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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66

天国への段取り~『エンディングノート』

エンディングノート

 日本の高度成長期を支え、「会社大好き」 「段取り命」 の熱血サラリーマン
だった父・砂田知昭。67歳で退職した直後、進行性の胃ガンを宣告される。余命
半年
。彼は自分の「死」 さえも段取ろうと、「エンディングノート」をつけ始める。

 是枝裕和監督の助監督をしていたという砂田麻美監督が、自らの父の最期の
日々
をホームビデオに収め、劇場用映画に編集したドキュメンタリー

 観ていた間中、私の頭の中にあったのは「何て幸せな人(たち)なんだろう」って
ことだった。ユーモアがあって、明るくてやさしくて家族思いなお父さん。高度成長
期、日本が右肩上がりだった頃に丸の内にお勤めし、専務まで上りつめたお父さ
ん。三人の子どもと孫に恵まれ、家族皆を愛し、愛されたお父さん。。

エンディングノート2

 病名を告知され、余命を宣告されるガンという病気は、「段取る」という意味で
好都合な病気なのかもしれない。不慮の事故や災害に遭って亡くなる人は、
自分の葬儀のシミュレーションなんてなかなかできるものじゃない。家族や妻
「ありがとう、愛してるよ」 と言えたこのお父さんは、何て幸せなんだろう!
もちろん、心残りはたくさんあるだろう。のこと、結婚しない末娘(監督)のこ
と。94歳で独り暮らしをする母のこと。何よりも、まだ幼い孫たちのこと。

 しかし、この映画に登場する、素人であるはずの女性たちのフォトジェニック
なこと! はもちろん、長女、そして名古屋で一人暮らしをしているお祖母ち
ゃん
の、なんとも凛とした美しさ! そういえば砂田家の孫は全員女の子、、女
が強い女系家族なんですね。お父さん、女運がいいなあ(笑)。

 「段取り外の三人目」 兄と七つ違いの末っ子である監督は、恐らく、このお父
さんに有り余るほどの愛情を注がれて育ったのだろう。死を見つめている映画
なのに、笑いが絶えず、希望を感じる作品なのはナゼ? それは多分、父と娘
の間にある絶対的な信頼関係と、120%の愛情とで撮り上げられたフィルムだ
から、なのだと思う。結局のところ、「死に様」 っていうのはその人の「生き様」 
そのもの
なのかもしれない。

 そういえば、今年は平野勝之っていう「しあせなバカタレ」が撮った私的ドキュ
メンタリー
も観たなぁ。どちらの作品も甲乙つけ難い、記憶に残る作品だった。

エンディングノート3

 ( 『エンディングノート』 監督・撮影・編集:砂田麻美/2011・日本)
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ジャンル : 映画

2011-11-21 : 映画 : コメント : 6 : トラックバック : 11
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エンディングノート~営業マンの死
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非公開コメント

真紅さん、こんにちは。
TB・コメントありがとうございました。

ほんとにここまできちんと段取り組めて
遂行できる日本のお父さんはなかなか
いないでしょう。決して砂田氏は普段でも
メシ・フロ・ネルではなかったのではと想像。
「あの人は一人では生きていけないから」と
“思わせ”うまく操縦したあの奥様も賢い。(笑)

園子温監督作へのコメントも感謝です。
何せコアなファン多し、とのことでしたので
この私でさえ内心ビクつきながら記事に。^^
前作「冷たい熱帯魚」も観ようかと思っていたの
ですが今じゃスルーしてほっとしている次第。
映画はたとえ闇や恐怖を描いていても
キレイなもの観たい!これ人情。ですよね?
(笑)
2011-11-21 16:09 : vivajiji URL : 編集
お邪魔します~未見ですが・・。
ドキュメンタリーも結構御覧になっていますね。
これ、新聞記事で観たことあります。
確かに自分で自分の最後の段取りができるってことは幸せなことですよね。さようならもきちんと言いたいでしょうし。
自分だったら・・・自分の家族だったらと考えてしまいがちなのでなかなかこういうテーマを
観に行けない自分ですが、本当は考えなければいけないことかもしれませんよね。
写真Bradley Cooperになっているんですね☆目の保養になります・・・ではでは。
2011-11-21 17:42 : みみこ URL : 編集
vivajijiさん、こんばんは♪ こちらこそコメント&TBありがとうございます。

このお父さん、凄く冷静でしたよね。。
ガンを宣告されたりしたら、怒りとか悲嘆とか、「死を受容するための5段階」みたいなのがあると聞くのですが。
このお父さん最初から、本当に取り乱したりすることなく、日常の延長として死を捉え、受け容れているところが印象的でした。
もちろん、「そりゃ夜中にいろいろ考えるよ・・」ともおっしゃっていましたから、内なる葛藤は図り知れませんが。
本当に、素敵なご家族でした。

園子温監督作、お付き合いのあるブロガーさんはほとんど観ていらっしゃるので、皆さんの感想をチラ見させていただいてる状態です(笑)。
『恋の罪』、今のところ賛否両論のようですが私は多分スルーです。DVDで何か観て(免疫つけて)から挑戦します!
そうですね、私も人並みに人情はあるほうだと思いますので・・・。フフフ。
2011-11-21 20:24 : 真紅 URL : 編集
みみこさん、こんばんは♪ コメントありがとうございます。
ドキュメンタリーはフランスの『小さな哲学者たち』も観たかったのですが。。
本作はテレビ(NHK?)でも取り上げられていたそうですね。
とってもいい作品でしたよ。。すっごく温かいの。オススメです。
かなりアッパー・ミドルクラスなご家庭なんですが、嫁・姑とか夫婦の倦怠期とかもサラリと触れられているし、ただの家族讃歌ではないところも素晴らしいです。
私は両親がまだ健在なので、親のこともいろいろ考えてしまいましたね。。

ブラッドリー・クーパー、カッコイイですよね♪
年内は彼でいきたいと思います、癒されて~。
2011-11-21 20:30 : 真紅 URL : 編集
真紅さま
これは 見てみたいですね
というか この方のように人生に〈おさらば〉して 生きたい
という事でしょうか
こちらでは辻堂に109シネマズが出来たので
そろそろ映画館へ足をのばすことが出来そうです
新しい感動と出会えるのが楽しみです
2011-11-24 12:14 : Maria URL : 編集
Mariaさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
お久しぶりですね。
この映画素晴らしかったです、、是非ご覧になって下さい!

辻堂の映画館、知っておりますよ~。
IMAXシアターで、すごいんですよね? 行ってみたいな~。。
ショッピングモールに併設されているようですね。
映画も、お買い物も、楽しんで下さいませ~♪
2011-11-24 20:44 : 真紅 URL : 編集
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