CIAウォーズ/ニートの覚醒~『エージェント・ウルトラ』
エージェント・ウルトラ




 AMERICAN ULTRA


 アメリカの片田舎のコンビニでバイトしながら、サルが主人公のマンガを描
き妄想に耽る青年マイク(ジェシー・アイゼンバーグ)。同棲中のガールフレン
ド、フィービー(クリステン・スチュワート)
とは、結婚を考えるほどラブラブ。そ
んなある夜、コンビニに謎の女が現れ、マイクに意味不明な言葉を投げかけ
る。

 ストーナーでパニック発作持ちで、街から出ることもできないヘタレニート
が、CIAの極秘プログラム 「ウルトラ計画」 で養成された、「JBもビックリ」 
の、まさかの最強エージェントだった・・・。

 2015年は 「スパイ映画の当たり年」 だったが、個人的にこの映画もそ
の系譜に加えたいと思う。面白かった♪ 「ハリウッドのニノ」 ことジェシー
・アイゼンバーグはお気に入り俳優。帰宅して、録画しっぱなしだった 『嗤
う分身』
 まで観てしまった。シュール!

エージェント・ウルトラ2

 なんでこんなしょーもない男に、クリステン・スチュワートみたいな我慢
強い美人
がくっついているんだ、、と思っていたら、そういうことだったの
ね。コメディとして笑って観ているけれど、こりゃCIAならやりかねない
と思ったり。←これって映画の観過ぎ?(笑) とりあえず、エドワード・ス
ノーデンの感想
が聞きたい。

 まぁ、いろんなスパイ映画のエッセンスが入っていて、それを思いっきり
B級にした感じ。でも私は好きですよ、ラストのアニメーションもかわいか
ったし。

エージェント・ウルトラ3

 ( 『エージェント・ウルトラ』 監督:ニマ・ヌリザデ/2015・米、スイス/
              主演:ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート
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[2016/02/24 12:30] | 映画 | トラックバック(16) | コメント(2) |
闘う男~『ウォーリアー』
ウォーリアー







 WARRIOR


 かつて酒乱だった父(ニック・ノルティ)の元に、母と逃げた下の息子トミー
(トム・ハーディ)
14年ぶりに帰ってくる。上の息子ブレンダン(ジョエル・エ
ドガートン)
高校教師となり、妻と二人の娘に囲まれて幸せに暮らしてい
たが、ある問題を抱えていた。

 別々に生きてきた父と二人の息子が、格闘技の世界で再び対峙する。
去と現在、愛と憎しみ
が交錯し、血しぶきと骨の砕ける音にベートーベンの 
「歓喜の歌」 が谺する。過去を悔い改め、真人間になろうとあがく父の贖罪
闘うことでしか感情を表現できない、弟トミーの深い深い悲しみ。そんな弟を、
文字通り全身全霊で受け止める兄。崇高ささえ感じさせる肉体のぶつかり合
いは、俳優の演技という枠を超え、私の全感情を支配する。

 本作の演技により、ニック・ノルティ第84回アカデミー賞助演男優賞にノ
ミネート
されている。スリップ(断酒している人が酒を呑んでしまうこと)した時
の彼の演技は絶賛に値するが、あり得ないことに日本では未公開。WOWO
Wにて鑑賞、

ウォーリアー2

 余白のある物語っていいな、と思う。

 この映画では、主人公たちの過去に 「何が」 あったのか、詳細に語られ
ることはない。どうしてトミーは母と逃げたのか。父の酒乱がどれほど彼らを
痛めつけたのか。なのに何故、トミーは酒瓶を手に父の元へ戻ったのか。ト
ミーはイラクで、どんな経験をしたのか。母と弟を裏切ったとき、ブレンダンは
どんな気持ちだったのか。主人公たちは言葉少なに語り、観る者はその 「余
白」
 に思いを馳せ、ラストシーンの先にある彼らの 「その後」 について、考
え続けることになる。そしてまたひとつ、「心に残る映画」 が生まれる。

