悪を刺す~『グリーン・ホーネット』 【3D・字幕版】

THE GREEN HORNET
新聞社社長の御曹司であるブリット(セス・ローゲン)は、パーティ三昧の放蕩
息子。厳格な父の急死により社長の座に就いた彼は、父のお抱え運転手だった
カトー(ジェイ・チョウ)の存在を知る。
『イップ・マン 葉問』に続いて、ブルース・リー李小龍関連の作品。オリジナル
のテレビシリーズでブルース・リーが演じた役を、台湾のスーパースター、ジェイ
・チョウが演じている。『モンガに散る』を降板しての、彼のハリウッド初進出作。
ちなみにこの役、当初はチャウ・シンチー周星馳が演じる予定だったとか。ブル
ース・リーはカトーの描いたイラストで登場。監督は、「永遠の12歳」ことミシェ
ル・ゴンドリー。アメリカでは初登場一位の大ヒットスタート。

ミシェル・ゴンドリーが撮る3D映画って、どんな感じだろう? と、3D映画が
好きではない私も一応、興味はあった。しかし、う~ん、これはちょっと。。わざ
わざ3Dで公開する意味ないんじゃないの? というのが率直な感想。ゴンドリ
ーらしいハンドメイドな質感の映像も観られず。これ言われないと彼の作品って
わからないと思いますよ。アクションも、やたらと火薬の量が多く、車がバシバ
シ壊されるような大味なもので残念。ストーリー自体も、私にはほとんどどうで
もよかったな~。。
しかしジェームズ・フランコには驚いた。エンドクレジットで彼の名を見つける
ことはできなかったけれど、間違いなく彼だったと思う。トム・ウィルキンソンや
クリストフ・ヴァルツの顔が観られたのもうれしい。しかし、クリストフ・ヴァルツ
って、イングロ以来すっかり売れっ子ですね。。QTに足を向けて寝られないで
しょうね。

相変わらずキュートなキャメロン・ディアスも、ほとんど添え物で勿体ない。
ただ、ジェイ・チョウは存在感あったんじゃないかな? 英語もとっても上手
だったし、おバカなブリットによく付き合ってあげてたし。
しかし、カトーって日本名ですよね? 加藤さん? なのにカトーは「上海
で育った」と言い、それを聞いたブリットは「日本は好きだ」と答える・・・。この
映画を観たアメリカ人が、ジョークだってわかってくれてたらいいんですけど。
( 『グリーン・ホーネット』 監督:ミシェル・ゴンドリー/2011・USA/
主演:セス・ローゲン、ジェイ・チョウ、キャメロン・ディアス)
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常に謙虚であれ~『イップ・マン 葉問』

葉問2
IP MAN 2
1950年。佛山から香港に逃れてきたイップ・マン(ドニー・イェン)は、詠春拳
の達人。ビルの屋上に武館を開いて弟子を待つ彼の元に、ウォン(ホァン・シャ
オミン)と名乗る若者がやって来る。
闘神、ブルース・リー李小龍の唯一の師匠、イップ・マン葉問の伝記映画。
タイトルにいきなり「2」と出て、前編と思われる映像が早回しで流れる。ああ、
これは続編なんだ~、と思っている間もなく物語が始まる。劇場は、やや年配
の男性客多し。皆食い入るようにスクリーンを見つめている。
ちなみに、トニー・レオン梁朝偉&ウォン・カーウァイ王家衛コンビの新作、
『一代宗師』(鋭意撮影中、てか間に会うのか・・・汗)もイップ・マンの生涯を
描いた作品、らしい。

香港の武術界に現れた最強の達人が、武術界を仕切っていた洪拳の達人
ホン(サモ・ハン・キンポー)と対立の後和解し、香港を統治していた英国のボ
クシングチャンピオンと中国武術の誇りを賭けて闘う、というストーリー。
何と言っても、アクション・シーンの全てが圧巻。この映画、CGは使ってな
いのだろうか? イップとホンとの、円卓の上での闘いは凄まじい。イップの
手の動き、速過ぎて見えませんから。。すっかりビア樽体型のホンも、還暦
過ぎてあのアクションは、天晴れの一言。
最強の達人でありながら万人に優しく、控え目でありながら芯の通ったイッ
プの精神性は、ホンを揺り動かし、彼らの間には強い絆が生まれる。そして
英国人ボクサーが彼らの共通の敵となり、闘いは異種格闘技の様相を呈す
る。闘いも感動的だけれど、いつも穏やかに微笑み、誰よりも謙虚なイップの
姿に、尊敬の念を抱いてしまった。

