3つの軍服~『マイウェイ 12,000キロの真実』

MY WAY
1928年、韓国・京城。東京からやってきた長谷川辰雄(オダギリジョー)は、
使用人の子、キム・ジュンシク(チャン・ドンゴン)と出逢う。走るのが得意な
二人は、切磋琢磨しながら成長する。しかし、時代は戦争へと舵を切り・・・。
評論家の川本三郎氏は、戦争映画が苦手で観ることができないのだそう
だ。イーストウッドの『硫黄島からの手紙』 すら観られないのだという。私も、
戦争映画は苦手。なるべくなら避けて通りたいが、我らがオダギリジョーが
海外に出て、苦しんで苦しんで撮影に臨んだ作品なら、観に行こうと思うの
がファンというものでしょう。
カン・ジェギュ監督入魂の大作。『ブラザーフッド』 を完全に超えたスケー
ル、リアルな戦闘描写や、安っぽさのかけらもない映像。ここまでやるか、
圧巻としか言いようがない。145分の長尺を感じさせない力作だった。

第二次大戦下、韓国製作の戦争映画とくれば当然、悪者は日本人。実はこ
こも、戦争映画を観たくない一因だったりする。韓国の大スター、チャン・ドン
ゴン演じるジュンシクは完璧な善人に描かれ、日本人の辰雄は悪役だ。それ
を演じるオダギリジョーも、自分の役回りをよく理解し、「嫌な奴」を完璧に演じ
てくれる。役柄によっては匂い立つような色気全開の彼だけれど、今回はフェ
ロモンのスイッチを完全に切って、前半部では冷酷で非人道的な軍人に徹し
ている。そこがまた、堪らなくカッコイイのも事実なのだけれど。そして後半、
ノルマンディでの束の間の休息に見せる、彼の柔らかな表情。その落差にク
ラクラする。

ジュンシクの最後の決断に、涙が溢れる。友情と呼ぶにはあまりに過酷な、
二人の男の絆。実話に基づいた物語だというのも驚きだが、改めて、あの戦争
を闘った人々が負った過酷な重荷に言葉もない。祖国を、故郷の地を夢見な
がら、異国に散った数多の命。その犠牲の上に今があることを、改めて心にと
どめたい。
( 『マイウェイ 12,000キロの真実』 監督・製作・脚本:カン・ジェギュ/
主演:オダギリジョー、チャン・ドンゴン/2011・韓国)
スポンサーサイト
変なおぢさん~『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』

JOHNNY ENGLISH REBORN
8年前、某国の大統領暗殺を防げなかったために、MI7を解雇された元諜報
員ジョニー・イングリッシュ(ローワン・アトキンソン)。チベットの山奥で修行の
日々を送る彼に、MI7から帰還の要請が下る。
Mr.ビーンことローワン・アトキンソン主演、スパイパロディ映画『ジョニー・
イングリッシュ』の続編。相変わらずの変な動き&変顔で笑わせてくれます。
しかし、イーサン・ハントの超絶スパイアクションに大興奮した後では、ちょっ
とテンション低めで観てしまった。笑ったけど。
場内が一番ウケていたのは、やはり会議室の椅子が上下するシーン。あと、
エンドロール中に「オマケ」があるのに、すぐ立ち去ってしまった人が多かった
のがもったいなかったな。しかし、ギャグとはいえ女王陛下のあの扱い・・・。
英国って度量が大きいですね。

( 『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』 監督:オリヴァー・パーカー/
主演:ローワン・アトキンソン/2011・米、仏、英)
核戦争を阻止せよ!~『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』

MISSION: IMPOSSIBLE -
GHOST PROTOCOL
ロシアの刑務所から脱獄したIMFエージェントのイーサン・ハント(トム・クル
ーズ)は、クレムリンに侵入する任務に赴く。しかし任務途中でクレムリンが爆
破され、濡れ衣を着せられたイーサンはIMFから抹消されてしまう・・・。
トム・クルーズ主演、大ヒット「スパイ大作戦」シリーズ第四弾。いや~、これ
はスゴイ! 見せ場の連続で、息つく暇もない面白さ。トム・クルーズ、不死身
度だけじゃなくてかっこよさもアップしてる気がするのですが・・・。若いなぁ。
細かい突っ込みどころは置いといて、大まかなストーリーだけ理解すればい
い。後はアクションや、エージェントたちの超絶技巧を楽しめばOK!な映画。
しかし、トムってあのアクションを本当に、スタントなしで自分でやっているので
すね。見上げたプロ根性です。凄すぎる。

