We had the stars, you and I. ~『君の名前で僕を呼んで』#11

9月21日、いよいよ 『君の名前で僕を呼んで』 日本版DVD&BDが発売される。私は我慢出来ずにUS版を買ってしまったので、さほど飢餓感はなかったのだけれど・・・。各社の様々な特典を見比べて、やはりポストカードセットが欲しくなり予約してしまった。セリフや内容はもう頭に入っているけれど、コメンタリーに字幕が入るのがうれしい。レンタルも始まるのならば、劇場で観逃した方にも是非観ていただきたいと思う。
大好きな映画ではあるけれど、観る度にイヤ〜な気分になるシーンがある。エリオが、遊びに来たマルシアと庭の小さなプールで遊ぶシーン。「そこはエリオとオリヴァーの、ふたりのプールなのに!」 と思ってしまうのだ。
エリオの中では、マルシアと付き合うのもオリヴァーと愛し合うのも同時進行で何の屈託もなく、彼曰く 「パン屋と肉屋は競合しない」 のだそうである(原作より)。エリオ、上手いこと言うわ〜。座布団一枚! とか冗談を言っている場合ではないが、若さってそういうものなのかな? しかし映画では、明らかにエリオはオリヴァーへの当てつけでマルシアと付き合っているように見えるし、自分から電話しておいてマルシアの声もわからない(何て失礼なヤツだ)。オリヴァーからの電話は、別れて何ヶ月経ってもすぐにそれとわかるのに。
ルカ・グァダニーノ監督と原作者のアンドレ・アシマンは、「真剣に」 続編を構想していると聞く。映画は原作の途中までしか描かれておらず、エリオがどうしようもない心の痛みを噛みしめるように終わり、ハッピー・エンドではない。あのラストシーンは映画史クラスの名場面と言われていて、もちろんそれを否定はしない。しかし、この物語で重要なのは、エリオがその後どう生きたか、にあるのではないかと私は思っている。生涯一度の夏が終わり、父パールマン教授から贈られた言葉を、どう解釈し生きたのか。20年後の髭もじゃのエリオ。私の想像の中で、その姿はケイシー・アフレックなのであるが(インターステラー?)。もちろん、キャストはアーミーとティミー以外考えられないけれど・・・。何年後でもいい、続編を観たい。ずっとずっと待っています。
人生でたった一度、たった一つの星を見つけた二人は、肉体的に離れることはあっても、精神的に別れることはできない。エリオは、いやオリヴァーも、互いへの思いを胸に生涯を送るはず。この二人の関係を、「ソウルメイト」 という手垢のついた言葉で表現したくはない。それはどれほど稀有で、貴い関係であることか。この世界のどこかで、その人が生きている。その人を想う事ができる。その事実だけで、自分が生きている理由になる。そう考えると、この物語はバッドエンドになりようがないのだ。
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2018-08-29 :
CALL ME BY YOUR NAME :
コメント : 6 :
サム・フラクリン考 ←(訂正)サム・クラフリン考
※ ご指摘をいただきました、訂正します。サム・クラフリンファンの方、ごめんなさい!! ※

時折サム・フラクリンクラフリンについて考えている。最近考えているのはほぼ、ジョシュ・オコナーのことなのだが。
初めて彼を観たのは 『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』。しかしほとんど印象がない(そしてあの映画自体、内容が全く記憶にない)。はっきりと 「カッコええ〜!」 と意識したのはリリー・コリンズ主演の 『あと1センチの恋』。キタの単館案件だったので自宅鑑賞だったけれど、これは大好きな映画。「ネクスト・ヒュー・グラント来たな!」 と、ちょっと興奮したのを覚えている。
『世界一キライなあなたに』 『人生はシネマティック!』 は劇場鑑賞し、最近ジョシュとの共演作でもある 『ライオット・クラブ』 を観た。


美形にありがちな神経質そうな顔立ちゆえ、気難しくプライド高く、屈折した役柄がハマる。エイサ・バターフィールドくんらと共演した戦争映画(日本では未公開)での演技をジョシュが絶賛ツイートしていたし、演技力も確かだとは思うのだけれど、親しみやすさが薄いのが玉に瑕。それ故に大ブレイクには至らないのかな、と思ったり。オスカーや三大映画祭に絡むような作品に出られたら、知名度もアップするのかな。既婚者で、一児の父でもあるらしい彼。待機作はたくさんありそうなので、一作でも多く劇場公開されますように。


