ぜんぶニセモノ~『紙の月』

銀行で外回りの営業担当として働く梅澤梨花(宮沢りえ)は、会社員の夫(田辺
誠一)と二人きりの生活に虚しさを感じていた。彼女はある日、大口顧客である
平林(石橋蓮司)の孫・光太(池松壮亮)と偶然出逢い、関係を持ってしまう。
角田光代の同名小説の映画化。少し前にテレビドラマ化もされていたのは偶然
か、それともメディアミックスの一種なのか? 小説もドラマも知らないが、吉田大
八監督の作品が好きなので、この映画は絶対に観たかった。東京国際映画祭に
て、最優秀女優賞と観客賞を受賞している話題作でもある。
「紙の月」 というタイトルの意味が、ずっとわからなかった。真っ白のスクリー
ンから、エンドロールが始まったとき、私は初めて理解した。「ああ、これってペー
パー・ムーンのことなんだ」 と。1Q84に、プラス10年。It's only a paper moon.

ねずみ色のコートに身を包み、地味で平凡な女だった梨花が、悪事に手を染
めるごとに美しく、輝きを増していく。女優・宮沢りえの面目躍如であろう。棒の
ように細く伸びた足に少女の面影を残す彼女は、「薄幸」 という言葉が似合う、
大人の女になった。彼女と同時代を生きている私は、過去から現在に至る様々
なスキャンダルに、どうしても思いを馳せずにいられない。
罪を犯し、欲望に忠実に生き、行き着く先がわかっていてもなお逃げ続ける主
人公を、断罪するのが目的の作品でないことはわかる。夫と二人の生活が味気
なく、寂しかったのだろうことも理解できる。しかしそれでも、私は思わずにはい
られない。 「どうして自分の稼いだお金でやらなかったの?」 と。

ミッションスクールで一人、寄付をし続けた梨花。父親の財布から札を抜く、
という行為が 「罪」 であり 「悪」 であると、彼女は本能的にわからなかっ
たのだろうか? 受けるより与えるは幸いなり、光太に与えることで得られる
恍惚や優越感が、彼女を深みに嵌めたのだ、と言うことはたやすい。しかし
梨花には、何かもっと根源的で、宿命的な欠落があるように思えてならない。
そして想像してしまう、これは現実に、金融機関では大なり小なり 「ありが
ち」 な話なんじゃないか、と。表には出てこないだけで。
今や超がつく売れっ子の池松壮亮、小悪魔が素のような大島優子、貫禄の
小林聡美。脇のキャストも皆好演。観応えのある作品でした。満足。
( 『紙の月』 監督:吉田大八/
主演:宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、小林聡美/2014・日本)
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出発の歌~『福福荘の福ちゃん』

錆びた外階段を昇り、入口を開けると共用廊下にはピンクの公衆電話がある。
そんな古びたアパート 「福福荘」 に一人暮らす塗装職人の福田辰男(大島美
幸)は、32歳の気のいい独身男。職場の同僚にして親友のシマッチ(荒川良々)
から合コンをセッティングされるも、どうも乗り気でない。そんな彼の元に、中学
時代のクラスメイト・杉浦千穂(水川あさみ)が現れる。
森三中の大島美幸ちゃんが男役、しかもオッサン(笑)。色物かと思いきや、
尊敬するブロガーさんが 「今年のベスト10本に入る」 とおっしゃっているで
はないか! 思わず観に行ってしまったら、う~ん、これはいい! ちょっと
シュールでオフビートな笑い、全編に漂う電波系オカルト風味。テーマソング
は上條恒彦の 『出発の歌』 ですよ。なんともしみじみした気分で、劇場を後
にしました。