「チーム・イーサン」のメンバーは、元諜報員の分析官ウィリアム(ジェレミー・
レナー)、現場は初めてのハッカー、ベンジー(サイモン・ペッグ;この人『M:I:Ⅲ』
にも出てたんですね)、そして紅一点のジェーン(ポーラ・パットン)の三人。
『ハート・ロッカー』、『プレシャス』というオスカー絡みの作品に出演した、旬の
俳優さんを抜擢するところなんかもさすが。チーム員は皆イーサンを尊敬し、憧
れ、捨て身でミッションに没頭する。この真っ直ぐな正義感。痺れます。
「飛べ!」 って言われてもなかなか飛べないジェレミー・レナー、わかる、わ
かるよ。イーサン(トム)だったら、言われて0.5秒で飛んでるよね。てか言われ
てなくても飛んでそうですが(笑)。
本作が面白かった理由として、イーサン絡みの恋愛要素が排除されていたこ
とが大きいと思う。ジェーンはボンドガール的お色気担当ではあったけれど、イ
ーサンLOVEな関係にはならず。ミッション完遂だけに集中してるところがよかっ
た。ラストの「見守り」シーンすら蛇足でしょ! と思った私。

諜報員、いわゆるスパイと呼ばれる人たちって、本当にこんな風に、人知れず
世界を救っているのかなぁ。とにかくスカッ、と楽しめる映画でした。
Welcome back, Ethan!
( 『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』
監督:ブラッド・バード/製作・主演:トム・クルーズ/2011・USA)
テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画
俺にはわかる~『ヒミズ』

15歳、中学三年生の住田(染谷将太)は、震災で家を失った大人たちが集う、
湖の畔の貸しボート屋で暮らしていた。住田のクラスメイト・茶沢(二階堂ふみ)
は、「普通最高!」と叫ぶ住田を神格化し、憧れを抱く。
気が付くと1月も下旬。映画館に行く余裕もないうちに、『宇宙人ポール』は
レイトショーのみになり、ゴールデングローブ賞も終わっていた。ガックリ・・・。
気を取り直して、今年は絶対に園子温作品を体験するんだ! という悲壮
(?)な決意の元、本年初の劇場鑑賞。記念すべき初・園子温。やっと観た!
しかし、何なんだこの妙なテンションは? 規格外だと感じながらも、自分が
グイグイと物語に引き込まれていくのがわかる。ビーンボール気味だけど、何
たる剛腕。そしてラストに待っていたのは。。大・感・動。観てよかった。今観て
よかった。

昨年末、園子温がNHKのトーク番組に出演しているのを観た。黒づくめの、
ちょっと異様な衣装、49歳にしては幼い、子どもがそのまま大人になったよう
な印象。「その・しおん」が本名だということも、その時始めて知った。
観る前から、何となく韓国の鬼才、キム・ギドクの作品に通じるものがある
ような気がしていた。湖の畔、という設定は『魚と寝る女』 かな。あと、『鰐』
とか。しかし園子温は、ギドクより何倍も「過剰」だ。
ヴェネチア映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した、若い主演の
二人が素晴らしい。不幸な家庭環境に、必死に抵抗する住田。「俺の未来は
誰にも変えられない。俺は必ず立派な大人になる」 そんな住田を敬愛し、ウ
ザいほどのおせっかいを仕掛ける茶沢。泥だらけで、ズブ濡れになって、ガチ
で殴り、殴られる二人。「普通の大人になる」 という極々小さな希望は、積も
り積もった憎悪と衝動に、一瞬にして掻き消されてしまう。

園子温は、震災後に脚本を書き替えたのだという。住田の父(光石研)の作
った借金を返済する夜野(渡辺哲)に、金子(でんでん)は言う。「赤の他人に
何故そこまでする?」 夜野は言う、住田は希望だと。若い彼には、自分たち
にはない希望があるのだと。絶望した住田に茶沢は言う。法的に罪を償って、
出所したら迎えに行くから結婚しよう、と。一緒に住んで子どもが生まれて。
それが住田の望んだ「普通」の幸せってやつなんだ。
「がんばれ」 と言えない世の中になってしまって久しい。しかしこんなにも
大声で、ほぼ絶叫調で何度も何度も、茶沢は住田を励ます。「ガンバレ住田!」
ぐちゃぐちゃの泣き顔で走る二人。私の涙腺も決壊した。今は無理でも、傷つ
いている子どもたちにいつか観て欲しいと思った。君たちは希望なんだよ。何
があっても、がんばって生きていくんだよ。いいね?
( 『ヒミズ』 監督・脚本:園子温/主演:染谷将太、二階堂ふみ/2012・日本)
テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画
灘に桜散る~『これが中学受験ザマス! 偏差値30からの中学受験合格奮闘記』