 撮影中、実際に骨折したというトム・ハーディの強靭な肉体そのものが、ト
ミー・コンロンという昏い瞳をした寡黙な人間を雄弁に語る。全てを失い、長
い年月を経ても家族を許せなかった彼は、暴力と紙一重の闘いに身を投じ
ながら、愛を乞うていた。ファースト・クレジットはジョエル・エドガートンに譲っ
ても、その存在感は圧倒的。ますます彼が好きになった。私のT

ウォーリアー3

 また本作は、傍流のエピソードもそれぞれ印象深い。ブレンダンと、旧友で
あるトレーナーのフランク(フランク・グリロ)との関係は、妻テス(ジェニファー
・モリソン)
が 「ボーイフレンド」 と揶揄するほどに深い。個人的にはテスに
対し、 「二人を邪魔するな!」 と思いながら観ていたが(違)。ブレンダンが
勤務する高校の校長の、笑えるほどの 「いい人」 ぶりや、「ミスター・C」 と
ブレンダンを慕う、かわいい生徒たち。『モビィ・ディック』 の朗読テープを聴
き続ける父。トミーと、亡き戦友の妻との交流。基本的に、悪人は登場しない
ところも清々しい。

 監督のギャヴィン・オコナーは、プロモーター・JJを演じてもいる。撮影開始
直前に亡くなった俳優の代役らしいが、俳優顔負けのオーラ。格闘技のこと
は、よくわからない私ではあるが、ファイトシーンは臨場感たっぷり。こんなに
素晴らしい作品が劇場公開されなかったことが、残念でたまらない。

 ( 『ウォーリアー』 監督・製作・原案・共同脚本:ギャヴィン・オコナー
      主演:ジョエル・エドガートン、トム・ハーディ、ニック・ノルティ/2011・USA)

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[2016/02/22 07:59] | DVD/WOWOW | トラックバック(0) | コメント(0) |
ウンザ!ウンザ!クストリッツァ!~『ジプシーのとき』
ジプシーのとき




 TIME OF THE GYPSIES

 DOM ZA VESANJE


 旧ユーゴスラビアジプシーたちが住む小さな貧しい村で、青年ペルハン
呪術を使う祖母と足の悪い妹、放蕩者の叔父と暮していた。

 大阪はシネマート心斎橋で、「ウンザ!ウンザ!クストリッツァ!」 と銘打っ
特集上映があった。旧ユーゴが生んだ映画監督、エミール・クストリッツァ
作品が上映されたのだ。

 名前はさすがに知っているが、クストリッツァの作品は観たことがない。是非
観たいと思ったものの、上映はほぼ昼の時間帯。2週間の特集期間中、結局
観ることができたのはこの作品だけだった。『ジプシーのとき』

ジプシーのとき2

 何とも言えない、禍々しいまでのエナルギーに満ちた作品だった。祝祭と
呪術と家族愛
と、虐げられながらもパワフルに生き、決してめげない人々。
サラウンドな音楽と、マジカルな映像美。映画とは 「体感」 するものだと、
改めて思い知らされる。

 観終わって知ったが、この作品はDVD化されていないらしい。公開から、
なんと25年ぶりに再上映されたらしく、実は超々貴重な機会だったのだ。
なんだか、映画の神様に感謝したい気分。と言うか、クストリッツァって映
画の神様の化身なんじゃないか、と思う。

ジプシーのとき3

 肝っ玉母さんそのものの呪術使い、ペルハンのおばあちゃんが一番好き。
そういえば、元治元年生まれ、93歳で亡くなったという私の高祖母は、魔法
使い
だったと母に聞いたことがある。もしかして、私にもペルハンのように 
「魔法使いの血」 が流れていたりして・・・。

 『アンダーグラウンド』 を観に行けなかったのが、とっても残念。でもいつ
の日かまた、クストリッツァの作品を劇場で観られる日がきっと来る。そう信
じて、待っていよう。

