壮烈かつ無常な人生~『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

THE IRON LADY
ロンドン。雑貨店でミルクを買い求める一人の老女がいた。彼女の名はマーガ
レット・サッチャー(メリル・ストリープ)。帰宅した彼女が朝食の席で話しかける
のは、亡き夫デニス(ジム・ブロードベント)の幻影・・・。
80年代、国民の痛みを伴う改革を断行しながらフォークランド紛争に勝利し、
英国経済を立て直した英国初の女性首相・サッチャーは、「鉄の女」と呼ばれた。
かつて、女性には相続権すらなかった封建的な階級社会である英国において、
彼女は10年以上の長きに渡って政権を掌握したのだ。
男中心の閉鎖的な世界である政治という場で、「食料品店の娘」と陰口を叩か
れながらも、決して怯まず、ぶれず、壮烈に生きた一人の女性の生涯。主演の
メリル・ストリープはアカデミー主演女優賞を受賞。拍手、拍手。

この映画の見どころ。それはやはり、メリル・ストリープの「成りきり」っぷり
でしょう。メリルって何故か嫌う人が多いようなイメージがありますが、偉大で
あるが故にアンチも増えてしまうのでしょうか。大女優にしてお子さんが4人い
らして、旦那さまとも円満で、、って同じ女性として尊敬します。まさにスーパー
・レディですね。
そして、偉人の夫を演じさせたら右に出るものなし、のジム・ブロードベントも
文句なしに巧いです。「皿を洗って人生終わりたくない」と言い放つ女子にプロ
ポーズできるデニス、すっごく男前だ~。
英国の労働争議の記録映像も使われていますが、ほとんど暴動状態。こうい
う画を観ると、つくづく 「日本人ってほんとに大人しいよな~」 って思いますね。

「どう感じたか、でなく、どう考えたかが重要」 だとサッチャーは言います。
自分はバターの値段を知っている、だから庶民感覚から離れていない、とも。
確かに、夫から双子の出産祝いに贈られたパールを肌身離さない彼女は妻
であり、母でもある。しかし、政治の場での部下に対するあまりにも強気で厳
しい要求は、次第に人々を遠ざけてしまう。彼女自身も自らの信念を貫くこと
に固執した結果、政治家として「潮目」を読むことができなくなってしまった。
孤独な晩年、結局自らの手でティーカップを洗うサッチャー。どんな人間で
も、老いて衰えて行くんだな。。それを「無常」と呼ぶのでしょうね。
( 『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』 監督:フィリダ・ロイド/
主演:メリル・ストリープ、ジム・ブロードベント/2011・英、仏)
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ただ、前だけを見て~『戦火の馬』

WAR HORSE
20世紀初頭、英国・デヴォン州。少年アルバート(ジェレミー・アーヴァイン)
は、生まれたばかりの一頭のサラブレットに心を奪われる。父(ピーター・ミュ
ラン)が競り落としてきたその仔馬にジョーイと名付け、調教するアルバート。
しかし、第一次大戦が勃発、父はジョーイを軍隊に売ってしまう・・・。
第一次大戦下、軍馬としてヨーロッパ戦線を走り抜けた一頭のサラブレット
と、飼い主の少年との奇跡の物語。美しく逞しい馬と、素朴な人々。戦争の不
条理、果たされた約束。素直でやさしい語り口に感動し、涙、また涙・・・。146
分という長尺ながら、疲れを感じることなく観入ってしまった。監督はスティー
ヴン・スピルバーグ。
この作品は、DVDになっても恐らく観ないだろうと思った。大きなスクリーン
で体感してこそ、の映画だと思い、劇場まで出かけた甲斐があった。その映像
の美しさは想像以上。特に、セリフを排し、映像だけで万感胸に迫るラストの数
分間だけでも料金の価値はあり、と思えるほど。撮影は名手、ヤヌス・カミンス
キー。