時折サム・
初めて彼を観たのは 『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』。しかしほとんど印象がない(そしてあの映画自体、内容が全く記憶にない)。はっきりと 「カッコええ〜!」 と意識したのはリリー・コリンズ主演の 『あと1センチの恋』。キタの単館案件だったので自宅鑑賞だったけれど、これは大好きな映画。「ネクスト・ヒュー・グラント来たな!」 と、ちょっと興奮したのを覚えている。
『世界一キライなあなたに』 『人生はシネマティック!』 は劇場鑑賞し、最近ジョシュとの共演作でもある 『ライオット・クラブ』 を観た。


美形にありがちな神経質そうな顔立ちゆえ、気難しくプライド高く、屈折した役柄がハマる。エイサ・バターフィールドくんらと共演した戦争映画(日本では未公開)での演技をジョシュが絶賛ツイートしていたし、演技力も確かだとは思うのだけれど、親しみやすさが薄いのが玉に瑕。それ故に大ブレイクには至らないのかな、と思ったり。オスカーや三大映画祭に絡むような作品に出られたら、知名度もアップするのかな。既婚者で、一児の父でもあるらしい彼。待機作はたくさんありそうなので、一作でも多く劇場公開されますように。

2018-08-27 :
YOU GUYS ARE KILLING ME :
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泣いて笑って~『モヒカン故郷に帰る』

モヒカン頭のバンドマン・永吉(松田龍平)は、同棲中の恋人・由佳(前田敦子)の妊娠をきっかけに、7年ぶりに帰省する。彼の故郷は瀬戸内海に浮かぶ島。酒屋を営む両親(柄本明、もたいまさこ)と、弟の浩二(千葉雄大)が暮らしている。
前田あっさん、結婚おめでとう☆記念に鑑賞。あ~、これどうして劇場鑑賞しなかったんだろう・・・大好きな沖田修一監督作なのに! 滅茶苦茶面白かった。笑って笑って、ホロリと泣けて。若手から古参まで、芸達者なキャストが最高だった。監督お得意の長回しも健在。ゆる~くてオフビートな笑いと、エモさが共存しているところはさすがです。あ、沖田監督といえば、最新作 『モリのいる場所』 も観なかったのだった・・・すみません。
しかし、あっちゃんが前髪クネ男と結婚するとはねぇ。お似合いだとは思うけど、ビックリ。ちなみにクドカンは以前、勝地涼のことを 「バカンサム」 と呼んでいました(笑)。そして、今は龍平がフリーですよ奥さん!(違) 瀬戸内の風景と、カープと永ちゃん愛に溢れたTシャツ映画。そしてブラバン映画でもある。夏休みに、自宅でぼーっと観るのに最適でした。映画版 『チア☆ダン』 の、デブキャラの子も出てますよ♪

