最善を尽くした二人の物語~『博士と彼女のセオリー』
博士と彼女のセオリー






 THE THEORY OF EVERYTHING


 1963年ケンブリッジ大学院理論宇宙物理学を研究するスティーヴン・
ホーキング(エディ・レッドメイン)
は、あるパーティで文学専攻のジェーン(フェ
リシティ・ジョーンズ)
と出逢う。

 『ホーキング、宇宙を語る』 (私も買って読みました) で一世を風靡した
英国の天才物理学者、スティーヴン・ホーキングその妻ジェーンの物語
難病ALSに侵され、車椅子での生活を余儀なくされたホーキング氏を演じ
切り、アカデミー主演男優賞をはじめ数々の演技賞に輝いたのはエディ・
レッドメイン
。そして、ジェーンを演じたフェリシティ・ジョーンズや、脚本、音楽、
映像もオスカー級に素晴らしい
原作はジェーンによる回想録 「Travelling
to Infinity: My Life with Stephen」


博士と彼女のセオリー2

 スティーヴンとジェーン、二人の出逢いのシーンがいい。交わした言葉はたっ
たふたつ、”Hello.””Science.”とスティーヴン、”Arts. ”とジェーン。
理系男子と文系女子の、運命が交錯した瞬間に痺れた。オスカーは イミテ
ーション・ゲーム
 に譲ったけれど、英国アカデミー賞ではこの作品が脚色賞
を受賞している。名セリフの数々に、心震え、涙、涙。それはスティーヴン・ホー
キングとジェーンという、類稀なる頭脳の持ち主たちの言葉に惹かれた、という
意味でもあるのだけれど。

 「私は強い人間には見えないでしょう、でも、彼を愛しています」 スティーブン
の父にそう言って結婚したジェーン。子どもが生まれ、夫の病は悪化し、彼女の
表情は徐々に厳しく強張ってゆく。フェリシティ・ジョーンズの表情演技がそれは
それはリアルで、素晴らしい! 彼女を 「手助けする」 ジョナサン(チャーリー
・コックス)
に対し、受け入れつつも、複雑な心境に揺れるスティーヴン。しかし
一体、誰がジェーンを責められようか! 
”I have loved you.” 最善を尽くしたからこそ、ジェーンはスティーヴン同様、
堂々と世界と対峙し続ける。

博士と彼女のセオリー3

 そう、この物語は、神から与えられた才能=ギフトを無駄にせず、決して諦
めることなく力を尽くした男女
を描いている。生きている限り希望はある、と
語ったスティーヴン。余命2年と告げられながら、「たったひとつの(シンプル
でエレガントな)方程式」
 を探し続けた天才と、彼を支え続けた女性に、感銘
を受けずにいられない。

 ( 『博士と彼女のセオリー』 監督:ジェームズ・マーシュ
      主演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ/2014・UK)
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【2015/03/29 22:26】 | 映画 | トラックバック(35) | コメント(4)
暗号解読/不遇の偉人~『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
イミテーション・ゲーム





 THE IMITATION GAME


 1939年、第二次大戦中の英国ナチスドイツの暗号機 「エニグマ」 を解読
すべく、MI6は国中から精鋭を集める。そこには天才数学者にして、後のコンピ
ュータの原型
を創ったアラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)もいた。
彼はガリレオやニュートンにも引けを取らない頭脳を持っていたが、ある秘密
抱えて生きていた。
 
 連合軍を勝利に導いた英雄にして世紀の天才数学者でありながら、戦後50年
以上、その偉業を抹殺
されていた不遇の人物を描いたドラマ。仲間とともに暗号
解読
に身を捧げた第二次大戦下を中心に、チューリングの人生を決定づけた人
物・クリストファーと出逢うパブリックスクール時代ある罪に問われる戦後と、
三つの時代を交錯させつつ、アラン・チューリングという知られざる偉人の人生
を描き切る。ベネディクト・カンバーバッチをはじめ、キーラ・ナイトレイ(美しい)、
マシュー・グード(美しい!)、マーク・ストロング(美しい!!)
ら、英国人で固め
キャストも適材適所アカデミー賞脚色賞受賞も納得の傑作