主演の少年をはじめ、「看板」となるような大スターはいない。しかし、なんと
も渋いキャスティング。髭面と帽子でしばらく気付かなかったけれど、これ、も
しかしてピーター・ミュラン?! とわかったときのうれしさといったら! エミリ
ー・ワトソンと彼が夫婦だなんて。。ちょっと贅沢ですね。
『愛を読むひと』 のミヒャエルこと、デヴィッド・クロスくんの顔も観られてうれ
しい。『サラの鍵』 と同じくフランスの農夫を演じたニエル・アレストリュプも。
脚本にはリチャード・カーティスが参加し、音楽はジョン・ウィリアムズ。この辺り
は、さすがのスピルバーグ帝国、という感じ。

「戦争は、皆から大切なものを奪う」 しかし、どんなに悲惨な状況にあっても、
大切なものを想う気持ちは誰にも奪えない。映像の美しさとともに、ストレートな
メッセージが胸を打つ作品だった。
( 『戦火の馬』 監督・製作:スティーヴン・スピルバーグ/2011・USA/
主演:ジェレミー・アーヴァイン、エミリー・ワトソン、ピーター・ミュラン)
痛み~『SHAME/シェイム』

SHAME
We're not bad people.
We just come from a bad place.
NYに暮らすブランドン(マイケル・ファスベンダー)は、成功したビジネスマン。
しかし私生活では、セクシャル・アディクションに苦しんでいた。そんな彼の元
に、妹のシシー(キャリー・マリガン)が転がり込んでくる。
主演のマイケル・ファスベンダーが、ヴェネチア映画祭の男優賞を受賞した
話題作。人間関係に深くコミットできない孤独な男が、恋愛依存症でエキセン
トリックな妹との関わりの中で、次第に精神のバランスを失ってゆく。R18+
指定ではあるが、とてもセクシャルな気分に浸れる作品ではない。最後まで
明示されない根深いトラウマに、ズタズタに苛まれるブランドンが痛ましく、哀
し過ぎて・・・。
「私たちは悪い人間じゃない。悪い場所にいただけ」

行きずりでセッ●スはできても、「普通」のディナーデートでは上手く振舞え
ない。「情」が絡むと途端に寝ることができない。心と身体が、バラバラに分離
しているブランドン。無骨で冷たい印象を受けるのに、何故か母性本能をくすぐ
る、マイケル・ファスベンダーが素晴らしい。(結局、私は彼に惚れているのだ)
シシーを演じたキャリー・マリガンも、フルヌ●ドを晒して熱演。兄妹で罵倒
し合う場面は圧巻だった。どうしようもなく愛し合い、憎み合い、依存し合って
いるふたり。どちらかを喪うことは、互いの世界が終ることを意味している。ど
うすればいい? どうすれば? 声にならないブランドンの叫びが痛い。それ
を「恥」だと、私は呼びたくない。妻子がいる身でありながら、浮気を繰り返す
上司のデイヴィッド(ジェームズ・バッジ・デール)のほうが、よほど唾棄すべ
き人間なのではないか?

監督、スティーヴ・マックィーン(名前が凄過ぎる)がスクリーンに描き出す
画は繊細で、完璧な構図を成す。この人は映画監督である前に芸術家なん
だ、と思いながら観ていた。悲しいほど美しい、NYの夜・・・。
( 『SHAME/シェイム』 監督・共同脚本:スティーヴ・マックィーン/
主演:マイケル・ファスベンダー、キャリー・マリガン/2011・UK)
THE WESTIN OSAKA LOBBY LOUNGE

ウェスティンホテル大阪は
メインダイニング 「アマデウス」 も
いいのですが、いつも混雑していて
落ち着きません。
私は 「ロビーラウンジ」 が好きです。。
こちらは大抵空いているし、ゆったりできます。平日限定の「スープランチ」 を
いただきました。

