本屋さんにて

心斎橋に映画を観に行くと、ほぼ寄りたい本屋さんがあります。
スタンダード・ブックストアさん。1FとB1Fの2フロアで、B1Fには会計前の
本を持ち込んで検討できるカフェもあります。私は小心者なので、「汚しそう」
とか思って(笑)、本はもっぱらショップのほうで見てから、カフェでは持参の
本を読んでいます。
(村上春樹の『雑文集』、勇んで発売日にゲットしたのですが中断中)
この日いただいたのはベジタブルサンドウィッチ。焼いたかぼちゃと、ひよこ
豆のペーストに、パプリカのマリネが味のアクセントになっていて。とってもお
いしいです。

この、私の「隠れ家」と勝手に呼んでいる大好きな本屋さんが、4月には茶屋町
にも進出するそう。茶屋町といえば近くに紀伊国屋もあるし、昨年末には日本最
大級、在庫冊数200万冊というメガ書店、MARUZEN&ジュンク堂もオープンし
ています。
私はキタはあまり行かないのでまだ体験していないのですが、スタンダード・
ブックストアさんには是非行ってみた~い。
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テーマ : みんなに紹介したいこと
ジャンル : ブログ
2011-02-25 :
パンとか、カフェとか。 :
コメント : 4 :
いちばん大切なものは手に入らない~『恋愛小説』

岡見美緒には、猫田健太郎という申し分のない恋人がいる。しかし、元同僚の
犬童早介(サスケ)と、美緒はどうしようもなく気が合うのだった。
椰月美智子さんという小説家のことは、今まで全く知らなかった。たまたま手
にした小学館の『きらら』というPR誌(中村佑介の表紙イラストが目印)に、この
小説の紹介のような著者インタビューが載っていて。それを読んだらもう、居て
も立ってもいられなくなった。
「すぐに読みたい! これは「あたしの小説」 だ」 と。
美緒とサスケ、それぞれのプロローグ。最初から、二人は別れたことが明示さ
れている。恋愛の、はじまりから終わり。陳腐といえば陳腐な、バカバカしくも愛
おしい、若気の至り。思い出すくらいはいいだろう。もう昔の話だ。いちばんだっ
た恋。
この小説を読んで、恋は「二人で」落ちるもので、片思いのうちは恋愛してるこ
とにはならないんだな、ってつくづく思った。一人で誰かを思ってたって、宙ぶら
りんのままなんだ、って。
こんなにも狂気をまとった、ぎりぎりの恋をしたことがあるわけじゃない。それ
でも、読み終わって本を閉じた瞬間、いろんな想いが溢れて。。声を挙げて号泣
してしまった私なのだった。
「誰もいない無人島で、二人きりだったらよかったね」
( 『恋愛小説』 椰月美智子・著/2010・講談社)
無籍者~『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』

A BETTER TOMORROW
韓国、釜山。ヒョク(チュ・ジンモ)は脱北仲間のヨンチュン(ソン・スンホン)
と、タイからの武器密輸に関わっていた。彼の気懸りは、生き別れになって
しまった弟チョル(キム・ガンウ)のことだった。
ジョン・ウーによる香港映画の金字塔『男たちの挽歌』の韓国版リメイク。
ただし、公式サイトによると本作はリメイクでなくリウェイク=再覚醒、だそう。
ジョン・ウー自身も製作に参加した、豪華キャストによる、男気溢れる熱い熱
い映画です。初日に鑑賞。
私は何とオリジナルを未見(!)なので(但し、チョウ・ユンファが煙草をくわ
えながら札ビラに火をつける、有名過ぎるシーンは刷り込まれているが)、雑
念なく堪能しました。面白かった! オススメ! ソン・スンホン、カッコよ過ぎ!!

思えば私、ソン・スンホンの映像作品って初見なんです。日本でも超有名で
人気者ですけど、そのあまりに整った少女漫画的容貌に、魅力を感じることは
今までなかったんですね。。日本で言えば、松潤的な? しかしまぁ、スタイル
のいいこと、カッコイイこと!(チュ・ジンモもね)。片や役柄とはいえ、チョ・ハン
ソンがおじさん化していて驚き。。彼って『オオカミの誘惑』の人だよね??
「ヒョン(兄貴)」って言葉に象徴されるのは、かの国の「男同士」の絆の強さ。
どこまでも深く強く相手を思いやり、信頼し、互いを熱く愛している。しかしそこ
には同性愛、BL的なセクシャルな匂いは皆無で、あくまで「男の友情」の範疇。
全編情に厚い、コリアン・マインド全開なテイストだけに、逆にオリジナルが気
になってしまう。