イミテーション・ゲーム2

 「同性愛者なんだ」 「気付いてたよ」 (ジョン)

 「同性愛者なんだ」 「それが何?」 (ジョーン)

 「時として誰も想像しないような人物が、誰も想像しないような偉業を成し
  遂げる」
 (クリストファー、アラン・チューリング、ジョーン)

 誰よりも優れた頭脳を持つという自負と、「普通」 には生きられないことへ
の負い目。相反する感情が、チューリングを常に苛んでいる。社会性も乏し
く、周囲と溶け込めない彼に、処世術を示すジョーン・クラーク(キーラ・ナイト
レイ)
。彼女もまた、誰よりも有能であるにも関わらず、「女性」 であるが故
に正当に評価されないというジレンマ
を抱えていた。彼女はチューリングの
精神的同志であり、彼らの間には男女を超えた友愛が在った。

イミテーション・ゲーム3

 「選ばれし者」 の苦悩と受難を描きつつ、暗号解読というサスペンス
ンターテインメント
として成立させている。アレクサンドル・デスプラの、ミステ
リアスかつ流麗なスコア
にも惚れ惚れ。滝涙でした。

 ( 『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』 
              監督:モルテン・ティルドゥム/2014・英、米/
                    主演:ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ

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【2015/03/25 00:00】 | 映画 | トラックバック(44) | コメント(16)
待ち人~『妻への家路』
妻への家路




 歸来

 COMING HOME



 文化大革命時、右派分子として捉えられた夫、陸焉識ルー・イエンシー(チェ
ン・ダオミン)
脱走したと知らされた馮婉玉フォン・ワンイー(コン・リー)は、
党の監視を振り切って夫と落ち合おうとしていた。しかし、バレエに打ち込む
二人の娘丹丹タンタンは、舞台の主役の座を得ようと両親を党に密告、馮婉
玉は怪我を負い、陸焉識は再び捉えられる。

 チャン・イーモウ再びコン・リーとタッグを組んだ感動作、と聞いて気にな
っていた本作。冒頭、群舞の練習に熱中する少女たちを観て 「うわ、チャン・
イーモウ節爆発!」
 と思ってしまった。すみません。

妻への家路2

 夫の顔が認識できず、時間の概念も失い、ただただ待ち続ける馮婉玉は 「心
因性記憶障害」 
だと説明されていたが、若年性アルツハイマーではないのだろ
うか? 音楽も、古い写真も、彼女の記憶を呼び覚ますことはできない。月日だ
けがいたずらに流れる中、「手紙を読む人」 として妻の傍らに居続ける夫知識
層のダンディな物腰
を感じさせる、チェン・ダオミンが素敵過ぎる。

 20年という歳月は、かくも残酷なもの。夫の顔は忘れても、娘のしたことは許
せず、決して忘れない
馮婉玉を観ていると、人間の感情の中で 「怒り」 が一番
強いのだろうか、などと考えてしまう。

 こういう映画を観る度に、「文化大革命とは何だったのか?」 という思いが、
私の中で大きくなってゆく。家族を引き裂き、文化と文明を破壊し、あの出来事
は一体、誰を幸せにしたのだろう?