今日は百合根のスープですよ。
先日お邪魔したところ、パンの追加サービスが始まってました。正直、ちょっ
とボリュームが、、と思っていたので超うれしい♪ 思わず「1個だけですか?」
と聞いてしまいました(恥)。クロワッサンやらデニッシュやら、たくさん種類が
あって、目移りしまくりです。
サンマルクみたいに「全種類お願いします」と言いたいところですが(笑)、こ
の日はランチの後、マイケル・ファスベンダーと待ち合わせだったので時間が
なく、泣く泣く2個だけ。。

ああ~、ホテルメイドのパンってどーしてこんなにおいしいんだろう? 満足、
満足。。ごちそうさまでした♪
新生未映子直前の日々~『魔法飛行』

WEB連載をまとめた『発光地帯』 の続編的なエッセイ。川上未映子さんは、
こういう自由律な非定型の文章に一番「らしさ」が出ると思う。ティファニーブル
ーの「しおりひも」がとてもきれい。
図らずも、この本は震災前後の記録になっている。そして「あとがき」で更な
る変化が・・・。川上さんのおなかには、赤ちゃんがいるのだ。
この本の中にも、子ども(甥っ子たちや近所の子どもたちについて)の話は
何度か出てくるし、「育てる」ということをしてきていない「自分」についての考察
もある。川上さんはお子さんを授かって、これから「物書き」としてどんな風に
変わっていくのだろう? とっても興味があります。
気になることもひとつ。いつも「お母さん」について、「働きづめで、ちゃんとし
たホテルに泊まったことも、海外旅行に行ったこともない」 と書かれているけ
れど、もうそろそろ「母と何処どこへ行った」 という文章があってもいいのでは
ないだろうか。「ネタ」的扱いになっているようで気懸かり。まぁ、川上さんのお
母様にしたら、彼女の赤ちゃんを抱くことが一番の喜びのような気もしないで
もないけれど。
阿部和重さんの『シンセミア』 についても言及あり。末永くお幸せに。
( 『魔法飛行』 川上未映子・著/中央公論新社・2012)
それでも人生を祝福する~『ポエトリー アグネスの詩』

POETRY
韓国の田舎町に住む初老の女性・ミジャ(ユン・ジョンヒ)は、中学生の孫息子
と二人暮らし。ヘルパーをしながら詩作教室に通い始めた彼女は、物忘れが酷
い自分がアルツハイマーの初期状態であることを知る。同じ頃、孫息子の同級
生の少女アグネスが自殺する・・・。
私の好きな監督ベスト3の一人、韓国の厳父ことイ・チャンドン監督の最新作。
一人の女性の生き方を通して、この世界のありのままの「美しさ」を見つめた秀
作。監督の「最高傑作」と言うよりは、「集大成」と言ったほうが、私にはしっくり
くる。
社会の底辺で生きる人々の厳しい現実を描きながら、決して後味の悪さを感
じることはなく、むしろ希望や光を感じて終わるのがイ・チャンドン作品の素晴ら
しいところ。それは、監督自身の懐の深さ、世界や弱者を見つめる視線の温か
さゆえ、なのだと思う。本作ももちろん、間違いなく今年のベスト作の一本です。
カンヌ映画祭脚本賞受賞のほか、主演のユン・ジョンヒは世界各国の映画賞
で主演女優賞を受賞した。恍惚と不安、少女のような幼さと老女の慈愛、言葉
の出ないもどかしさ、孤独、焦燥、美への憧憬。力みや自己顕示欲とは対極に
あるような、人生経験に裏打ちされた抑えた演技が圧巻。

