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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

『牯嶺街少年殺人事件』

クーリンチェ2







 A BRIGHTER SUMMER DAY


 1960年代初頭の台北。本省人と外省人はそれぞれにコミュニティを形成し、
子どもたちはそんな大人社会の微妙な空気を感じ取りながら成長していた。
建国中学昼間部の受験に失敗した小四(張震チャン・チェン)は夜間部に入学し、
小明(楊静怡リサ・ヤン)と出逢う。

 長らくDVD化も再上映もされなかった 「伝説の映画」 を、4Kレストア・デジ
タルリマスター、3間56分版にて劇場鑑賞。恋焦がれた作品を観られる高揚感
はありつつも、約4時間というランタイムに多少身構えていたが、全く長さは感
じなかった。敢えて前知識はほとんど入れず、ネタバレの類も一切スルーして
鑑賞したためか、衝撃的な終盤の展開に混乱し、しばし感情の整理が難しかっ
た。唯一無二、傑作中の大傑作と言われ続けてきた本作は、今回の再上映で
その評価をますます揺るぎないものにするのだと思う。私にとっても、生涯ベスト
の一本となった。

◆◇ 以下、内容とラストに言及しています


 闇に明りが灯るファーストシーンから、この映画は一貫して 「光と闇の拮抗」 
を描いている。光と闇、昼間部と夜間部、富める者と貧しい者。懐中電灯をお守り
のように手にする小四は、闇に必死で抗いながら生きるが、最後の最後で光を手
放し、闇の中へ堕ちてしまう。

 小四を演じ、本作で銀幕デビューした張震チャン・チェンは、初登場シーンから
ただならぬオーラを放つ。隠しようのない膝の長さと腰の高さ、小さな顔。声には
幼さが残るものの、眉間に寄る皺は40歳になった今と変わらない。思春期に本名
で実在の役、しかも非常に特異な役柄を演じた彼に、アイデンティティの危機は無
かったのだろうか。「僕が君を守るよ!」 という小四の叫びには、『リリィ・シュシュ
のすべて』 や 『高校教師』 を思い浮かべてしまった。しかしこの映画、一体どれ
ほどのフォロワーを生んだことだろう。

 どちらかといえば大人しく、成績も家族仲もよかった 「普通」 の少年。恋した
少女の不遇を嘆き、世の不平等、不公平を嘆いたやさしい彼が、一瞬、磔にされ
たイエス・キリストのように映るシーンがある。彼は自らを犠牲にしてでも、少女を
救いたかった。彼は決して小明を傷つけるつもりなどなかった。なのに、なぜ? 
私にはわからない。終盤、それまでほとんど登場しなかった信心深い次姉が小四
と関わり始めることが、鍵のような気がするのだけれど・・・。

 今は亡き監督、楊徳昌エドワード・ヤン。彼が一体どんな思いで、ラストシーンに
至る小四を撮ったのか聞いてみたい。監督は、自らを小四に投影しているに違い
ないから。

 もし、私がこの映画を25年前に観ることができていたならば、何をどう感じただ
ろう? 多分、次々に男を渡り歩いているように見える小明を、好きにはなれなか
ったと思う。しかし、今ならばわかる。彼女が生きてゆくためには、そうするしかな
かったのだということが。裕福な小馬の広い邸で、銃を手に無邪気に笑う小明を
見つめながら、私は理解した。この子はきっと、次は小馬の下へ行くのだろうと。
それは正しいことではないのかもしれない、しかし許されるべきことだと、今の私
ならわかる。

 子どもらしく、無邪気に恋することよりも、早く大人になることを求められた少女。
そして25年前ならば、これほどラストシーンに胸を締め付けられることもなかった
だろう。「89086」 と胸元に刺繍されたシャツを、じっと見つめる小四の母。日常的
な風景の中で、動かず、物言わぬその背中から溢れる絶対的な悲しみに、ただ涙
するしかなかった。

 台北の緑風、遠景からぼんやりと浮かび上がる2台の自転車。活き活きと描かれ
る脇役の少年少女たち。アーチ型の窓から差し込む陽光、日本家屋。私の大好き
な台湾映画は、全てこの映画と地続きなのだ。光と闇、それはまさしく 「映画その
もの」 であり、私は確信した。渇望され続けたこの映画こそが、「真の映画」 なの
だと。

クーリンチェ3

 ( 『牯嶺街少年殺人事件』 監督・共同脚本:楊徳昌エドワード・ヤン/
         主演:張震チャン・チェン、楊静怡リサ・ヤン/1991・台湾)
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2017-04-24 : 映画 : コメント : 6 : トラックバック : 2
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別の意味で面白かった。 『アシュラ』

 風邪をひいて少しシネマート心斎橋から遠ざかっていたら、『アシュラ』 が
今週末で終わってしまうではないか! 我らがファン・ジョンミンが出ているの
に!! 絶対この週末に観なくちゃだわ!!!

 というわけでクーリンチェ後、新装なったスタンダード・ブックストアで親の
敵か、ってくらい大量のローストチキンサンドを食べて落ち着きを取り戻し、
シネマートへリターン。

アシュラ

 一日一回上映となった件の 『アシュラ』 は席の埋まり具合もまばら。なのに、
ん?? 右隣に(普通の)お兄さんが座ってきたゾ。

 韓国映画 『アシュラ』 はかの国のお家芸(?)的政治家と検察、警察の汚職
と悪事、暴力を描いたバイオレンス。血糊の量はハンパなく、「痛タタタタ!」 な
描写のオンパレード。開始数分で早くも 「ぎゃあ~~~」 と思わず顔を覆って
いたら、ん?? 隣のお兄さんが私と同じ反応をしているゾ??

 その後も、チョン・ウソンがコップ食べたりチュ・ジフンが室長を突き落としたり
するたびに、お約束とばかりにお兄さん(おねえさん?)の乙女な反応は続く。
途中から、スクリーンよりお隣の反応が気になって、イタタなシーンで笑っている
ただのマゾ女になってしまった私だった。

 あー、面白かった。二重の意味で。おわり

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2017-04-23 : 映画雑談 : コメント : 4 :
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89086

 公開後すぐにでも観たかったのですが、風邪をひいてしまい。。(咳&鼻水で4時間はキツイ)
やっとやっと本日朝一、観て参りました。 『牯嶺街少年殺人事件』

 観了後、本当に久しぶりに感情が爆発してしまい号泣。(しかも、直後のトイレでも感情を立て
直せず、2時間後のチケットを買いに行ったカウンターで 「アシュラ」 とやっと言った後にも涙
ボロボロ。スタッフの方々がドン引きしていた^^;)

 エンドロールが短か過ぎるよ・・・。小四・・・。

小四

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2017-04-22 : 映画雑談 : コメント : 0 :
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