死と記憶との関係について~『翼』
翼

 浜松光学の課長代理として法人営業に携わる田宮里江子は、長谷川岳志
十年ぶりに再会する。里江子の親友・聖子の恋人だった岳志は、里江子に初め
て会った翌日、唐突にプロポーズしてきたのだった。 「きみだけは何があっても
僕は赦そう」


 「死様」というテーマ6人の作家が競作し、6冊同時に刊行された中の一冊。
白石一文さんの作品は、人生における選択や運命について、深い考察に誘わ
れるような作風が特徴。まだまだ白石作品は初心者の私だけれど、この独特
の理屈っぽさ、運命論者的な立ち位置
が心地よくてハマっている。本作は、人
間のについては勿論、「ただ一人の相手」に巡り会うこと、その直感を信じる
覚悟の大切さ、生まれた瞬間から「死」に向かう人間が何故愛し合い、子孫を
残し続けるのか
についてが語られる。読みながら、深く深く頷いている自分が
いた。

 自分自身の死よりも、致命的な死「自分のことを最も深く理解できるのは決
して自分自身とは限らない」
 確かにそうかもしれない。死が「記憶の消滅」
あるならば、近親者の死が悲しいのは、自分についての記憶が消滅してしまう
からなのかもしれない。それはある意味、自分の死でもあるから。

 そして常々、私が感じていたことがはっきりと書かれていた。

 「出産というのは、実は、夫と妻との間を引き離す、とても恐ろしい行為なの
  かもしれません。生まれた子どもによって夫婦はより強く繋がれるように見
  えるけれど、本当は、その反対にもう二度と直接には繋がらなくなるのかも
  しれない」


 直感を信じる覚悟が持てなかった里江子の「生きながらの死」絶望的な結末
の読後感は心地よいものではない。しかし、様々な考察の余韻が残る作品であ
ることは間違いないと思うのだ。

 ( 『翼』 白石一文・著/2011・光文社)
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テーマ:オススメ本 - ジャンル:小説・文学

[2011/08/10 09:39] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(2) |
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コメント
こんにちは
<深く深く頷いている自分>
同感です。そういった自分に出会いたいから
新作に手を出すんだな・・・って思っています。
岳志が迷いなくああまで言い切ってしまうのも
逆に、うらやましくも感じますよ。
翼っていう題名がわかる・・最後のシーン
ちょっとウルウルしてしまいましたわ。
今回も良いですね。白石仲間身近では
少ないので・・・笑、また付き合ってね。
ではでは・・。
[2011/08/11 15:30] URL | みみこ #mQop/nM. [ 編集 ]
みみこさん、こんにちは! コメント&TBありがとうございます。
白石さんの作品って、人生とか運命とか考えさせられる要素がいつもツボで、好きですわ~。
確かに、岳志のあの迷いのなさは凄いですよね。。
でも、じゃあそれなら聖子の人生は何なの、彼女の「運命の人」は誰なの? って言われたら答えようがないのが辛いところで・・・。
「運命」か「ただの思い込み」か、紙一重ですよね。
信じるか信じないか、、それはあなた次第です、って都市伝説みたいですが(笑)。
こちらこそ、また何か読めばお邪魔しますね♪
[2011/08/11 20:34] URL | 真紅 #V5.g6cOI [ 編集 ]
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翼    著   白石  一文
翼    著   白石  一文 田宮里江子はキャリアウーマン。 仕事途中に具合が悪くなり、職場近くのクリニックで 長谷川岳志と再会した。 岳志は医師で、里江子の親友・聖子の夫でもあった。 ...
[2011/08/11 15:32] ちょっとお話
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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