「挽歌」というタイトルが示す通りの、哀しいラスト。ヨンチュンの最後の言葉
は途切れてしまったけれど、きっと「俺はずっとお前が羨ましかった」って言い
たかったんじゃないかな。チョルも、もう少し早く、自分に素直になっていたら。。
二人の「弟」の心情を受け入れるヒョク。手を拡げて、がっしと抱き合う場面、
大好きでした。そしてもう一つ、この映画の素晴らしいのは「女っ気」ゼロ!な
こと! もう、潔いほど恋愛要素ナシ! 最高! 出てくる女は屋台のおばち
ゃんだけ、という徹底ぶり(笑)。
う~ん、しかしこういう熱カッコイイ映画を韓国に作られて、正直ちょっと悔し
い! 以下、真紅的日本版ドリームキャスト。
ヒョク: 竹野内豊 (受ける芝居が巧いイケメンさん)
ヨンチュン: 小栗旬 (熱い男代表)
チョル: 佐藤健 (永遠の弟キャラ)
テミン: 向井理 (冷徹に演じて下さい)
ほら~、日本にもたくさん、イイ男はいるんですから♪
( 『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』 監督:ソン・ヘソン/
主演:チュ・ジンモ、ソン・スンホン、チョ・ハンソン、キム・ガンウ/
2010・韓国、日本、香港、タイ)
あしたってヤツを教えてくれ~『あしたのジョー』

ドヤ街の残る昭和の時代。ケンカや無銭飲食に明け暮れ、少年院送りとなった
矢吹丈(山下智久)の元へ、元ボクサーの丹下段平(香川照之)からハガキが送
られてくる。「あしたのために(その1) -ジャブ-」
力石徹の葬儀や、よど号ハイジャック犯の声明「我々はあしたのジョーである」
などなど、社会現象となった少年漫画の金字塔「あしたのジョー」の実写映画化。
原作に思い入れもない、自分のようなミーハー人間が、果たして観に行ってもい
いのだろうか、楽しめるんだろうか、と迷いつつ。熱い台詞と俳優たちの生身の
肉体の極限に、結構感動してしまったのだった。この映画を、辰吉丈一郎は観
たのだろうか?

本作が実写映画化されると知ったとき、主演が「えぇ、山P??」と思った方は
多いのではないだろうか。。私もその一人ですが。力石徹の伊勢谷友介はまだ
しも、う~~ん、山Pかぁ~~、と。
実際に観てみると、予想通りと言うか決して悪くはない。悪くはないのだけど、
やっぱりどう見ても彼は「平成顔」なんですよね。。ギラギラしてないと言うか、
線が細いイマドキの男の子なんですよ。昭和のドヤ街には、間違ってもいそう
にないと言うか。。。しかし、彼が造り上げた肉体には敬意を表したい。
この映画は矢吹丈の、と言うよりも、力石徹の映画だと言えるかもしれない。
伊勢谷友介の減量はハンパないし、リング上の動きも生半可ではない。力石徹
=伊勢谷友介の美しい筋肉を観るだけでも、映画館に足を運ぶ価値はあり、と
思えるほど。何度か挿入される力石の「振り返りショット」がイイのです。伊勢谷
くんカッコええわぁ。男前。

「立てぇ~、立つんだぁ~、ジョーーーー!!」
そして、香川照之。この方の「(汚れ)コスプレ」は一体どこまで行くんだ? と
思ってしまいますね。セコンドで、ジョー=山下智久を涙ながらにケアする様は、
真に迫ってほぼ成り切り。日本に香川照之がいてよかった。
映画は力石の死後、リングを離れていた丈が再びトレーニングを開始する場面
で終わる。従って、かの有名な「真っ白に燃え尽きた」ジョーの姿を観ることはで
きない。続編、あるのでしょうか?
( 『あしたのジョー』 監督:曽利文彦/2011・日本/
主演:山下智久、伊勢谷友介、香里奈、香川照之、津川雅彦)
母と子~『愛する人』