 そんな思いが頭の中をぐるぐると渦巻いてしまい、ラストシーンに至るまで、
涙は流れなかった。 

妻への家路3

 かつてのアジアの華、匂い立つ大輪の花のように美しかったコン・リーが、お
ばあさんの姿でスクリーンに立つ。彼女は、チャン・イーモウという人を信頼
ているのだな、と思う。

 ( 『妻への家路』 監督:張藝謀チャン・イーモウ
          主演:陳道明チェン・ダオミン、鞏俐コン・リー/2014・中国)

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【2015/03/24 19:55】 | 映画 | トラックバック(13) | コメント(4)
開花宣言
春1

春2

春4

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【2015/03/23 21:51】 | 徒然 | コメント(2)
静かな人生~『おみおくりの作法』
おみおくりの作法











 STILL LIFE


 ロンドン市・ケニントン地区の民生係、ジョン・メイ(エディ・マーサン)は、一人
暮らしのまま、誰にも看取られずに亡くなった人を引き受けるのが仕事。決して
事務的に処理することなく、身寄りや宗教を調べ、弔辞まで書いて葬儀を取り
仕切り、丁寧に死者を見送っていた。そんな彼が、地区の合併とコスト削減の
ため、解雇を言い渡されてしまう・・・。

 原題:STILL LIFE=「静物画」 そのままに、限りなく静かで地味な作品。観
る人によっては、起伏のない退屈な映画だと言われるかもしれない。しかし・・・。

 こんなにも心揺さぶられるラストシーンを目にすることになろうとは。主演は、
数々の作品で脇役を演じてきたエディ・マーサン。彼がほぼ出ずっぱり、ジョン
・メイの一人称
で綴られる人生賛歌英国と伊太利亜の合作であるが、あまり
にも無口な主人公とシンプルなプロダクションデザイン
は、北欧カウリスマキ
っぽく
もあり。これは忘れられない一本になりそう。

 ※ 以下、ラストに触れています。個人的見解です。 ※

おみおくりの作法2

 「孤独死」 という言葉が、どうしても好きになれない。誰にも看取られずに亡
くなることを、否定的に捉えていると感じるから。一人で死ぬって、そんなに寂
しく、酷いことなんだろうか?
 

 もちろん、死後何週間も発見されなかった、などという話を耳にすれば、私だ
って胸が痛む。でも、人は結局、生きてきたようにしか死ねないのだ。たくさん
の仲間と生きたい人もいれば、一人で生きることを好む人もいる
だろう。そうい
う人が誰にも看取られずに最期を迎えることは、むしろ自然なこと
なんじゃない
かと思う。予め購入した墓所に寝そべり、空を仰いでいたジョン・メイのように
あの時、彼は胸の内で 「死」 への準備をしていたのだと思う。「空を見上げ
ながら死ねたらいいな。こんな風に」


 ジョン・メイの上司(白いアウディに乗った嫌味な奴)は言う。葬儀は生きて
いる人間、遺された人間のためのもの
だ。死者に意志なんかない、適当に片
づければいい
のさ、と。それはある意味、正論ではある。しかしこの映画は、
その言葉をラストシーンで明確に否定する。見ず知らずの死者に寄り添い、
手厚く見送り続けた、愚直な主人公を全肯定するのだ。

おみおくりの作法3

 家族と共に、仲良く賑やかに暮らせる人もいる。ビッグ・ビリーのように生き
るのが下手
で、どうしても周囲と諍いを起こしてしまう人もいる。ツナ缶とリン
ゴと食パン一切れの食卓を、「みじめだ」 と感じる人もいるだろう、しかし、そ
れで完璧だ、と感じる人も確かにいるのだ。不慮の事故死ではある、しかしそ
れがジョン・メイにとって決して受け入れ難い死ではなかったことは、彼の表情
が物語っている。

 素朴なメロディーラインが印象的な音楽も素晴らしい。しかし唯一の不満は、
邦題があまりに酷いこと。「スティル・ライフ」 じゃ意味わかんねー、とでも?
意味なんか、わからなくていいんだよ。原題の意図を、もう少し尊重して欲しい。


おみおくりの作法4

( 『おみおくりの作法』 監督・製作・脚本:ウベルト・パゾリーニ
                      主演:エディ・マーサン/2013・英、伊)