ジプシーのとき4

 ( 『ジプシーのとき』 監督・共同脚本:エミール・クストリッツァ
       主演:ダボール・ドゥイモビッチ/1988・英、伊、ユーゴスラビア)

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[2016/02/18 20:51] | 映画 | トラックバック(1) | コメント(2) |
スターマン/火星の人~『オデッセイ』
オデッセイ





 THE MARTIAN


 NASA有人火星探査計画 「アレス3」 のクルーたちはに襲われ、ミッ
ションを中断し地球へ帰還する。しかしクルーの一人で植物学者のマーク・ワ
トニー(マット・デイモン)
は、事故に遭い火星に一人取り残されてしまう。

 マット・デイモンが持ち前のポジティブ思考で困難を乗り切り、80年代ディ
スコ・ミュージックを聴きながら火星にジャガイモを栽培して植民地化した後、
宇宙海賊からアイアンマンになって、地球に帰還を果たす話
。マジで。

 ここ数年、ゼロ・グラヴィティ インターステラー と、宇宙を舞台にした
名作
が続いているが、本作もその系譜に連なる作品。キャスティング、映像、
(趣味の悪い)音楽、もちろんストーリー、全てが最高
ではないか。なのに
ドリー・スコット
はアカデミー賞にハブられて気の毒。ちょっと長い(142分)
から嫌われたのかな? 私は全く気にならなかったけれども。

オデッセイ2

 マット・デイモンって不思議な俳優だと思う。レオナルド・ディカプリオや、フィ
リップ・シーモア・ホフマン
に似て見えることもあるが特にハンサムというわけ
でも、セクシーでもない
(失礼)。強烈な個性があるわけでもない。なのに常に
第一線にいて、主役を張り続けている。ハーバード卒頭は超切れるのだろ
うが全く嫌味を感じないし、逆に好感度は抜群だと思う。好みかと問われれば 
「NO!」 と即答
するが、好きか嫌いかと問われれば 「好き」 と即答する。
火星にひとりぼっちでも、飄々と危機をサバイバルする主人公に、こんなにも
ハマる俳優は彼以外にいないと思える。

 マット以外のキャストも最高。忘れないように書き留めておこう。ジェシカ・チャ
ステイン(コマンダー!)、ジェフ・ダニエルズ(NASA長官)、マイケル・ペーニャ、
ケイト・マーラ、ショーン・ビーン(兄貴~!)、キウェテル・イジョフォー(マーズ計
画最高責任者)、ドナルド・グローヴァー(天才!)!


オデッセイ3

 マーク・ワトニーの精神的な支えが何だったのか、家族は、妻や子どもは
いるのか? が少し気になったけれど、宇宙とNASAとのやり取りや、時系
列の描き方も素晴らしい。『スターマン』 が流れてきたら、もうが溢れて
ラストまで止まらなくなった。

 しかしこの邦題はないだろう。付けた人は映画を観ていないか、「オデッ
セイ」 という言葉の意味を知らないに違いない。 

 ( 『オデッセイ』 監督・製作:リドリー・スコット/2015・USA、UK/
     主演:マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、ジェフ・ダニエルズ

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[2016/02/16 21:07] | 映画 | トラックバック(44) | コメント(10) |
黒い悪夢~『ブラック・スキャンダル』
ブラック・スキャンダル




 BLACK MASS


 1975年、南ボストン。この街で育ったジェームズ・バルジャー(ジョニー・デ
ップ)
は地元を牛耳るギャングのボス、弟のビリー・バルジャー(ベネディクト・
カンバーバッチ)は州選出の議員
となっていた。そんな時、彼らの幼馴染ジョ
ン・コノリー(ジョエル・エドガートン)
が、FBI捜査官となって帰郷する。

 これも実話を基にした作品。劇場予告を散々、飽きるほど見せられての鑑
賞だったが・・・。私はダメでした。豪華キャストで見せ場も多いはずなのに、
全く心に響かず。陰惨で凶悪で救いようがなく、むしろ不快感のみ引きずる。
スコット・クーパー監督は、前作 ファーナス/訣別の朝 でも異様に暴虐
なファーストシーン
が気になったのだけれど・・・。本作は、それを120分見せ
られ続けた感じ。受け付けられない。勘弁して下さい。