MOTHER AND CHILD
14歳で出産、生まれた娘を母によって養子に出されたカレン(アネット・ベニング)
は、ただ娘を思いながら生きていた。37歳になったその娘エリザベス(ナオミ・ワッ
ツ)は弁護士として自立した人生を歩んでいたが、孤独な日々を生きていた。
この映画のポスターを見たとき、アネット・ベニングの美しい顔に刻まれた「皺」
にほとんど感動してしまい、絶対に観たいと思った。予想通りと言うべきか、彼女
の「皺」に泣かされ通しの126分間。いやぁ、アネット・ベニングって本当にいい女
優さんですね。。ナオミ・ワッツももちろん素晴らしかったけれど、個人的にはアネ
ットに感情移入して観てしまった。終映後、もう顔がぐちゃぐちゃでした・・・。

娘を育てられなかったカレン、母の愛を知らずに生きるエリザベス、そして子ど
もを望みながらも、産むことが叶わないルーシー(ケリー・ワシントン)。彼女たち
の中で行き場を失くした愛は、自家中毒を起こして心を乱す。気難しいカレン、威
圧的なエリザベス、しゃべり過ぎてしまうルーシー。愛は、誰かに正しく与えるこ
とができないと、ストレスを生むものなのだな。
カレンの顔に刻まれた皺を見た瞬間から、涙がじわじわ滲んできた。娘をその手
に抱けなかった苦しみが、彼女の心を捻じ曲げてしまった。子どもを手放し、初恋
に破れ、実母とのわだかまりを解けなかったカレンの、終わりのない渇望。もう一
度、彼女が赤ちゃんを産めたらいいのに。それでも、パコ(ジミー・スミッツ)と出逢
えたカレンは幸運だと思う。 「あなたはどこからやってきたの?」
隣室の夫や上司のポール(サミュエル・L・ジャクソン)と関係を持ち、思いがけ
ない妊娠をしてしまうエリザベス。身籠って初めて、自らの「血の繋がり」を意識し
た彼女が、盲目の少女に語る「母の姿」が切ない。

悲しみや苦しみに押し潰されそうになりながら、怒り、涙し、それでも再生して
ゆくカレンを、アネット・ベニングは過剰でもなく、上っ面でもない迫真で演じ素
晴らしい。産みたい、産みたくない、産んでおけばよかった、産まなきゃよかった。
子どもを巡る話題は「取扱注意」であり、百人百様の考え方があるだろう。しかし、
今ここに自分がいるのは、「母」という人がいたから。それだけは忘れないでいた
い。
( 『愛する人』 監督・脚本:ロドリゴ・ガルシア/2009・米、西/
主演:ナオミ・ワッツ、アネット・ベニング、ケリー・ワシントン)
進化のためのバブル~『ウォール・ストリート』

WALL STREET: MONEY NEVER SLEEPS
インサイダー取引の罪で服役していたカリスマ投資家、ゴードン・ゲッコー(マ
イケル・ダグラス)が出所した。彼と絶縁中の娘、ウィニー(キャリー・マリガン)
は、証券マンのジェイコブ(シャイア・ラブーフ)と交際中。彼らを巻き込み、金融
界に復讐を誓うゴードンの逆襲が始まる。
伝説の悪役、ゴードン・ゲッコー(GG)というキャラクターを生み出した『ウォ
ール街』はリアルタイムで劇場鑑賞している。しかし、特に感銘を受けた記憶も
なければ、金融業界が面白いと感じた記憶もない。とにかくお金の計算が苦手
な金融オンチなもので、続編である本作もストーリーはよくわからなかったが・・
・(汗)。シャイア・ラブーフ&キャリー・マリガンのフレッシュコンビ(もう別れたけ
ど)がGOODな社会派ドラマ。監督のオリバー・ストーンもカメオ出演、彼って
出たがりだったのか。。チャーリー・シーンの顔も観られます。

株の売買の仕組みとか、バブルとか暴落とか金融危機とか、経済のことはよく
わからないが、GGの演説は物凄く説得力があった。さすがマイケル・ダグラス、
カリスマ性がありますなぁぁ。。23年ぶりにスクリーンに「カムバック」したGG
は、ギラギラした欲望の権化そのもの。サブプライムローンの問題がいかにアメ
リカの金融業界を疲弊させたか。でも結局は、裏でしっかり儲けている奴はいる。
お金って、ちゃんと帳尻が合っているもの。多分。
グリーン・エネルギーを発展させ、世界を変えようという野望を抱く青年ジェイ
コブ。シャイア・ラブーフって今までいいと思ったことがないし、どうして重宝さ
れてるのか謎だったけど、この作品はよかったです。キャリー・マリガンとのケ
ミストリーでしょうか? ショートカットが似合うキャリー、このコってホンマ、「お
へちゃ」ですねぇ。。でも、「へちゃ」な自分を客観視できているのかどうなのか、
演技は自意識過剰なところがなくて、好きな女優さんです。最近すっかり悪役
づいているジョシュ・ブローリンや、イーライ・ウォラックさんも御出演。

