よいお年をお迎え下さい。 【さようなら、2013】
今年も弊ブログに遊びにきて下さった皆様、ありがとうございました。
お陰様で thinkingdays も、始めてから丸8年が過ぎました。もうすっかり
日常の一部ですね。
2013年は、(毎年言っているような気もしますが)本当に忙しかった。。
転職したり、子の学校のPTAで役員を引き受けたり。もうずーーーっとバタバタ
していたように思います。
それでも、幸い人間関係にはとても恵まれたので、忙しいながらも楽しい毎日
だったかな。感謝、感謝です♪
時間に余裕がないので、映画館に足を運ぶのも一苦労でしたが、今年もいい
映画にたくさん出逢えて幸せでした。
学生時代を除けば、頻繁に映画館通いができるようになったのはここ数年の
ことなのですが、年を経る度にますます映画が好きになっていくような気がし
ます。
ちょっとスマホ中毒気味で、読書量が減ったのが今年の反省点かな。
でも、総じてとてもいい一年でした。そんな風にこの年の瀬に思えるのは、
幸せなことですよね。。
この冬は厳しい寒さですが、皆さまお風邪など召しませぬよう。
心穏やかな年末年始でありますように。
年内最後に観た映画 & マイベスト記事は年明けにアップします。
また、新しい年にお会いしましょう。
真紅拝
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

アンファン 【enfant】
なかたに亭にて
お陰様で thinkingdays も、始めてから丸8年が過ぎました。もうすっかり
日常の一部ですね。
2013年は、(毎年言っているような気もしますが)本当に忙しかった。。
転職したり、子の学校のPTAで役員を引き受けたり。もうずーーーっとバタバタ
していたように思います。
それでも、幸い人間関係にはとても恵まれたので、忙しいながらも楽しい毎日
だったかな。感謝、感謝です♪
時間に余裕がないので、映画館に足を運ぶのも一苦労でしたが、今年もいい
映画にたくさん出逢えて幸せでした。
学生時代を除けば、頻繁に映画館通いができるようになったのはここ数年の
ことなのですが、年を経る度にますます映画が好きになっていくような気がし
ます。
ちょっとスマホ中毒気味で、読書量が減ったのが今年の反省点かな。
でも、総じてとてもいい一年でした。そんな風にこの年の瀬に思えるのは、
幸せなことですよね。。
この冬は厳しい寒さですが、皆さまお風邪など召しませぬよう。
心穏やかな年末年始でありますように。
年内最後に観た映画 & マイベスト記事は年明けにアップします。
また、新しい年にお会いしましょう。
真紅拝
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

アンファン 【enfant】
なかたに亭にて
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真贋~『鑑定士と顔のない依頼人』

LA MIGLIORE OFFERTA
THE BEST OFFER
潔癖症で、孤独に生きる美術鑑定士のヴァージル・オールドマン(ジェフリー・
ラッシュ)は、クレアと名乗る女性からの電話を受ける。それは彼女が亡き両親
から相続した広大なヴィラにある、美術品の査定の依頼だった。
のっけから文句ですみません。。この映画、邦題が酷くないですか? 長い。
漢字が多い。だから憶えにくい。あ、もしかしてそれが狙いなのかな(笑)。私見
ですが、邦題ってもっと自由でいいのでは? 簡潔で、憶えやすければそれで。
※ 以下、ネタバレします。未見の方はご注意下さい!

それはさて置き、とっても期待していた作品でした。これを観なければ、2013
年は越せない! くらいの勢いで。もちろん、期待通りに面白いミステリーでし
たが、何せ後味が悪いのですよ。。「シチリアの神童」 ことジュゼッペ・トルナ
トーレ、あなたもしかして性格悪い?(笑)。
まんまと騙され、身ぐるみ剥がれるヴァージルが哀れで、可哀想で。。彼の
フルネーム、ヴァージル・オールドマンって、ヴァージン・オールドマン(ウブな
老紳士) って意味だったのでしょうか・・・。免疫がないって、ダメですね。若
い頃にそれなりに付けておかないと、年を取ってからのヤケドは痛手が大き
過ぎる。ヴァージルの場合、悲惨な幼少期のせいで、額縁の中の二次元の
女性しか愛せなくなってしまったわけだけれど・・・。
結局、ヴァージルを陥れたのは長年の相棒(と思っていた)ビリー(ドナルド・
サザーランド)なわけで・・・。私利私欲のために、誰かを犠牲にして利用した
り、人に恨まれるようなことをしてはダメですね、、最後は自分に帰ってくる。
それも100倍返しで。

