『セインツ -約束の果て-』

Ain't Them Bodies Saints
テキサスの荒地。ボブ(ケイシー・アフレック)とルース(ルーニー・マーラ)は強盗に手を染めながら愛し合うカップルだったが、保安官を撃ってしまい捕えられる。妊娠中のルースをかばい、ボブは一人罪を受け入れ収監される。4年後、娘を育てながら暮らすルースの元に、ボブが脱獄したとの知らせがもたらされ・・・。
デヴィッド・ロウリー監督の 『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』 が11月に公開される。待って、待って、待ち続けていたので、とてもとてもうれしい。公開決定記念に、観逃していた本作を鑑賞。監督が、同じ主演ふたりで撮った2013年の作品。銃やならず者が登場する暴力的な描写が少なくないにもかかわらず、静謐で繊細で美しく、“Fragile” という言葉がしっくりくる。映像はテレンス・マリックばり、と言ったら褒め過ぎだろうか?
毀誉褒貶あるケイシー・アフレックだが、私はこの人がどうしても嫌いになれない。兄ベンとは似ていないな、といつも思うのだけれど、今回初めて似ていると感じるショットがあった。彼と、どの作品でもこの世のものとは思えない儚さを醸し出すルーニー・マーラとのケミストリーは抜群。罪を犯してきたふたりだけれど、互いへの想い(一つの魂の片割れ)だけは純粋で迷いがない。しかし娘が生まれたことで、二人の未来へのまなざしはすれ違う。愛だけを信じ続ける男と、娘を育てること、娘の人生を担わねばならない女。それは子どもをもうけたどんな男女にでも起こりがちなこと。それでも、少しだけ開いた扉に全てを察したルースに、涙、涙・・・。
11月が待ち遠しい。

追記 ★★★ ネタバレ ★★★
(この映画、ワンシーンだけフレディ・マーキュリーが出てきます。ビックリ)
( 『セインツ -約束の果て-』 監督・脚本:デヴィッド・ロウリー/
主演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ/2013・USA)
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Xデー~『ゴッズ・オウン・カントリー』#8
先日シネマートに行くと、「のむコレ2018」 の告知が掲示されていました。
※ 追記 : 上映日はその後変更されました。11月3日に上映はありません ※

心斎橋での上映は11月3日(土)、一度きりです。前日からオールナイト上映もあるらしいのですが、そちらに含まれるのか? は不明です。スケジュール発表は10月20日(土)だそう。待ち遠しいですね、、、てか落ち着かないですね~。
これから11月まで、↑の告知がシネマートにあると思うとソワソワします。新宿は4回上映されるらしいので、大阪よりはたくさんの方が観られますね! 7月のレインボー・リール映画祭で観逃した方も、是非是非。
この映画が少しでも多くの人々に届きますように! ↓キャスト一同お待ちしております(笑)。

※ 追記 : 上映日はその後変更されました。11月3日に上映はありません ※

心斎橋での上映は11月3日(土)、一度きりです。前日からオールナイト上映もあるらしいのですが、そちらに含まれるのか? は不明です。スケジュール発表は10月20日(土)だそう。待ち遠しいですね、、、てか落ち着かないですね~。
これから11月まで、↑の告知がシネマートにあると思うとソワソワします。新宿は4回上映されるらしいので、大阪よりはたくさんの方が観られますね! 7月のレインボー・リール映画祭で観逃した方も、是非是非。
この映画が少しでも多くの人々に届きますように! ↓キャスト一同お待ちしております(笑)。

2018-09-24 :
GOD’S OWN COUNTRY :
コメント : 0 :
映画界のストラディバリウス~『アラン・ドロン ラストメッセージ』
パトリス・ルコント曰く。 「アラン・ドロンは映画界のストラディバリウスだ」

NHKBSで放映された 『アラン・ドロン ラストメッセージ ~映画 人生 そして孤独』 を観ました。
御歳82、俳優業引退を表明した稀代の美男子、ラストインタビューと銘打たれた番組。さすがにおじいちゃんにはなっているけれど、その碧い瞳の美しさは変わらない。

4歳の時に両親が離婚して里子に出されたとか、家を出たくて志願してインドシナ戦線に従軍したとか。帰還後はパリで暮らし 「私は女性にモテまくった」 はい、人類誰一人として否定はいたしません(笑)。

9月最終週はアラン・ドロン主演作が5日連続で放映されます! 録画、録画~♪ でも アラン・ドロン自身が一番好きだと言う 『サムライ』 はやらないのね。。


NHKBSで放映された 『アラン・ドロン ラストメッセージ ~映画 人生 そして孤独』 を観ました。
御歳82、俳優業引退を表明した稀代の美男子、ラストインタビューと銘打たれた番組。さすがにおじいちゃんにはなっているけれど、その碧い瞳の美しさは変わらない。

4歳の時に両親が離婚して里子に出されたとか、家を出たくて志願してインドシナ戦線に従軍したとか。帰還後はパリで暮らし 「私は女性にモテまくった」 はい、人類誰一人として否定はいたしません(笑)。

