映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅

生まれて~『ふがいない僕は空を見た』

ふがいない僕は

 助産院を営む母と暮らす高校生の斉藤卓巳は、川向こうに住む主婦「あんず」
不倫の関係にあった。同級生の松永七菜に告白された卓巳は、あんずとの関係
断ち切ろうとするが・・・。

 2010年「本の雑誌」ベストテン第1位、2011年本屋大賞第二位、第24回山本
周五郎賞受賞
と、超話題の作品。やっと読めました。期待に違わず、引き込まれ
一気読み。5篇から成る連作短編集で、それぞれのエピソードは有機的に繋が
り、悲喜こもごもの物語は季節を一巡りして完結する。

 第一篇「ミクマリ」は、第8回「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作
当初、他の4篇の構想はなかったという。不倫、不妊、引きこもり、貧困、児童
虐待、幼児性愛、カルト、ネット犯罪
と、現代における諸々の問題を盛り込み
つつ、どんなに愛があろうと決して無傷には生きられない人生の不条理を、大
らかな母性で包み込むような作品。5篇それぞれに感情を揺さぶられ、涙腺は
決壊
した。いい意味でウェットな、羊水体液や、に満たされたような
読後感。私は読みながら、ペドロ・アルモドバル『オール・アバウト・マイ・マ
ザー』
を思い出していた。

 「絶頂って幸福の絶頂という意味なんだ」

 どうかこの物語を、「モラル」という言葉を盾に攻め立てないで欲しい。それ
ぞれに生まれ落ちた環境で、懸命に生きている彼らを。人は誰しも、言葉で
は表せない感情に呑み込まれ、理性を失うこともある。Iの前にHがあるよう
に、身体の関係を結んだからこそ生まれる愛もあるのだから。

 しかし、この息苦しい社会は、感情に身を任せることを好しとしない、無言
の圧力
に支配されている。時に孤立し、攻撃され、辛いことばかりのようなこ
の人生に、生まれてくる意味などあるのだろうか? 無力な母親は、我が子
をお守り下さいと神に祈る
しかない。それでも人生にイエスと、著者は言う。

 季節は巡り傷は時が癒し新しい命は育まれる。「ふがいない僕」は、母
である私が引き受けよう
勇気を持って、ね。

 ( 『ふがいない僕は空を見た』 窪美澄・著/新潮社・2010)
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ジャンル : 本・雑誌

2011-07-31 : 読書 : コメント : 5 : トラックバック : 2
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「ふがいない僕は空を見た」感想
窪美澄さんの本は初めて読みます。これが面白かったので、他の本も是非読んでみたいです。
2012-06-21 17:07 : ポコアポコヤ
ふがいない僕は空を見た
ふがいない僕は空を見た 感想 全部で5編の連作短編集。 第1話「ミクマリ」は第8回女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。 性描写きついです。 電車の中で途中まで読んでい...
2012-07-20 15:39 : ちょっとお話
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非公開コメント

真紅さん~こんにちは♪
これ、良かったねぇ・・・^^
面白かった。

真紅さん、この本好きかも?って思って
やってきたら、やっぱりあった!!

今度映画化するんだってね?
そちらも興味あるわー。
2012-06-21 17:09 : latifa URL : 編集
latifaさん、こんにちは~。コメント&TBありがとうございます。
うわ~、これ一年前に読んだ本だ、既に懐かしい。。

そう、映画化されるんだよね。瑛太くんの弟、っていうのがちょっと??だけど。
田畑智子さんはね、最近デビュー作の『お引っ越し』を観たんだけど、すごかった、天才子役だ!って。
顔が変わってないのが微笑ましかった。
あんず役、かなりのチャレンジだよね、頑張ってほしいな~。
2012-06-22 08:35 : 真紅 URL : 編集
お邪魔します~~
私も読んだわ。
最初はビックリ・・
どうしようかと思ったけど
最後まで読んで、いろいろなこと考えちゃった。
そうだよね、懸命に生きているんだよね・・みんな。
とにかくこの作品をどうやって映画化するのかっていうことに興味あるわ。楽しみだよね
2012-07-20 15:31 : みみこ URL : 編集
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2012-07-20 15:38 : : 編集
みみこさん、こんにちは! コメント&TBありがとうございます。
これ、タイトルが好きなんですよ。
元々はR-18対象の作品だっただけに、初めは過激ですよね。
でも、連作を最後まで読むと感じるものがありましたね。
映画化は、たぶんその「過激」な部分を活かして映像化するのだろうけど。。
期待半分、不安半分で待とうと思っています♪
2012-07-20 18:06 : 真紅 URL : 編集
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