~ R.I.P. Park Yong Ha ~
夢をあきらめなかった子どもたち ~ FIFA World Cup 2010 ~

ニッポン、遂にやりました、決勝T進出!!
本田圭佑よ、有言実行する君は本当にカッコいい。スター誕生☆
しかし・・・。朝4時に起きたら既に2点(!)入っていて驚きました。今日は朝イチ
から隣県に行く用事があり、マイケルの映画も見に行かなくちゃだし(ポスター頂
きましたがこれが最低最悪でした、感想は後日)、夜はポルトガルの早送りの人
を観なくちゃだし、五十日で車は混んでるし、ホント盛りだくさん過ぎる一日です。。
でも、ま、いっか。4年に一回だもんね。

テーマ : こんな事がありました!
ジャンル : ブログ
14歳の地図~『リリィ・シュシュのすべて』

中学に入学した蓮見雄一(市原隼人)は、同じ剣道部に入部した優等生・星野修介
(忍成修吾)と出会い、「リリィ・シュシュ」の音楽を知る。
今をときめく「イッチー」こと市原隼人のデビュー作にして、岩井俊二監督の代表作。
タイトルこそ知ってはいても観る機会がないまま、公開から10年近くが経った今、ほ
とんど予備知識もなく初めての鑑賞。
思春期特有の無邪気な残酷さに満ちた物語に戦慄しながらも、音楽と映像の美し
いコラボレーションに抗えない。そんな、罪作りな傑作。繰り返して二度、観てしまっ
た。もしこの映画を先に観ていたら、川上未映子の『ヘヴン』を読んで、あんなにも
衝撃と感銘を受けることはなかったかもしれない。
「雄一くんって、白くてちっちゃくてかわいいわね」。修介の母(稲森いずみ)の
言葉を借りるまでもなく、今は明るくやんちゃなイメージの市原隼人が、こんな
にも繊細で弱々しい少年を演じていたなんて・・・。彼のほかにも、勝地涼や蒼井
優らの、幼いエネルギーに満ちた姿を観ることができる。
悪魔よりも残酷な神に支配された、世紀末の教室。そこで俯き、沈黙する雄一。
学校にも家庭にも居場所をなくした彼は、ネットの世界で「フィリア」として生き、
「エーテルの歌姫」リリィ・シュシュについて語り合う掲示板の主となる。そこで
彼が出会ったのが「青猫」だった。雄一は「青猫」に、自分と似た匂いを感じ取る。
星野に嵌められ、自由を奪われた津田詩織(蒼井優)は空に憧れ、折れた翼と
知りながらも墜ちてゆく。「あんたがあたしを守ってよ」 秘かに想いを寄せる久野
(伊藤歩)さえも星野に差し出し、何も守れなかった雄一。泣いても、泣いても、、
無力な自分。どうしようもない現実。逃げ込むように、彼はネットで心情を吐露す
る。
CDプレイヤーがipodに取って代わり、ケータイメールが飛び交う10年後の
今でも、この映画の中で描かれた思春期は「リアル」なんだろうか。いじめる側と
いじめられる側が、あっけないほど簡単に反転する世界。何もわかっていない、
わかろうとしていない大人たち。子どもたち以上に幼い教師、何も見えていない
親、金で中学生を買うリーマンオヤジ。心の聖域を奪われた雄一は、「青林檎」
にナイフを突き立て、世界をリセットする。しかしその新世界の輪郭も、それまで
とさほど代わり映えしない、ぼんやりとした光に縁取られているのだった。
北関東の田舎の風景、夕暮れ時の「マジック・アワー」を映し取った映像が、唯
一無二の美しさ。撮影監督が誰なのか、思わず調べてしまったほど。世界はこん
なにも美しい、しかしその「セカイ」の渦中にいる者たちにとって、そこでの日常は
悪夢でしかない。行き場のない絶望の中で、音楽だけが彼らを生かす。リリィ・シ
ュシュの音楽だけが「エーテル」なのだ。光が落ち、時が流れても、音楽は鳴り続
ける。