「花が好き」だと言うミジャ。赤い花は苦しみを、白は純潔を、黄色は栄光を表
すのだと。その言葉を裏付けるように、アグネスの写真や、彼女の家や、食事処
の庭先に咲く赤い花。人生とは、どうしてかくも苦しみの連続なのだろう?
「アンズは上にあるのはおいしくなくて、下に落ちたのがおいしい。落ちて、
人に踏まれて割れる。生まれ変わるために」
ミジャの心は、次第に少女アグネスに寄り添ってゆく。慈しみ育てた孫息子を
愛し、葛藤しながらも、犯した罪には落とし前をつけさせる。しかし、イ・チャンドン
はミジャをただ聖母のように描いているわけではない。彼女が介護する老人に対
してした行為、そこには哀れみや諦観と同時に、彼女自身の欲望や打算もあっ
たはず。猥雑さと純粋さ、清濁合わせ飲むのが人生なのだと。

最後に、ミジャはアグネスと同化する。陵辱され、自ら身を投げた少女に「純潔」
を表す白い花束を捧げて。ミジャが遺した、生涯でたったひとつの詩。一語一句
が心に突き刺さり、涙がこぼれる。それでも世界は美しいと言う、その魂の辿り着
いた先が、安らかな場所でありますように。
私は あなたを 祝福する
( 『ポエトリー アグネスの詩』 監督・脚本:イ・チャンドン/
主演:ユン・ジョンヒ、アン・ネサン、イ・デヴィッド/2010・韓国)
もっと武闘派名探偵~『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』

SHERLOCK HOLMES
: A GAME OF SHADOWS
19世紀末、ロンドン・ベイカーストリート。私立探偵シャーロック・ホームズ
(ロバート・ダウニー・Jr)の元を、結婚式を明日に控えたワトソン(ジュード・
ロウ)が訪れる。
アーサー・コナンドイル卿の生み出した世界一有名な名探偵を、「武闘派」
として新解釈した映画『シャーロック・ホームズ』 の続編。監督・主演コンビ
ともに続投。いや~、これ予想以上に、期待以上に面白かったです! 最高
に♪
前作は、その大胆な解釈は大喜びで受け入れられたけれど、あまりにもガ
チャガチャした画面と展開には正直、戸惑いを覚えた。続編である本作は、ジ
ェームズ・モリアーティ教授(ジャレッド・ハリス)という最強の敵役を前面に押
し出したことで、ストーリーも随分解りやすくなっていると思う。謎解き部分は
あくまで添え物的扱いで、暴れん坊で天才でとっても変人なホームズを、愛
すべきお茶目キャラとして定着させつつあるところが素晴らしい。英国紳士で
あるはずのホームズを、自由奔放に演じるロバート・ダウニーJrが素敵すぎ!
人間椅子って、もう、、爆笑しましたとも。

ここぞ!というアクション場面で登場するスーパースロー映像も、非常に効果
的だったのではないかな。願わくば、次回作は3D撮影します、とか言い出さな
いで下さいよガイ・リッチーさん!(飛び出さなくても十分ですから)
そして、本シリーズの隠しテーマ(?)である、ホームズとワトソンの「友情以上、
愛情未満」な微妙な関係。掛け合い漫才さながらの二人のやりとりは、もはや名
コンビと言っても差し支えないでしょう。再会してハグしたホームズに「痩せたか?」
と尋ねるワトソンにいきなり萌え・・・♪ とにかくこの映画、ホームズが貫くワトソ
ンへの熱い想いが芯になっているのは間違いない。ホームズ以上に変人なお兄
様(スティーヴン・フライ)にも、笑わせていただきました。弟を「シャーリー」って
呼ぶのがかわいいのよ~♪
大御所ハンス・ジマーによる音楽も文句なし、しかし唯一残念だったのはモリ
アーティ教授、ダニエル・デイ=ルイスじゃなかったのか~、ってこと。大好きな
レイチェル・マクアダムスが序盤で消えてしまったことも。。しくしく
しかしまぁ、ロバダウ&ジュードの黄金コンビが健在ならば、三作目もきっと
期待できるでしょう♪ 待ってますよ~。

( 『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』 監督:ガイ・リッチー/
主演:ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ/2011・USA)
人生最悪の日~『おとなのけんか』