恋は盲目、と言いますが、謎めいた恋は超一流の鑑定士の目さえ狂わせて
しまう。ジェフリー・ラッシュ。名作 『シャイン』 以来、本当にコンスタントに良作
に出演している印象。本作でも、何とも滋味のある名演を魅せてくれます。メイ
ンキャストが英語圏出身だからか、イタリア映画なのに言語は英語。ラストに至
るまでの様々な 「仕掛け」 、意味深なセリフ、ヨーロピアンな美術品の数々。
楽しんだもの勝ち、な映画ですね。ブラヴォ。
( 『鑑定士と顔のない依頼人』 監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ/
主演:ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、ドナルド・サザーランド/2013・伊)
最高の旅~『ゼロ・グラビティ』 【3D・字幕版】

GRAVITY
半年間の訓練を経て、スペースシャトルに初搭乗したライアン・ストーン(サ
ンドラ・ブロック)は、ベテランの宇宙飛行士で今回が最後の任務となるマット
・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)とともに、宇宙船外活動を行っていた。
しかし予想外の衝突事故により、二人は漆黒の宇宙空間に放り出される。
2013年もいよいよ残すところ僅か、なこの時期に、来ました! 今年の大
本命が。3D嫌いな私だが、この映画は絶対に3Dで観たかった。シンプルな
ストーリー、最小限な登場人物、驚愕の映像。91分というランタイムにさえ
意味を持たせた、アルフォンソ・キュアロンが放つ映画史クラスの傑作。必見!

子どもの頃、「宇宙の果ては、どうなっているんだろう?」 と考え始め、何故
か怖くて眠れなくなった経験、ありませんか? 地上600キロ。 酸素はなく、
生命は維持できない。ライアンの恐怖は、私なら絶対に耐えられない。宇宙空
間に放り出された時点で、失神し絶命してしまうだろう。
ジョージ・クルーニーは、大気圏外でもやっぱり、ジョージ・クルーニーだっ
た(多少、バズ・ライトイヤー入っていたが)。頭の回転が速く、ジョークが得意
で勇敢なマット。当て書きされた役なのか? と思ったら、なんと当初のキャス
トはロバート・ダウニー・Jrだったらしい・・・! ジョージのほうが適役ですね。
より 「おじさん」 だから(素敵なおじさんですよ)。ヒューストンからの声が、
エド・ハリスとは全く気付かず。アポロ13。ライトスタッフ。

何ともタフな役柄をこなしたサンドラ・ブロックは、称賛に値するだろう。
「母なる大地」 にライアンが感謝するとき、私も両肩にずっしりと 「重力」
を感じた。スクリーンが暗転し、浮かび上がる "GRAVITY" の文字。原題
の 「意味」 を、観る者が理解する瞬間。なのに 『ゼロ・グラビティ』 じゃ、
全く逆の意味になってしまうんですけど・・・。
今まで3Dを毛嫌いしていたのは、メガネが重い、画面が暗い、そのせいか
鑑賞後、頭が痛くなったり目が霞んだりしていたから。しかし、今回はメガネ
も随分軽いし、画面も明るく美しい! 劇場によって、こうも違うものかと驚
き。IMAXで観たかった、と欲が出たり。
( 『ゼロ・グラヴィティ』 監督・製作・共同脚本・編集:アルフォンソ・キュアロン/
主演:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー/2013・USA)
テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画
梅田ガーデンシネマ閉館(泣)
何ですかこれは? クリスマスプレゼントにしてはショック過ぎる(泣)。
梅田ガーデンシネマ閉館のお知らせ
残念としか言いようがありません。残念です。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
気を取り直して・・・。



皆さまメリークリスマス♪
梅田ガーデンシネマ閉館のお知らせ
残念としか言いようがありません。残念です。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
気を取り直して・・・。