9月最終週はアラン・ドロン主演作が5日連続で放映されます! 録画、録画~♪ でも アラン・ドロン自身が一番好きだと言う 『サムライ』 はやらないのね。。

人は変わることができる~『ゴッズ・オウン・カントリー』#7

★ 全面的にネタバレしています ★
これは監督フランシス・リーのフェティシズムだと思うのだけれど、この映画は手のクローズアップが多用されている。ジョニーの大きくて、少し汚れていたりする手。牛の背を撫で、煙草を吸い、干し草を握りしめる手。ジョシュ・オコナーのキャスティングには、この手が大きな意味を持ったのではないかと想像する。ジョニーが完全に恋に堕ちる瞬間も、その 「手」 がきっかけの名場面だ。
物語の始まりと終わりで、主人公ジョニーは別人のように変化するが、ゲオルゲと出会い、共に酪農仕事をする中で、ジョニーが決定的に変わる瞬間がある。母のいない子羊に、ゲオルゲがジャケットを着せ、「里子」 に出すシーン(初見時、このシーンは結構な衝撃だった)。母のいないジョニーは、この子羊に自分を重ねていたのかもしれない。ここで彼は、劇中初めての笑顔を見せるのだ。食事のテーブルを整え、感情的になるジョニーをいさめ、無言のまま仕事をする背中を見せるゲオルゲは、母性と父性を同時に持ち合わせた、包容力の塊のような人物。そしてベッドでの作法までジョニーに教え導くのだから、どれだけ有能な人材だよ、と思う。ジョニーでなくとも惚れるしかないではないか。
この映画は 「ヨークシャーのブロークバック・マウンテン」 とか 「英国版ブロークバック・マウンテン」 とか、「ハッピーエンドのブロークバック・マウンテン」 などと呼ばれている。何回観ても飽きないのは、映像やストーリー、演技の素晴らしさはもちろん、ハッピー・エンディングであることが大きいと思う。脚本も書いているフランシス・リーは 「ゲイが悲しい思いをする物語は、もう観たくなかった」 とどこかで語っていた。確かに、私たちは今までどれほど、ゲイの主人公たちが置かれた悲惨な状況に涙してきただろう? 周囲の無理解、拒絶、暴力、そして 「死」。個人的にはとても大切な映画だけれど、『ブロークバック・マウンテン』 のDVDを取り出して観ようという気持ちにはなかなかなれない。あの映画の悲劇は、ヒース・レジャーの夭折という悲し過ぎる現実とリンクしてしまい、いまだに向き合うことが難しい。
自らを取り巻くままならない状況にいら立ち、何もかもを諦めて心を閉ざしていた主人公が、もしかしたら自分は 「幸せ」 になれるのかもしれない、そう望んでもいいのかもしれない、と思い始める。その思いは厳格だった父と祖母を変え、自らも大きく変わってゆく姿は感動的で、何度観ても涙が流れる。もちろん、それは簡単な道ではない。主人公は(結果的に)幸運すぎると思う方もいるかもしれない。しかし、それでもいいじゃないか。21世紀なのだ。もう、幸せになってもいいよ。少しの勇気を出して。堂々と。
この映画を必要としている人は、きっとたくさんいると思う。東京と大阪だけじゃなくて、日本のいくつもの片隅に、本当にたくさんいると思う。一人でも多くの人に、この希望に満ちた力強い映画が届いてほしいと願う。「人は変わることができる」。監督の故郷・ヨークシャーへの愛に溢れたエンドロールも含め、是非その目と心に刻んでほしい。
2018-09-20 :
GOD’S OWN COUNTRY :
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最上のわざ
この世の最上のわざは何?
楽しい心で年をとり、
働きたいけれども休み、
しゃべりたいけれども黙り、
失望しそうなときに希望し、
従順に、平静に、おのれの十字架をになう。
若者が元気いっぱいで神の道を歩むのを見ても、ねたまず、
人のために働くよりも、
謙虚に人の世話になり、
弱って、もはや人のために役だたずとも、
親切で柔和であること。
老いの重荷は神の賜物。
古びた心に、これで最後のみがきをかける。
まことのふるさとへ行くために。
==================================
この詩は映画 『ツナグ』 で樹木希林さんが朗読されていたものです。
エンドロールに流れた主題歌 『ありがとう』 とともに、忘れられない言葉です。
聞きながら涙が止まらなかった。
希林さん、もう 「まことのふるさと」 へは着かれましたか?
偉大なる女優、樹木希林さんのご冥福をお祈りします。

のむコレ2018@シネマート新宿/心斎橋 フライヤー~『ゴッズ・オウン・カントリー』#6

土曜日、仕事終わりにシネマートに走って行ってフライヤー貰って来ました!
心斎橋では一回限りの上映だそうで・・・。チケット取れるかな〜って心配するアタシにカウンターのお兄さんは 「どんな人気作品でも、発売直後に売り切れることはないですよ〜」 って。ホンマ? ホンマに? 瞬殺やったらどーしてくれるん? と思いつつ。
しかしこの 「日本で観られるのは、これで最後!」 って文字が悲し過ぎる・・・。
どうして 「一般公開もDVD発売もない」 とされているんだろう? それはあくまで 「予定」 ではないの? 今後、大逆転のウルトラCで全国公開されたりしないのかな? う~ん、配給の仕組みがわからないけど、諦め切れないな〜。
とにかく死ぬ気でチケット取らねば!
祝☆劇場公開決定!~『ゴッズ・オウン・カントリー』#5