『序章』を飛ばして『2』が公開されたため、肉を盗んで喰らう男とイップとの
関係性や、何故イップが香港に逃れなければならなかったのかがわかりに
くいのが難。5,000人動員で公開されるという『序章』、映画館で観ることがで
きるのか、果たして・・・。
( 『イップ・マン 葉問』 監督:ウィルソン・イップ葉偉信/
主演:ドニー・イェン甄子丹、サモ・ハン・キンポー洪金寶/2010・HK)
テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画
こんなに笑っていいかしら? ~『デュー・デート/出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断』

DUE DATE
妻の出産を5日後に控え、アトランタからLAの自宅に戻ろうとしていた建築家
のピーター(ロバート・ダウニー・Jr)は、イーサンと名乗る俳優志望の男(ザック
・ガリフィナーキス)と出逢い、二人で大陸横断するハメになってしまう・・・。
『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』の製作・主演チー
ムが再結成、ロバート・ダウニー・Jrを迎えて放つ、R15+の爆笑ロードムービ
ー。残念ながら『ハングオーバー!』は未見ですが、愛しのロバダウ主演という
ことで楽しみにしていた作品。もう、もう、、めちゃくちゃ笑わせていただきました!
翌日まで思い出し笑いしてたもん。

社会的地位も高く、美しい妻もいる「いい男」ピーターは、神経質なんだけど
心やさしい。究極の疫病神(そして本人はいつもケロっと、美味しいところを持
っていく!)イーサンに取りつかれてしまった彼は、「情に棹差せば流される」
かのごとく、怒涛の不運の連鎖に呑みこまれていく。。この、ロバダウのコケに
され加減、虐げられっぷりが最高! 今まで観てきた出演作の中で、トニー・
スタークより、ホームズより、本作の彼が一番素敵に見えたな~(って私はドS
か?!)。どこかお人よしって言うか、良心の呵責に耐えきれない人なんだよ
ね。。ピーターは本質的に、真面目な人なんだと思う。
そして疫病神イーサンは、フレンチブルの「サニー」(このワンコがまたかわ
いくてケッサク)を連れ、ハリウッドのエージェントに会いに行く途中。このイー
サンという男、毛むくじゃらで熊みたいに太って、やることなすことピーターの
神経を逆撫でする。23歳ってどんだけサバ読み。。車中○○○ーのシーン、
もう、爆笑。私の隣の初々しいカップル(「携帯、マナーにした?」「うん♪」)
は固まっておりましたが。。そして場内が一番盛り上がった?のが「遺灰コー
ヒー」のシーン。もう、あり得へん! 芳醇なブレンドって、、。ハハハ。

メキシコからの脱出シーンなんかは突っ込みどころもあったけれど、最終的
には出産にも無事間に会い、あり得ない二人の友情も成立し、めでたしめでた
し、の大団円。ラストのオチには、あの大物俳優も顔を見せて。。そうそう、懐か
しやジュリエット・ルイスの顔も観られますよ。
( 『デュー・デート/出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断』
監督・製作・共同脚本:トッド・フィリップス/
主演:ロバート・ダウニー・Jr、ザック・ガリフィナーキス/2010・USA)
そう、人生は美しい~『しあわせの雨傘』

POTICHE
1977年、フランスの田舎町。雨傘工場の社長夫人スザンヌ(カトリーヌ・ドヌ
ーヴ)は、亭主関白な夫ロベール(ファブリス・ルキーニ)の従順な妻。ある日
ロベールが倒れ、スザンヌは工場の経営に乗り出す。
フランソワ・オゾンがフランスを代表する大女優、カトリーヌ・ドヌーヴを主
演に迎えたコメディ。オゾンってこんな面白い喜劇を撮る人だったんだ、、と
思いきや、彼のフィルモグラフィーを見てビックリ。。私、オゾンの映画って
これでたった3本しか観ていない! 『8人の女たち』も『スイミング・プール』
も観てません。。懺悔。オゾン作品は語れない私ですが、この映画はとって
も面白く観られた。レディースデイだけに劇場は女性客でほぼ満席。フラン
スらしい艶っぽさも散りばめつつ、「飾り壺」だった女性の自立を描いた人生
讃歌。