「進化のためにバブルは必然だった」っていうモノローグが印象的だった。アメリ
カの金融危機を発端に、すっかり冷え込んでいる我が日本の景気。バブル待望
論も根強いけれど・・・。どーんと上がってドーンと落ちる、みたいなのはもう、勘弁
かな。
( 『ウォール・ストリート』 監督:オリバー・ストーン/2010・USA/
主演:マイケル・ダグラス、シャイア・ラブーフ、キャリー・マリガン)
国境の高い波~『君を想って海をゆく』

WELCOME
17歳のクルド難民ビラル(フィラ・エヴェルディ)は、ドーバー海峡を望むフラ
ンス最北端の街・カレに徒歩で辿り着く。密航に失敗した彼は、恋人の待つロン
ドンへ泳いで行こうと、スイミングコーチのシモン(ヴァンサン・ランドン)のレッス
ンを受け始める。
大好きな映画『灯台守の恋』 『マドモワゼル』 の監督、フィリップ・リオレの
作品が公開されると知り、随分前から楽しみにしていた。本作はラブストーリー
ではなく、中東からの難民に対する欧州各国の「不寛容」をテーマにした社会派
ドラマ。主演は、これも大好きな作品 『ガスパール/君と過ごした季節』のヴァ
ンサン・ランドン。悲しくてやりきれない物語ではあるけれど、素晴らしかったで
す。これほど地味な映画が、劇場公開されたのも素晴らしいことだと思う。原題
は「WELCOME」。何とも皮肉で、反語的なタイトル。対して邦題は・・・、ちょっと
残念。

愛する妻に去られ、抜け殻のような日々を生きる中年男・シモン。彼が出逢
ったのは、恋人と自らの夢のために、命懸けで海を渡ろうとする少年ビラル。
不法入国者を支援するボランティアである妻の気を引こうと、出来心でビラル
の手助けをするシモン。しかし、彼は少年の中に自らが失ってしまった青い情
熱を見、身の危険を冒してビラルと心を通わせ、彼の「夢」を叶えようとする。
自らが失ってしまった誠実さや、純粋な愛や、果てない夢を若者の中に見て、
惹かれてゆくシモンに感情移入してしまった。中年に差し掛かり、砂を噛むよう
な毎日を送るシモンにとって、「マンチェスター・ユナイテッドに入りたい」と無邪
気に語るビラルは、どれほど眩しく映っただろう。愛する人のために、極寒のド
ーバー海峡を泳いで渡ろうとするビラル。歩けなければ、泳ぐしかない。無謀に
見えるその行動は、若さゆえの、至極シンプルな原理に基づいている。しかし
物語は少年の夢を波間に投げ出したまま、ハッピーエンドを迎えることはない。

