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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

未だ和平に至らず~『ミラル』

ミラル



 MIRAL


 1947年、ヒンドゥ(ヒアム・アッバス)は私財を投げ打ち、ユダヤ民兵に親を
殺されたパレスチナの子どもたちのための施設を作る。そこで育ったミラル(フ
リーダ・ピント)
は、難民キャンプで見たイスラエル軍の暴挙に衝撃を受け、
イスラエル
過激な政治活動に傾倒してゆく。

 ミラルとは「道端に咲く赤い花」 のことだという。イスラエル占領下のパレス
チナ
に生まれた一人の少女が、国家間の苛烈な諍いに翻弄されながらも、自
らの足で逞しく運命を切り開いてゆく姿を描く。ジュリアン・シュナーベルヒア
ム・アッバス
を主演に撮った作品と知り、どうしても観たかった。パレスチナ問題
に関しては様々な意見があるとは思うけれど、是非多くの方に観ていただきた
い作品。

ミラル2

 自らの土地、「国」 を持たないユダヤ人たちが、「約束の地」 に国を再建しよ
うとした。しかしそこには何百年も前から定住するアラブ人たちがいた。ユダヤ
人が、たとえどんなに迫害され続けた(可哀想な)民族であろうと、ずっとそこに
いたアラブの人々を強制的に排除して新しい国を作れば、当然多くの難民が生
まれる。「前からそこにいた人たちは、どうすればいいの?」 幼い子どもだって、
そう思うだろう。この映画は、そのアラブ人たちの、反イスラエルの立場をとる人々
の視点
で作られている。

 この映画の監督、ジュリアン・シュナーベルが、ユダヤ系アメリカ人であること
に、驚きを禁じ得ない。彼はただ単に一人の芸術家として、純粋に撮りたいもの
を撮ったに過ぎないのだろう。しかし、その一見単純なことが、実はどれほどの
困難を伴うか。想像に難くない。監督の勇気感動する。

 非暴力を説き、何千人もの孤児たちの教育人生の全てを捧げたヒンドゥ・フ
セイニ
。彼女を演じられるのは、パレスチナ人女優、ヒアム・アッバス以外にい
ないだろう、その「憂い顔」 が、とにかく大好きな女優さん。ヒンドゥが未来への
希望
を託したミラルを演じた、フリーダ・ピントも素晴らしかった! そして映画
の最後に、原作者でありミラルのモデルであるルーラ・ジブリールが映し出され
る。映画女優顔負けの、その美しさに驚愕・・・。

ミラル3

 1993年、オスロ合意。世界中が歓喜に沸いたものの、ラビン首相は暗殺され、
「未だ和平に至らず」 のクレジットが虚しい。テロの止まないこの21世紀、恩讐
を越えてイスラエル人と愛し合うミラルの従兄や、血を分けた娘ではないミラル
を慈しみ育てたジャマールの「愛」に、かすかな希望を感じる。子どもたちは宝、
教育こそが国の未来
だと信じた、「ママ・ヒンドゥ」 の願いが、叶うときがきっと
来ますように。

 ( 『ミラル』 監督:ジュリアン・シュナーベル
     主演:ヒアム・アッバス、フリーダ・ピント/2010・仏、イスラエル、伊、印)
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2011-09-13 : 映画 : コメント : 4 : トラックバック : 4
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ミラル
 『ミラル』を渋谷のユーロスペースで見てきました。 (1)パレスチナを舞台とする作品ですが、予告編で見て良さそうだなと思い、また、『潜水服は蝶の夢を見る』(2008年:昨年9月12日の記事の中でも、若干触れています)の監督ジュリアン・シュナーベルの作品でもあるこ...
2011-09-12 21:20 : 映画的・絵画的・音楽的
「ミラル」
「Miral」 2010 フランス/イスラエル/イタリア/インド ヒンドゥ・フセイニに「シリアの花嫁/2004」「ミュンヘン/2005」「マリア/2006」「画家と庭師とカンパーニュ/2007」「扉をたたく人/2007」「リミッツ・オブ・コントロール/2009」のヒアム・アッバス。 ...
2011-09-12 21:20 : ヨーロッパ映画を観よう!
ミラル
『潜水服は蝶の夢を見る』のジュリアン・シュナーベル監督が、イスラエル出身の女性ジャーナリスト、ルーラ・ジブリールの実話を元に作り上げたヒューマンドラマだ。4人のパレスチナ人女性の過酷な人生と未来への希望を描き出している。出演は『スラムドック$ミリオネア...
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映画評「ミラル」
☆☆★(5点/10点満点中) 2010年フランス=イスラエル=イタリア=インド合作映画 監督ジュリアン・シュナーベル ネタバレあり
2013-01-19 10:38 : プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
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こんばんは。
わざわざTBをいただき、ありがとうございます。
昨日はNYで9.11関係の式典があったようですが、この映画は、宗教的・民族的な共存へ向けての「かすかな希望を感じ」とれる良質の映画ではないか、と思いました。
にもかかわらず、取り上げているブログが少ないのは、トテモ残念な気がします。
それにしても、「原作者でありミラルのモデルであるルーラ・ジブリール」の「映画女優顔負けの、その美しさ」には、おっしゃるとおり「驚愕」いたしました。
2011-09-12 21:53 : クマネズミ URL : 編集
つい先日もパレスチナの国連加盟に関して安全保障理事会で決議を図るのならば、アメリカは拒否権を発動するというニュースが流れましたよね。
結局は当事者同士の考え方ではなく相変わらずアメリカの思惑次第なんだなと再認識させられました。
監督はそのニュースを聞いてどう感じられたのでしょうか…
2011-09-13 02:27 : KLY URL : 編集
クマネズミさん、こちらにもコメント&TBありがとうございます。
この映画、描かれていることはもちろんですが映像も素晴らしいし、本当にもっと多くの方に観ていただきたい作品ですよね。
大阪では都心の劇場ではかからず、小さなミニシアターでの公開です。
私はレディーズデイに観たのですが、観客はまばらでした。残念ですね。
ルーラ・ジブリール本当に綺麗でしたよね、、モデルさんかと思いました!
9.11も、結局根っこはパレスチナ問題なんですよね、きっと・・・。
2011-09-13 09:11 : 真紅 URL : 編集
KLYさん、こんにちは! コメント&TBありがとうございます。
私もそのニュースは新聞で読みました。アメリカってとことんイスラエルの味方なんですよね。。
しかしアメリカの映画産業(だけではないですが)ってユダヤ系が主流派ですよね。
やっぱりフリーメイソンかしらん、、って話が都市伝説方面に行ってしまいますが(汗)。
ジュリアン・シュナーベルには、これからもどんどんいい作品を撮っていただきたいです。
2011-09-13 09:16 : 真紅 URL : 編集
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