ブラック・スキャンダル2

 ギャングと政治家の兄弟なんて、実話にしても突飛過ぎる。しかも演じるのが
ジョニー・デップとベネさんなんて・・・。全く兄弟に見えない。一ミリも見えない。
当代一の人気者ふたりでも、これはミスキャストなのではないかな。FBI捜査
官のコノリーは、いかにも 「こんな人いそう」 な人物だけれど。

 せめて数分でも、彼らの生い立ち的な、それぞれがどうしてその 「地位」 に
就いたのか
を描いて欲しかったと思う。彼らがどれほどので結びついている
のかが、どうも伝わってこないのだ。

 ジョニー・デップは強烈なルックスから役に入り切っているけれど、どうもか
つての輝きを失っているような気がしてならない。旬が過ぎてしまった感が強
い。(ごめんなさい)

 近所の老婦人がジェームズ・バルジャーに言う 「アルカトラズからいつ戻っ
たの?」
 に苦笑。全米一恐れられた監獄を、のどかな隣町みたいに、普通
に口にする感覚なんだな。

ブラック・スキャンダル3

 ケヴィン・ベーコンピーター・サースガードも出ているというのに・・・。
観続けるのが苦痛だったなんて、自分でも信じられないわ。悲しい。 

 ( 『ブラック・スキャンダル』 監督・製作:スコット・クーパー/2015・USA、UK/
      主演:ジョニー・デップ、ジョエル・エドガートン、ベネディクト・カンバーバッチ

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[2016/02/12 07:46] | 映画 | トラックバック(26) | コメント(2) |
綱渡り~『ザ・ウォーク』 【2D字幕版】
ザ・ウォーク





 THE WALK


 1974年。パリの大道芸人フィリップ・プティ(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)
は、NYに地上110階、高さ411メートルのツインタワーが建設されることを知
る。ワイヤー・ウォークに魅せられていた彼は、ツインタワーにワイヤーを張
り、そこを渡ろうと決意する。しかも、命綱なしで・・・。

 2008年、アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した 『マン・オン・ワイヤ
ー』
 に感動したので、この題材がJGL主演で映画化されると知ったときは正
直、驚いた。期待半分、不安半分で初日に駆けつける。面白く観たけれど、
観終わって 『マン・オン・ワイヤー』 がまた観たいな、と思ってしまった。ち
なみに、フィリップ・プティはトニー・ガトリフの名作 モンド にも出演してい
る。あー、あの映画も、また観たいなぁ。。

ザ・ウォーク2

 私は高所恐怖症ではないけれど、この主人公は完全に 「狂っている」 と
思った。いやいや普通、やらないでしょう。110階で綱渡りって、何の冗談? 
映画で観ているだけでも、足がすくむのに・・・。しかしまぁ、彼は並外れた
胸と才能と強運の持ち主
なのだとは思う。実際に会ったら、一瞬にして魅了
されるキャラクターなのだろうとも。だからこそ、身銭を切って協力してくれる
仲間にも恵まれたのだ。

 その 「共犯者」 の中でも、高所恐怖症の数学教師・ジェフ(セザール・ドム
ボイ)
がかわいい。掛け算や割り算の暗算で、恐怖から気を逸らそうとすると
ころがツボ。プティのガールフレンド、アニー(シャルロット・ルボン)は、ウィノ
ナ・ライダーに似たかわいい人だった。

ザ・ウォーク3

 JGLは大好きなのだが、彼、最近顔が変わった? 二重がおかしい気がする
のだけど、、、もしかして整形? あの細い、笑うとなくなる眼が、好きだったん
だけどなぁ。

 ( 『ザ・ウォーク』 監督・製作・共同脚本:ロバート・ゼメキス/2015・USA/
       主演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ベン・キングズレー、シャルロット・ルボン

