文化部 × 運動部 × 帰宅部 ~『桐島、部活やめるってよ』

バレー部キャプテンにして学校の中心人物「桐島」が部活を辞める--。金曜日
の放課後、そのニュースが校内を駆け巡る。桐島の親友・宏樹(東出昌大)や恋人
の梨紗(山本美月)はもちろん、彼らとは最も遠い所にいる映画部の前田(神木隆
之介)たちにまで、その「事件」の波紋は広がってゆく。
高校二年の秋。そろそろ進路が気になりつつも、スポーツに打ち込む者、帰宅
部と称してダラダラ過ごす者、文化系クラブで自分の「好き」を究めようとする者。
その中心にいた「桐島」の不可解な行動によって、「学校」という特殊な環境で保
たれていた秩序が崩壊してゆく。単なる謎解きや学園モノとは一線を画す群像劇。
原作小説は、朝井リョウのデビュー作にして、小説すばる新人賞受賞作(未読)。
いや~、素晴らしかった! いつまでも姿を現さない「桐島」に振り回され、右
往左往する高校二年生たちを滑稽に感じながらも、いつの間にか彼らと同化し、
自分自身の姿をそこに探している。若い俳優たちは適材適所に配され、それぞ
れの役割を過不足なく全うしながら輝きを放つ。妄想炸裂の笑えるシーンも絶妙、
さすがは吉田大八監督。これは今年の邦画ベスト作の一本でしょう。

私自身がどこをどう切り取っても文化系の人間ゆえ、どうしても肩入れして観
てしまうのを差し引いても、映画部のオタクコンビが最高だった。改めて、神木
隆之介って巧い役者だと再認識。天才子役が、個性派俳優に化ける瞬間を目
撃できたような気がする(大袈裟?)。体育の時間のオドオドっぷり、オーラを
消して過ごす教室と、映画部監督としてスタッフたちにテキパキと指示を出す
ときのギャップ。中指でメガネをズリあげる癖、「ロメロだよ、そのくらい観とけ!」
「こいつら全部喰い殺せ!」 名セリフで啖呵を切るシーンのカッコよさ!
文化部 vs 運動部 vs 帰宅部、この勝負文化部の圧勝でしょう。
でも、正直に言うと、梨紗や沙奈(松岡茉優)のような、運動部にも文化部にも
属さない、「カワイイ」ことや誰かの「彼女」であることにこそ最大の価値を見出し
ているような女の子たちのことも、私は否定しない。運動部女子からしたら「あの
人たち」なんて陰で言われてしまうような派手なグループ。自己顕示欲が最高潮
なこの年頃に、本能全開で生きている彼女たちの気持ちも、よくわかるから。

本当は、運動部であろうと文化部であろうと関係ないんだ。高3の秋になって
も「ドラフトまでは」引退しないキャプテン、控えでも、小さくても、懸命にレシーブ
を受け続ける風助、アカデミー賞なんか関係ない、ただ撮りたいから好きな映画
を撮る前田。背が高くて、彼女がいて、学校の「スター」の親友でも、やりたいこ
と、好きなことの見つからない自分は一体、何をしてるんだよ・・・。宏樹の涙が
悲しい。
「太陽が沈むんだ」。 放課後の、教室でない場所で「好きなこと」に打ち込め
る僅かな時間。夕暮れの屋上、美しい「マジックアワー」が過ぎ去る一瞬のよう
に、青春の日々は短い。みんな、急いで。
( 『桐島、部活やめるってよ』 監督・共同脚本:吉田大八/
主演:神木隆之介、橋本愛、東出昌大、山本美月、大後寿々花/2012・日本)
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テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画
ドミニク・サブロン dominique saibron marche et cafe & 残念なニュース
ルクア大阪B1にあるブーランジェリー。東京にはたくさんあるようですが、
関西は今のところ、この一店舗のみの展開です。これから増えるのかな?