まずは、特殊メイクもファットスーツもなしで(つまり素で)、男に成り切ってい
た大島美幸に拍手。猟奇的な素顔を知り、最近ファンになった水川あさみ、
鉄板の荒川良々。誰かと思ったら松岡修造の奥さん@ファブリーズの平岩紙。
変人過ぎる古舘寛治(爆笑必至)、そして極めつけは、ゆれるまなざし真行寺
君枝!(って我ながら古いなぁ)。曲者役者がテンコ盛りで、もうワクワクしてく
る。時代設定はいつなのか、時間はゆったりと流れ、浮世離れした登場人物
たちが醸し出す空気は、あたたかくのどかだ。
そう!こういう感じ。これが 「幸せ」 ってものじゃないか、と思ったり。嫌い
な人が一人もいなくて、周りの人たちみんなの幸運を、思わず願ってしまうよ
うな。東大出の蛇使い・馬淵さん(芹澤興人)や、繊細であるがゆえに精神を
病んでしまった野々下くん(飯田あさと)の幸せを。

福ちゃん、最後においしい水が飲めて、よかったね。
♪ さあ 今 銀河の向こうへ 飛んでゆけ・・・ ♪
( 『福福荘の福ちゃん』 監督・脚本:藤田容介/
主演:大島美幸、水川あさみ、荒川良々/2014・日本)
ザ・シークレット・ハンター~『イコライザー』

THE EQUALIZER
昼はホームセンターで働き、夜はカフェで読書をする初老の男ロバート・
マッコール(デンゼル・ワシントン)は、テリーという源氏名のコールガール
・アリーナ(クロエ・グレース・モレッツ)と出逢う。
デンゼル・ワシントン主演作であれば、最早鉄板の感がある。そして本作
も、文句無しの面白さ。義を見て為さざるは勇無きなり、とばかりに、哀れな
少女を救うために立ち上がる男。テレビシリーズの映画リメイクだそうで、本
国アメリカで大ヒットも納得の快作。
紳士的な立ち居振る舞いに、哲学者めいた言葉。ストーリーは二の次で、
この謎めいた男の正体が気になるのだ。元グリーンベレーか、CIAエージェ
ントだろうと想像はつくのだが・・・。

本丸はモスクワのロシアン・マフィア。当局さえ手が出せないと言うアンタ
ッチャブルに辿り着くまでには、『イースタン・プロミス』 ばりの刺青男たちを
倒さねばならない。惚れ惚れするような知力と体力で、ロバートは易々と彼
らをぶちのめしてゆく。スプリンクラーの雨の中、スローモーションで登場す
るロバート。ケレン味たっぷりで、タランティーノかと思った(笑)。そんな彼
が 「許し」 を求めるのが、武闘派オスカー女優、メリッサ・レオというのが
また、素晴らしい。やるとなったらとことんやるのだ。とことんやらねば、やる
意味がない。

アメリカンガール代表のようなクロエちゃんが、ロシア系には見えなかった
のは御愛嬌。ツッコミは御法度、「あ~、面白かった♪」 でいいんじゃないで
しょうか。
( 『イコライザー』 監督:アントワーン・フークア/主演:デンゼル・ワシントン/2014・USA)
歌舞伎と洛南サウンド
この三連休は映画館には行かず、神戸と京都へ出かけていました。

看板は”ラブリん”こと
片岡愛之助。

開演前。
ちょっとボケボケ(汗)

街はもうすっかり
クリスマス仕様^^

シェフのおまかせランチ。
メインはお魚(鱸)で。

京都・北山は十数年ぶり。

ここは何時間でも居られる
わ~。

京都コンサートホール。
友人のご長男が出演し
ます。

洛南高校第51回定期演奏会。
皆高校生とは思えない、素晴らしい
エンターテナー揃いでした。
さすがは天下の洛南、関西私学の雄!
って感じ^^
うちの息子の学校の先生に、観ていただき
たいわ~(汗)
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
さぁ今日から仕事だよ。年末に向けてがんばりましょう♪

看板は”ラブリん”こと
片岡愛之助。

開演前。
ちょっとボケボケ(汗)