う~ん、何と言ってもドヌーヴ様のジャージ、でしょう! しかも頭にはカー
ラー(笑)。そんな姿でも気品があるところは、さすが世界的大女優です。
そんなドヌーヴ演じるヒロイン、スザンヌは、まさに良妻賢母を画に描いたよ
うな女性。尊大な夫を巧くやり過ごし、浮気も見て見ぬふり、影では自分も
ちゃっかり何人もの男性と関係を持つ。そんな彼女と対照的なのが、娘の
ジョエル(ジュディット・ゴドレーシュ)。
同性ゆえか、娘は母に厳しい。母を全面的に肯定する息子、ローラン(ジ
ェレミー・レニエ)とは逆に、スザンヌを「飾り壺」だと言い放ち、「ママのように
はなりたくない」とまで言い切るジョエル。出張続きで不在がちな夫に不満を
抱きつつ、夫に執着するジョエルはまだまだ青い。夫の前では貞淑に振る
舞い、元彼と夜遊びするスザンヌのほうが、何と人生を謳歌していることか!
夫の秘書であり、愛人であるナデージュ(カリン・ヴィアール)までも受容し、
ビジネスの片腕として信頼するスザンヌに、ナデーシュの生き方も変わって
行きます。

女の幸せって何だろう? 一人の男性に愛されること? たくさんの男と寝
ること? 子どもや孫に囲まれる老後? いやいや、真の幸福とは、自立して
生きることだとスザンヌは教えてくれます。経済的に自立できなくても、精神
的に自立して生きること。心を柔らかく、自由に保つこと。そういう生き方を示
すことだけが、母として、女として、周りにできることなんだな、って。
( 『しあわせの雨傘』 監督・脚本:フランソワ・オゾン/
主演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー/2010・仏)
デフレなのか・・・。
久しぶりにHMVに行った。今、頭の中をflumpoolの『君に届け』が無限ループ
しているので(遅!)、CDをチェックしに行ったのだ。
行ってビックリ。CDの、なんと安いこと。。 『ソーシャル・ネットワーク』のサン
トラが¥1,000、『バーレスク』でも¥1,500ですよ。そしてマイケル・ジャクソン
の『スリラー』も¥1,000・・・。即買いしましたとも。。
そしてDVDも安い! 一番ビックリしたのは『(500)日のサマー』が3枚¥3,000
で売られていたこと(一枚なら¥1,500)。 安! この映画昨年の今頃公開され
てたのに~。。一年でこの価格か~。。あり得へん。。。
ずっと欲しかったシドニー・ルメットの『ウィズ』も購入。こちらは¥1,050。
でも、これくらいが適正価格なのかな。。それともやっぱりデフレ?
( と言うか断捨離宣言はどーなったんだ? 自分?? )
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でも、これくらいが適正価格なのかな。。それともやっぱりデフレ?
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10 THINGS I LOVE ABOUT YOU

・THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS
・THE DARK KNIGHT
・I'M NOT THERE
・CANDY
・THE BROTHERS GRIMM
・LORDS OF DOGTOWN
・CASANOVA
・A KNIGHT'S TALE
・THE PATRIOT
・BROKEBACK MOUNTAIN
2011-01-23 :
BROKEBACK MOUNTAIN :
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孤高の天才~『ソーシャル・ネットワーク』

THE SOCIAL NETWORK
2003年、ハーバード大学。天才ハッカー、マーク・ザッカーバーグ(ジェシ
ー・アイゼンバーグ)は、親友エドゥアルド(アンドリュー・ガーフィールド)と共
に学内限定のソーシャル・ネットワークサイトを立ち上げる。
世界最大のSNS、「フェイスブック」誕生にまつわる物語。事実を基に、どこ
ろか、現在進行形の「リビング・レジェンド」が主人公なのだから、アメリカとい
う国の懐の深さに改めて驚かされる。非凡過ぎる頭脳ゆえ人間関係に問題を
抱え、自らの才覚で友だち=人脈作りのサイトを立ち上げるも、たった一つの
友情さえ手放さざるを得なかった天才の悲劇。5億人が参加するサイトを開発
し、26歳にして「世界で一番若いビリオネア」と讃えられながら、その空虚な内
面を埋める術を知らない若者の、「頭が良過ぎるが故の孤独」が描かれる。
この映画、随分前から物凄く期待して待っていた。ロジャー・エバート、ピー
ター・トラヴァースら、アメリカ映画評論界の重鎮がこぞって大絶賛、あのタラ
ンティーノでさえ『トイスト3』に次いで2010年ベスト作の2位に挙げている。
興行的にも大ヒットして、ゴールデングローブの作品賞も受賞、当然の如く賞
レースのフロントランナーでもある。超地味な主人公ジェシー・アイゼンバーグ
の周りを固めるのは、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレ
イクという旬な面子。そして監督はご存知デヴィッド・フィンチャー。そう、これは
良くも悪くもフィンチャーの映画だなぁ、というのが観終わっての率直な感想。
完璧と言っても過言でない、傑作だとは思うのだけれど。