こちらのパンはマキシム・ド・パリだけあって値段も「高級」なのですが、味
は確かですよ。こちらのヘルシーセット、サラダに数種類のパンに、選べるス
ープもついてて、大満足です。

ミネストローネをチョイス。
スープといえばお向いのスープストック・トーキョーですが、いつも長蛇の
列。人気ありますね~、私はまだ入ったことがありません。
そしてサラダにパン、といえばこちらが定番ですが・・・。

AfternoonTea TEAROOM
こちらは食後、必ずこうなってしまうので要注意。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして、ちょっと残念なニュース。。「関西のパン好きの殿堂」 ことブランジュリ
・タケウチさん、昨年のカフェ閉店に続き、来年には移転されるそうです(号泣)。
移転先は西宮、ということですので行けないこともないのですが。。遠くなるなぁ。
それまで、せっせと通いましょう♪
関西は今のところ、この一店舗のみの展開です。これから増えるのかな?

こちらのパンはマキシム・ド・パリだけあって値段も「高級」なのですが、味
は確かですよ。こちらのヘルシーセット、サラダに数種類のパンに、選べるス
ープもついてて、大満足です。

ミネストローネをチョイス。
スープといえばお向いのスープストック・トーキョーですが、いつも長蛇の
列。人気ありますね~、私はまだ入ったことがありません。
そしてサラダにパン、といえばこちらが定番ですが・・・。

AfternoonTea TEAROOM
こちらは食後、必ずこうなってしまうので要注意。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして、ちょっと残念なニュース。。「関西のパン好きの殿堂」 ことブランジュリ
・タケウチさん、昨年のカフェ閉店に続き、来年には移転されるそうです(号泣)。
移転先は西宮、ということですので行けないこともないのですが。。遠くなるなぁ。
それまで、せっせと通いましょう♪
2012-08-29 :
パンとか、カフェとか。 :
コメント : 0 :
選択肢のない人生~『かぞくのくに』

1997年、東京。在日朝鮮人二世のリエ(安藤サクラ)は、両親とともに兄ソン
ホ(井浦新)の帰りを待っていた。北朝鮮に「帰国」した兄は、病気治療のため
25年ぶりに日本の土を踏むのだ・・・。
自らの家族をテーマに、ドキュメンタリー作品を発表してきた映像作家、ヤン
・ヨンヒ監督初のフィクション。テーマは変わらず、自らの家族。物理的に引き裂
かれ、「離散」状態にある家族の悲哀を静かに描きながら、「鎖国」状態にある
国で暮らすことの理不尽さ、バラバラになってしまった家族に対するどうしようも
ないもどかしさを、観るものに訴えかけてくる。

家族と再会しても、言葉少なで、感情を表に出そうとしないソンホ。監視係
(ヤン・イクチュン!)に見張られながらも、日本のビールを味わい、同級生た
ちと束の間の時を過ごす。25年の年月は、ソンホから多くのものを奪い去っ
た。だからこそ、時折爆発寸前になる感情を抑えている彼の表情や、静かに、
ささやくように歌う『白いブランコ』 が胸に迫る。
お前はこんなの持って いろんな国に行けよ
あの国ではな どう生き延びるか それ以外は考えない 思考停止 楽だぞ
でもお前は いろんなことを考えて 好きなように生きるんだ
あの国も あなたも 大嫌い
あなたの嫌いなあの国で あなたのお兄さんも 私も 生きていくのです
死ぬまで
主人公たちがつぶやく、重いセリフの数々。ズシリ、と胸に落ちてくる。

安藤サクラ、井浦新、そしてヤン・イクチュンがそれぞれに素晴らしい。い
つまでもいつまでも、兄を乗せて去ってゆく車に追いすがるリエ。生木が裂
かれるような痛み。慟哭。
兄の「遺言」を胸に、肩を怒らせてスーツケースを引くリエ。家族を描いた、
本当に小さな小さな映画。あまりにも低予算に感じられて、監督が気の毒
に思えるほどだった。いやだからこそ、こんなにもシンプルで芯の強い作品
に成り得たのかもしれない。監督の前2作、ドキュメンタリー作品も観てみた
いと思う。
君は憶えているかしら あの白いブランコ・・・
( 『かぞくのくに』 監督・脚本:ヤン・ヨンヒ/2012・日本/
主演:安藤サクラ、井浦新、京野ことみ、宮崎美子、ヤン・イクチュン)
幸せ未満~『テイク・ディス・ワルツ』