皆さまメリークリスマス♪
トイ・ストーリー & トイ・ストーリー2
船長の責務~『キャプテン・フィリップス』

CAPTAIN PHILLIPS
2009年の早春。リチャード・フィリップス(トム・ハンクス)はアフリカ難民に
援助物資を運ぶ貨物船の船長として、20人の乗組員とともに船上にあった。
しかし、彼の船はソマリア沖で4人の若い海賊に襲撃される。
う~ん、なんだろう、この臨場感と言うか、緊迫感と言うか。。。何とも言え
ない重圧を感じる作品だった。134分という決して短くはないランタイム、無
駄と思われるショットは皆無。リアルという言葉が、観る者が登場人物の心境
にシンクロする、という意味であるなら、この映画はまさに 「リアル」 な映画
だろう。(リアリティは常に、観る者の内に在る)
監督はポール・グリーングラス。恐らくは手持ちカメラによる揺れる映像も、
スクリーンとシートの距離を縮めることに一役買っている。船に乗り込んだ時
の、あの海風と振動と、潮とガソリンが混ざり合った臭いを感じる映画だった。

妻との会話や、乗組員たちに接するフィリップスの言動で、彼がいかに真面目
で責任感が強く、慎重な人物であるかがまず描写される。トム・ハンクスは偉大
過ぎるが故に 「何を演じてもトム・ハンクス」 であるのが時に気にならないこと
もないが、この演技は十分、称賛(批評家筋の高評価や各賞ノミネート)に値す
ると思う。
驚いたのは、海賊たちがあんなにも貧相なボートでやってきて、放水も虚しく
易々と上船できたこと。武装していない貨物船ではあっても、あんなにも無防備
だとは知らなかった。海賊のリーダー、ムセ(バーカッド・アブディ)の演技も迫真。
粗暴な言動の端々に、貧しい国に生まれた若者の悲哀がにじむ。

人質となったフィリップスを、米海軍がネイビー・シールズの精鋭部隊を投入
して救出に挑む後半は息詰まる攻防。交渉人の軍人がめちゃ素敵、、などと
思いながら、衝撃の(しかしわかっていたはずの)結末に、息を呑む。 「いい
人」 全開のキャプテン・フィリップス=トム・ハンクスの無事を願うのはもちろん
だけれど、4人の海賊たちも、憎む気にはなれないのはなぜなのだろう?
裸足か、サンダルしか履けない、痩せこけた若者たち。この映画、ただの
「アメリカ万歳」、“God Bless America,”な映画ではない。善と悪、世界を
単純な対立構造で描くことはしない。そこが、ポール・グリーングラスの英国
人気質なのかな、と思ったり。
( 『キャプテン・フィリップス』 監督:ポール・グリーングラス/
主演:トム・ハンクス、バーカッド・アブディ/2013・USA)
黒幕は誰だ~『コールド・ウォー 香港警察 二つの正義』

寒戦
COLD WAR
賑わう香港の繁華街で、爆破事件が発生。時を同じくして、警官5人のチーム
が忽然と姿を消した。海外出張中の香港警察長官に代わり、副長官のリー(梁
家輝レオン・カーフェイ)が陣頭指揮を取って非常事態宣言を発令するが、もう一
人の副長官、ラウ(郭富城アーロン・クォック)はそれに反発する。行方不明の
警官チームにはリーの一人息子ジョー(エディ・ポン)も含まれており、ラウはリ
ーの公私混同を危惧したのだった。
「この映画は、実在の香港警察とは無関係です」 最初にこうクレジットされ、
思わずニヤリ。いや~、面白かった! 「インファナル・アフェア以来の傑作」 と
いう惹句も、決して大袈裟ではない。「屋上」 と聞けば、思わずあの映画のあ
のシーンを思い出してしまうけれど、決して二番煎じ感はない。スター・フェリー
を上空から捉えたり、高層ビル群が何度も映し出されたりと、百万ドル都市・香
港がもう一人の主役となり、映像に無二の彩を加えている。