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【2015/03/15 13:09】 | 映画 | トラックバック(21) | コメント(12)
★★★★★~『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
シェフ




 CHEF

 @ChefCarlCasper


 LAで一流レストランのシェフとして働くカール・キャスパー(ジョン・ファヴ
ロー)
は、定番メニューにこだわるオーナー(ダスティン・ホフマン)と衝突
し、店を辞めてしまう。おまけにグルメガイド有名なブロガーのラムジー
(オリヴァー・プラット)
にブログとツィッターで批判され、怒り心頭。公衆の
面前で彼に暴言を吐いた姿をネットにアップされ、孤立無援状態に陥るの
だが・・・。

 大好きな アイアンマン シリーズの監督、ザキヤマ似のジョン・ファヴ
ロー
が、パート3を降板してまで撮りたかったらしい映画。そしてこれが、何
とも最高にハッピーな作品なのである! 観終わってすぐ、カールの息子
パーシー(エムジェイ・アンソニー)
に倣って 「シェフ! サイコー!! # 映
画の日」 とツィート
したいと思った(慣れてないのでしませんでしたが、恥)。
メジャー作品を降板してもこんな映画が撮れるなんて、本当に幸せだと思う
な~。自作自演で、仲間、それも大物スター(スカーレット・ヨハンソン、ロバ
ート・ダウニー・Jr!)
が集ってくれて。キューバン・サンドにキューバン・ミュ
ージック、悶絶かわいい息子と大陸横断
。これは言うことないでしょう。

シェフ2

 この映画を観ている間、ピクサーアニメ レミーのおいしいレストラン(2007)
を思い出していた。当時、私が書いた感想を一部抜粋。

 「辛口の批評は書くほうも読むほうも面白く、お金にもなる。しかしどんなに
三流の料理でも、その批評よりは価値があるだろう」。これは料理評論に置き
換えた監督の 「モノ作り」 =映画への思いと、好き勝手に批評するメディア
や受け手へのアンチテーゼのように感じられた。作り手への敬意を持とう、批
評する前に映画を観られることへの感謝の気持ちを持とう、それが最低限の
マナーであるのだ、と。


 レミーの公開から7年経ってSNSは肥大化し、今や世界中が好き勝手につ
ぶやく 「人類みな批評家」 状態
。10歳のパーシーなんてデジタルネイティヴ
そのものだし、料理にしろ映画にしろ、容赦ない素人の罵詈雑言に晒される
作り手のストレスは、溜まる一方だと思う。「ぶちまけたい!」 とばかりにビッ
グ・バジェットを放棄したジョン・ファヴローはすなわち、カール・キャスパー
のだ。しかしそれはSNSの一面でしかなく、口コミの宣伝威力は映画を観ての
通り。つまり諸刃の剣、ということなのですね。

 父が息子に調理ナイフを贈る場面が、印象的かつ象徴的。過剰に恐れず、
利点と危険性を理解して、慎重に大切に扱い、楽しむこと
。ナイフもSNSも同
じ。それをきちんと伝えられる親子関係、いいですね。

シェフ3

 ラストシーンは家族のリユニオン。めでたし、めでたし。^^

 ( 『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』 
           監督・製作・脚本・主演:ジョン・ファヴロー/2014・USA)

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【2015/03/14 18:56】 | 映画 | トラックバック(17) | コメント(6)
拝啓 十五の君へ~『くちびるに歌を』
くちぶるに歌を

 東京で美人ピアニストとして活躍していた柏木ユリ(新垣結衣)は、故郷の
長崎・五島列島に帰ってくる。産休を取る同級生の音楽教師・松山ハルコ
(木村文乃)の代用教員
として、ユリは合唱部の指導を任されるのだが・・・。

 アンジェラ・アキの 『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』 をモチーフにした同名
小説の映画化。青春映画の名手(?)、三木孝浩監督作品は初! 試写会
にて鑑賞。