TAKE THIS WALTZ
作家志望のライター、マーゴ(ミシェル・ウィリアムズ)は28歳。チキンのレシ
ピ本を作っている夫ルー(セス・ローゲン)とは結婚5年目、それなりに幸せで
穏やかな日々にも、「満たされない何か」を感じていた。そんなある日、彼女は
取材先で出会った青年ダニエル(ルーク・カービー)に恋心を抱く。
サラ・ポーリーの長編第二作。人生って、幸せって、人を愛することって、何
なんだろう、、と考えさせられる(かもしれない)辛口ドラマ。この映画、個人的
にあまりにも期待し過ぎてしまったせいか、少々、残念な出来。ストーリーもか
なり既視感アリ。それでも、上半身はむっちり、下半身はスレンダーで、相変
わらずコケティッシュな魅力全開のミシェル・ウィリアムズの演技は堪能できる
し(あの脱ぎっぷり!天晴れ!)、トロントの自然や、ポップでカラフルなインテ
リアデザインも観ていて楽しい。そして何よりも、セス・ローゲン! 『50/50』
に続いて、またもや彼に泣かされるとは・・・。物語中盤のイライラも、ラスト近
くの彼のセリフが、全て帳消しにしてくれた。

確かに、ダニエルは素敵ですよ(ガエルくんかと思った)。いつも自分に背中
を向けている夫、向き合うと途端に会話がなくなる自分たち夫婦に、マーゴが不
満を抱くのも、仕方ない、のかもしれないし。
マーゴは、「私はまだ、自分の書きたいものが書けていないの」 と言う。結局
彼女は、「自分探し」 をしているのですね。もしくは「青い鳥」 探しを。でもね、
100年も前にメーテルリンクが結末を教えてくれてるじゃない? 高速回転する
遊園地の遊具のように、マーゴが求めているのはある種の「刺激」 であって、
安定や継続ではない。でもね、「刺激」って、平安な日々に、一時的に、突発的
に起こるからこそ刺激なのであって、それが日常には成り得ないんだよ。愛も
次第に、情や思い出に変わってゆく。恋人が家族になり、平凡でマンネリな生活
が続くだけ。でもね、それが人生ってものなんじゃないかなぁ。
「人生なんて、物足りなくて当たり前なのよ」
マーゴの煮え切らない態度には辟易したけれど、彼女の選択を否定はしない
し、正直、ちょっとうらやましい気持もある。だって、あんなガエルくん似の素敵
な彼とさあ~、、フフフフフ。

手酷い裏切りの仕打ちを受けても、「消せない記憶がある」 とマーゴへの愛を
抱き続けるルー。「フルーツ用のスプーンで、君の目玉をくり抜きたい」。「私も」。
ああ、互いの気持ちは痛いほどわかっているのに、人生には後戻りできない道も、
あるのだね。ファーストシーン、憂鬱そうにキッチンで虚空を見ていたのは、「選択
後」のマーゴだったのね。ロマンスには、賞味期限があるんだ。神様のいじわる。
いつの日か、マーゴの「欠落」が、埋まる日が来るといいけれど。
( 『テイク・ディス・ワルツ』 監督・製作・脚本:サラ・ポーリー/
主演:ミシェル・ウィリアムズ、セス・ローゲン/2011・カナダ、スペイン、日本)
少女は勇敢な弓を射る~『メリダとおそろしの森』 【2D・吹替え版】