先の読めない展開に、ドキドキしながら身を乗り出してしまう。現場から叩き
上げでNO.2にまで上り詰めたリーと、現場経験のない、事務方出身のラウ。
互いを牽制し合い、主導権争いを繰り広げながら、腹を探り合うふたり。そこに、
ICACという汚職捜査機関が介入し、ラウを拘束する。彼は嵌められたのか?
リーかラウ、どちらかが黒幕なのか? それとも・・・。
アーロン・クォックの眉が太過ぎるんじゃ、、とか、レオン・カーフェイがオー
ル巨人師匠に見える、、とか邪念も少々、挟みつつ(笑)、この副長官ふたり
の演技にすっかり翻弄されてしまう。私はてっきり、局長役で登場のアンディ
・ラウが怪しいのでは?! と思ってしまっていたのだが。アンディ、またまた
ノーギャラでのご出演だそうで。。もうどんだけ男前なんだか!

広報官フェリックス(チャーリー・ヤン)がラウの昔の恋人だったり、若き調査
官(アーリフ・リー)が今後警察組織とどう関わっていくのか? を匂わせたりと、
続編へのネタも上手く散りばめられている。いやもう続編と言わず、ここは傑作
トリロジーを目指して欲しいところ。期待しています^^
( 『コールド・ウォー 香港警察 二つの正義』 監督・脚本:リョン・ロクマン、サニー・ルク/
主演:郭富城アーロン・クォック、梁家輝レオン・カーフェイ/2012・香港)
テーマ : ☆.。.:*・゚中国・香港・台湾映画゚・*:.。.☆
ジャンル : 映画
Love Letter

何年ぶりの再見だろう? 泣き過ぎて目が腫れたBSの夜。
若かりし頃の光石研さんが出ていたのだな。今は亡き、范文雀さんも。。加賀
まりこさんの美しいこと!
ショートカットの中山美穂は、まだ青々しいところが残っていて。蕾のよう。
そして、何と言ってもトヨエツのコダマですよ・・・。最高やね。
「今、いっちゃんエエとこや」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
婚約者を亡くして二年しか経っていないのに、その親友と結ばれようとしてい
る博子。そんなに早くていいの? っていう違和感は、拭いようもないけれど・・・。
「吹っ切らなあかん」 と秋葉は言う。でもそうじゃない。そうじゃないんだな。
秋葉にこそ、博子が必要なんだ。
同じパーティで遭難し、生き残った者として、秋葉は生涯、樹の死を背負うの
だろう。そんな彼にこそ、博子が必要なのだ。樹を忘れないために。
(博子の思い出の中の樹さえ、秋葉は抱きとめようとしている)
それはある意味、とても、とても辛い選択だろう。
死んでしまった男の子の想いが、時を越え、生き残った女の子に届られるラス
トシーン。
映像の美しさは、言うまでもなく篠田カメラマン。岩井俊二監督にとって、長編
第一作ということを改めて知り。参りました。
この映画は間違いなく、日本映画のクラシックになるのだろう。
ああ、私の恋は・・・
( 『Love Letter』 監督・脚本・編集:岩井俊二//1995・日本
主演:中山美穂、豊川悦司、酒井美紀、柏原崇)
あの頃/壁の花~『ウォールフラワー』

THE PERKS OF BEING A WALLFLOWER
アメリカのある街。ウェブの世界がリアルを凌駕する、少し前の時代。心に
傷を抱えた内気な少年チャーリー(ローガン・ラーマン)は、高校に入学する。
孤独な日々の中、エキセントリックで独特な雰囲気を醸すパトリック(エズラ
・ミラー)と、美しく奔放なサム(エマ・ワトソン)という血のつながらない兄妹
との出逢いが、チャーリーの生活の全てを変えてゆく。
「ようこそ。はみ出し者の島へ」
アメリカで大ベストセラーになったという、スティーヴン・チョボスキーによる
自伝的青春小説の映画化。原作者自らが脚色し、メガホンを取るという、偶
然にも今年の必見作 『あの頃、君を追いかけた』 と同じ生い立ちの作品。
どちらも、私的にはど真ん中ストライクだった。観ている間中、胸が痛くて・・・。
青春の甘さと切なさ、若く無知であることの残酷さ、成長に伴う痛みを、余す
ところなく描いた秀作。もちろん、今年のマイベスト作の一本。