くちぶるに歌を2

 まず、五島列島の風景があまりに美しくて驚いた。碧の海に白く残るフェリ
ーの船跡
に、大小の島々が映える。そこに建つ教会、大きな空、緑の草原
吹き抜ける風。多島美といえば瀬戸内海だとばかり思っていたが、五島の風
景も素晴らしい。日々報道される殺伐としたニュースとは、別世界のような。

 そんな美しい場所で育つ中学生たちは、素直でかわいい。男の子も女の子
も。特に、指揮者のメガネ少女と、まだ変声期を迎えていないサトルが、悶絶
するほどカワイイ!! いつもオドオドした彼がいじめの標的になるのでは、
とハラハラしたが、五島の中学校はいじめとも無縁の場所であるようだ。

 しかしサトルは、自らが生まれてきた理由と、生きる意味諦観を抱えてい
る。サトルの兄アキオ自閉症で、弟であるサトルは兄の面倒を見るべく育
てられている
と思い込んでいるのだ(アキオ役は渡辺大知くん)。そしてこの
アキオが、物語のクライマックス重要な役割を果たすことになる。(その場
面は困惑、のち大感動、という感じ。是非観ていただきたい)

 そういえば、家電で会話する人を久しぶりに観た気がする。中学生たちは
誰も、スマホはおろかケータイも持たず、「リア充」 満喫しているように見え
る。彼らの素直な心は、頑なだったユリの心を少しずつ解き放ち、前を向か
せる。 勇気を失うな。くちびるに歌を持て

くちびるに歌を

 しかし。。桐谷健太は、いつでもどこでも呆れるほどに桐谷健太なのだった。
彼、ある意味貴重かも(笑)。

 ( 『くちびるに歌を』 監督:三木孝浩/主演:新垣結衣/2015・日本)

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【2015/03/13 07:37】 | 映画 | トラックバック(19) | コメント(1)
予め死を受け入れた二人のために~『きっと、星のせいじゃない。』
きっと、星のせいじゃない。





 THE FAULT IN OUR STARS


 17歳のヘイゼル・グレース(シャイリーン・ウッドリー)は、甲状腺ガンが肺に
転移
し、酸素ボンベが手放せないながらも小康状態を保っていた。母(ローラ
・ダーン)
の薦めでガン患者が集う会に参加した彼女は、骨肉腫により右足を
切断
した、18歳のオーガスタス(アンセル・エルゴート)と出逢う。

 アメリカで大ヒットし、高評価を受けたという青春映画。いわゆる 「難病もの」 
であるから号泣必至、スルーするつもりだったが、グレイのボカシよりいいかな? 
と思わず鑑賞。

きっと、星のせいじゃない。2

 こういう作品は、どうしてもティーンエイジャーの母親目線で観てしまう。
ICUにいる我が子を見守る辛さに、「母親を辞めたい」 と思わず口走る母の
苦悩が、とてもリアル。そして、そのことをずっと忘れられずにいる子の思いも。

 一度座ってしまうと、何があろうと(自分が)死ぬまで降りられないのが 「母」 
という名の椅子だから。そして子も、親より先に逝く 「逆縁」 がこの世で一番
辛いことだと、本能的に知っている。自分が存在しなくなった世界で、母がどう
なってしまうのかを憂う
のだ。

 小説の 「その後」 を作者に問うことが、ほとんど意味のない行為だというの
も、大人になった今ならばわかる。しかし幼いグレースは、ほとんど死と引き換
えに、それを知りたいと願う。そしてそれが彼女の願いならば、どうしても叶え
たいと、恋人は思うだろう。

きっと、星のせいじゃない。3

 自分たちの病をネタにし、ブラックジョークを連発する彼らは強い。視力を失
ってもなお、自分を失わないオーガスタスの親友・アイザック(ナット・ウルフ)