BRAVE
中世スコットランドのある王国。お転婆な王女メリダは弓の名手で、愛馬と森
を駆けるのが大好きな女の子。そんな彼女は、しとやかで高貴な女性に育てよ
うとする母・エリノア王妃の悩みの種。近隣諸国の王子との結婚を迫る母に、メ
リダは森の魔女の魔法をかけるが・・・。
ディズニー/ピクサーによるファンタジー・アドベンチャー時代劇。赤毛のカー
リーを揺らす王女メリダは、ピクサー初の女性主人公なんだそう。ふーん、ピク
サーって結構遅れてるんだ(笑)。アニメってつくづく、わかり易くて、メッセージ
がストレートでいいなぁ。。本作はややディズニー寄りの作品な気もするけれど、
恋愛要素ゼロで「母と娘の葛藤、そして和解」を描くことに焦点を絞ったところは
大いに好感した。夏休みは、親子連れで満員のシアターで、ピクサーアニメを
観ないとね♪

王家の「第一子」に生まれるってのも、結構大変ですね。。帝王学を学ばせよう
とする母と、(当然)反発する娘と。歴史は繰り返す。
毎度お馴染み、本編前のショートフィルムが今回は2本でお得感あり。『TS4』
はあるのか? 前フリのような気がしないでもないけど。。期待
三つ子の弟たちが、何かに似てる、どこかで観たゾ、と思ってたら、『アルビン』
だね(笑)。この子たちは唄うどころか一言もしゃべりませんが。あ、大島優子嬢
の吹き替え、結構ナイス♪でしたよ~。

( 『メリダとおそろしの森』
監督・共同脚本:マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン/2012・USA)
Tiger その後

臨時休業、期限が明記されてません。
これは・・・。もう少しかかりそうですね。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
仕方ないので、モロゾフでお茶して帰ろう。

ああ、「おかわり~」 と叫びたい心斎橋の中心で。
テーマ : みんなに紹介したいこと
ジャンル : ブログ
こっちのアルション~ Salon de The Alcyon
夕方時間ができたので、難波のアルション・法善寺本店に寄り道です。

紅茶で有名なこのお店。今日は淑女の定番(?)、アフタヌーンティーセットを
オーダー。


キッシュ。

アルションブルー。

モンブラン。
テーブルに陣取った淑女の皆様の笑い声で、店内は華やかな雰囲気。
ご馳走様でした。
・・・・・・・・・・。
最近、仕事帰りにお茶して帰る習慣がついてしまった。
疲れてるから、ついつい小腹を満たす「甘いもの」に手が出るんですよねー。
さすがにこの日は食べ過ぎだけど・・・。た、体重が(汗)。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しばらく更新はお休みします。コメントやTBのお返しも遅れてしまうと思います
が、どうぞお許し下さい。
それではまた、近いうちに。

紅茶で有名なこのお店。今日は淑女の定番(?)、アフタヌーンティーセットを
オーダー。


キッシュ。

アルションブルー。

モンブラン。
テーブルに陣取った淑女の皆様の笑い声で、店内は華やかな雰囲気。
ご馳走様でした。
・・・・・・・・・・。
最近、仕事帰りにお茶して帰る習慣がついてしまった。
疲れてるから、ついつい小腹を満たす「甘いもの」に手が出るんですよねー。
さすがにこの日は食べ過ぎだけど・・・。た、体重が(汗)。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しばらく更新はお休みします。コメントやTBのお返しも遅れてしまうと思います
が、どうぞお許し下さい。
それではまた、近いうちに。
2012-08-14 :
パンとか、カフェとか。 :
コメント : 2 :
いつになったら落ち着くの?
あの1月の朝を忘れない~『さよなら子供たち』

AU REVOIR LES ENFANTS
1944年、第二次大戦下のフランス。パリから遠く離れたカソリックの私立学
校で、寄宿生活を送る少年たち。ジュリアン(ガスパール・マネス)は、寡黙で
謎めいた雰囲気の転校生ボネ(ラファエル・フェジト)の秘密に気づく。
ヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞した、1987年のフランス映画。ルイ・マ
ル監督の自伝的作品と言われている。公開時、地元のミニシアターで母と観
た記憶がある。当時まだ学生だった私は、この映画の内容の半分も理解でき
ていなかったと思う。しかし、ずっと心に引っかかっていた作品を、実に20数年
ぶりに再見。そして、感動・・・。この映画、真紅の殿堂入りです。