( 『モヒカン故郷に帰る』 監督・脚本:沖田修一/2016・日本/
主演:松田龍平、前田敦子、千葉雄大、柄本明、もたいまさこ)
「好きな(映画)監督は?」

「映画好き?」 週一ペースでランチに行くお店で、オーナーシェフのNさんに声をかけられた。かばんに入れっ放しだったフライヤーを読んでいたので 「はい! 映画館で観るのが大好き」 と即答。するとすかさず 「好きな監督は?」 と彼が尋ねる。
少し面喰った。映画が好きだと言うと 「どんな映画観るんですか?」 とか 「今面白い映画やってます?」 と社交辞令的に言われることはあっても、好きな映画監督を訊かれたことは記憶にない。ほとんど反射的に、頭に浮かんだ名前を口に出す。「クリストファー・ノーラン」 え?
待って、アタシってクリストファー・ノーランが一番好きな映画監督なん? そうやったっけ? え、え、でも他に誰? などと一瞬パニックに陥っていると、Nさんが言う。「Christopher Nolan? オーケー。ワタシ、Jim Jarmusch.」 え? 恥ずかしながら聴き取れない(Nさんはアメリカンなのだ)。「?」 という顔をしていると、彼は更に言う。「PATERSON.」 ああ、パターソン、ジム・ジャームッシュね! ...ちょっと、何この敗北感(笑)。
Nさんは日本人の奥様と二人でお店を切り盛りされていて、2歳のお子さんがいる。だからなかなか映画を観に行けない。しかしパターソンはどうしても行きたくて、ベビーシッターをお願いしたのだそう。そうかそうか、子どもが小さいうちはなかなか映画館に行けないよね、とシミジミ相槌を打ちながら、頭の中では 「一番好きな映画監督って、誰だろう?」 と考えていた。王家衛? うむ。 ケン・ローチ? イ・チャンドン? ちょっとマニアックかな。宮崎駿? そうかも。リンクレイター? ジャン=マルク・ヴァレ? ドゥニ・ヴィルヌーヴ? 好きだけど一番じゃない。ミシェル・ゴンドリー? うーん、キリが無い!
『カメラを止めるな!』 の上田慎一郎監督が 「映画オールタイムベスト10+α」 をスマホのメモにしているのを見た。+αがめちゃめちゃ多くて、ああ、普通の映画好き青年やなぁ、と好感した。私もリストしておこう! と思ったりして。次、誰かに訊かれた時のためにね(笑)。
残暑お見舞い申し上げます
2018-08-12 :
YOU GUYS ARE KILLING ME :
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「ママ~、あれ何?」
先週の土曜日。朝一の回で 『カメラを止めるな!』 を観て、昼からは仕事で(大阪市内だけれど)出張へ。面白い映画を観た満足感で、暑いわりに足取りは軽かった。仕事は18時半過ぎまでかかり、ビルを出てもうすぐ駅、というところで気がついた。「iphoneがない!」 ギャーーーー!!
慌てて戻るも、ビルはシャッターが閉まり無人状態。あべので開催される 『マカロニほうれん荘展』 の初日に駆けつけるつもりだったので、気が焦っていたのだろう。片づけをバタバタして、確認するのを怠ってしまった。もう、展覧会どころじゃない。グッズを爆買いする気満々だったのに、一気にしぼんだ。何より、今日帰るかも? とLINEしてきた息子に連絡しないと、、、。公衆電話を探して10円玉を入れると、背後から子どもの声がした。
「ママ~、あれ何? 何してるの?」 「電話よ。お話するの」
ガーーーーン。今の子は家電の掛け方がわからない、と聞いたことはあるけど、公衆電話なんかもっと知らないんだろうなぁ。実際、私も公衆電話から掛けるなんて何年ぶり? 記憶にない。でも、こういうときやっぱり必要よね、公衆電話。
結局、真っ直ぐ帰宅した私が最初にしたのは、先代のiphoneの充電。LINEはダメだけど、電話帳は生きていたので何本か電話をした(iphone忘れてきた会社の人とか、すみません)。家電からの着信に、相手は一様に驚いて 「命の次に大事なスマホ忘れたん?」 とからかわれる。そして、Twitterとインスタにログイン。あ~、やっと落ち着いた。もう、iphoneなしの生活には戻れないなぁ。バックアップ取っとかないとね。紙で。反省。
週明け、朝一に受け取りに行ってiphoneは無事に戻った。でも疲れたよ~。。月曜からグッタリでした。以後気をつけます。
慌てて戻るも、ビルはシャッターが閉まり無人状態。あべので開催される 『マカロニほうれん荘展』 の初日に駆けつけるつもりだったので、気が焦っていたのだろう。片づけをバタバタして、確認するのを怠ってしまった。もう、展覧会どころじゃない。グッズを爆買いする気満々だったのに、一気にしぼんだ。何より、今日帰るかも? とLINEしてきた息子に連絡しないと、、、。公衆電話を探して10円玉を入れると、背後から子どもの声がした。
「ママ~、あれ何? 何してるの?」 「電話よ。お話するの」
ガーーーーン。今の子は家電の掛け方がわからない、と聞いたことはあるけど、公衆電話なんかもっと知らないんだろうなぁ。実際、私も公衆電話から掛けるなんて何年ぶり? 記憶にない。でも、こういうときやっぱり必要よね、公衆電話。
結局、真っ直ぐ帰宅した私が最初にしたのは、先代のiphoneの充電。LINEはダメだけど、電話帳は生きていたので何本か電話をした(iphone忘れてきた会社の人とか、すみません)。家電からの着信に、相手は一様に驚いて 「命の次に大事なスマホ忘れたん?」 とからかわれる。そして、Twitterとインスタにログイン。あ~、やっと落ち着いた。もう、iphoneなしの生活には戻れないなぁ。バックアップ取っとかないとね。紙で。反省。
週明け、朝一に受け取りに行ってiphoneは無事に戻った。でも疲れたよ~。。月曜からグッタリでした。以後気をつけます。
テーマ : こんな事がありました!
ジャンル : ブログ
『羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季』~God's Own Country#4