運命という手垢のついた言葉を怨むこともなく、淡々と死を受け入れているか
に見える彼らの深い絶望に、する。しかし死にゆく者も、残される者も、決し
て後ろ向きではないことに、救われた。

 ショートカットのシャイリーン・ウッドリーは健康的な魅力で、ちょっと末期ガン
患者には見えない。欲を言えば、クランクイン前にもう少し、サイズダウンでき
なかったのかな。

 ( 『きっと、星のせいじゃない。』 監督:ジョシュ・ブーン/2014・USA/
      主演:シャイリーン・ウッドリー、アンセル・エルゴート、ローラ・ダーン

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【2015/03/10 20:44】 | 映画 | トラックバック(21) | コメント(4)
リア充でもないのに爆発した話、オスカーなど
ゆで卵が爆発して火傷し、救急に行きました。

朝茹でて冷蔵庫に入れておいた卵。晩御飯を用意する前に食べようと、殻を
剥いてたら冷たい(当たり前)。それでレンジでチン。パクっ、ドッカン!!
バカなの? 自分(笑)。

救急の先生が 「へぇ~、ゆで卵ってレンジでチンしたら爆発すんねや~、憶え
とこ!」 やて。
先生、ナイトスクープ知らんの? と言いたかった。知ってて爆発させるバカです
から、言いませんでしたが・・・。
しばらくワセリン塗りたくってラップしてマスクしてました。三皮くらい剥けたから、
もう大丈夫(と思う)。 教訓 「卵は茹でたらすぐ食べろ!」

◆◇   ◇◆

リンクレイターが監督賞を逃したショックで、WOWOWで録画した授賞式をずっ
と放置していたアカデミー賞。気づいたらNHKでも総集編やってる!
両方観比べてみました。

やっぱ、NHKの字幕は配慮が凄いですね。編集も凄い。レディ・ガガの跡形も
ない! NPHの司会も、WOWOWより上手く観える(笑)。
しかし、、ショーンのグリーンカードジョークまでカットするのは、ちょっとやり過
ぎでは?

結果オーライですけど、バードマンでよかった気がする。ある方が書いていた、
ボーイフッドはオスカーって感じじゃない、に納得。
皆がマイケル・キートンを気遣っていて、いいチームだなと。

(それでも、監督賞はリンクレイターにあげたかった)

あと、歌曲賞候補のパフォ、特にGloryが圧巻! 歌が上手すぎてもう、鳥肌も
ですよ・・・。

女優陣は、妊婦キーラがふっくらしてかわいかったな。クロエちゃんのスタイリ
スト出てこい! ニコ様、顔変わり過ぎ(@_@;) マーゴット・ロビーのドレスも
似合ってなかったよ~。

にしても、GBHのメンツが素敵☆ エド・ノートン素敵過ぎ!! スティーヴ・カ
レルGJ!!! イーダの監督がカッコよくてビックリ。エディくんの 「うれし過
ぎて挙動不審」
 にもワロた。トラさん安定の気持ち悪さ

あ~、楽しかった♪

卵サンド8







 卵サンド^^

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【2015/03/09 00:00】 | 映画雑談 | トラックバック(0) | コメント(4)
伝説への黙祷~『アメリカン・スナイパー』
アメリカン・スナイパー




 AMERICAN SNIPER


 テキサスでカウボーイとして育ったクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)
は、愛国心から志願し、入隊する。ネイビー・シールズの狙撃手としてイラ
ク戦争
に従軍した彼は、その 「精確」 な腕前から 「レジェンド」 と称され、
周囲から尊敬を集める存在となってゆく。

 イラクに4度派遣され、160人以上を射殺した最強の狙撃手、クリス・カイ
ルの回想録の映画化。主演のブラッドリー・クーパーが映画化権を獲得し、
イーストウッドがメガホンを取った。ブラッドリーはアカデミー主演男優賞に
ノミネート
。アメリカで大ヒットした、傑作の誉れ高い戦争映画。初日レイト
ショーにて鑑賞。