CARNAGE
NYに住むアラン(クリストフ・ヴァルツ)とナンシー(ケイト・ウィンスレット)は、
11歳の息子が怪我をさせた級友の自宅を訪れる。表向きは二人を和やかに迎
え入れる、ペネロペ(ジョディ・フォスター)とマイケル(ジョン・C・ライリー)だった
が・・・。
トニー賞を受賞した戯曲の映画化。授賞式を観ていた時、何とも騒がしい舞台
劇だなぁ、と思った記憶がある。二組の中年夫婦が、息子同士のけんかの和解
の席で本音炸裂のバトルを繰り広げる、シニカルな会話劇。アパートの一室とい
うワンシチュエーションで、80分足らずの上映時間をリアルタイムに進行するコ
メディ。監督は名手ロマン・ポランスキー。

主演4人のうち、3人までがオスカーウィナーという豪華キャスト。特に、携帯
依存症の嫌味男アランを演じたクリストフ・ヴァルツの巧いこと・・・! こんな
旦那さん、いるよね~。彼を「発掘」したタランティーノは本当にお目が高い。
紳士的に、「大人な」対話をしていたはずの二組の夫婦が、いつの間にか
本音でガチバトルを繰り広げるという、現実にもありそうななさそうな(?)お
話。どーでもいいと言えばどうでもいい痴話喧嘩なのだが、これが何故か物
凄く面白おかしい。俳優たちの演技や演出は当然の如く鉄板で、ダメ出しす
るような部分も全くなく。
子育て、仕事、近所付き合い。そして一番は夫(もしくは妻)。大人って、と
にかくストレスが溜まる生き物なんですよね。。捨てられても逞しく生きている
ハムスター、同じ公園で何事もなかったようにつるんでいる息子たち。絶版の
美術書にリバースされた。携帯に全人生が入ってたって? 小さい小さい。命
取られるわけじゃなし・・・。 てかこの映画、原題は「大虐殺」。んな大袈裟な
(爆笑)。

( 『おとなのけんか』 監督・共同脚本:ロマン・ポランスキー/
主演:ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、
ジョン・C・ライリー/2011・仏、独、西、ポーランド)
映画という夢~『ヒューゴの不思議な発明』 【3D・字幕版】

HUGO
少年ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)は、パリ駅構内の時計台裏に住み、
亡き父(ジュード・ロウ)が遺した機械人形を修理する日々。ある日彼は、イザ
ベル(クロエ・グレース・モレッツ)という名の少女に出会う。
1930年代のパリを舞台に、機械人形が誘う映画創成期への旅。映画という
「夢」への、愛に溢れたファンタジー。映画が好きな人で、この映画を「嫌い」だ
って言い切れる人はいないんじゃないかな? 主要部門は逃したけれど、ア
カデミー賞では見事5部門で受賞。2011年度の賞レースを牽引した作品であ
ることは間違いないでしょう。監督は巨匠、マーティン・スコセッシ。カメラマン
の役で監督自らカメオ出演していて、この映画への思い入れの深さを感じた。
そしてエンドロールでジョニー・デップがプロデューサーの一人と知り、ビック
リです。
3Dは嫌いだけれど、巨匠のお手並み拝見、とばかりに3D・字幕版にて、初
日の初回に鑑賞。う~ん、映像は美しいけど、やっぱり別に飛び出さなくても
いいかな(笑)。2D・字幕でもう一度観たいかも。