冒頭、恋人エリカ(ルーニー・マーラ)を混乱させる、マークのマシンガントーク
からして圧巻。頭が良過ぎて「ちょっと変人」なマークの人物造形が素晴らしい。
対人関係に問題を抱える彼は、ネットの世界で心情を吐露し、自らの「理想の社
会」を築こうとコードを打ち込み続ける。痛々しいけれど、これは最も現代的な自
己表現の方法なのかもしれない。
ある意味世間知らずなマークは、口八丁手八丁、派手で人を引き付ける魅力
に溢れたナップスター創業者、ショーン・パーカー(ジャスティン・ティンバーレイ
ク)に一瞬にして取り込まれてしまう。自分たちの知らない世界がそこにある。西
海岸、シルコンバレー、パーティ&ドラッグ。フェイスブックのデジタル世界が拡
大するに連れ、マークとエドゥアルドの距離も徐々に開いてゆく。
現在進行形の神話を、脚本のアーロン・ソーキンはマークが抱えた二つの訴訟
を通して、当事者それぞれが過去を回想する、という形で捌いてみせた。ハーバ
ードという学歴社会の頂点にも存在する階級や、我々が依存するネット社会を生
みだした「創造主」たちの人間的な苦悩も、余すところなく描きながら。

フィンチャーの映画は映像の質感が独特で、深みと落ち着きを感じる。彼の映画
は「長い」という認識があったが、本作は120分という王道の尺。音楽にしろ編集
にしろ、文句のつけようがない完璧な仕上がりであるがゆえか、彼の作品からは
エモーショナルな情感の高まりを感じることがあまりない( 『ファイト・クラブ』 は
例外。あれは最高!)。マークが見続ける、醒めない夢。それはどこまでも空虚な
手触り。そして彼は何処へも行けない。
( 『ソーシャル・ネットワーク』 監督:デヴィッド・フィンチャー/
主演:ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド/2010・USA)
テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画
私だけの神様~『アンダスタンド・メイビー』


茨城の中学三年生、藤枝黒江は、写真家・浦賀仁からファンレターの返事をも
らって有頂天になる。同じ頃、東京から酒井彌生という名の転校生がやってきた・・・。
島本理生の新作書き下ろし小説。傷ついた自覚もないままに、傷を抱えて生き
る少女が過去と向き合い、新しい未来へと旅立つまでを描く。出だしこそ豊島ミホ
の『リテイク・シックスティーン』のような学園青春ドラマの趣で、これは安心して
読み進められるかと思いきや・・・。
第一章の半ばから、いきなりのダークな展開。崩壊した家庭、幼児性虐待、集
団暴行、自殺未遂と、これでもか!と主人公を突き堕とす、トラウマ必至の島本
節全開。あまりに悲惨な展開に、上巻の途中でリタイアしかかったほど。
黒江に、言いたいことはたくさんある。そんなに簡単に、男の子(男の人)につ
いて行ったらダメでしょう。自分が辛いからって、身近にいる大切な人を思いや
れなくてどうするの? でも・・・。
自分だって十代の頃は、思いやりもやさしさも、何にもわかっていなかった。
恋したときに誰もが出逢うという「自分だけの神様」を、私も探し求めていたっ
け。。
黒江にとっての「神様」が誰だったのか、そしてその神様は如何にして神と成
り得たのか。正直、長編小説としては完璧でもなく、穴が無いわけでも全くない。
前作『あられもない祈り』に心底ガッカリさせられたファンとしては、まだまだこ
んなもんじゃないでしょう、という気持ち。しかし最後の最後に、主人公を一人で
旅立たせてくれた作者に、浮上しようという揺るぎない意志を感じた。
明るい方へ。
( 『アンダスタンド・メイビー』 島本理生・著/2010・中央公論新社)
暴走無人列車~『アンストッパブル』