アメリカン・スナイパー2

 イーストウッドの戦争映画といえば、父親たちの星条旗 硫黄島からの手紙
が思い出される。本作は巷の大絶賛評とはうらはらに、私の中ではあの二部作を
超えるものではなかった。しかし何故か観ている間中、『ディア・ハンター』 を思い
出していた。

 『ディア・ハンター』 を観たのはまだ10代で、しかも吹き替えのテレビ放映だった。
ずいぶんと毀誉褒貶の激しい作品だったらしいが、私の中であの映画の衝撃を超
える戦争映画は未だにない。多分、これからもそうなのだろう。

 本作を衝撃的な傑作となし得ているのは、ラストに待ち受けていた現実--主
人公の理不尽な死
である。戦場や、戦争そのものを描いた悲劇は数多描かれて
きたが、このラストは 「戦争に、勝者も敗者もない。ただ犠牲者があるだけだ」 
いうイーストウッドのメッセージが、最悪な形で表現されている。戦争が蝕むのは、
我々の 「心」 そのものなのだと。

アメリカン・スナイパー3

 アメリカが、強く逞しい大国であること。常に勝者であること。それはアメリカ
だけでなく、もしかしたら世界中が望んでいることなのかもしれない。「番犬」 
であれと父に育てられたクリス・カイルは、アメリカという国そのものに見える。
この映画は共和党支持者であり、愛国者であるはずのイーストウッドの、母国
に対する警鐘
のようにも感じる。

 一人殺めれば罪人なのに、いくら敵とはいえ、殺せば殺すほどに英雄として
祭り上げられていく主人公
に、強烈な違和感を覚えた。そしてその違和感は、
誰よりもクリス・カイル自身が持ち続けていたのだと思う、最後まで。

 戦争反対

 ( 『アメリカン・スナイパー』 監督・製作:クリント・イーストウッド
          主演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー/2014・USA)

テーマ:戦争映画 - ジャンル:映画

【2015/03/08 13:18】 | 映画 | トラックバック(32) | コメント(6)
キツネ狩り~『フォックスキャッチャー』
フォックスキャッチャー





 FOXCATCHER


 1987年。3年前のロス五輪で金メダルを獲得したマーク・シュルツ(チャニ
ング・テイタム)
は、レスリングというマイナー競技ゆえの辛酸をなめていた。
生活は苦しく、同じく金メダリストで練習パートナーの兄デイヴ(マーク・ラファ
ロ)
は家庭を持ち、妻子優先。そんな孤独と焦燥の日々を送るマークの元
に、アメリカ有数の財閥の御曹司、ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)
ら、彼が創設したレスリングチーム 「フォックスキャッチャー」 への参加オ
ファー
がもたらされる。

 カポーティ の戦慄再び。前作 マネーボール のハリウッドメジャー
作品らしさからは一転
、ベネット・ミラーの不穏で不気味な画作りが炸裂して
いる。思えば、前作はプロデューサーであり、主人公を演じたブラッド・ピット
の意向が前面に出された映画
だったのだろう。こちらのほうが、監督本来の
持ち味
なのだと思う。

 終始陰鬱なトーンながら、135分の長尺を感じさせない力作。カンヌでは
監督賞を受賞
し、アカデミー賞にも5部門ノミネートされている。しかし私は
苦手な作品。自宅鑑賞だったらリアタイアしていたかも・・・。暗い、暗過ぎる。

フォックスキャッチャー2

 しかしまぁ、数シーンしか登場しない、ヴァネッサ・レッドグレーヴの存在感
よ・・・。母に支配され続けたジョン・デュポンの人生を説得力あるものにする
ために、彼女のキャスティングは必要不可欠だったのだと思う。母が亡くなっ
たことで、ジョン・デュポンはある意味解放され、ある意味指針をも失くしてし
まった。彼は母を憎み、恨みながらも、母を慕ってもいたと思う。母を喜ばせ
たい
、母に自分を誇りに思って欲しいと。彼の凶行は、母を喪ったことで 「タ
ガが外れた」
 ために為されたように思う。