映画 『ゴッズ・オウン・カントリー』 の副読本として最高! という評判を聞きつけ、これは読まねば、と思った次の日に文庫版が出る!ラッキー♪とばかりに早速購入。
私は知らなかったのですが、昨年(2017年)の単行本出版時に日経新聞などで書評が出て、評判になっていたらしいですね。文庫化されるのが早く、早川さん激推しの理由も読めばわかります。とてもとてもとても素晴らしい本でした。
羊飼いの仕事の掟三カ条
一. 自分自身ではなく、羊と土地のために働くこと。
二. 「常に勝つことはできない」 と自覚すること。
三. ただ黙々と働くこと。
湖水地方といえば、日本ではまずピーターラビットでしょう。その生みの親、ビアトリクス・ポターも羊飼いだったことを今回初めて知りました。私たちが漠然と憧れる、風光明媚な景観はその土地を成すごく一部分でしかないのです。何百年にも渡って定住する土地への帰属意識と、家系(羊の系統)を守り続ける目的意識について。オックスフォード大を出て(ライオット・クラブのメンバーたちほどではないにしろ)望むならばどんな仕事にでも就けたであろう著者は、羊飼いであることへの迷いや屈託は一切ありません。ほとんど神話の一部のような祖父や先祖たちへの畏怖から、現実の厳しさまで。四季の出来事が語られ、最後の最後に、著者は自身の人生について改めて言及します。感動。
映画の中で、ジョニーとゲオルゲがしていた仕事がほぼそのまま描写されています。牧羊犬だけは映画に登場しなかったのですが、サックスビー家は本当に小さな規模の農場だからなのかな? と思ったり。ゲオルゲが作った子羊のための 「ジャケット」 や、石垣作り、羊の出産を手助けすること、などなど。改めて、羊飼いって本当に大変な仕事だなと思うと同時に、酔っぱらっても毎日毎日早起きして仕事に出ていたジョニー、結構偉いじゃん、と思ったり。父と息子の確執についても、シビアに語られます。
人間を 「迷える子羊」 と呼ぶなら、羊たちを導く羊飼いは 「神」 に近い存在なのでしょうか。著者が映画 『ゴッズ・オウン・カントリー』 をご覧になったのか、もしそうならどんな感想を持ったのか。とても興味があります。
( 『羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季』 ジェイムズ・リーバンクス:著、 濱野大道:訳
早川書房/ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
これぞアメリカ映画!~『ストリート・オブ・ファイヤー』

STREETS OF FIRE
A ROCK&ROLL FABLE
ANOTHER TIME ANOTHER PLACE...
ロックシンガー・エレン(ダイアン・レイン)は故郷での凱旋公演の最中、レイブン(ウィレム・デフォー)率いるギャング団に連れ去られる。街を離れていたエレンの元恋人・トム(マイケル・パレ)が呼び戻され、エレンを救出に向かうが・・・。
1984年公開作品を、デジタルリマスター版リバイバル上映にて鑑賞。当時も劇場鑑賞したので、30年以上ぶりの再見。この映画は自分の原点だな、と感じた。自分の原点を観た気がした。映画って、時をかける。最高。
実は私、何を隠そう 『リトル・ロマンス』 以来のダイアン・レインウォッチャーなのです。『アウトサイダー』 『ランブルフィッシュ』 で共演していたマット・ディロンのファンでもあったので、この映画の公開時は 「何でマットが相手役じゃないわけ?!」 と怒っていたと思う(笑)。彼女の出演作全てを観ているわけではないけれど、低迷期を経て 『運命の女』 で大復活したときはうれしかったなぁ。ジョシュ・ブローリンと結婚したときもうれしかった(別れたけど)。最近は、『ジャスティス・リーグ』 でのヘンリー・カヴィルの母親役があまりにも老けこんでいて、「ダイアン・レインをもっと綺麗に撮れ!」 ってザック・スナイダーに説教したかった。小一時間。
サイドを流すエレンの髪型、聖子ちゃんや明菜、アイドルはみんなやっていた。私の好きな色が赤なのも、この映画のダイアン・レインの衣装の刷り込みかもしれない(ちなみにデザインはジョルジオ・アルマーニだとか)。そして何よりも、このトムとエレンの関係性ですよ! 別れても好きな人、唯一無二の相手だとわかっているのに身を引くこと、でも何かあったらI’ll be there. 命懸け。これ! これですよ!! もう、こういう関係性が至高だと刷り込まれてしまっているところがある。全部、この映画のせいだったんだなぁ、と思う。
マイケル・パレは久々に観たらトム・ハーディみがあって驚いた。役名もトム・コーディって、そっくり(笑)。でも、今ひとつ突き抜け感がないというか、あの前髪ハラリ具合がナルを捨て切れていないところがある気がする。トムハはそういうとこ、無頓着だからな~。ウィレム・デフォーは変わらない歯並びと、素肌に黒のオーバーオールって出で立ちがインパクトあり過ぎで、見たことのない(そしてあまり見たくない)物体になっていた。強烈キャラ・女兵士マッコイ(エイミー・マディガン)のことは忘却の彼方だったけれど、ラストは結局そうなるか、という感じ。マッコイはこれからもずっと、トムに悪態つき続けるんだろうなぁ。彼と一緒にいるために。
この映画、ラストのライブシーンだけで一億点つけたいくらいなんだけど、スコアをライ・クーダーが手掛けている、っていうのも初めて知る新鮮な驚き。ライ・クーダーといえばもう、ブエナビスタでパリ・テキサスなのに。今思えばすごく贅沢。せっかくだから、ミュージカル映画として改めてデイミアン・チャゼルあたりがリメイクしませんかね? 彼が撮るならトム役はもちろん、ライアン・ゴズリングで! トムのキャラは 『ドライブ』 仕様でお願いしますね。雨の中のキスシーンは 『君に読む物語』 を思い出したし。あ、エドガー・ライトが撮ってくれてもうれしいな(妄想が止まらない)。
ある日、どこかで語られるロックンロールの寓話。それは時をかけ、いつの時代にも甦る。B級感満載で洗練とはほど遠いかもしれない映画だけれど、そこがいいのです。私にとっては 「これぞアメリカ映画」 な作品。これは映画館で観られてこその 「追体験」 だった。最高オブ最高。This is IT!!