街はもうすっかり
クリスマス仕様^^

シェフのおまかせランチ。
メインはお魚(鱸)で。

京都・北山は十数年ぶり。

ここは何時間でも居られる
わ~。

京都コンサートホール。
友人のご長男が出演し
ます。

洛南高校第51回定期演奏会。
皆高校生とは思えない、素晴らしい
エンターテナー揃いでした。
さすがは天下の洛南、関西私学の雄!
って感じ^^
うちの息子の学校の先生に、観ていただき
たいわ~(汗)
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
さぁ今日から仕事だよ。年末に向けてがんばりましょう♪
テーマ : こんなことがありました
ジャンル : ブログ
マスクマン~『FRANK -フランク-』

FRANK
ミュージシャンを夢見て日々曲作りをしながら、実家暮らしの冴えない会社
員生活を送る青年ジョン(ドーナル・グリーソン)は、偶然の出逢いから 「ソ
ロンフォルブス」 という発音しにくい名前の、エキセントリックなバンドに参加
する。個性的なメンバーの中心にいるのは、24時間マスクを被ったままの
フロントマン・フランク(マイケル・ファスベンダー)だった。
なんとも奇妙で、現実離れした設定に思えるこの作品。なんと実話に基づ
いているというから驚き。コミカルで爆笑を誘いながら、物悲しさと隣り合わ
せの絶妙な匙加減。これは今年のマイベスト作の一本。最高にツボ、でした。
やっぱり英国映画、好きだなぁ。

映画界の 「キレキャラ系メンドクサイ女」 枠の頂点に君臨するマギー・ギ
レンホール、近頃本当によく見かけるスティーヴ・ブシェミ系曲者役者スクー
ト・マクネイリー。フランクを両脇から支えていたクララとドンを演じていたこの
二人がいい。『アバウト・タイム』 の好漢ぶりも記憶に新しいドーナル・グリー
ソンと、エンドロールでその美声を堪能させてくれるマイケル・ファスベンダー
は言うに及ばず。
ジョンにとって、フランクは 「マッチ箱の街」 から連れ出してくれた 「天使」
だったのだな。どうしようもなく才能のない凡庸なジョンが、フランクに憧れ、
YouTubeとTwitterを駆使してバンドを世に出そうとし、そしてそれが半ば成
功してしまうところに、ネット時代の可能性と危うさを感じる。Wifi環境さえあ
れば、誰もが世界中に発信できる。それは可能性を秘めたチャンスでもある
が、勘違いという悲劇が多発するのも事実。ジョンはフランクと自分を同一視
してしまい、二人の間に在る天と地ほどの音楽性の違いを客観視できなか
った。結局、進歩と言うのは諸刃の剣なのだ。そして多分、才能も。

私は凡人だからジョンに共感し、感情移入してしまった。クララのように、
フランクのようなアウトサイダーを理解することも、包み込むこともできない
だろう。リユニオンしたバンドに、背を向けるジョン。夢の終わりはかくも苦
い。
( 『FRANK -フランク-』 監督:レニー・アブラハムソン/2014・英、アイルランド/
主演:ドーナル・グリーソン、マイケル・ファスベンダー、マギー・ギレンホール)
妖気~『トム・アット・ザ・ファーム』

TOM A LA FERME
TOM AT THE FARM
恋人ギョームを事故で亡くしたトム(グザヴィエ・ドラン)は、葬儀のために
彼の故郷・ケベックへと車を走らせる。辿り着いたギョームの実家は閉鎖的
な田舎町に在り、母アガット(リズ・ロワ)と兄フランシス(ピエール=イヴ・カ
ルディナル)が、二人きりで農園を営んでいた。
ツイッターのTLが 『わたしはロランス』 の絶賛評で埋め尽くされるまで、
私はグザヴィエ・ドランという青年--悪魔的な才能を持つモントリオール
生まれの映画作家--を知らなかった。ロランスはじめ、彼の旧作は既に
DVDになっているが、全て未見。彼とは映画館で出逢いたかった。
本作は戯曲の映画化で、グザヴィエ・ドラン自身が脚色、監督、主演も兼
ねている。しかし、彼自身のオリジナルでない作品の映画化は初めてだと
いう。全編、不穏な空気が満ち、官能と妖気が爆発寸前で蠢くスリラー。第
70回ヴェネツィア国際映画祭にて、国際映画批評家連盟賞を受賞している。