しかし正直、前半はちょっと無駄なシーンが多い、という印象。126分と決し
て短い上映時間ではないのだから、もう少しテンポを上げて欲しかったかも。
機械人形やパパ・ジョルジュこと本作の真の主役、ジョルジュ・メリエス(ベン・
キングズレー)の物語になる後半は身を乗り出さずにはいられないほどの展
開なのだから、尚更冗長な前半がもったいない。
豪華キャストは適材適所。初めて観たヒューゴ役のエイサ・バターフィール
ドくん、外見は幼いのに、瞳には100年も生きて来たのかと思うほどの、諦観
と狂気が宿っているような・・・。ただ「かわいい」だけではない、滋味のある子
役です。クロエちゃんは相変わらず「大人顔負け」ね。
映画への愛に溢れた映画って、やっぱりいいですね。。観終わって、脈絡も
なく大好きな「映画を愛する映画」たちのこと、思い出していた。『落下の王国』
とか、『カイロの紫のバラ』 とか。また観たいな、映画が好きでよかったな、な
んて思いながら。

( 『ヒューゴの不思議な発明』 監督・製作:マーティン・スコセッシ/
主演:エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ/2011・USA)
私ってウザかったの? ~『ヤング≒アダルト』

YOUNG ADULT
30代後半バツイチ、ヤングアダルト小説のゴーストライター、メイビス(シャ
ーリーズ・セロン)は、高校時代の元彼バディ(パトリック・ウィルソン)からE
メールを受け取る。赤ん坊の添付画像を見入るメイビスの中で、何かがハジ
ケる。衝動的に帰省するメイビスの車は一路、「腐った魚の臭いがする」田舎
町へ・・・。
快作『JUNO/ジュノ』 の監督・脚本コンビ、再び。シャーリーズ・セロンが
史上稀に見る「痛い」ヒロインを熱演し、ディアブロ・コディの「毒」がまき散ら
されるブラック・コメディ。さすがジェイソン・ライトマン、これ痛い、痛過ぎる・・・。

浮いている自分に気付かず、バディを取り戻そうと目がイッてるメイビスの姿
は、並のホラー映画よりよっぽど怖い。誰よりも田舎を嫌いながら、彼女は誰
よりも故郷と過去に執着している。「なんて嫌な女なんだ・・・」 そう思いつつも、
彼女の言動から目が離せない。
高校時代は鼻にもかけてなかったマット(パットン・オズワルト)に、メイビスは
何かとすがる。差別暴力の標的となった後遺症を抱え、松葉杖姿で自家製バー
ボンを醸造し、地下室でフィギュア作りに没頭、オタク道を突き進む彼を「異形」
の似たもの同士だと、彼女は本能的に悟っている。彼が絶対に、自分を拒まな
いということにも。
シャーリーズ・セロンが、溜め息が出るほど美しい。酒浸りの、連日メイクも
落とさず寝るような生活で、あの肌とスタイルはないやろ、と思いながら。苦手
なパトリック・ウィルソンも、今までで一番よかったな~。彼って案外、こういう
「田舎のよきパパ」が似合うのかも。
そして遂に、赤ん坊の命名パーティでメイビスは「暴走」してしまう。それまで
醒めた目で彼女を観ていたのに、ここで思わず泣いてしまった。だってあんま
り惨めじゃない? ベスが彼女を呼んだなんて。ベスは、夫に迫るメイビスを哀
れみこそすれ、嫌うどころか嫉妬もしていない。同じ土俵にすら上がらせてもら
えないなんて・・・。

孤独だ何だと泣きながら、美しいメイビスは劇中、二度男と寝る。寝て、そして
去る、眠りこける男を残して。彼女は何度転んでも、絶対に起きあがるだろう。
そう、結局のところ、メイビスは自分を肯定できる強い女(モンスター)なんだ。
甘くはない、辛口だけれど決して後味は悪くないラスト。数年後のメイビスに会
ってみたい。
教訓。美人が作家になってはいけません。引きこもらず、人目につく仕事をし
ましょうね。
( 『ヤング≒アダルト』 監督・製作:ジェイソン・ライトマン/
主演:シャーリーズ・セロン、パトリック・ウィルソン/2011・USA)
昼酒と貴婦人 ~ Meal MUJI

