『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』

1968年、イリノイ州シカゴ
FBIから 「ネズミ」 としてブラックパンサー党に送り込まれたビル・オニールはカリスマ的指導者フレッド・ハンプトンに近づいてゆく
「ジュダス・アンド・ザ・ブラックメサイア」 とカタカナ読みで紹介されていたアカデミー賞二部門受賞作
公開を楽しみにしていたのに円盤スルーでがっかり、、、
レンタルに行かねばと思いつつなかなかでしたがNetflixが配信してくれました!
Netflixマジありがとう(ちなみに3/26にwowowシネマでも放映予定あり)
いや〜めちゃくちゃ面白かったです
アカデミー賞助演男優賞受賞したダニエル・カルーヤが演じたフレッド・ハンプトンは 『シカゴ7裁判』 でケルヴィン・ハリソンJr.が演じた人物
そう、あの映画と同時代の話なんですよね
そして 『セバーグ』 とも同時代なのです
偶然なのですがちょっとビックリ
いや〜ダニエル・カルーヤがめちゃいいです
フレッド・ハンプトンのカリスマはもちろん素の男の子なところがまた上手い!
めっちゃキュート♪なんですよ、、、そりゃあまだ21歳だったのだものね(涙)
同じく助演男優賞ノミネートのラキース・スタンフィールド(好き)もさすがの演技
FBIに対する恐怖、フレッドに対する畏怖と憧憬と忠誠に揺れ動く感情を絶妙な表情演技で見せてくれる
『ゲット・アウト』 コンビいいですね~
そしてジェシー・プレモンスですよ!
何を考えているのかわからない不気味な存在感のある役を演じさせたらこの人ピカイチですね
こんな風に数々の作品での積み重ねがあっての 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 アカデミー賞ノミネートなんだなぁ
しかし本作でもFBIのエグいことエグいこと
冒頭と繋がるラストシーン、キャプションで語られるその後の 「真実」 に震えます
これマジで劇場公開して欲しかった
名作では?
( 『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』 監督・シャカ・キング/
主演:ダニエル・カルーヤ、ラキース・スタンフィールド/2021・USA)
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『セバーグ』

1968年、ジーン・セバーグはブラックパンサー党の思想に共感し彼らの活動を援助するのだが、、、
FBIに監視され精神を病んだ女優ジーン・セバーグの伝記映画
クリステン・スチュワートが主演と聞いて楽しみにしていましたが配信スルー
でも観られてよかった
Netflixありがとう
描かれるのは彼女の後半生の数年のみですが衝撃的な内容です
まず、ジーン・セバーグってアメリカンだったのですね(そこから)
『勝手にしやがれ』 のイメージが強くてフランス人だと思っていました(無知)
正直、それが一番の衝撃だった(笑)
そして彼女、僅か40歳で亡くなっていたとは
原因はFBI絡みかと察せられる作品です
セシルカットのクリステンがいいですね
彼女 『スペンサー』 も控えているし実在の人物を演じることが続きましたね
しかも2人とも悲劇的な人物、、、ううう
60年代ファッションも素敵
もちろんおシャネルも協力しております
映画としては、、、うーん
彼女を監視するFBI捜査官ジャック・オコンネルが第二の主人公なのですが
まぁ相手は誰もが知る有名女優ですからついつい監視対象に感情移入してしまうわけですよ、彼が
それは正義感からと言うよりも恋心だったと私は感じました
その恋愛感情がうっとおしいねん!
いやいやジャック(役名も)、止めとけよ~って感じですよ
妻がマーガレット・クワリーなのにさぁ
まぁジーンもブラックパンサー党の幹部(アンソニー・マッキー)とあっと言う間に男女の関係になるわけですが(唖然)
冒頭で、ジーンの夫(フランスの作家でロマン・ガリーという方、もちろん今回初めて知りました)も女子大生と浮気してる、みたいな匂わせがあるのですが
それとこれとは別よねぇ
しかし当時FBIのやることは相当エグかったようですね
権力を笠にやりたい放題ですよ、犬~!(怒)
ラストの展開は荒唐無稽過ぎてちょっと引きましたが
(不倫以外は)全く正しいこと、善きことをしていたはずのジーン・セバーグが気の毒でたまりません
しかし私たちはあなたを忘れないから
これからも作品で彼女を偲びましょう
( 『セバーグ』 監督:ベネディクト・アンドリューズ/主演:クリステン・スチュワート/2019・英、米)
『夏物語』

著者の作品からは(理由あって)少し離れていたのだけれど、この作品は読みたくて読みたくて
なんせナタリー・ポートマンも読んでいる、村上春樹も大絶賛
文庫になって即購入
しかし、、、
なんか既読感が、、、と思ったらこれ、『乳と卵』 のリライトなんですね(第一部)
だからナタポーが持っていた本が 『Breasts and Eggs』 だったんだ(納得)
そう気づいたら読み進むのがしんどくてしんどくて
やっと第一部を読了してしばらく(数ヶ月)放置していた
第二部以降、読み始めると速かった
著者の(いい意味での)しつこさ-自分の中のテーマを深く深く掘り下げ考え続ける姿勢-が効いている
それがこの長編小説を読むべきもの、価値あるものにしている
とても真摯で誠実なものを受け取った気分
話題の反出生主義とか精子提供による出産とかアセクシャルとか
本書を巡るキーワードは多々あるけれど
「子どもを持つということ」 を考え続けた一人の女性を巡る物語です
紺野さんの鋏のところで一番泣いた
私は夏子や遊佐のように強い人間ではないから
紺野さんのようにしか生きられない人の気持ちがよくわかる
紺野さんは夏子が好きだったんだな
あこがれと言ってもいいかも
自分の大切なものを褒められてうれしかったんだな
それが 「鋏」 だったことが象徴するもの
これで断ち切って
これで闘って、と
善さんを救って欲しかった
善さんが背負わされたものが重すぎる
せめてその重みを彼女が誰かと共有できたらよかったのに
彼女といるとしんどくなった逢沢の気持ちもわかるけれど
人は子どもの頃、どれだけ愛されたかでその後の生き方が変わってくるのだろう
コミばあや母や巻子に愛された記憶が夏子を生かしている
夏子は自分の子どもに会いたいこと以上に、彼女たちの時間を追体験したいのではないかと思う
母の時間、祖母の時間、小さな誰かを愛する時間
そして今は変わってしまった成瀬くんにも、夏子は生かされている
川上未映子の長編を読むといつも村上春樹の 『ノルウェイの森』 を思い出す
内容じゃなくて構成が似てると思うのです
好き嫌いはもちろんあるでしょう
でも本当に読む価値のある、考えさせられる作品だと思う

( 『夏物語』川上未映子著・文春文庫 )