映画作品として観れば、(技巧的に)稚拙な部分ももちろんあるだろう。個人
的には、もう少しラストに余白があってもよかったとは思う。しかし、違う国で、
違う人種に生まれ、違う時代に育っても、スクリーンの中にかつての自分を見
つけることができるのだ。作り手の誠意と情熱を痛々しいほど感じる、この瑞々
しく初々しい映画を、好きにならずにいられない。
キャストは皆適材適所だが、とりわけエズラ・ミラーと、エマ・ワトソンが素晴
らしい・・・! 彼らこそが、この物語に命を吹き込み、色彩を与えている。
複雑な家庭に育ち、それぞれの胸に爆弾を抱えている兄妹。苦し過ぎる現実
の中で、道化を演じることで辛うじて息をしているパトリック。あれほどの重荷
を背負った10代の少年をリアルに演じることができる、10代の役者がいると
は・・・。エズラ・ミラー、恐るべし! そして、我らがハーマイオニーが劣化す
ることなく、美しいままで開花してくれたことも、とてもとてもうれしい。オリンポ
スの神々に感謝したいほど(笑)。

恋人や自分のために、レコード(!)やFMから、音楽をカセットテープ(!!)
にダビング(死語?)すること。音楽が人生の80%を占めていた 「あの頃」。
私も長電話して、よく親に叱られたなぁ。誰もが傷つき、傷つけ、もがきながら、
明日を探していた。よき師(ポール・ラッド)に導かれ、誠実な医師(ジョーン・
キューザック)による適切な治療を受け、生涯の友を得たチャーリー。
”Right now we are alive and in this moment I swear we are infinite.”
( 『ウォールフラワー』 監督・脚本・原作:スティーヴン・チョボスキー/
主演:ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラー/2012・USA)
並び立つ両雄と猛獣使い~『夢と狂気の王国』

2012年。東京・小金井のアニメーションスタジオ 「スタジオジブリ」 では、
宮崎駿の監督作品 『風立ちぬ』 の製作が佳境を迎えていた。一方、ジブリ
とは離れた場所で、高畑勲もまた14年ぶりとなる新作 『かぐや姫の物語』
の製作を続けていた。2013年夏、この日本を代表する映画監督二人の新作
を同日公開すべく、プロデューサー・鈴木敏夫は奔走していた。
『エンディングノート』 で話題をさらった砂田麻美が、一年間ジブリに密着、
宮崎駿の引退までを追ったドキュメンタリー。公開をとても楽しみにしていた
作品だった。しかし、ここ数ヶ月のジブリ関連の露出の多さに、テレビ放映さ
れるのも時間の問題かな? 劇場で観ることもないかも? と思ってしまった
のも事実。それでも、観て本当によかった。2013年、新作が2本公開された
この記念すべき 「ジブリイヤー」 にふさわしい秀作。宮崎駿・高畑勲という
ふたりの大天才を鼓舞し続けた 「猛獣使い」 こと影の立役者、鈴木敏夫
にもスポットが当てられている。

砂田監督が 「若い女の子」 だからか、巨匠も随分油断しているご様子。
カメラの存在を知ってか知らずか、涙を流すところを捉えられていて驚き。そ
れにしても、宮崎駿を取り巻く女性の多いこと! ヤクルトレディから、たくさ
んのアニメーターの方々、監督のお気に入りらしき 「三吉」 さん、スタジオ
に住み着いた猫まで 「ウシコ」 さんですよ(笑)。鈴木さんが車で出かける
とき、必ず手を振って見送る女性の存在も気になったなぁ。庵野監督にコー
ヒーを手渡していたアフレコスタッフの女性は、猫背椿さんそっくりだった。
立ち位置が極端に左なためか、あまり画面に登場しない高畑勲の凄さも、
改めて感じられる作品になっている。「性格破綻者」 だと貶しながら、宮崎
駿こそが誰よりも 「パクさん」 を意識していることも。