中東から地続きの欧州では、難民問題は極東の島国とは比べ物にならない
現実なのだと思う。トラックの積み荷の検査法が「二酸化炭素濃度」のチェック
ということにも驚き。不法入国者を排除しても、彼らは何処へ行けばいいのか?
一体誰が、彼らを「WELCOME」と受け入れるのか。感傷に浸ってばかりはい
られないことは、重々承知の上。しかしエンドロールが終わるまでは、涙にくれ
ていた私なのだった。
( 『君を想って海をゆく』 監督・共同脚本:フィリップ・リオレ/
主演:ヴァンサン・ランドン、フィラ・エヴェルディ/2009・仏)
「そんな男ダメですよ」
もうすぐバレンタイン。今年は何故か、遠い遠い失恋の記憶が甦って仕方ない。
大好きな人に勇気を振り絞ってチョコレートを手渡したのに、木端微塵に無視
されてしまった。
例によって、私が一人で思い詰めて暴走して、勝手に傷ついて泣いたのだった。
どうして思い出してしまったんだろう? もういい大人だったのに、バカな自分が
情けなくて。思わず職場の後輩Nちゃん(二十代未婚)に話してしまった。彼女は
一言、
「そんな男ダメですよ」
・・・・・。
今までずっと、自分がバカなんだ浅はかだったんだ考えなしなんだと思って、
自分を責めてきた。でも、そうじゃないのかも? もしかしてもしかしたら、悪い
のはあの男だったのかも?
ホンマ、しょーもない男やったわ。ふん。
大好きな人に勇気を振り絞ってチョコレートを手渡したのに、木端微塵に無視
されてしまった。
例によって、私が一人で思い詰めて暴走して、勝手に傷ついて泣いたのだった。
どうして思い出してしまったんだろう? もういい大人だったのに、バカな自分が
情けなくて。思わず職場の後輩Nちゃん(二十代未婚)に話してしまった。彼女は
一言、
「そんな男ダメですよ」
・・・・・。
今までずっと、自分がバカなんだ浅はかだったんだ考えなしなんだと思って、
自分を責めてきた。でも、そうじゃないのかも? もしかしてもしかしたら、悪い
のはあの男だったのかも?
ホンマ、しょーもない男やったわ。ふん。
1000記事達成!
前回記事、映画 『ザ・タウン』 感想が1000記事目でした。
1000記事。。なんか、うそみたい?! そんなに書いたん、自分?!?!
という感じです(笑)。
2005年12月末にここを始めて、5年ちょっと。決して早い方ではないと思
いますが(むしろ遅いでしょう)、ほんとよく続いたな~、と思います。たま~に
ブチ切れながら(爆)。
あ~、なんだかじわじわうれしくなってきた。。
読んで下さった皆さん、コメント&TBを下さった皆さん、ありがとうございま
す! 今後ともよろしくお付き合い下さいませ♪
真紅拝

1000記事。。なんか、うそみたい?! そんなに書いたん、自分?!?!
という感じです(笑)。
2005年12月末にここを始めて、5年ちょっと。決して早い方ではないと思
いますが(むしろ遅いでしょう)、ほんとよく続いたな~、と思います。たま~に
ブチ切れながら(爆)。
あ~、なんだかじわじわうれしくなってきた。。
読んで下さった皆さん、コメント&TBを下さった皆さん、ありがとうございま
す! 今後ともよろしくお付き合い下さいませ♪
真紅拝

その街の男~『ザ・タウン』

THE TOWN
ボストンのチャールズタウン。犯罪の多発するこの街で生まれ育ち、幼馴染と
銀行強盗を繰り返すダグ(ベン・アフレック)。彼は人質として拉致した銀行の支
店長クレア(レベッカ・ホール)と恋に落ちてしまう。
ベン・アフレックの初監督作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』は、何故劇場公開され
なかったのか疑問に感じるほどの傑作だった。その彼が再び、生まれ故郷ボス
トンを舞台に描いたクライム・サスペンス。今回は監督、共同脚本、主演の3足
のわらじを履いたベン。期待を胸に初日に鑑賞。渋いキャスト陣にも恵まれ、緊
張感が途切れないまま、スクリーンに釘付けの2時間強だった。面白かったで
す。満足、満足。これからも監督&俳優、ベン・アフレックを応援したい。

ダグの親友、家族同様の存在であるジェムを演じたジェレミー・レナーは、ア
カデミー助演男優賞にノミネートされている。彼の演技はもちろん素晴らしかっ
たが、かと言って彼だけが突出してよかったわけでもない。このノミニーは、『ザ
・タウン』という作品を代表してのものだと思う。しかし昨年の『ハート・ロッカー』
に続き、ジェレミー・レナー乗っていますね。タガが外れた時の、目の狂気が凄
い。
ダグと恋に落ちるヒロイン、レベッカ・ホールは苦手な女優さんなのだけど、
今回初めていいな、と思えた。これも監督の演出力なのかな。ダグの元カノに
してジェムの妹、クリスタを演じたブレイク・ライヴリーも蓮っ葉でよかった。彼
女の娘を含む、ダグ、ジェム、クリスタの関係が、もう少し掘り下げて描かれて
いてもよかったのでは、とも思うけれど。たったワンシーンの出演ながら、強烈
な印象を残すクリス・クーパーもさすがの演技。そして本作が遺作となってしま
った名優、ピート・ポスルスウェイト。痛々しいほど痩せていて、この撮影の頃
から癌を患っていたのだろうか、と思わずにはいられなかった。ご冥福をお祈り
します。