誰も寄りつかない不気味な農園に、二人きりで暮らす母と兄。暴力の気配
が充満した10月のトウモロコシ畑に、トムは囚われの身となる。共犯者として
農園で過ごし始めた矢先、彼はギョームが故郷を出た理由を知る。そして・・・。
見るからに粗暴な兄フランシスよりも、刃物のようなトウモロコシ畑よりも、
私は母アガットが怖かった。全ての恐怖の元凶のような、全ての暴力の源の
ような、表情のない瞳。家族の欠けた広大な農場で、何かを待ち続けながら、
死んだように生き続ける一人の女が。
フランシスとトムのタンゴ、作業着姿のトムが牛舎にホースで水を撒くシー
ン。王家衛の 『ブエノスアイレス』 を思い出したのは、私だけではないだ
ろう。しかしこの映画に、ブエノにあった狂おしいほどの渇望はない。モント
リールに帰ったトムに、ファイが台北で見せたような笑顔はない。何もかも
がサブリミナルに暗示され、その正体に気付いた者だけが戦慄し、囚われ、
虜になってゆく。

エンディングはルーファス・ウェインライト(!)の“Going to A Town”。
好きなタイプの映画ではない。しかし、ガブリエル・ヤレドがスコアを提供
するだけの価値ある作品。とにかく世界が注目する 「天才」、存在自体
が事件であるかのようなグザヴィエ・ドランという人物。彼のこれからを、
私も追いかけたいと思う。
( 『トム・アット・ザ・ファーム』
監督・製作・共同脚本・編集・主演:グザヴィエ・ドラン/2013・加、仏)
女優として、おとぎ話を演じること。~『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』

GRACE OF MONACO
ハリウッドからモナコへと嫁ぎ、公妃となって6年。二人の子どもにも恵まれ、
「伝説の女優」 グレース・ケリー(ニコール・キッドマン)は、「おとぎ話の体現
者」 としての日々を送っていた。しかしその実情は、皇族としての暮らしに馴
染めない、苦悩と孤独の日々。そんな彼女の元に、懇意の映画監督・ヒッチ
コックが訪れる。
現存のハリウッド女優で一番美しいのは? と問われれば、まず浮かぶの
はニコール・キッドマン(私はね)。では、物故者も含めれば誰が一番美しい
か? 間違いなくグレース・ケリーでしょう(これも私の場合)。だからこのキャ
スティングは、私の中では 「これしかない」 申し分ないもの。近頃はボトック
ス疑惑で劣化が囁かれるニコ様ではあるけれど、相変わらずのあの美貌、と
ても自分と同じ人間とは思えません。

史実に基づいたフィクション、というちょっと微妙な但し書きのついたこの
作品。カンヌでのモナコ公室のボイコット騒動も記憶に新しいところですが、
まぁそりゃ関係者は気分のいいものではないでしょう。『マーニー』 の出演
依頼の下りは事実なのでしょうね。映画 『ヒッチコック』 で、アンソニー・ホ
プキンス扮するヒッチが、グレースのポートレイトを観て溜息をつく場面が
印象に残っているし。ヒッチがグレース贔屓だったことは有名ですから。
モナコで唯一心許せる存在のタッカー神父(フランク・ランジェラ)に、離婚
したいとメソメソ泣きを入れていたグレース。実家に電話しても冷たく突き放
される場面は、嫁ぐということの重みを考えさせられます。ところが、国の一
大事に 「公妃」 を 「演じる」 役割を与えられてからの彼女は、俄然輝き
始めます。やはり、天性の女優なのでしょう。突っ込み出すとキリがない作
品でもありますが、伝説を演じ切ったニコ様の女優魂には拍手。