次回作の方向性を語ったり、引退会見の直前にも関わらず、街の景色を
映画の場面になぞらえずにはいられない宮崎駿は、きっとまた映画を撮るの
ではないか、と思わせる。「もう一本撮りそうな勢いですよ」 と言った庵野監
督に対し、「え~、俺もうやだよ~」 と弱気だったのは鈴木さん。彼が宮崎駿
に引導を渡したのでは? と勘繰りたくなる。
ラストシーン、力強い足取りでこちら側に向かってくる宮崎駿からは、創作
に対する枯れないエネルギーを感じる。このラストカットは、まさに映画的な
「名シーン」。私は 『アルプスの少女ハイジ』 や 『未来少年コナン』 が
「刷り込み」 になっている世代の人間なので、宮崎駿は自分の 「お父さん」
だと思っている。名作でなくても、傑作でなくてもいい。たとえ駄作だっていい。
作りたい気持ちがあるなら、どんな作品でも作って下さい。宮崎監督、あなた
は自由です。
( 『夢と狂気の王国』 監督・脚本・編集・撮影:砂田麻美/2013・日本)
いのちの記憶~『かぐや姫の物語』

光る竹の中から、小さな女の子を見つけた竹取の翁(地井武男)は、家に連
れ帰り竹取の媼(宮本信子)とともにその子を育てる。たけのこのように急成長
した少女は、都に移り住み 「かぐや」 という名の美しい姫となった。
高畑勲監督、14年ぶりの作品。正直、この日本を代表する映画監督に対し、
宮崎駿ほどの思い入れはない。作品の全てを観ているわけでもないし、本作
の公開を知った時も、あまり心惹かれることはなかった。しかし、映画好きの
端くれとして、ジブリの新作を観逃すわけにはいかない。予告編のDVDもも
らったし、、くらいの気持ちでいたのだけれど・・・。
動体視力が追いつかないほど高速で場面転換する、昨今のCGアニメとは
真逆の、水彩画のような描線の人物たちの自然な動き。恐らくは見慣れなさ
から生ずるその違和感は、たちまち心地よさにとって代わる。姫が感情を高揚
させた場面の、ダイナミズムがもたらす昂奮。日本最古の物語を下敷きに、月
の世界から地上に舞い降りた 「姫」 の物語が、私(たち)自身の人生にシン
クロする。「日本の古典だから、多くの日本人に観て欲しい」 という漠然とした
思いは、物語が進むにつれ 「世界中の人に、この作品を観せたい」 という考
えに変わっていった。終盤から短いエンドロールまで、涙が溢れて止まらない。

ヒロイン役の朝倉あきをはじめ、声優陣も素晴らしい。まさか、故・地井武
男さんの声が聞けるとは・・・(涙)。宮本信子は、今年は本当に大活躍の
当たり年。高畑淳子はお約束のハマり役。そして、高良健吾も意外に(?)
健闘していた。彼って、ちゃんと声張れるんですね。あと、パタリロ出てまし
た(女童)。
姫は、どうして月から地球にやってきたのか。その謎は、私(たち)がどうし
てこの世界に生まれてきたのか、という命題と繋がっている。懐かしいあの
人に、もう一度会いたい。懐かしいあの場所に、もう一度立ちたい。その思い
の強さが、私(たち)を 「此処」 に導いているような気がしてならないのだ。
そんなこの物語の主題が歌われている、まさしく 「主題」 歌、二階堂和美
『いのちの記憶』 がまた、沁みて、沁みて・・・。落涙のスピードに拍車をかけ
る。鳥、虫、けもの、草、木、花。過去も、未来も、この世の生きとし生けるもの
全てをいとおしみ、祝福する 「アンセム」。スクリーンで、観て、聴いて、感じ
て欲しい。是非とも。

( 『かぐや姫の物語』 監督・原案・共同脚本:高畑勲/2013・日本/
声の出演:朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子、高畑淳子)
テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画
隣のマフィア~『マラヴィータ』

THE FAMILY
MALAVITA
ノルマンディ地方の田舎町に、あるアメリカ人一家が引っ越してくる。作家を
名乗るフレッド(ロバート・デ・ニーロ)、その妻マギー(ミシェル・ファイファー)、
娘のベル(ダイアナ・アグロン)と息子ウォレン(ジョン・ディレオ)。しかし彼らの
正体は、FBIの証人保護プログラムで守られたマフィアの一家だった。
ベッソンが監督して、スコセッシがプロデュースして、デ・ニーロが主演? ミ
シェル・ファイファーが奥さんだって。それは観ねばなりませぬ。『徹子の部屋』
に出ていたデ・ニーロは 「これはブラック・コメディです」 と言っていました。
セルフ・パロディのような役柄を、嬉々として演じているデ・ニーロ。素敵です。
笑うと顔全体に皺が広がる人、好きだなぁ。グッド・フェローズ。

