追悼 ~『文盲 アゴタ・クリストフ自伝』

2011年7月26日、アゴタ・クリストフが亡くなった。享年76歳。
決して「早すぎる死」というわけではないかもしれない。しかし、その死を知っ
て衝撃を受けた。私が彼女の作品に初めて触れてから、まだたった一年しか
経っていない。そう考えると「早すぎる」し、自分は「遅すぎた」とも思う。
4歳で何でも読めた少女は、「ものを読まずにはいられない病」だった。第二
次大戦勃発直前のハンガリーの村に生まれ、1956年のハンガリー動乱の際、
スイスに亡命。時計工場で働きながら「敵語」としてのフランス語を学ぶ。自ら
を「文盲者」と定義しながら。
アイデンティティを形成し、思考のすべてを担ってきた母語を破壊し、読み書
きを始めて20年以上経っても習熟できないフランス語。彼女の作品群はその
「敵語」で書かれている。無骨なまでにソリッドな、極限まで削ぎ落とされたよう
な文体--我々を熱狂させ、震撼させた--が誕生した秘密がここにある。
彼女が生み出したリュカとクラウスの物語 『悪童日記』 『ふたりの証拠』
『第三の嘘』が世界で30以上の言語に訳され、ベストセラーとなったことは、
世界文学史上に永遠に刻まれる。それがアゴタ・クリストフという一人の亡命
者、挑戦し続けた「文盲者」の、苦難の歴史そのものだったとしても。
心よりご冥福をお祈りします。世紀の大傑作 『悪童』 三部作、未読の方
は是非。
( 『文盲 アゴタ・クリストフ自伝』 アゴタ・クリストフ:著、堀茂樹・訳/白水社・2006)
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アゴタ・クリストフ氏(ハンガリー出身の作家)が死去
読売新聞7月30日(土)14時32分配信
アゴタ・クリストフ氏 75歳(ハンガリー出身の作家)ハンガリー国営通信によると、26日、スイス・ヌーシャテルの自宅で死去。1956年のハンガリー動乱に際し...
2011-08-17 11:51 :
サーカスな日々
コメントの投稿
真紅さん、こんにちは!
そうっか、真紅さんは、彼女が亡くなる前に、作品を読まれていたのね・・・。
私は、つい最近読んだので、もう彼女がお亡くなりになられた後だったのよ。
この差って、大きいよね。
もうこの世にいらっしゃらない作家さんであるか、まだ存命でいらっしゃるか。
いやー、3作続けて読んだけど、すごかったわ。
かなりインパクトのある、凄い作品でした。
真紅さんが、数回取りあげていらっしゃるのも、納得です。
そうっか、真紅さんは、彼女が亡くなる前に、作品を読まれていたのね・・・。
私は、つい最近読んだので、もう彼女がお亡くなりになられた後だったのよ。
この差って、大きいよね。
もうこの世にいらっしゃらない作家さんであるか、まだ存命でいらっしゃるか。
いやー、3作続けて読んだけど、すごかったわ。
かなりインパクトのある、凄い作品でした。
真紅さんが、数回取りあげていらっしゃるのも、納得です。
2015-12-21 15:58 :
latifa URL :
編集
latifaさん、こんばんは~。コメントありがとうございます。
そうそう、日本で出版されてベストセラーになったときは読んでなくてね、何故か。
数年前に読んだよ。で、もう衝撃で・・・。震えるほどの衝撃だった。
latifaさんは今まで全く未読だったのかな?
ホント、この三部作は凄いよね~。
昨年だったかな、映画化された作品がイメージを損ねてなくて安心したよ。
作品に出逢って、作者が亡くなって、その作品が映画化されて。
感慨深いな~。
そうそう、日本で出版されてベストセラーになったときは読んでなくてね、何故か。
数年前に読んだよ。で、もう衝撃で・・・。震えるほどの衝撃だった。
latifaさんは今まで全く未読だったのかな?
ホント、この三部作は凄いよね~。
昨年だったかな、映画化された作品がイメージを損ねてなくて安心したよ。
作品に出逢って、作者が亡くなって、その作品が映画化されて。
感慨深いな~。