UNSTOPPABLE
ペンシルバニア州の操車場で、危険な化学物質を搭載した無人貨車が暴走
を始めた。ベテラン機関士のフランク(デンゼル・ワシントン)と新米車掌のウィ
ル(クリス・パイン)は、自らの手で貨車を止めようとするのだが・・・。
リドリー・スコット&ラッセル・クロウ「夫妻」ほどではないけれど、トニー・スコ
ット&デンゼル・ワシントンも「名コンビ」。前作『サブウェイ123 激突』に続き、
列車がもう一つの主役であるパニック・アクション。リメイクだった前作と違い、
こちらは実話を基に作られたらしい。評判通りの「アンストッパブル」な面白さ!
列車ってやっぱり、画になります。

兄リドリーの陰で過小評価されてる感のあるトニー・スコットですが、手堅い
映画職人であるのは間違いないと思います。何と言っても、『トップ・ガン』じゃ
なくて『トゥルー・ロマンス』ですよ! 私の映画史に、トニー・スコットの名を
強烈に刻み込んだ、バイオレンス・ラブの傑作。あれはタランティーノの脚本
がいいんじゃない、とおっしゃる方、全くその通りですが映画はやはり、監督
のモノですから。。クリスチャン・スレーター&パトリシア・アークエット、若く
てギンギンにキレてて。最高でした。 「何てロマンティックなの!!」
とにかく、観てない方は今すぐ観て下さい、今すぐ!!

話は戻って。。劇中、フランクは「何故会社のためにそこまで?」と問われ、
「会社のためじゃない、住民のためだ」と答えます。確かに、それは真実では
あるけれども、彼の本音は「自分のため」なのではないでしょうか。28年間、
一機関士として身を粉にし、一筋に働いてきた。それなのに、たった一枚の紙
切れで解雇されてしまう「歯車」でしかない自分。歯車にだって、プライドも、
意地もある。片や、どうしても妻子の元に帰らなければならない理由があるウ
ィル。二人の「ワケあり」男が、自らの誇りを賭けて、文字通り身体を張って守
ったもの。結末は想定内でも、やっぱり胸が熱くなるのでした。
( 『アンストッパブル』 監督・製作:トニー・スコット/2010・USA/
主演:デンゼル・ワシントン、クリス・パイン、ロザリオ・ドーソン)
果てない憧憬~『恋の風景』

戀之風景
FLOATING LANDSCAPE
香港から中国・青島へやって来たマン(カリーナ・ラム)は、街で出逢った郵便
配達員シャオリエ(リウ・イエ)と一緒に、画家だった亡き恋人サム(イーキン・チ
ェン)が描き遺した画の風景を探し始める。
喪われた恋の記憶の中で生きる一人の女性が、亡き恋人の故郷で新しい恋
と出逢い、再生してゆく物語。やっと観ることができた。郵便配達のやさしいお
兄さん、シャオリエ=リウ・イエに激萌え。マンの悲しみも、サムの痛みも眼中
になく、ただひたすらにリウ・イエを見つめ続けた。心やさしき田舎の朴訥な純
情青年を演じさせたら、彼の右に出る者はいないでしょう。真夜中の自転車散
歩のシーン、最高でした。

この作品を観て、やっとわかった。私はリウ・イエが好きなんじゃなくて(いや
確かに大好きだが)、私は彼に「なりたい」のだと。彼の表情--有無を言わせ
ぬ、真っ直ぐに相手を絡め取るような切なくも艶めかしい漆黒の瞳--あんな
表情で、誰かを、ただ恋する誰かを見つめてみたいと。こんなにも果てしない
憧憬を誰かに抱いたのは、生まれて初めてかもしれない。
だから、リウ・イエが悪役(『天堂口』しかり、『保持通話』しかり)だったり、嫌
な奴(『茉莉花開』)だったり、ひたすら可哀想な役(『紫胡蝶』)だったりする作
品は好きじゃない。彼は、彼にはいつだって、控えめで押しに弱くて、とことん
イタイケでいて欲しい。『お針子』で演じたマーのように、たった一つの恋を何
十年も温め続ける、ある意味「鈍臭い」ひとでいて欲しいのだ。32歳、今や一
児の父となった彼には、欲深く詮無い要求だと、わかってはいるけれど。。

マンが青島で身を寄せる、サムの親戚の女性トンを、黒木瞳似のスー・ジン
が演じている。この作品、プロデューサーは關錦鵬スタンリー・クワン、プロダ
クション・デザインに張叙平ウィリアム・チャンの名前も。『藍宇』と結構、キャス
ト・スタッフが被っているのも新鮮な驚きだった。
( 『恋の風景』 監督・共同脚本:キャロル・ライ/2003・香港、日本、中、仏/
主演:林嘉欣カリーナ・ラム、劉リウ・イエ、鄭伊健イーキン・チェン)
ショーガール!~『バーレスク』