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[2016/02/08 23:11] | 映画 | トラックバック(24) | コメント(2) |
マーマレードは飲み物です(笑)~『パディントン』【字幕版】
パディントン





 PADDINGTON


 「暗黒の地」 ペルーの森から、赤い帽子をかぶったクマ(声:ベン・ウィショ
ー)
大都会ロンドンへやってきた。雑踏で途方に暮れていた彼はブラウン夫
人(サリー・ホーキンス)
に助けられ、駅の名前から 「パディントン」 と名付け
られる。
 
 誰もが知っている 「クマのパディントン」 がまさかの実写映画化・・・。しか
し テッド で見慣れているせいか、しゃべるクマに全く違和感なし(笑)。
予想以上に面白かった! マーマレードって、飲み物なんですね(笑)。バッキ
ンガム宮殿の衛兵が、あの山高帽子の中にマグボトルを入れているとは(笑
笑)。パディントンの帽子の色、赤がキーカラーになった映像や、ロンドンの風
もとってもきれい! しかもかわいくて楽しいだけじゃない、007やM:Iシリー
ズ顔負けのスリルとサスペンス
(?)も味わえる。パディントンが危機一髪、の
シーンでは、場内から悲鳴があがったほど。超オススメの1本。

パディントン2

 サリー・ホーキンスが細くて小さいのにもビックリだけど、ニコール・キッドマン
ですよ驚いたのは・・・。悪役だけならまだしも、元夫トム・クルーズの当たり役
のパロディ
やって、最後には汚物まみれって(汗)。女優根性見せてくれます。
しかしその美しさは変わらずで、ブラウン家のご近所さんが一瞬で彼女に恋
に落ちる、『ハロー』@ライオネル・リッチーで爆笑、の場面も大いに説得力あ
り。ミセスバード(ジュリー・ウォルターズ)ミスターブラウン(ヒュー・ボネヴィ
ル)
、お馴染み英国俳優たちもいい味~。そして、何より赤い帽子に青いダッ
フルコートを着た、パディントンの愛らしいこと! 私のダッフルコートはなんで
グレーなんだ。。トホホ。。 

 吹替え版も、松坂桃李が評判いいようだけど、やっぱりベン・ウィショーは
じめオリジナルキャストの声で聴きたいよね。礼儀正しいけれど、四角四面
ではなくてユーモアもあり
。英国映画のお手本のような佳作でした。

パディントン3

 ( 『パディントン』 監督・脚本:ポール・キング/2014・英、仏/
           主演:ベン・ウィショー、ヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンス

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[2016/02/07 00:33] | 映画 | トラックバック(15) | コメント(4) |
海へ~『白鯨との闘い』
白鯨






 IN THE HEART OF THE SEA


 1850年。小説家ハーマン・メルヴィル(ベン・ウィショー)は、かつて商業
捕鯨の中心地
だったニューイングランド州ナンタケット島を訪れる。30年前
伝説の白鯨との闘いに破れ、海に沈んだエセックス号の最後の生き残り、
トム・ニカーソン(ブレンダン・グリーソン)に会うために。メルヴィルは彼から、
遭難の真実を聞き出し、新たな小説に取り掛かろうとしていた。

 これは 『白鯨(モビー・ディック)』 ではなく、その元ネタになった実話の
映画化
である---。と言われても、にわかには信じ難い。何とも強烈な、
衝撃的な映画だった。全てが予想外と言うか、邦題にミスリードされてしまっ
た感がある。エセックス号の乗組員、一等航海士オーウェン・チェイス(クリ
ス・ヘムズワース)
マシュー(キリアン・マーフィ)を待ちうけていた、凄まじ
運命。ショッキングではあるが、観る価値のある作品だと思う。ロン・ハワ
ード
は、前作 ラッシュ に引き続いての職人仕事。