犯罪の温床たる街で息づく親と子の情愛、血脈として受け継がれるもの。輪廻
し再生産される暴力から逃れ、十字架を下して新しい自分に生まれ変わろうとす
るダグ。身内を信じ、守ろうと自らの命を捧げ、タウンで短い人生を終えたジェム。
「フロリダで会おう」 「帰りを待ってるぜ」。噛み合わない、二人の最後の会話。
犯した罪からは逃れられないから、ハッピーエンドは望むべくもない。しかし愛し
愛された記憶は残る、それだけが、この哀しい物語の救いなのだろう。
( 『ザ・タウン』 監督・共同脚本:ベン・アフレック/2010・USA/
主演:ベン・アフレック、ジェレミー・レナー、ジョン・ハム、レベッカ・ホール)
倚りかからず~『清冽 詩人茨木のり子の肖像』

倚りかかるとすれば それは 椅子の背もたれだけ
ノンフィクション作家・後藤正治氏による、日本を代表する女流詩人・茨木のり
子の評伝。彼女の代表作「倚りかからず」や「わたしが一番きれいだったとき」に
衝撃を受けた人間として、是非読んでみたかった一冊。
その凛として潔い詩の言葉から、なんだか少し「怖い人」なのでは、というイメ
ージがあった。厚い眼鏡をかけた、厳格な国語教師、という雰囲気の。しかしこ
の本を手にしてまず驚くのは、カバー写真の茨木さんの美しさ。「宝塚の男役の
ような」という形容が何度か出てくるが、美しいのはもちろん、包容力のあるやさ
しげな微笑がなんとも素敵。本書は彼女の代表的な詩を取り上げながら、生い
立ちから晩年に至るまで、その人生を丹念に追ってゆく。
自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ
茨木さんの詩で、一番有名なもののひとつ「自分の感受性くらい」の最終連。
これには、まさしく「頭を殴られたような」衝撃を受けた。しかし、この「ばかもの
よ」という言葉は作者本人に向けられたものである。いかに茨木さんが自分に
厳しく、自分を律し続けた人生を送ったか。裕福な家庭の「お嬢さん育ち」であ
りながら詩作の道へ入り、幸福な結婚をしながらも夫に先立たれ、30年以上も
独居で、亡き夫への想いを温め続けた。韓流ブームのずっとずっと前からハン
グルを学び、詩の同人であり続けた一人の女性。
俗世にまみれて生き、嫉妬や羨望、エコ贔屓や自分勝手の渦の中で、日々
働いている自分。時には茨木さんの詩を読み返し、その言葉の凛とした美しさ
の中に、人生の指針を得たいと思ってしまう。背筋を伸ばして。
( 『清冽 詩人茨木のり子の肖像』 後藤正治・著/中央公論新社・2010)
その献身に泣く~『白夜行』

昭和55年。廃墟となったビルで、男の死体が発見される。担当刑事の笹垣(船
越英一郎)は、被害者の息子・亮司と、加害者の娘・雪穂の幼い姿に、妙な胸騒
ぎを覚える。
大人気作家・東野圭吾の代表作、満を持しての映画化。昭和から平成の時代、
ある男女の十数年に及ぶ愛情を越えた深い絆と罪、それを追う一人の刑事の執
念を描いたサスペンス。キャストに対する不満と、149分という長尺に観ることを
躊躇していたが、高良健吾演じる亮司だけはどうしても観たかった。原作は今更
言うまでもなく傑作だけれど、映画版も素晴らしかった。シアターが明るくなった
時、涙でぐちゃぐちゃになりながら、本当に観てよかった、と思った。
ちなみに、TVドラマ版は未見、先に映画化された韓国版(ソン・イェジン主演)も
観ていない。原作の感想はこちら⇒