BURLESQUE
アイオワの田舎娘アリ(クリスティーナ・アギレラ)は、ショウビズの世界を夢
見てLAの街にやってくる。彼女が魅せられたのは、伝説の歌姫テス(シェール)
が経営するクラブ「バーレスク」だった。
クリスティーナ・アギレラが映画初主演、あの
したミュージカル・ドラマ。なんだかブロガーさんの評価がやたらと高いので観
てみました。観終わって私の頭に浮かんだのは。。
「この映画、マイケルに、マイケル・ジャクソンに見せてあげたかったな」
ラストシーンのステージのセットが、『THIS IS IT』を彷彿させたからかも
しれない。マイケルはきっと、静かに拍手しながら「Beautiful!」って言った
んじゃないかな(涙)。

クリスティーナ・アギレラは、撮影当時もう20代後半だっただろうに、まだ
何ものでもない、まっしぐらに夢への階段を上ろうとする若い娘を熱演。しか
もその姿に、全く違和感がなかった。お見事。彼女って身長が156cmしかな
いんですね。。しゃべり方はやや甘ったるいのに、あの重低音が響くような
歌声はナニ? すっかり魅了されてしまった。
そして、シェールの実年齢を知って更にビックリ。。顔に、顔に皺がない!
一本もない! 彼女は不老不死、ポーの一族なんじゃないだろうか?(冗談
です) そしてこちらも、年齢を全く感じさせない深みある歌声を聴かせてく
れた。まだまだ若いコムスメには負けないわよ、ってか? この間TVで郷
ひろみ(55歳)が「年相応なんてない。あるのは自分らしさだけ」という(彼
にしか言えない)名言を吐いていたが、シェールにもそれは当てはまりそう。

今や脇役界の重鎮、スタンリー・トゥッチや、イーサン・ホーク
い顔
唄い踊るショーガールたちを観て、私はこうも思ったのだった、、
「痩せたい、、痩せなければ!」 反省&決意。
( 『バーレスク』 監督・脚本:スティーヴン・アンティン/
主演:クリスティーナ・アギレラ、シェール/2010・USA)
ワーキング・クラス・ヒーロー~『エリックを探して』

LOOKING FOR ERIC
英国、マンチェスター。二度の離婚を経験し、すっかりしょぼくれた中年男
エリック(スティーヴ・エヴェッツ)。最初の妻リリー(ステファニー・ビショップ)
への想いを残し、多感な十代の連れ子二人の扱いに悩む彼の元に、マンチェ
スター・ユナイテッドの「キング」、エリック・カントナが現れる。
「すべては美しいパスから始まる」
ご存知英国の厳父、私が尊敬する名匠ケン・ローチの最新作。移民や労働
者階級の人々の厳しい現実を描く社会派の監督が、ファンタジーを撮った!
しかも作品に必ずサッカーのシーンを入れることで知られている監督が、エリ
ック・カントナを迎えて・・・。これは絶対にスルーするわけにはいきません。初
日に鑑賞。厳しい現実に直面する市井の人々へのやさしいまなざしはそのま
まに、監督が自身のサッカー愛を炸裂させた、男の友情物語。本年最初の劇
場鑑賞作は、いい映画を観たという満足感でいっぱいにしてくれた。

二人の連れ子の世話を焼き、彼らのために身を粉にするエリックは、本当は
生真面目でやさしい人。なのにプレッシャーに押し潰され、時にパニックを起こ
してしまう自分を「ダメ人間」と貶めている。そんな彼の元に現れたのはエリック
・カントナ。マンUの救世主であり、引退後も愛され続ける「キング」が語る含蓄
ある言葉の数々。彼のゴールの記憶を辿りながら、少しづつ再生してゆくエリッ
ク。
「人間じゃない。俺はカントナだ」
マンUの背番号7といえば、私的にはベッカム、なのだが、カントナも付けて
いたのだな。多くのスーパーゴールを生み出した彼は、自らのゴールではな
く、パスを出した選手が決めた瞬間が最高だと言う。仲間を信じること、ギフト
(パス)を贈ること。それこそが、人生で一番大切なことだと。
原題は「LOOKING FOR ERIC」。このエリックはカントナでなく、主人公の
エリックが「見失った自分」を探す物語なのだと思う。二十歳の頃、青いス
ウェード・シューズを履いて、輝いていたかつての自分を。