戦場も強制収容所も出てこないけれど、これはルイ・マル監督渾身の反戦映画
だと思う。 製作・脚本も担当した彼の、祖国への、喪った友と恩師への、そして
平和への、ありったけの思いが込められている。しかし決して声高ではなく、少年
たちの日常と心情を穏やか過ぎるほど淡々と描きながら、人間の善悪の根源を、
観る者に問いかけてくる。
寒々とした森の風景、腕白少年たちのいたずらや悪ふざけ。煙草を吸う一方で、
寝小便が治らない思春期のジュリアン。告解、祈り、ゲシュタポの圧力と恐怖。
人として当たり前の行為が罪とされる、「戦争」という名の極悪。蔑まれ、差別さ
れる人々、その気高い魂。彼らを匿うものと密告するもの、富めるものと貧しい
もの。少年の瞳に映る、この世界の矛盾。それでも、全てを越えて芽生える友情、
その永遠。
厳しい時代にも、映画という娯楽が人々につかの間の笑いと平安をもたらして
いるのが嬉しい。人種も宗教も職業も、貧富の差も越えて、皆が肩を並べて観
入るチャップリンの上映会。映画って本当に素晴らしい。

主人公ジュリアンと、ボネ役の少年の表情が秀逸。幼い彼らから、監督は一
体、どうやってあの演技を引き出したのか。そして、彼らがほのかな憧れを抱く
ピアノ講師、この(柔らかさと鋭さが絶妙にブレンドされている)横顔は・・・。イレ
ーヌ・ジャコブじゃないか! なんと、彼女はこの作品が映画デビュー作だという。
知らなかった。なんて素敵なサプライズ。
物語はハッピーエンドを迎えることなく、時代の流れに抗えぬまま悲劇的に幕
を閉じる。「さよなら、子どもたち」 。高潔なままで去ってゆく校長先生、その声
を、姿を、耳と目に焼き付ける子どもたち。涙が溢れる。さようなら、さようなら、
さようなら・・・。
その素晴らしさを、言葉では表し難い静かなる名作。必見。
( 『さよなら子供たち』 監督・製作・脚本:ルイ・マル/
主演:ガスパール・マネス、ラファエル・フェジト/1987・仏、西独、伊)
僕らの短い永遠~『岡崎京子の仕事集』
映画『ヘルタースケルター』 の中で一番衝撃的だったのは、水原希子扮する
吉川こずえのセリフだった。
「モデルなんてみんな吐いてますよ、でなきゃあんな細いワケないじゃん」
映画鑑賞後、すぐに原作を読み返してみたけれど、こんなセリフはない。脚色
なのかと思ったら、そうではなかった。

漫画家・岡崎京子の創作活動をアーカイブした本書を読んでいて、吉川こずえ
が 『リバーズ・エッジ』 の登場人物だったことを思い出した。実は、私が持って
いる、つまり読んだことのある岡崎京子の作品は、『ヘルター~』 と 『リバーズ
・エッジ』 のみ。こちらも早速読み返す。
岡崎京子の最高傑作との誉れ高い『リバーズ・エッジ』 。昏い瞳の吉川こず
えがいる。
映画を観て原作を読まれた方は、是非こちらも併せて読んでみて下さい。痛
過ぎて、私自身は長い間封印していたのだけれど。これを読まずにいるのは、
もったいないかもよ?
「平坦な戦場で僕らが生き延びること」

( 『岡崎京子の仕事集』 岡崎京子・著/増渕俊之・編/2012・文藝春秋)
吉川こずえのセリフだった。
「モデルなんてみんな吐いてますよ、でなきゃあんな細いワケないじゃん」
映画鑑賞後、すぐに原作を読み返してみたけれど、こんなセリフはない。脚色
なのかと思ったら、そうではなかった。