映画化決定のニュースとともに知ったキャストに、正直、うれしさ半分、がっ
かり半分だった。亮司=高良健吾は考え得る最高のキャスティングだとは思え
ど、雪穂=堀北真希、、う~ん。。笹垣刑事=船越英一郎、これにはガッカリ!
バラエティか2時間ドラマならまだしも、、という思いでいっぱいだった。しかし、
堀北真希は可もなく不可もなく、船越英一郎は意外によかったんじゃないだろ
うか? 彼の持つ素のやさしさや人の良さ、包容力が、笹垣のキャラクターに
よくフィットしていたと思う。色眼鏡で観ててすみません。
舞台が大阪から関東地方に変更されている以外は、ほぼ原作通りの展開。
色を落としたようなざらついた暗めの映像が、不安を掻き立てられるよう。「川
向う」の寂れたバラックや、生活に疲れた人々の表情もリアル。
原作を読んだとき、主人公たちに共感も感情移入もできなかった。彼らの「し
たこと」があまりにも非道で、全く同情できなかったから。しかし、映画は原作
とは、少し印象が違う。彼らが「されたこと」が具体的に、視覚的に表現される
と、その重みがズシリと来る。グサリと胸に突き刺ささる。子どもが辛い思いを
する物語は、苦しい。苦しくて悲しくて、涙が止まらない。
「心を殺された」雪穂は、「感じる」ということを止め、自らの保身と上昇意識
のためだけに生きる。手段を選ばず、誰とも交わらず、何も信じないまま。そ
んな彼女の「太陽にかわるもの」として、彼女を守り、彼女を支え、何の見返り
も求めず、献身と犠牲の中で命を絶つ亮司。彼のしたことは、自らの父の「罪」
に対する、生涯を賭けた贖罪だったのだと。映画を観るまでわからなかった。
そんな亮司を、その父性で包み込もうとした笹垣。しかし、全ては手遅れだっ
た。
難しい役柄を、主演の若い二人は真摯に演じていたと思う。特に、高良健吾。
彼の出演する映画は、これから全部観たいと思ってしまった。惚れました。

( 『白夜行』 監督・共同脚本:深川栄洋/原作:東野圭吾/
主演:堀北真希、高良健吾、船越英一郎/2011・日本)
超危険な年金生活者たち~『RED/レッド』

RED
元CIAエージェントのフランク(ブルース・ウィリス)は、年金相談担当のサラ
(メアリー=ルイーズ・パーカー)と電話で話すことだけが楽しみな、孤独な男。
そんな彼が、ある日突然何者かに襲撃される。
タイトルの「RED」とは、「赤」ではなくて「Retired Extremely Dangerous」
の略。引退した元凄腕スパイたちが現役時代のままに八面六臂の大活躍、
危険なミッションを楽しそうに遂行するアクション映画。ブルース・ウィリス
はじめ、超豪華キャストが集結してます。しかし、う~~ん、私はちょっと
ノリ切れなかったな~。。『エクスペンダブルズ』といい、この映画といい、
ちょっと損した気分、かも。
「殺し屋」ヘレン・ミレンが観たかったので文句は言えないはずなのですが、
正直、フランクとサラの恋愛パートがどうでもよかったんです! ヴィクトリア
(ヘレン・ミレン)とアイヴァン(ブライアン・コックス)くらいになったら素直に従
います、って感じではあるのですが。。あと、ジョン・マルコヴィッチもいい感じ
で狂った感醸し出してましたが。
まぁ、今はね、全身揺さぶられるような、感情の高まりで涙が止まらない、っ
て感じのエモーショナルな映画が観たい気分だからかな。。。
最後にひとつ、小学5年生レベルのギャグを。。「ロシアの殺し屋 恐ろしや」
(爆)

( 『RED/レッド』 監督:ロベルト・シュヴェンケ/2010・USA/
主演:ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレン)
どうにも、どうしようもない~『暗渠の宿』

第144回芥川賞は、西村賢太氏『苦役列車』と朝吹真理子氏『きことわ』の
二作が同時受賞。叩き上げVS.純血サラブレッド、という分かり易い二氏の
対比で随分と話題になりましたが、正直西村氏のことは、寡聞にして全く知
りませんでした。受賞インタビューでの「そろそろ風俗に行こうかと」発言には
ビックリ。芥川賞受賞作の前に、2007年に第29回野間文芸新人賞を受賞
した本作を読んでみることに。「けがれなき酒のへど」と表題作の二作併録。
素面でいると小心者で押しが弱いのに、呑んだくれで手が早く、キレると
瞬間湯沸かし器のよう。江戸っ子だというプライドだけは高く、恋人が欲しい
寂しさを風俗通いで埋めようとし、惚れた女には騙される・・・。そんな(作者
自身がモデルだという)、典型的な「だめんず」が主人公。
しかしまぁ、、何ですねぇ。。こういう孤独な男性って、案外世の中にはたく
さんいるのではないでしょうか。「けがれなき~」では愛を求めるあまりに冷静
な状況判断ができず、女に貢いで結局は捨てられる男。「暗渠の宿」では、
同棲相手の女に次第に支配的に、暴力的になってゆく男。怒りにまかせて
自制ができず、暴力を振るう男に同情の余地はない。結局、精神的に子ども
なんだと思う。
才能と学歴というのは必ずしも一致しない、というのがよくわかります。自身
の経験を私小説という形に昇華させる才能。芥川賞受賞作は、文藝春秋を買
って読もうと思います。
( 『暗渠の宿』 西村賢太・著/新潮社・2006)
人には必ず役目がある~『GANTZ』