仲間を総動員しての「カントナ作戦」は少々、出来過ぎのような気もしないで
もないけれど、ファンタジーだと割り切ってしまおう。しかし、男たちの感動的
なまでのサッカー熱、贔屓チームへ捧げる愛はどうだろう。「政治や妻や仕事
は変えられる、好きなチームだけは変えられない」 同じようなセリフが、『瞳
の奥の秘密』でも使われていた。そしてこの映画で一番感動し、心震える場面
は、エリック・カントナの名ゴールシーンの数々だったりするのだ。
( 『エリックを探して』 監督:ケン・ローチ/主演:スティーヴ・エヴェッツ/
製作総指揮・主演:エリック・カントナ/2009・英、仏、伊、西、ベルギー)
究極の恐怖~『ねむり』

「眠れなくなって17日めになる。不眠症の話をしているわけではない。」
1989年に書かれた村上春樹の短編小説『眠り』が、イラストレーション付
きでドイツで出版された。その出来映えを気に入った著者が日本でも出版し
たいと希望し、いくらか手を入れて「バージョンアップ」、全面的に改稿した
のちにタイトルを平仮名に変え、アートブックとなって出版されたのが本書
である。
眠れないという本質的な恐怖。それは即ち「不死」への恐怖である。覚醒と
睡眠は、元来人間活動において一つのセット(対)であるべきもの。「生」と「死」、
と同じように。死があるからこそ生がある。睡眠がなければ、覚醒もない。死な
ない人間がいないように、眠らない人間もいない。
本書の主人公は全く眠れなくなっても日常生活に支障を来すことはなく、頭
も身体も冴え渡っている。しかしそれが逆に、主人公に何とも言いようのない
不安を抱かせる。眠れなくなって見えてきた、自身の人生への不満。無意識
に抑え込んでいた本音が、癌細胞のように彼女を蝕んでゆく。
そして彼女は危険を侵す。
叫び出したいような恐怖を感じる小説だった。ひたひたと。リアルに。そして
その恐怖が、今、私のすぐ隣にあるかのように。
( 『ねむり』 村上春樹・著/イラストレーション:カット・メンシック/2010・新潮社)
さよならさよなら3D?~『トロン:レガシー』 【3D・字幕版】

TRON: LEGACY
映画を観終わって・・・。
息子 「ねえ、「衝撃の3D映像」って、今までの3Dと何か変わったとこあった?
同じやんな」
私 「ほんまやな~。ストーリーはどうだった? 父と子の物語やったね、感動
した?」
息子 「感動はしてないけど、、面白かった」
私 「そう? よかったね(実は私は途中、ほとんど寝てた、、というのは黙っと
こう)。お母さん、もうこれから3D映画は観ないからね」
息子 「え~、なんで?」
私 「だって画面暗いし、字幕ブレてるし、3Dメガネ重いし! 鼻が痛いわ(そ
れに料金プラス400円って高い)」
息子 「うん、、それはそうやけど。。でもパイレーツどうすんの? 『生命の泉』。
カーズも! 日本が舞台やって」
私 「う~ん、2D上映があったら絶対そっちを観る。3Dしかなかったら、、その
時考えるわ」
息子 「あと、冬休み中に『イナズマイレブン(3D)』も観たいねんけど」
私 「・・・それは勘弁して!」
もう、ホントに3D映画からはサヨナラしたい私なのでした。まじで。
でも、今年もいくつかは観るんだろうなぁ。。

( 『トロン:レガシー』 監督:ジョセフ・コシンスキー/2010・USA/
主演:ギャレット・ヘドランド、ジェフ・ブリッジス、オリヴィア・ワイルド)
発表! 2010 真紅デミー賞 & 「喧嘩上等!」 宣言

