過去と向き合うということ。~『マイ・バック・ページ ある60年代の物語』
マイ・バック・ページ

 評論家・川本三郎氏の、雑誌記者時代の回想録映画化をきっかけに、1988
年に出版された本が復刊された。

 川本三郎氏の文章--評論やエッセイ--が大好きで、そのリリカルな文体
にずっと惹かれてきた。穏やかで、「お坊ちゃん」風なイメージを勝手に抱いてい
たのだが、素顔の川本氏は実は血の気の多いウェットな方だということを、いま
も、君を想う
を読んで初めて知った。そして、ある事件に関わって逮捕され、
日新聞社を解雇
されたことも。

 東大を卒業し、当時は珍しかった就職浪人までして入った朝日新聞社。雑誌
記者として駆け出しの時代、先輩や同僚と殴り合いのケンカをしていた川本氏
は、Kと名乗る学生運動家と出逢う。

 ジャーナリストとしての「最低限のモラル」ニュースソースの秘匿を守るた
めに、自衛官殺害事件を起こしたKを通報せず、川本氏は罪に問われる

 時代のムードもあったのだろう。「若気の至り」でもあったのだろう。私にはど
うしても、このKという人物が、川本氏が人生を賭してまで守るべきだった人間
だとは到底思えなかった
。これは「思想犯の政治事件」などではなく、「殺人
事件」
であることに疑いの余地はない。人はジャーナリストである前に、「生活
者」であるべき
であり、その感覚を失ってしまっていた川本氏が逮捕・解雇
れたのも当然と言うほかないだろう。

 しかし、私の敬愛する川本氏の文体--抑制された、静かな諦観が滲んで
いるような
--が生まれた背景には、この消しようのない「過去」常に向き合
いながら文章を紡ぐ
、氏の「決意」があることに感銘を受ける。

 5月28日公開予定の映画は、川本氏を妻夫木聡が、Kを松山ケンイチが演
じる。監督は山下敦弘期待してます

マイ・バック・ページ2

 ( 『マイ・バック・ページ ある60年代の物語』 川本三郎・著/平凡社・2010)
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[2011/04/11 17:53] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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