろ考えてしまいましたね。。
ブラッドリー・クーパー、カッコイイですよね♪
年内は彼でいきたいと思います、癒されて~。
ドキュメンタリーはフランスの『小さな哲学者たち』も観たかったのですが。。
本作はテレビ(NHK?)でも取り上げられていたそうですね。
とってもいい作品でしたよ。。すっごく温かいの。オススメです。
かなりアッパー・ミドルクラスなご家庭なんですが、嫁・姑とか夫婦の倦怠期とかもサラリと触れられているし、ただの家族讃歌ではないところも素晴らしいです。
私は両親がまだ健在なので、親のこともいろいろ考えてしまいましたね。。
ブラッドリー・クーパー、カッコイイですよね♪
年内は彼でいきたいと思います、癒されて~。
真紅さま
これは 見てみたいですね
というか この方のように人生に〈おさらば〉して 生きたい
という事でしょうか
こちらでは辻堂に109シネマズが出来たので
そろそろ映画館へ足をのばすことが出来そうです
新しい感動と出会えるのが楽しみです
これは 見てみたいですね
というか この方のように人生に〈おさらば〉して 生きたい
という事でしょうか
こちらでは辻堂に109シネマズが出来たので
そろそろ映画館へ足をのばすことが出来そうです
新しい感動と出会えるのが楽しみです
2011-11-24 12:14 :
Maria URL :
編集
Mariaさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
お久しぶりですね。
この映画素晴らしかったです、、是非ご覧になって下さい!
辻堂の映画館、知っておりますよ~。
IMAXシアターで、すごいんですよね? 行ってみたいな~。。
ショッピングモールに併設されているようですね。
映画も、お買い物も、楽しんで下さいませ~♪
お久しぶりですね。
この映画素晴らしかったです、、是非ご覧になって下さい!
辻堂の映画館、知っておりますよ~。
IMAXシアターで、すごいんですよね? 行ってみたいな~。。
ショッピングモールに併設されているようですね。
映画も、お買い物も、楽しんで下さいませ~♪