と、ここまで書いて自分がグレース・ケリーの映画を知らないことに気付き
ました。ポートレイトは何度も目にしているけれど・・・。そして、ティム・ロス。
彼が大公、ってのはちょっと、ミスキャストだったのではないかな。
( 『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』 監督:オリヴィエ・ダアン/
主演:ニコール・キッドマン、ティム・ロス/2014・仏、米、伊、ベルギー、スイス)
名コンビ再び~『まほろ駅前狂騒曲』

まほろ駅前で 「結構真面目に」 便利屋を営む多田(瑛太)の元に、中学時
代の同級生行天(松田龍平)が転がり込んでから早2年。世話焼きで誠実な多
田と、自由気ままな行天はそれなりに上手くやっていた。ところが、行天の元妻
・三峯(本上まなみ)から 「娘をしばらく預かって欲しい」 という依頼が舞い込
み、二人の間に微妙な空気が生じる。
名コンビがスクリーンに帰ってきた! 穏やかさの中に、どこか悲しみをまと
う雰囲気を醸す瑛太と、飄々とした風来坊キャラがすっかり板に付いた龍平。
この2ショットがスクリーンで拝めるだけでも眼福というもの。TVドラマ版を挟ん
での映画第二作で、ドラマは未見な私は初めて知るキャラも多かったが、話は
単純なので混乱するようなこともない。基本、多田便利軒が巻き込まれる騒動
を描いているから、深く考えず、突っ込みも忘れて観入るがよし。

しかしキャストの豪華なこと! 大森監督ファミリー(大森南朋、麿赤兒)そ
のバーター(?)新井くん、大西信満や伊佐山ひろ子、岸部一徳ら曲者役者
系と、龍平が尊敬する人物だという松尾スズキに大御所・奈良岡朋子。そし
て誰よりも美人(!)な高良健吾。多田が恋する柏木さん(真木よう子)が羨
ましい・・・。
彼女との関係を、行天に対してはいつもムキになって否定する多田がかわ
いい。「恋までしている」 ってセリフ、よかったなぁ。龍平の優作オマージュ、
今回はセリフなしでした。個人的には、芸達者たちの中で本庄まなみだけが
浮いていると感じてしまった(大根過ぎて)。
特に意味もなく一緒にいて、時々行天が失踪して、帰ってきたら何事もなか
ったかのように普通な顔で、多田は行天を受け入れる。何でもなさそうに見え
て、実は強い二人の絆が、腐女子の妄想を掻き立てるのかな。前作では多田
の心の傷が、本作では何故行天が遊ぶように生きているのか、彼の厳しい生
い立ちが明かされる。

しかし、TVドラマ版っていつやってたんだろう? 大根仁監督で深夜枠か、
面白かったんでしょうねぇ。。。
ともあれこの二人には、またスクリーンに帰って来てほしいと切望します。
できるだけ近いうちに。
( 『まほろ駅前狂騒曲』 監督・共同脚本:大森立嗣/主演:瑛太、松田龍平/2014・日本)
疑似家族~『レッド・ファミリー』

RED FAMILY
郊外の住宅地に暮らす妻、夫、祖父、娘の仲睦まじい4人家族は、実は北朝
鮮から送り込まれたスパイグループだった。諜報活動に従事する彼らの隣には、
妻、夫、祖母、息子の4人家族が暮らしていた。喧嘩の絶えない彼らの言い争う
声は、スパイたちには筒抜けだった。
キム・ギドクが製作、脚本、編集を担当したことで気になっていた作品。表向
きはコメディでも、分断国家と家族というシリアスなテーマを扱っている。