2012年度の近畿統一入試解禁日は1月14日(土)。我が息子は8日、9日と
事前入試を経験してのスタートでした。
結果から言うと、第一志望校にはご縁をいただけませんでした。目茶苦茶悔
しいし、落ち込んでいます(親の私が)。本人は、淡々と受け止めているように
見えたのですが。
第二志望校(夏まではずっとこちらが第一志望で、入学を熱望していました)
の発表の後。私が歓びのあまり「うれしいなぁ~♪」と言うと、息子は間髪入れ
ず「○(第一志望校)落ちたのに?!」と言ったのです。そんなにうれしくない、
とも。傷は深いですね・・・。涙
12歳の挫折。一生懸命努力してきたからこそ、の無念でしょう。中学受験は
母親の受験とも言われます。今になって自分の母としての至らなさ、器の小さ
さに打ちのめされています。自分がもっと、スケジュール管理やプリント整理
を上手く出来ていたら、、と悔やまれてなりません。合否が出た、今となっては
遅いのですが。
しかし、負け惜しみのようですが、第二志望校で本当によかったとも思うの
です。説明会や体験授業の度、穏やかな校風やジェントルな先生方に、親子
で憧れを抱いていました。もちろん、○もバンカラで自由な素晴らしい学校で
すが、きっと息子に一番合う学校にご縁をいただけたのだと信じています。
不合格という現実は辛いですが、この経験を糧にして親子で成長できたら、
と思っています。ヘタレで子育て下手な母ですが・・・。
近畿圏の私立中学入試はほぼ終了。しかし首都圏の中学入試はこれから
が本番ですね。受験生のみんな、そしてお母様方、お身体に気をつけてベス
トを尽くせますように。そして少し疲れた時は、鳥居りんこさんのこの本を手
にとってみて下さい。健闘を祈ります。
( 『これが中学受験ザマス! 偏差値30からの中学受験合格奮闘記』
鳥居りんこ・著/学習研究社・2010)
業務連絡 ~ しばらくお休みします ~

寒中お見舞い申し上げます。こちらを覗いて下さり、ありがとうございます。
拙ブログ、更新をしばらくお休みします。コメントレス、TBのお返しなども
迅速な対応ができませんこと、ご容赦下さいませ。
なるべく早く(できれば今月中にでも)再開したいとは思っているのですが、
どうなりますか。しかし、絶対にこのままフェードアウト、ということはありませ
んので。必ず戻って来ます。
皆さまそれまで、お元気でお過ごし下さいね♪ またお話できる日を楽しみ
にしています。
真紅拝
2012-01-11 :
徒然 :
発表! 2011 真紅デミー賞 & 今年の抱負など