白鯨2

 男だけで帆船に乗り込み、鯨を追って七つの海を渡る。鯨油で船倉を満たす
までは、何年も帰港できない。鯨を仕留めるためには小さな手漕ぎボートに乗
り込み、手投げのモリで狙いを定めなければならない。何と過酷な職業だろう。
多分、実際は映画の何倍も辛く、重労働だったと思う。描かれているのは日本
史で言うと江戸時代だが、この頃すでに、乱獲により鯨が激減していたという
事実にも驚かされた。

 しかし本作で一番印象的だったのは、ソーことクリス・ヘムズワースのカッコ
よさ!
 背が高くてスタイルのいいこと。ヒース・レジャーみたい。キリアン・マー
フィ
の変わらぬ澄んだ瞳にも魅了されたが、トム・ホランド君フレッシュな魅力
も捨てがたい! 彼、次期スパイダーマンなんですね。なるほど、みすぼらしい
衣装をまとっていても目を引く存在だった。これが 「旬」 というものの輝きなの
ですね。超売れっ子ベン・ウィショーと、最近は息子くんのほうが売れている(?)
ブレンダン・グリーソンもいい味。

白鯨3

 個人的には3Dは必要ないと思うけれど、いい男たちの究極のサバイバル
是非劇場で観て欲しい。

 ( 『白鯨との闘い』 監督・製作:ロン・ハワード/2015・米、豪、西、英、加/
      主演:クリス・ヘムズワース、ベンジャミン・ウォーカー、キリアン・マーフィ

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[2016/02/06 00:00] | 映画 | トラックバック(17) | コメント(2) |
愛しい人~『消えた声が、その名を呼ぶ』
消えた声が






 THE CUT


 1915年、オスマン帝国アルメニア人鍛冶職人ナザレット(タハール・ラヒ
ム)
は、妻と双子の娘を愛し、幸せに暮らしていた。しかしある夜更け、憲兵が
彼を強制連行する。妻子と引き離され、過酷な肉体労働に従事させられたナ
ザレットは・・・。

 トルコ系ドイツ人監督、ファティ・アキンの新作。トルコの歴史の暗部である
アルメニア人大虐殺を題材にしているため、かなりシビアな描写もある。しか
し、旅する主人公の傍らに音楽が寄り添う、紛れもないファティ・アキンの映
だった。こういう説明調の邦題は、好きではないけれど。

消えた声が2

 寡聞にして、アルメニア人が被った悲劇を今作で初めて知った。とにかく世界
史と世界地理に疎く、映画を観ながらアルメニアミネアポリスが国なのか地
域なのか、はたまた都市名なのかも判然としない自分が情けない。勉強って、し
ておいて損はないですね、、、反省。こんな私に、世界の有りようを教えてくれる
のが映画
なのだけれど。

 虐殺を免れたものの声を失い、地獄を見ながらも情けある人々との出逢いに
よって生き延びるナザレット。敬虔なキリスト教徒(その名が正に神の子イエス
の出生地!)
だった彼が、あまりにも過酷な運命の仕打ちに信仰を捨てる場面
が切ない。娘を見つけようと旅に出た彼は、時に罪を犯し、時に人を救い、最後
にある 「歌」 に辿り着く。愛しい人、愛しい人と繰り返すその旋律は、遥かなる
故郷から神が遣わせた使徒のように、ナザレットを導く。

消えた声が3

 主人公ナザレットを、ほぼ出ずっぱりで熱演したタハール・ラヒムは初見。出
演作の数々は日本でも公開されているが、なんと全て未見であった。チャップ
リンの 『キッド』 を観て、泣いたり笑ったりする姿がなんともかわいい! エン
ドロールには、ファティ・アキンからマーティン・スコセッシへの熱烈な謝辞が記
されている。デリケートな題材だけに、この映画の製作が困難を極めたことは
想像に難くないが、初志を貫いて力作を世に問うたファティ・アキンに、敬意
表したい。彼のこれからの作品が、ますます楽しみになった。

 ( 『消えた声が、その名を呼ぶ』 監督・製作・共同脚本:ファティ・アキン
     主演:タハール・ラヒム/2014・独、仏、伊、露、ポーランド、加、トルコ、ヨルダン)