漫画家・岡崎京子の創作活動をアーカイブした本書を読んでいて、吉川こずえ
が 『リバーズ・エッジ』 の登場人物だったことを思い出した。実は、私が持って
いる、つまり読んだことのある岡崎京子の作品は、『ヘルター~』 と 『リバーズ
・エッジ』 のみ。こちらも早速読み返す。
岡崎京子の最高傑作との誉れ高い『リバーズ・エッジ』 。昏い瞳の吉川こず
えがいる。
映画を観て原作を読まれた方は、是非こちらも併せて読んでみて下さい。痛
過ぎて、私自身は長い間封印していたのだけれど。これを読まずにいるのは、
もったいないかもよ?
「平坦な戦場で僕らが生き延びること」

( 『岡崎京子の仕事集』 岡崎京子・著/増渕俊之・編/2012・文藝春秋)
母と息子~『少年は残酷な弓を射る』

WE NEED TO TALK ABOUT KEVIN
"Why?"
世界各国を旅し、自由奔放に生きてきたエヴァ(ティルダ・スウィントン)は、
キャリアの途中で望まない妊娠をし、結婚する。妊婦であることにも、出産に
も違和感を抱えたままのエヴァから生まれた息子ケヴィン(エズラ・ミラー)は、
幼い頃から母親にだけ異常な敵意を剥き出しにし、エヴァを苦しめる。そして、
ケヴィンがあと数日で16歳になろうとしていたある夜、事件は起きた。
いやはや、凄い映画を観てしまった・・・。こんなに怖い映画を観たのは、一
体いつ以来だろう? 英国の女性監督リン・ラムジーによる、ある母子の関係
を巡るサスペンス。震える思いでスクリーンを凝視していた二時間、私の眉間
には、深い縦皺が刻まれていた。
子どもが「持って生まれたもの」 と、育った環境によって後天的に獲得する
気質と。どちらがより強く作用して、子どもは成長するのか。遺伝子を受け継
ぎ、「分身」 であるはずの「母親」 に対する、身震いしてしまうほどの悪意と
敵意はどこから生まれるのか。本当に、「子は親の鏡」 なのか。子が犯した
罪は、すべて「育て方が悪い」 「躾がなっていない」 親のせいなのか。
終わらない問いかけが、私を揺さぶる。モンスターを産んでしまった母の、苦
悩と呼ぶには痛々しすぎる、煉獄の苦しみ。いつまでも胸が疼く。
この映画を「絵空事」 だと感じ、「他人事」 だと言い切れるあなたは、とて
も運がいい人だ。では、エヴァやケヴィンの姿を紙一重で自分に重ねられる
私は、運が悪いのだろうか?
「誰に似たんだか」

不安定なカメラワーク、憔悴しきったエヴァに不釣り合いな、能天気なカント
リー・ミュージックが一層、恐怖を煽る(音楽はジョン・グリーンウッド)。
なぜ?
なぜ生まれてきたの? なぜ私が憎いの? なぜ私を殺さなかったの?
なぜ彼らを、殺さなければならなかったの? なぜ? なぜ? なぜ?
I used to think I knew. Now I'm not so sure.