就活中の大学生・玄野計(二宮和也)は、地下鉄のホームで幼馴染の加藤勝
(松山ケンイチ)を見かける。線路上に落ちた男性を助けようとした二人は、巨大
な黒い球体のあるマンションの一室に瞬間移動していた。
奥浩哉の人気同名漫画を実写化した、SFサスペンス・アクション。二宮和也と
松山ケンイチのW主演ということで随分前から楽しみにしていた作品。原作は未
読、予備知識は劇場版予告のみという状態で鑑賞。いや~、面白かった! ニノ
松、最高!! 日本を代表するアイドルグループのメンバーが主演なのに、PG
12指定であることには驚いたが、映倫の判断も納得の、スプラッタ&エロティッ
ク描写満載。特に前半は怖かった。。しかし、このダークで独特の世界観が最高
でした。アメリカをはじめ、世界各地での配給が決定しているというこの作品。
世界を席巻してくれ、COOL JAPAN! (しかし、「田中星人」のネタ元だけは、
日本でしか理解されないだろうなぁ。。しかもR35で)

小学校の頃は、いじめっ子からいじめられっ子を守る「ヒーロー」だった計。し
かしいつの間にか彼は無気力な大学生に成長し、どこにでもいるごく普通の青
年として生きている。そんな彼が「GANTZ」に召還され、地球を滅ぼそうとする
「異星人」と闘ううちに、自らの「才能」を意識するようになる。。
生真面目で心やさしい「お兄ちゃん」・勝を演じた松ケンももちろん文句なしだ
けれど、この「超現代っ子」・計を演じたニノの演技が素晴らしい。普段は甲高い
声で、おちゃらけている印象でも、ここぞ、という時に低音で発する「キメ台詞」が
滅法カッコいい。「・・・死なずにすんだ、って?」 この一言、背中がゾクリとしま
したよ。もちろん、激しいアクションも頑張っていたし。COOL JAPANを体現
する若手俳優として、世界に出しても恥ずかしくない、いやむしろ世界に誇れる
俳優さんだと思います。

世界観もストーリーも謎めいて独特であるが故に、万人に勧められる映画で
は決してない。しかし、笑いどころやユーモアも散りばめられていて、好きな人
は「あの黒いスーツが着てみたい!」と夢中になれるはず。ただ、ちょっと長く感
じてしまったかな(尺は130分)。ますます謎めくラスト、PARTⅡが楽しみです。
( 『GANTZ』 監督:佐藤信介/2011・日本/
主演:二宮和也、松山ケンイチ、吉高由里子、田口トモロヲ)
甘やかな家の記憶~『抱擁、あるいはライスには塩を』

東京・神谷町にある広大な「お邸」に、三世代10人で暮らす柳島家。語り手
と時代を自由に交錯させながら描かれる、ある「特別な家族」の百年の物語。
ロシア人の祖母を持ち、父親と母親の違う兄弟姉妹が仲良く同居。大学入学
までは自宅学習、それでいて男子は東大、女子はお茶の水に進学するのが
「当然」という柳島家。この笑ってしまうくらい超浮世離れした設定に、少々の
違和感を持ちつつ読み進む。江國さんにしては体言止めの少ない文体、各章
が一人称で綴られ、ある時代のある出来事が、それぞれの視点で語られる。
しかし、そこにはどこか「傍観者」のような余所余所しさがあり、「当事者」が感
じるはずの生々しさは注意深く排除されている。第三章、北アフリカに滞在す
る桐之輔の「青さ」にイライラさせられた以外は、乾いているようで湿潤で、気
高くも退廃的な江國ワールドに魅了されてしまった。
婚家で人格を否定され、声を失くした百合に涙し、誰よりも元気で自由だっ
た「桐ちゃん」の死に涙し、光一の恋人・涼子の現代っ子ぶりに笑い、どんな
にお金持ちで教養があって、何不自由のない生活に見えても、人は恋する
ことから(あるいは「運命」から)逃れられないことを改めて思い。。
この、長い長い百年の「家の記憶」が幕を閉じようとしたとき、この家族への
愛着が、自分の中に生まれたことを感じていた。読み終わりたくない。でもど
んな小説もいつかは終わる、人生と同じように。傑作です。
( 『抱擁、あるいはライスには塩を』 江國香織・著/集英社・2010)