映画 『ゴッズ・オウン・カントリー』 が11月に劇場公開されます!!(拍手!!)
新宿/心斎橋のシネマートで開催される 「のむコレ2018」 にて上映されることが正式発表されました! 詳細は下記サイトをご覧下さい。
(公式サイト)
(映画.com作品ページ)
この映画、何度も書いていますが本当に素晴らしい作品です。新人監督の小さな映画なので、オスカーなど大きな映画賞には無縁です。しかしそれは単にプロモーションの問題であり、インディペンデント映画祭では数々受賞、Rottentomatoes など批評サイトでも高く評価されています。日本で配給がつかなかったのが謎で、本当に残念で歯がゆくてたまらないのですが、なんと有志の方が 「 『ゴッズ・オウン・カントリー』 上映委員会」 を立ち上げ、権利を買い付けてくださって上映に至ったそうです。感動ですね・・・。委員会の方々には、本当に感謝しかありません。ありがとうございます。
東京と大阪だけ、というのが個人的には心苦しいのですが、是非足を運んでいただけたらと思います。・・・って関係者みたいな発言ですが(笑)。詳しい上映スケジュールなどは今週末以降に発表になるようです。約1ヶ月の開催期間中に何度か上映されると信じたいですね。野村さん、どうかよろしくお願いします!!
私の今年のベストワンは多分この作品になると思います。と言うか、生涯ベストワンかもしれません。

2018-09-11 :
GOD’S OWN COUNTRY :
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『静かなる叫び』

1989年12月6日、カナダ・モントリオール理工大学で起きた女子学生銃殺事件。モノクロームの映像で、事件の当事者たちを描く。衝撃的な史実に基づいた物語。監督・脚本はドゥニ・ヴィルヌーヴ。2009年の作品。
この映画を観て、初めてこの事件のことを知った。あまりにも悲惨な事件で、犯人が許せなくて、頭がおかしくなりそうだった。
私は女だけれど、フェミニズムという言葉が好きではない。マイオールタイムベストの一作 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 はフェミニズムの映画と言われていたが、私自身は感想にフェミニズムという言葉は使いたくなかった。だから敢えて 「ヒューマニズム」 と書いた。どうして好きではないのか、うまく説明はできないのだけれど・・・。この映画の犯人のように、フェミニズム自体に反対していたり、嫌悪しているわけではない。むしろ自分はフェミニストだと思っている。何だか矛盾しているようだけど。
この世界で女であること。それは 「産む性」 を担うということ。
「男の子なら愛を教え、女の子なら世界に羽ばたけと教える」
人間が、ただ人間としてフラットに、差別することもされることもなく公平に生きていける世界ならいいのに。男であろうと、女であろうと。そういう世界になれた時、「フェミニズム」 という言葉は消えてなくなっているのかもしれない。
『婚約者の友人』

1919年、ドイツの田舎町。戦争で婚約者フランツを亡くしたアンナ(パウラ・ベーア)は、墓地でフランス人青年アドリアン(ピエール・ニネ)と出逢う。フランスが好きだったフランツは生前パリに留学しており、アドリアンはそこでフランツと知り合ったと言う。失意の中にいたアンナは、そんなアドリアンに心を開いてゆくのだったが・・・。
監督・脚本はフランソワ・オゾン。私は彼の良き鑑賞者ではない。映画館で観た彼の作品は 『17歳』 だけ。というのも、そもそも彼の作品はミニシアター系と呼ばれ、関西では茶屋町の某劇場で公開されることが多い。個人的にあの劇場、苦手なのです・・・。おっと、それはまた別の話。今上映中の 『2重螺旋の恋人』 も、観逃し案件。多分。
だからついついオゾン作品は自宅鑑賞となるのだが、 「あー、これは映画館で観たかった!」 と思うことが多い。この作品も例に漏れず。映像、ストーリーテリング、コスチュームやプロダクションデザイン、全てが間違いなく一級品。唸りました。
オゾンにしては珍しく政治的なメッセージが込められている本作は、「嘘」 がテーマなのかなと思った。アンナの嘘、アドリアンの嘘。邦題もある意味嘘であるし、原題の 「FRANTZ」、亡くなったフランツも結果的に嘘をついている。けれど人は嘘なしには生きられない。何故なら、嘘は時に、真実よりも人を救うから。
アンナはその嘘ゆえに傷つき、今は居場所をなくしたように映る。しかし生きてさえいれば、また新しい嘘から人生をやり直すこともできるはず。自分は死ではなく、生を選ぶ。ラストシーンの彼女の瞳には、光が宿って見えた。
( 『婚約者の友人』 監督・脚本:フランソワ・オゾン/
主演:パウラ・ベーア、ピエール・ニネ/2016・仏、独)