名前を変え、素性を隠し、転居を繰り返す日々。生まれ故郷から遠く離れ、ピ
ーナッツバターも売っていない見知らぬ土地。ストレスだらけの生活の発散の仕
方が、家族全員、超絶バイオレントなんです。血は争えないな~。笑えるコメデ
ィではあるけれど、物語終盤の粛清場面はあまりに凄まじく。。こんなに多くの
市井の人々を犠牲にしてまで、彼らは守られるべき一家なのか? と疑問が湧
いてくるほど。
監視役のFBI捜査官はトミー・リー・ジョーンズ。「この方、日本で有名なんで
す!」 と徹子さんがデ・ニーロにいらん情報しゃべってましたが(笑)、トミー・
リーさん適役。デ・ニーロとの2ショット、眼福でございました。
タイトルの 「マラヴィータ」、これは一家が飼っている犬の名前です。カタカ
ナ邦題だけど、『愛の○○』 『悪の○○』 より全然、ありだと思いますね。

( 『マラヴィータ』 監督・共同脚本:リュック・ベッソン/2013・米、仏/
主演:ロバート・デ・ニーロ、ミシェル・ファイファー、トミー・リー・ジョーンズ)
カウンセラーの失敗~『悪の法則』

THE COUNSELOR
メキシコ国境の町、エル・パソ。若くして成功した弁護士(マイケル・ファスベン
ダー)は、恋人ローラ(ペネロペ・クルス)との結婚を考えていた。自らを過信した
彼は、麻薬絡みの危ないビジネスに手を染める。
↑ いつも感想の冒頭に置く 「あらすじ(のような覚書)」 は、基本的に自分
の記憶に基づいて書いている。しかし、この映画はちょっと書き辛かった。
まず、主人公は皆に 「カウンセラー」 と呼ばれているのだが、字幕では 「弁
護士」 と訳されている。カウンセラーって日本語だと 「精神分析医」 とか 「臨
床心理士」 とか、医学的なイメージだけど、ここでは 「法律顧問」 みたいな感
じなのかな? とにかく、主人公には名前が与えられていない。メキシコ国境の
町が舞台と思いきや、主人公はいきなり、わざわざ(?)アムステルダムでダイ
ヤモンドを購入している。まぁ、アムスといえば麻薬関係が合法、という連想で
しょうけれども。ダイヤのディーラーがブルーノ・ガンツだ!って気付いたときは、
ちょっと期待したのだけれど。。

カテゴライズするとすればクライム・サスペンスである本作、とにかくセリフ
が長くてほとんど会話劇。哲学的で、「口は災いの元」 的な予言めいたセリ
フが繰り出される。俳優たちのクローズ・アップ。
キービジュアルに居並ぶハリウッド・スター、マイケル・ファスベンダー、ペネ
ロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム、ブラッド・ピット。彼ら
を観て、少しでも心惹かれない映画ファンがいるだろうか? しかも脚本は
「あの」 コーマック・マッカーシー、監督はリドリー・スコット御大。しかし残念
ながら、この映画にはサスペンスがなく、あるのは予定調和ばかり。俳優たち
のビッグ・ネームが独り歩きして、『シェイム/SHAME』 や 『ファイト・クラブ』
の続きを観ているような錯覚にさえ陥る。ハイブランドのコマーシャル映像の
ようにも。

そんな状況の中、一人気を吐いていたのがキャメロン・ディアス。チーターを
2頭飼いし、自らも 「豹柄」 のタトゥーをまとうクーガー女。感情を持たず、こ
れ、と定めた獲物は必ず仕留める。非現実的なまでに完璧なスーパー・ボディ。
まさに釘付け。
「スター」 の顔を大スクリーンに観に行く。それが映画の目的でもいいじゃ
ないか。そう割り切って、とりあえず 「満足」 ということにしよう。
( 『悪の法則』 監督・製作:リドリー・スコット/2013・USA、UK/
主演:マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、
ハビエル・バルデム、ブラッド・ピット)