Meal MUJI 難波では毎回大きなテーブルに陣取るので、必然的に「相席」
となる。先日伺った際、向かい側に上品な佇まいのご婦人が二人。
友人同士と言うよりは、姉妹か、親子か、という感じ。美智子皇后様に似た
雰囲気と言いましょうか、何ともセレブなオーラが。。(しかし、決して嫌味
ではない)
そしてそのご婦人がた、ランチは(庶民な)私と同じデリをチョイスされて
いるのですが、なんとミニボトルの白ワインを嗜んでいらっしゃる!
MUJIでワイン飲んでる人、初めて見ました。カランドリエかと思った(笑)。
いいな~、お酒飲める人は。。シードルで気分悪くなる自分が哀しい(泣)。
チェッ、呑まれへんからケーキでも食べよっと♪

2012-03-02 :
パンとか、カフェとか。 :
コメント : 0 :
2月に読んだ本/6冊
今年は閏年なんですよね。。29日までだった先月。日は随分と長くなり、日差
しは明るさを増してきましたが、まだまだ寒い如月でした。

『ピョンヤンの夏休み わたしが見た「北朝鮮」』
/柳美里・著
柳美里さんは、常に気になる作家さん。書くために生まれてきたような人だ
といつも思います。息子のタケハルくんと、同居男性との訪朝記。

『Dear KAZU 僕を育てた55通の手紙』
/三浦知良・著
45歳の今も、現役プロサッカー選手のカズさん。宮市くんとか、彼の息子
だって言ってもおかしくない歳だもんなぁ。たくさんの人に愛されたまま(私も
もちろん大好きですよ!)、一日も長く現役でいてほしいな。

『炎上する君』
/西加奈子・著
『こうふく』 の西加奈子さん。私は『みどり』 が好きでしたが、本作は『あか』
に近い感触。山崎ナオコーラ(実名)にはビックリ・・・。本人の許諾を得てんの
かなぁ、とか、いらん心配してしまった。
『共喰い』 田中慎弥・著

『幻影の星』
/白石一文・著
これは賛否両論、割れそうな作品。震災後に書かれており、キーワードは「イ
リュージョン」。相変わらず哲学的な、白石節全開。形而上の小説、という感じ
です。私は「これもアリかな」と思いましたが、かなり好みは分かれると思います。
『横道世之介』 吉田修一・著
早くも今年のベスト作候補。2月はこの本に出逢えて幸せでした。とっても。
さあ、いよいよ3月です。
しは明るさを増してきましたが、まだまだ寒い如月でした。

『ピョンヤンの夏休み わたしが見た「北朝鮮」』
/柳美里・著
柳美里さんは、常に気になる作家さん。書くために生まれてきたような人だ
といつも思います。息子のタケハルくんと、同居男性との訪朝記。

『Dear KAZU 僕を育てた55通の手紙』
/三浦知良・著
45歳の今も、現役プロサッカー選手のカズさん。宮市くんとか、彼の息子
だって言ってもおかしくない歳だもんなぁ。たくさんの人に愛されたまま(私も
もちろん大好きですよ!)、一日も長く現役でいてほしいな。

『炎上する君』
/西加奈子・著
『こうふく』 の西加奈子さん。私は『みどり』 が好きでしたが、本作は『あか』
に近い感触。山崎ナオコーラ(実名)にはビックリ・・・。本人の許諾を得てんの
かなぁ、とか、いらん心配してしまった。
『共喰い』 田中慎弥・著

『幻影の星』
/白石一文・著
これは賛否両論、割れそうな作品。震災後に書かれており、キーワードは「イ
リュージョン」。相変わらず哲学的な、白石節全開。形而上の小説、という感じ
です。私は「これもアリかな」と思いましたが、かなり好みは分かれると思います。
『横道世之介』 吉田修一・著
早くも今年のベスト作候補。2月はこの本に出逢えて幸せでした。とっても。
さあ、いよいよ3月です。