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[2016/02/05 00:00] | 映画 | トラックバック(8) | コメント(4) |
為すべきこと~『フランス組曲』
フランス組曲






 SUITE FRANCAISE


 1940年。フランスはドイツの支配下に置かれ、リュシル(ミシェル・ウィリ
アムズ)
義母(クリスティン・スコット・トーマス)と住む田舎町ビュシーにも、
ドイツ軍が進駐してくる。義母の邸は、ブルーノ(マティアス・スーナールツ)
という名のドイツ軍中尉が間借りすることになる。

 第二次大戦下、出征した夫を待つ人妻と、敵国の軍人が惹かれ合うメロ
ドラマ
ミシェル・ウィリアムズとクリスティン・スコット・トーマスの共演ならば、
観逃すわけにはいかない。音楽によって心の垣根を越え、人間として愛し
合った男女の物語
以上に、エンディングに明かされる 「真実」 に涙した。

フランス組曲2

 「戦争は人間の本性を暴く」。多分、この世のほとんどの人間は、善人でもな
く悪人でもない
。この映画の登場人物は、正義と我欲の間で引き裂かれながら、
誰もが必死で生きている。自分の 「生」 が脅かされた時、誰もが建前だけの
善人ではいられない
のだ。

 音楽を愛する穏やかな紳士が、人を殺さなければならない不条理。他人の悪
行を密告し、保身に走る人々。理不尽な空気の中で亡き父に言われるがまま、
愛を知らないまま嫁ぎ、自分の人生を生きてこなかったリュシルは、ブルーノを
愛して初めて、自分が 「為すべきこと」 を知る。

 「ナチスは母を殺せなかった。これは復讐ではなく勝利だ」。この物語はアウ
シュヴィッツで亡くなったユダヤ人作家イレーヌ・ネミロフスキー
のノートに綴ら
れ、60年以上、彼女の娘によって保管されていたもの。イレーヌが自己投影
したと思われるユダヤ人女性を イマジン のアレクサンドラ・マリア・ララ
演じ、彼女の娘を匿うクリスティン・スコット・トーマスに サラの鍵 がよぎる。
ペンは剣よりも強く、芸術は時空も国境も超えて、私たちに真理を教えてくれ
る。

フランス組曲3

 もちろん、不満がないわけではない。フランスの田舎町の人々が、英語をしゃ
べる違和感。美し過ぎるマーゴット・ロビー、ハンサム過ぎるサム・ライリーは、
農村の人間にはとても見えない。しかしブルーノの奏でるピアノの調べには、そ
れら全てを許してしまう包容力を感じるのだった。

 ( 『フランス組曲』 監督・共同脚本:ソウル・デイブ/2014・英、仏、加、ベルギー/
     主演:ミシェル・ウィリアムズ、クリスティン・スコット・トーマス、マティアス・スーナールツ

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[2016/02/04 00:00] | 映画 | トラックバック(8) | コメント(4) |
「深紅の丘」に気をつけて~『クリムゾン・ピーク』
クリムゾン・ピーク





 CRIMSON PEAK


 20世紀初頭のニューヨーク。富豪の一人娘イーディス(ミア・ワシコウスカ)
は、幼い頃亡くした母の幽霊に 「クリムゾン・ピークに気をつけなさい」 と
忠告される。長じて作家を志すようになったイーディスのもとに、英国の準男
を名乗るトーマス・シャープ(トム・ヒドルストン)と、その姉ルシール(ジェ
シカ・チャステイン)
が現れる。

 ギレルモ・デル・トロが描くゴシック・ホラー。彼の前作 『パシフィック・リム』
は観なかったが、パンズ・ラビリンス が大好きなので似たテイストかな? 
と楽しみにしていた。時に紅く、時に黄金に輝く 「デル・トロの闇」 は健在
だった。