北の工作員と呼ばれる人々が、どんな活動をし、どんな精神の持ち主である
のか。本当のところは、私たちは知る由もない。しかし、故郷の家族を人質に
取られ、信じ難いほど過酷な状況に置かれた彼らにとっては、デフォルメされ
た南のダメ一家でさえ、羨望の対象となり得ることは想像に難くない。罵り合
い、貶し合うセリフの応酬が、後に究極の 「しあわせ芝居」 に転調するのだ。
キム・ギドクの映画と言えば、セリフが極端に少なく、過激で残虐な描写の
中に神話的な寓意を孕み、一筋縄では噛み砕けない作品が多い。だからこ
そ惹きつけられ、熱烈に支持するギドクマニアが生まれる。しかし、監督から
引けば一転、エンタメとシリアスを絶妙に配した饒舌な作品を世に出す。キム
・ギドクという稀有なる映画人の、懐の深さと才能の幅を、思わずにはいられ
ない。

でも、正直期待したほどではなかったかな。『悪童日記』 の後、TOHO梅田
からテアトルまでって近いのに人混み凄くて疲れた挙句、ちょっとウトウトして
しまった。すみません(小声)。
( 『レッド・ファミリー』 監督:イ・ジュヒョン/2013・韓国/
主演:キム・ユミ、チョン・ウ、ソン・ビョンホ、パク・ソヨン)
一心同体~『悪童日記』

A nagy fuzet
LE GRAND CAHIER
1944年8月、ヨーロッパのある国。戦争の足音が次第に高まり、街で暮らし
ていた双子の少年(アンドラーシュ&ラースロー・ジェーマント)は、母の実家
のある田舎町に疎開する。そこには、人々から 「魔女」 と呼ばれる祖母が
いた。彼女は初めて会った彼らを 「メス犬の子ども」 と罵り、厳しい労働を
課す。
亡命作家アゴタ・クリストフによる世界的ベストセラーにして、世紀の大傑作
『悪童日記』 の映画化。私が原作に接したのは、ほんの数年前。最後の一行
を読んだときの息を呑む衝撃は、今でも忘れられない。私の中で、これはどう
しても観なければならない映画だった。上映館が少ないことに、観る前は不満
を抱いていたが、今はその理由がわかる。むしろ、ひっそりと公開される映画
があってもいい、とさえ思う。
スクリーンに映し出される、おそらくは献辞であろう Agota Kristof の
文字を見つめる。彼女が存命であれば、この映画をどう観たのだろう?

映画化が困難を極めたことは想像に難くない。あまりにも有名な原作と、その
独特な世界観。しかし、監督がハンガリー中から探し出したという主役の双子の
キャスティングが成功していることが、この映画の成功の半分以上を占めている
と言っても過言ではない(個人的には、彼らは少し大き過ぎる、と感じたけれど)。
原作を読了した時よりも、この映画を観終わった後のほうが、この作品の意図
していたものがしっかりと感じ取れた気がした。戦争という 「絶対悪」 がもたら
す、荒廃と残酷。「痛み」 によって強くなれたと感じたとき、彼らは罰を与えるこ
とを覚える。共に生まれ、共に眠り、共に痛み、片時も離れず一心同体であった
彼らが 「別れ」 を選択したことは、自らへ課した 「罰」 なのかもしれない。
これ以上はないと思えるほど高いハードルを越えてきた監督の、勇気と手腕
を讃えたい。不穏で陰惨な物語ではあるけれど、そこには 「生きる」 というこ
との真実が描かれている。ヨーロッパの旧い絵画のような映像も、美しかった。

( 『悪童日記』 監督・共同脚本:ヤーノシュ・サース/
主演:アンドラーシュ&ラースロー・ジェーマント/
2013・ハンガリー、独、オーストリア、仏)
メロンパンの皮焼いちゃいました。
大好きな10月も終わり。ハロー、11月。

関西限定だったのが、あまりの話題に先日全国発売されたコレ。
デイリーヤマザキのレジの人と
「これデイリー限定ですよね~」
「そうそう、デイリーがこんなに注目されることないから、うれしいわ~♪」
という会話をした翌日、ヨーカドーにありましたよ(笑)。
例の 「おいしいメロンパンの食べ方」(オーブントースターで焼き、1分置い
て食す)をやってみたところ、、、。むむ、これは森永ムーンライトですね^^
あ、「すごくおいしい」 ってことですから~。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
実は、ずーーーっと自分の 『フランシス・ハ』 の感想がひっかかっていて、
ブログをアップできずにいました。絶賛評多数の中で否定的意見を言うのは、
ちょっと勇気が要る。何年ブログやっていてもそう。映画を観て、どんな感想
を持つのも自由だと、頭ではわかっているのに。小心者なんですよね。
今は、ちょっとスッキリ。いいよね、「ありのまま」 で。