作品賞: 『モテキ』
顰蹙&ブーイングは覚悟の上(笑)。 映画を芸術として崇めるのではなく、
エンタメとして楽しむならこれもアリ? と思うのです。だって心底楽しめた
し、文字通り腹を抱えて笑いました。モテキ最高!
主演男優賞: ライアン・ゴズリング 『ブルーバレンタイン』 『ラブ・アゲイン』
年を経るごとにどんどん素敵になっていく俳優さん。昨年から今年にかけて
は主演作が目白押し、第一期キャリア・ハイの予感です。
主演女優賞: ナタリー・ポートマン 『ブラック・スワン』
誰もが納得のオスカー! 身も心も映画に捧げた、ナタリーの女優魂に。
助演男優賞: クリスチャン・ベイル 『ザ・ファイター』
こちらも「総なめ」演技。早くブルース・ウェインに再会した~い!
助演女優賞: ヘイリー・スタインフェルド 『トゥルー・グリット』
ベスト作に入れるか、最後まで迷った作品の一つ。ヘイリーちゃん、素晴らし
かったよ!
新人賞: エル・ファニング 『SOMEWHERE』 『SUPER 8/スーパーエイト』
これも大好きだった2作。どちらの作品でも、彼女の存在感は際立っていまし
た。このまま健やかに伸びていって欲しい。
ワースト作品: 『モンスター上司』 『シャンハイ』
どちらも豪華キャストな割に、あまりにも、あまりにも期待外れ・・・。
上記とベスト作以外にも、特に印象的だった映画のタイトルだけ記しておき
ます。厳選し、ネクスト・ベストとして10本。観た順に。
『エリックを探して』 『ソーシャル・ネットワーク』 『愛する人』
『英国王のスピーチ』 『わたしを離さないで』
『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』 『BIUTIFUL/ビューティフル』
『ツリー・オブ・ライフ』 『ウィンターズ・ボーン』 『50/50』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
さて。いつもお付き合い下さる皆さまのおかげで、細々ながら7年目を迎えた
拙ブログです。感謝とともに年頭の抱負などを・・・。
昨年は、日本の歴史上大きな節目となる一年だったと思います。個人的にも、
公私ともに様々な出来事があり。。目まぐるしく、大変な一年でした。
今年は、もう少し自分の為に時間を使いたいな、と思っています。旅行も全く
できなかったので、ちょっと遠出したいな、とか。しかし、今年もストレスの多い
一年になることは覚悟の上なのですが・・・。がんばります
映画は劇場鑑賞が一番。しかし、観られる映画はどうしても限られてきます
ので、今年はもっとDVD鑑賞を増やしたいです。やっぱりTSUTAYAのネット
レンタルかしら・・・。読書もしたいし、甘いものも止められない。素敵な出逢い
もあるといいなぁ。
というわけで、今年も変わらずお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいた
します♪
真紅拝
2011 thinkingdays 映画(洋画)ベスト10 & 邦画ベスト5

2011年、劇場鑑賞した映画は106本。うち邦画は24本。久々に100本超え
です。しかし、自宅鑑賞がほとんどできなかった一年でもありました。タイトル
クリックで感想記事に飛びます。
1. 未来を生きる君たちへ
スサンネ・ビア監督の集大成にして最高傑作。必見。
2. 永遠の僕たち

生と死、大人と子どもの「間」にある真実。遠い約束。
3. モールス

うふふ。。これ選んでる方他にいらっしゃるかな? オリジナルの『ぼくエリ』
もDVD鑑賞しましたが、やはり劇場鑑賞のインパクトは大でした。
4. 塔の上のラプンツェル

ディズニーの鉄板お家芸、乙女心恋心夢心時めかす名作アニメ。
5. ザ・ファイター

クリスチャン・ベイルに全て持っていかれてしまいました。クワッカー!!
6. ラブ・アゲイン

ただのラブコメじゃありません。あっと驚く脚本の妙。フォトショじゃない
ライアン・ゴズリング。最高でした。
7. リアル・スティール

子役のかわいさに撃沈。臨場感溢れるロボットファイト、父と子の絆。高揚
しながら感動できる、これぞ映画の醍醐味!
8. ラビット・ホール

「この宇宙のどこかに、楽しくやってる私がいるのね」 このセリフに尽きます。
9. 127時間

冴え渡るダニー・ボイル節。過酷な状況に置かれた主人公をほぼ一人芝居で
演じ切ったジェームズ・フランコに大拍手。
10. ブラック・スワン

ダーレン・アロノフスキーの昂奮がスクリーンを突き破って、劇場全体を支配
していた。こんな映画、滅多にお目にかかれない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今回は次点は無しです。アジア映画が入ってないのが寂しいな。。
正直、2011年は粒ぞろいというか突出した作品がなかったというか、選ぶの
に難渋しました。この10作品以外にも、忘れ難い作品が多くあります。ベスト20
くらいにしてもよかったかも?(笑)
続いて邦画ベスト5を。タイトルクリックで感想記事に飛びます。
1. モテキ
最高に面白かった。TVドラマ版を観ていたら、印象も違ったのかな?
2. エンディングノート
「よく生きる」 とは? ある幸福な家族の記録。
3. 監督失格
あの三谷幸喜も号泣したという私的ドキュメンタリー。喪失から生まれる
執着をさらけ出す、監督のクリエイターとしての覚悟と勇気に。
4. マイ・バック・ページ
これはブッキーが素晴らしいのです。どうか最後まで観てあげて下さい。
5. コクリコ坂から
映画的文法からすれば、欠点の多い映画なのかもしれません。しかしそん
な難しいことは関係なく、ただ私は「好き」でした。
洋画と同じく次点は無しで。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今年も、劇場予告を目にする度にワクワクさせてくれる作品が待機中です。
記憶に残るたくさんの映画に、今年も劇場で会えますように。
2011 thinkingdays 本のベスト5