後ろ指をさされ、罵倒されながら、なぜエヴァは街を去らないのか疑問に感じ
ていた。他所の土地で、息子の帰りを待つという選択肢も、彼女にはあったは
ず。引っ越しも夜逃げもせず、悪態や暴力を甘んじて受け、家と車に浴びせか
けられた赤いペンキを黙々とはがし続けるエヴァ。修行僧のような彼女の行為
を観ているうちに、やっと私は気づく。そうか、彼女は自分を罰しているのだ・・・。
初めての子育てに、戸惑う気持ちはよくわかる。しかし、エヴァはもう少し早
く、何らかの手を打つべきだった。ケヴィンの中の「悪魔」が暴走を始める前に。
しかし、エヴァや、エヴァ以外の人間に、一体何ができただろう? 鋭敏でずる
賢く残酷な、恐ろしいまでに自己完結しているケヴィンという少年に。
刑務所での面会の後、放心するエヴァ。涙を流す隣席の母親の手を握った
とき、彼女の中で何かが吹っ切れたように思う。 「ひとりじゃない」
あの頃と同じようにケヴィンの部屋を整え、Tシャツにアイロンをあてるエヴァ。
Tシャツには日本語の小さな文字。 「幸福」。
静謐で、美しく、脆く、かつ根源的な恐怖を描いた完璧な映画だと思う。直截
的で説明調で、ネタバレ全開な邦題がつけられていることだけが、残念。
( 『少年は残酷な弓を射る』 監督・製作総指揮・共同脚本:リン・ラムジー/
主演:ティルダ・スウィントン、エズラ・ミラー/2011・UK、USA)
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さようならブルース・ウェイン~『ダークナイト ライジング』

THE DARK KNIGHT RISES
亡きハーヴィ・デントの名を冠した「デント法」により秩序が守られ、平和な
街となったゴッサム・シティ。ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベイル)は邸
に引きこもり、バットマンは街から姿を消していた。そんな時、屈強なテロリ
スト・ベイン(トム・ハーディ)が現れ、ゴッサム・シティとブルースを巡る状況
は一変する。
衝撃作『ダークナイト』 から4年、クリストファー・ノーランによる『バットマン』
三部作の完結編。主演のクリスチャン・ベイルはもちろん、マイケル・ケイン
(執事アルフレッド)、ゲイリー・オールドマン(ジェームズ・ゴードン市警本部
長)、モーガン・フリーマン(ルーシャス・フォックス)の「坊ちゃんのためなら!」
何でもいたしますでお馴染み、賢人トリオも続投。アン・ハサウェイがキャット
・ウーマンに扮して華を添え、映画史に残るであろう「ふたりのクリス」による
バットマン・シリーズは幕を閉じたのであった・・・。しくしく

始まりがあれば、必ず終りがあるのは事の常。しかし、やっぱりブルース・ウ
ェイン/ダークナイト=バットマンにさよならするのは寂しい。「ヒーローはどこ
にでもいる」とあなたは言った。しかし、「英雄」と呼ぶに相応しい肉体と精神
(と財力、もうひとつルックス)を兼ね備えた人物はそういない。ブルース・ウェ
インよ、あなたは間違いなくその一人だった。大好きだったよ・・・。
映画としては前作『ダークナイト』 の衝撃には劣れども、2時間45分という
長尺を感じさせない力作であり、「闇」の映画らしいテーマと映像とが際立つ
傑作でもあると思う。「熱い男」ジョン・ブレイク(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)
の登場により物語は希望を見出し、本名を隠した彼がゴッサム・シティの新た
な守護天使となることを予感させるラストシーンに安堵もした。しかし、それで
この寂しさが埋められるわけでもない。もちろん、映画の出来そのものに満足
はしているのだけれど。

マリオン・コティヤールの悪役は初めて観たかも。もっとチョイ役だと思って
いたのに、マシュー・モディーンは意外にも結構活躍していたな。ビルドアッ
プした身体とマスクで、トム・ハーディは誰かわからないくらいでちょっと気の
毒な役回りだったかな。ジョーカー/ヒースの死や、今回の劇場襲撃事件で
どうしても負の記憶がつきまとってしまうこのシリーズ。ヒーローとしての「バ
ットマン」よりもむしろ、ブルース・ウェインという一人の人間の成長を描いた
三部作だったと、私は思っている。

( 『ダークナイト ライジング』 監督・製作・共同脚本:クリストファー・ノーラン/
主演:クリスチャン・ベイル、ジョセフ・ゴードン=レヴィット/2012・USA、UK)
テーマ : ダークナイト ライジング(The Dark Knight Rises)
ジャンル : 映画