( 『ストリート・オブ・ファイヤー』 監督・共同脚本:ウォルター・ヒル/
主演:マイケル・パレ、ダイアン・レイン、ウィレム・デフォー/1984・USA)
1分間の人生~『欲望の翼』

阿飛正傅
DAYS OF BEING WILD
1960年、香港。サッカー競技場の売り子スー(張曼玉マギー・チャン)は、コーラを買いに来たヨディ(張國榮レスリー・チャン)に声を掛けられる。「名前は?」
「1960年4月16日、3時1分前。君は僕といた。この1分間を忘れない」
2018年7月の終わり、20時40分スタートのレイトショー。平成最後の夏、火星大接近の夜に、この作品をやっとやっと、スクリーンで観ることができた。初めてDVDで観たのは一体何年前だろう? 世紀の大天才・王家衛ウォン・カーウァイの長編第二作。レスリーが亡くなり、マギーが引退状態である以外は、キャストは梁朝偉トニー・レオンはじめ劉嘉玲カリーナ・ラウ、劉徳華アンディ・ラウ、「歌神」張學友ジャッキー・チュンと、今も第一線で活躍する面々。彼らの若き姿に、胸がいっぱいになる。
キャストだけみると超豪華な青春群像劇なのだが、初めて観たときからそういう印象はない。レスリーの存在感が強烈過ぎるため、「脚のない鳥=ヨディの物語」 として記憶に刷り込まれてしまうのだ。ラテン・ミュージックをかけ、白いランニングとトランクスで踊るヨディ=レスリー。30年近く語り継がれているこの場面、芸術の神に愛された自らのナルシシズムを隠そうともせず、ただ音楽に身を任せる彼に、至高とは何か、天賦の才とは何かを感じずにはいられない。
今回、この物語はヨディの回想なのだな、と初めて気がついた。冒頭、フィリピンの熱帯雨林が車窓に流れる。ラスト近く、今際の際のヨディにタイドは問いかける。 「1960年4月16日、3時1分前を憶えているか?」 「あの女といた」。あの風景は、あの日からの記憶を 「走馬灯のように」 辿っているヨディの目に映る最後の記憶なのだ。
そして、同じ男を愛した二人の女、スーとミミ。これまで、結婚に憧れを抱く生真面目なスーに圧倒的に感情移入し、ギャーギャーと喚き散らす自己主張の塊のようなミミには嫌悪感があった。しかし、今回はつくづく、カリーナって美しいと思った。均整のとれたスタイルと、アイラインで強調させた目力、それだけじゃない。強く、逞しい女は美しい。惚れた男をどこまでも追い、国境を超える彼女は、どんな場所でも生き抜いてみせるであろう生命力に溢れていてまぶしい。
つい先日、トニー・レオンがジェット・トーン(ウォン・カーウァイが設立した映画製作会社)との契約を満了し、関係を解消したというニュースに衝撃を受けたばかり。ラストシーンは少し感傷的な気分で観てしまった。超ロマンチストなウォン・カーウァイは、役者に背中で語らせる。影帝トニーと、この涙の大天才とのコラボレーションをまだまだ観てみたかった。
字幕翻訳が、今年6月に亡くなった寺尾次郎氏だったことも記録しておきたい。合掌。

( 『欲望の翼』 監督・脚本:王家衛/1990・香港/
主演:張國榮、張曼玉、劉嘉玲、劉徳華、張學友、梁朝偉)