 全くの別人に変貌したスティーヴ・カレル、評価はされていないけれど、演
じた人物のようなプレッシャーに押しつぶされず、いい仕事をしたと思うチャ
ニング・テイタム。コンスタントに良作に出演し続けるマーク・ラファロ。キャス
ト全員が素晴らしい役作り
をして、満点の演技を見せている。想像もできない
ほど桁外れなお金持ちって実在するし、しかもこれが実話って・・・。ある意味
ホラーな、完璧に近い映画
かもしれない。私は好みではないけれど

フォックスキャッチャー3

 ( 『フォックスキャッチャー』 監督・製作:ベネット・ミラー/2014・USA/
         主演:スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ

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【2015/03/07 14:01】 | 映画 | トラックバック(21) | コメント(2)
ディープ大阪~『味園ユニバース』
美園ユニバース

 大阪、夏の公園。バンド 「赤犬」 の歌謡ショーに、一人の男が乱入する。
カペラで 「古い日記」 を絶唱
し倒れたその男は、歌以外全ての記憶を失って
いた
。赤犬のマネージャー・かすみ(二階堂ふみ)は、その男を 「ポチ男」 と
名付け、祖父と二人で暮らす自宅に居候させる。

 山下敦弘(のぶひろ)監督の新作は、全編大阪ロケの音楽映画。主演はジャニ
ーズ
ですが、決してアイドル映画ではありません! 大阪ミナミは裏なんば、ディ
ープ大阪
にアイドルは絶対、似合わない。渋谷すばるが演技しているところを初
めて観たが、薄汚れて気が滅入りそうな風景に意外なほど馴染み、彼は役者
して、映画の中にいた。関ジャニ∞のメインボーカルではあるけれど、ヘルメット
みたいな髪型してたり、歌番組でニコリともしなかったり、自分の中で消化しき
れない何かを抱えているのかな、と思ってはいたのだが。彼、なかなかやります


美園ユニバース2

 もう一つの驚きは、鈴木紗理奈。かすみの近所に住む、無駄に色っぽい呑ん
だくれの女医(マキちゃん)
が、見事にハマっている。紗理奈も、もう三十代半ば
を過ぎているのか・・・、いい女になったなぁ。

 誰もが、一つ二つ何やかんや、抱えているのが人生ってもの。たった4つで
成り立っていたかすみの人生、そこに飛び込んで来たポチ男は彼女の 「親指」 
になり、握り拳を強くする。亡くなった父の面影を追って生きていたかすみと、
歌だけを父から受け継いだポチ男=茂雄。出逢うべくして出逢ったふたり。

 この映画の公開日がかすみの父の命日だったり、かすみの店のカウンター
下、傘立てにバットが挿してあったり。「しょーもな」 と言い放ちつつ、世話焼
き体質
なかすみ同様、山下監督もただ、ゆる~いだけの人ではないのだ。

美園ユニバース3

 携帯電話は出て来るけれど、LINEもTwitterもない。町工場や豆腐屋やホ
ームレス、時代に取り残されたような、昭和な残骸の街。はぐれ者の弟の子
を育てる姉、新入りボーカルのために客席にダイブするフロントマン。日本中
から嫌われている(らしい)大阪に、まだ人情は生きてるんやで!
 赤犬の中
に一匹混じった 「狂犬」 の、最後に見せる表情がなんとも言えない。エンド
ロールで、私は泣いていた。

 ( 『味園ユニバース』 監督:山下敦弘/主演:渋谷すばる、二階堂ふみ/2015・日本)

テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画

【2015/03/06 13:09】 | 映画 | トラックバック(13) | コメント(2)
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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