関西限定だったのが、あまりの話題に先日全国発売されたコレ。
デイリーヤマザキのレジの人と
「これデイリー限定ですよね~」
「そうそう、デイリーがこんなに注目されることないから、うれしいわ~♪」
という会話をした翌日、ヨーカドーにありましたよ(笑)。
例の 「おいしいメロンパンの食べ方」(オーブントースターで焼き、1分置い
て食す)をやってみたところ、、、。むむ、これは森永ムーンライトですね^^
あ、「すごくおいしい」 ってことですから~。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
実は、ずーーーっと自分の 『フランシス・ハ』 の感想がひっかかっていて、
ブログをアップできずにいました。絶賛評多数の中で否定的意見を言うのは、
ちょっと勇気が要る。何年ブログやっていてもそう。映画を観て、どんな感想
を持つのも自由だと、頭ではわかっているのに。小心者なんですよね。
今は、ちょっとスッキリ。いいよね、「ありのまま」 で。
2014-11-02 :
パンとか、カフェとか。 :
コメント : 6 :
発展途上人~『フランシス・ハ』

FRANCES HA
27歳のフランシス(グレタ・ガーウィグ)は、モダンダンスカンパニーの実習
生。学生時代からの親友ソフィー(ミッキー・サムナー)とブルックリンでルー
ムシェアしている。彼女と夜ごと夢を語り合い、幸せな日々を過ごしていた
フランシスだったが・・・。
モノクロ映像で描かれる、モラトリアムなニューヨーク。芸術家の卵たちの、
ユニークで自由な生活。映画好きなら大絶賛するであろう、個性的な映画。
しかし私はダメでした・・・。そのことに、自分自身がショックを受けています
(悲)。
同じようにモラトリアムな、ニューヨークの根無し草を描いた 『インサイド
・ルーウィン・デイヴィス』 は、今年のベストに間違いなく入れるほど好きだ
ったのに。何故だろう? 猫が出てこなかったから?

こういう一人称の映画では、主人公に共感できるか、好感を持てるかが
映画全体の印象を左右する。フランシスはユニークで美人ではあるが、魅
力的ではない=undateable(字幕では 「非モテ」)な女の子。彼女の空気
の読めなさや、ソフィー、ソフィーとやたら連呼するところがダメだった。
そのソフィーにしても、ランダムハウス(!)にお勤めなのに、お金持ちの
彼氏の転勤が決まれば退職してしまうなんて。もったいない! ここで、イ
ヤな女である私は、「え~、あり得へん。結局腰かけ? もしかコネ入社な
んちゃうん?」 などと思ってしまった・・・。
フランシスと、このソフィーの関係に、全く響くものがなかった。と言うか、私
にはソフィーの魅力がわからない=フランシスがわからない、ということな
のだろうか。
いやむしろ、私自身の27歳の頃と、彼女たちがあまりにも違い過ぎたから
なのかもしれない。「芸術は、お金がないとできないよ」 っていうセリフに、
一番共感できたような気がする。

結局、ニューヨークで暮らし続けるために 「事務職」 と 「振付師」 という
現実を受け入れ、小さな城を手に入れるフランシス。タイトルの意味が明示
される幕切れはちょっとコケるけれど、後味は悪くはない。デヴィッド・ボウイ
って、偉大だなぁ、、というのが、一番の感想かもしれない。
( 『フランシス・ハ』 監督・製作・共同脚本:ノア・バームバック/
主演・共同脚本:グレタ・ガーウィグ/2012・USA)