2011年に読んだ本は68冊。昨年より5冊ダウン↓でした。今年は既に3冊
読了しましたが(正月どんだけヒマやってん・・・)、どれも夢中で読みました。
ああ、本って、読書って素晴らし~い♪
さて。2011年ベスト作は、、、。タイトルクリックで感想記事に飛びます。
1. こちらあみ子 【今村夏子】
太宰治賞と三島由紀夫賞をW受賞した、ということが、この本をよく表してい
ると思います。驚異の大天才、今村夏子。新作を首を長くして待っています。
2. こうふく みどりの 【西加奈子】

この小説に、激しく心揺さぶられた一節があったのです。あまりにも感動した
ので文庫を購入したのですが、なんとその一節がすっぽり削除されていました。
・・・何故なんだ? 是非単行本で読んでみて下さい。
3. すべて真夜中の恋人たち 【川上未映子】

川上さん、結婚&妊娠おめでとうございます。てかいつの間に離婚してはった
んですか? ビックリしました。末長くお幸せに。
4. 抱擁、あるいはライスには塩を 【江國香織】

傑作です。
5. 文盲 アゴタ・クリストフ自伝 【アゴタ・クリストフ】

「悪童」 三部作から受けた衝撃は、まだ生々しく私の中で波紋を残しています。
合掌。
今回は、全て女性作家の作品でした。今年も、何度も読み返したいと思う本たち
と、たくさん出逢えますように。
終わりじゃない~『永遠の僕たち』

RESTLESS
両親を亡くし、高校をドロップアウトした少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)
は、ある告別式で透き通るような存在感の少女・アナベル(ミア・ワシコウスカ)
と出逢う。
死に捕らわれた少年と、限りなく死に近づいている少女。生と死の間で、与
えられた僅かな時間を共有する二人。一秒一秒を愛おしむように生きる少年
と少女の、永遠と呼ぶにふさわしい刹那の物語。監督はガス・ヴァン・サント。
素晴らしい作品でした。邦題も悪くない。

映画の成功はキャスティングの時点でほぼ決まる、と聞いたことがあるけれ
ど、本作の肝はまさに、主演の二人。彼らがスクリーンに佇むとき、なんとも言
えない空気感が醸し出される。これを「ケミストリー」と言わずして、何と呼べば
いいのか。
映画初出演だというヘンリー・ホッパーは、もうお父さんに生き写し(涙)。い
つも跳ねているボサボサの髪、何処を見ているのか、心ここに在らずの瞳。
カミカゼの幽霊・ヒロシ(加瀬亮)だけが友達の、ひとりぼっちの少年。それで
も彼は、運命の少女を見つける。
ヘンリーにも増して、素晴らしいのはミア・ワシコウスカ。『アリス・イン・ワン
ダーランド』 のときは何の魅力も感じられなかったのに、この可憐さはどうよ?
ベリーショートが似合う小さな顔、時にクラシックだったり、ボーイッシュだった
りする、不思議なファッション。白い肌、消え入るような声、意志的な眼差し。
まだ幼いと言ってもいいくらいの若さで、自らの余命が「三ヶ月」であると、水を
飲むような自然さで受け入れる勇気。いや、その諦観は、逆に彼女が若いから
こそ、なのかもしれない。
幼いふたりの初めての恋を、やさしく包み込むような音楽も素晴らしい。ガス
・ヴァン・サント作品は 『ミルク』 に続いてのタッグとなるダニー・エルフマン。
相変わらずの職人的天才を感じる。
そしてもう一人、忘れてはならないのが我らが加瀬亮。こんなにもナチュラル
でキュートな魅力を放つ加瀬くんを、初めて観たような気がする。大好きなガス
の映画に、こんなにも彼がフィットしてるなんて。なんだかすごくすごくうれしい。

「死ぬことはときにたやすく、愛することは難しい」。 死者の言霊は、限られ
た命に真実と勇気を与える。残されて生きることは、確かに、死にゆくことより
困難を伴うかもしれない。それでも、「死は終わりではない」 とヘンリーが気づ
くとき、愛したひととの別れを受け入れ、笑顔で追憶することができる。
さようなら でも これは終わりじゃないよ
( 『永遠の僕たち』 監督・製作:ガス・ヴァン・サント/
主演:ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮/2011・USA)