クリムゾン・ピーク2

 衣装やプロダクション・デザインは 「ゴシックの申し子」 デル・トロらしく、
美意識と遊び心のバランスが絶妙。小口絵に、日本の春画が使われてい
たのもポイントだった。そこに、計ったようにピタリとはまる 「ロキ様」 こと、
トム・ヒドルストン素敵♪ 彼って声がいいのよね。「凝った機械作るより
先に、お城の屋根直しや!」
 と突っ込みたかったけど(笑)。

 そして実はロキ様よりも、多分初めて観たアラン・マクマイケルに目が釘
付け。彼、ヒースに似てる(顔が)。

クリムゾン・ピーク3

 ラスト近くの女二人のバトルは、コントか、、ってくらいグダグダな痴話喧
で白けてしまったが、どこまでも無表情を貫くジェシカ・チャステインは、
やっぱりいいな~。売れっ子ミア・ワシコウスカは、ナチュラル志向な役が
似合うと思うのでこの役(富豪の令嬢)は少々、外れかな。

 ( 『クリムゾン・ピーク』 監督・製作・共同脚本:ギレルモ・デル・トロ
     主演:ミア・ワシコウスカ、トム・ヒドルストン、ジェシカ・チャステイン/2015・米、加)

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[2016/02/03 00:00] | 映画 | トラックバック(18) | コメント(2) |
無冠詞~『ブリッジ・オブ・スパイ』
ブリッジ・オブ・スパイ







 BRIDGE OF SPIES


 1957年、東西冷戦の時代。保険が専門の弁護士、ジェームズ・ドノヴァン (ト
ム・ハンクス)
は、ブルックリンで諜報活動に従事していたソ連のスパイ、ルドル
フ・アベル(マーク・ライランス)
の弁護を命じられる。

 一人の民間人が、スパイの交換という国家間の最高機密における交渉人
務めていたという、驚愕の実話の映画化。スピルバーグ、コーエン兄弟といった
第一級の製作陣による、申し分のないサスペンスかつ人間ドラマの傑作。最早
スピルバーグの分身と言っても過言ではない、ヤヌス・カミンスキーによる映像
(特に、荒廃したままの灰色の東ベルリン!)も、見応え十分。必見の大作

ブリッジ・オブ・スパイ2

 冒頭、タイトルが映し出されたときに 「あれ?」 と思った。冠詞(a、the)
が付いていない・・・


 この映画に登場するスパイは、私たちが知っている 「JB」 たちのように、
若く逞しい超人ではない。物静かで老いた(入歯!)、目立たない男。しかし、
絶対に倒れない 「不屈の男(standing man)」 なのである。この老スパ
イ、ルドルフ・アベル
を演じた、マーク・ライランスが素晴らしい! 稀に観る
名演
、と言ってもいいのではないだろうか。感情を押し殺し、国家に忠誠を
尽くそうとする漢の姿に、心震える。個人的には、ジェームズ・ドノヴァンは
トム・ハンクス以外に演じていただきたかったが、彼の妻がエイミー・ライア
だったことが秘かにうれしい。

ブリッジ・オブ・スパイ3

 しかし 「国家」 とは、なんとも無慈悲で残酷な組織であることか! 当局
は一切関知しない、そもそも当局は存在しない、ゆえに命は保証しない。
虜として生き延びることなく自害せよ
、、、。アメリカって、こんな酷い国だった
んだ。唖然。

 そんな 「国」 のために、スパイとして異国に送り込まれ、活動せざるを得
ない男たち。民間人であるにも関わらずスパイ交換という重責を負わされ、人
命のためにその任務以上の役割を果たそうと、一歩も引かない男の信念。更
には主義や国益を超え、人間として彼らの間に芽生える友情感動せずには
いられない。

 ( 『ブリッジ・オブ・スパイ』 監督・製作:スティーヴン・スピルバーグ
      主演:トム・ハンクス、マーク・ライランス、エイミー・ライアン/2015・米、独、印)

テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画

[2016/02/02 07:57] | 映画 | トラックバック(33) | コメント(8) |
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