作品賞: 『藍宇』 (これしかない、これしかないでしょう・・・)
主演男優賞: ジョセフ・ゴードン=レヴィット 『(500)日のサマー』
主演女優賞: キム・セロン 『冬の小鳥』
助演男優賞: 岡田将生 『告白』 『悪人』
助演女優賞: エマ・ワトソン 『ハリー・ポッターと死の秘宝 PARTⅠ』
新人賞: ヤン・イクチュン 『息もできない』
ワースト作品: 『マイケル・ジャクソン キング・オブ・ポップの素顔』
て言うかこれ映画になってないし・・・。
JGLは今年最も注目された俳優さんでは? 『インセプション』もよかった。
キム・セロンちゃんはウォンビンと共演の『アジョシ』への期待も込めて。
助演の男女は若手最有望株のお二人♪ 美しさも際立っていました。
ヤン・イクチュンは、処女監督作にしてあの演技、あの演出、あの完成度!
魂のこもった映画でした。
2011年、たくさんの素敵な映画との出逢いがありますように♪
そして今年は読書INDEXの整理をしなければ、、と考えております。作者別
にしないとちょっと不便だな、と思いまして。記事もかなり増えたことだし。。ムフフ
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さて。。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ワタクシ新年早々、かなり
ムカついておりました。性格的には「瞬間湯沸かし器」などと言われることもあ
るのですが、沸点の低さに反して、その怒りの対処に関してはかなり我慢強い
とも言われます。しかし、今回ばかりは耐え難い。昨年来の度重なる嫌がらせ
には、堪忍袋の緒が切れました。ぶち
喧嘩上等! 嫌がらせに凹んで「ブログ止めようかな」なんて弱音は
もう吐きませんから。私は書くことは止めません。そして心あるブロガーの皆
さん、コメントを下さる皆さん、今後ともどうぞお付き合いのほど、よろしくお願
いいたします。
真紅拝
テーマ : 2010年ベストテン
ジャンル : 映画
2010 thinkingdays 映画ベスト10+α

2010年、劇場鑑賞した映画は85本。うち邦画は23本。劇場鑑賞は減りました
が自宅でのDVD鑑賞は39本でした。タイトルクリックで感想記事に飛びます。
1.トイ・ストーリー3 (タランティーノと一緒だ♪ ほぼ完璧、素晴らしい映画)
2.(500)日のサマー (草食系男子の悶々500デイズ。JGL最高!)
3.スプリング・フィーバー (大阪上映中止騒動も含めて、印象的だった1本)


4.瞳の奥の秘密 (情熱だけは変えられない、簡単じゃないけれど)
5.モンガに散る (台湾ニューウェイヴの進化形。慟哭の青春群像劇)
6.マイレージ・マイライフ (ジョージ・クルーニーが「本人」、邦題も最高!)



7.リトル・ランボーズ (英国産少年映画に外れなし!)
8.息もできない (ソウルの狂犬、ヤン・イクチュンによる魂の彷徨)
9.冬の小鳥 (我を忘れるほど泣いてしまった映画)



10.プレシャス (教育の尊さ。私も書くことは決して止めません)
次点: フローズン・リバー、シングルマン



アジア映画を4本も入れてしまいました。続いて邦画ベスト5+αを。
1.パーマネント野ばら (サイバラ原作モノ、強し!)
2.スープ・オペラ (私の人生を少しだけ変えてくれた映画)
3.孤高のメス (堤さん、余さん、夏川さんの好演♪)
4.カラフル ( 「平凡過ぎるくらいだよ」 そう、カラフルでいいんです!)
5.悪人 (大切な人はおるね?)
次点: 借りぐらしのアリエッティ
やはり、年間100本は劇場鑑賞したいですね。そして今年はなんとか、「午前
十時の映画祭」に行きたいです。
そして次回は、、栄えある(?)真紅デミー賞の発表ですよん♪
テーマ : 2010年ベストテン
ジャンル : 映画
2010 thinkingdays 本のベスト5+α

2010年に読んだ本は73冊。昨年より4冊アップの微増でした。昨年は感想も頑
張って書いたので、読書カテゴリの記事も200記事を超えることができました。わーい
今年も、なるべく読んだ本の感想は書くようにしたいです。備忘を兼ねて。
さて。2010年ベスト作は、、、。タイトルクリックで感想記事に飛びます。
1.小さいおうち 【中島京子】 (直木賞受賞作。読後暫く、作品世界から抜け出せず)
2.私という運命について 【白石一文】 (2010年は白石作品に出逢った年でした)
3.おれのおばさん 【佐川光晴】 (私も全力で生きたい。がんばれ、自分!)


4.いまも、君を想う 【川本三郎】 (『マイ・バック・ページ』も復刊、映画も楽しみ!)
5.悪人 【吉田修一】 (映画を観て、まだ未読の方は是非!)
次点:悪童日記 【アゴタ・クリストフ】 (茫然自失。『第三の嘘』の感想は書けずじまい・・)



今年も充実した読書生活が送れますように。
そして最後に、2010年に亡くなられた佐野洋子さん。『シズコさん』は時代を越え
て読み継がれる名著だと思います。ご冥福をお祈りします。

謹賀新年 ~ 2011 ~
2011-01-01 :
徒然 :