( 『リリィ・シュシュのすべて』 監督・原作・脚本:岩井俊二/
主演:市原隼人、忍成修吾、蒼井優、伊藤歩/2001・日本)
優しい先生~『神様のカルテ』

信州の総合病院で内科医として勤務する栗原一止は、深夜の救急外来で
奮闘していた。写真家の妻・榛名との初めての結婚記念日も失念してしまう
ほどの激務に疲労困憊する彼に、大学病院への復帰が打診される。
自らも医師である、夏川草介氏のデビュー作。小学館文庫小説賞受賞作。
本屋大賞にもノミネートされ、堂々の2位だった作品。櫻井翔くん、宮崎あお
いちゃん主演で映画化されるそうで、もうすぐ続編も出版されるらしい。う~ん、
これはなかなかピッタリなキャスティングではないでしょうか。
お医者さんで、かつ文章も書かれる方、多いですね。渡辺淳一さんとか、向
井万起男さんとか。やはり、それだけ頭が良くて、才能豊かであるということな
のでしょう。
『孤高のメス』でも描かれていましたが、地域医療に従事するお医者様には、
本当に頭が下がります・・・。大学病院で、専門的な高度医療を研究することも、
必要だということは勿論わかっています。しかし、救急外来を365日、24時間
開放している病院に勤務するということが、どれほど過酷なことであるか。。
そこには、報酬や労働時間では計れない「重み」が存在すると思うのです。
本庄病院での日常を縦糸に、一止が暮らす「御嶽荘」での人間模様を横糸に、
物語はバランスよく展開します。一止は文語調でしゃべり、夏目漱石の『草枕』
を全文暗誦する「変わり者」ですが、このキャラは作者自身を投影したものなの
でしょうか? ペンネームに表れていますね。作者が一止のようなやさしい好人
物であるか否かは別として、作者自身の経験が存分に物語に取り入れられてい
るのは間違いないでしょう。
ちなみに、装画はカスヤナガトさん。中村佑介さんではないです、念の為(笑)。
( 『神様のカルテ』 夏川草介・著/2009・小学館)
静かなる反戦映画~『マイ・ブラザー』

BROTHERS
米軍大尉のサム(トビー・マグワイア)は退役軍人の父(サム・シェパード)を
持ち、妻グレース(ナタリー・ポートマン)の良き夫であり、二人の幼い娘の良き
父であり、仮釈放中の身である弟トミー(ジェイク・ジレンホール)の良き兄であ
った。アフガニスタンに赴任したサムは捕虜となり、ゲレースにはサムの訃報
がもたらされる。
スサンネ・ビア監督によるデンマーク映画『ある愛の風景』のハリウッドリメイ
ク。豪華キャスト、名手デヴィッド・ベニオフ&ジム・シェリダンならば、絶対に
改悪はされないだろうと期待して、公開をずっと待っていた本作。しかし、2年
前に観たオリジナルの衝撃度は大きく、それを超えることはなかった。リメイ
クだと意識せずに観られたらよかったのかもしれないけれど・・・。

ストーリーは、オリジナルをほぼ忠実になぞっている。別人のようになって帰
還したサムを、戸惑いながらも受け入れようとする家族。しかし結局、サムの
神経は限界を超える。夫婦は、家族は、そしてサム自身は再生できるのか?
という重い問いを投げかけたまま、物語は幕を閉じる。
オリジナルを観た後は「夫婦愛についての物語」という印象が強かったけれど、
リメイクである本作は「反戦映画」の色合いが濃い。サムとトミーの父を退役軍
人とし、世代をまたぐ「兵士のPTSD」が描かれていたこと、ラストにサムのモノ
ローグが挿入されることで、今も戦時下にあるアメリカの、普通の家庭が直面
する問題が浮かび上がる。しかし、声高に反戦を叫ぶのではなく、あくまでも
「静かなる反戦映画」という印象だけれども。
しかし、サムが捕虜仲間だったジョー・ウィリスの妻、キャシー(キャリー・マ
リガン)とその幼い息子と面会するシーンで、グレースが同席していたのには
ガッカリした。オリジナルの最後の重い、重いセリフ「子どもがいたんだ」。これ
が替えられているんだと、この時点でわかってしまったから。サムのラストの
セリフは、もっともっと直截なものに変わっていた。そこがアメリカ映画らしくな
ったと、言えなくもないけれども・・・。

若過ぎるのでは? と少々、不安もあったキャストは皆好演していたと思う。
特にトビー・マグワイアは迫真の演技で、何キロ減量したんだろう? と心配
になるほど。しかしナタリーが二児の母、というのはややミスマッチ。そしてそ
れ以上に、お坊ちゃんキャラのジェイクはどうしても、銀行強盗しそうな「愚弟」
には見えないのだった。イジーの哀しみを理解し、寄り添うトミーの心根のや
さしさが胸に沁みる。
しかし、この邦題は何とかならなかったのか? ウォンビン、シン・ハギュン
が兄弟を演じた韓国映画と同じでは、紛らわしいですよ。
( 『マイ・ブラザー』 監督:ジム・シェリダン/2009・USA/
主演:トビー・マグワイア、ジェイク・ジレンホール、ナタリー・ポートマン)
お茶目なヒーロー~『アイアンマン2』

IRON MAN 2
自らがアイアンマンであるとカミングアウトした、軍事企業スターク・インダ
ストリーズ社CEO、トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)。アイアンマン
を戦略兵器だと見なす政府の公聴会に呼ばれた彼は、ライバル社のハマー
(サム・ロックウェル)をやりこめるのだが・・・。
大人なアメコミヒーロー、アイアンマンシリーズ第二弾。これは文句なしに
面白いですね。「アメリカンな映画だなぁ」というのが観終わっての率直な感想。
生命の危機にさらされていようが余裕しゃくしゃく、能天気なトニーの、天性の
明るさは微笑ましくなるほど。ロバダウ最高! 大好きです。同じく巨大企業の
オーナーで、どんなに美女をはべらせても、どこか悲壮感漂うブルース・ウェイ
ン@バットマン、若さゆえか、自身の存在意義について悩んだりする青臭いピー
ター・パーカー@スパイダーマンと比べても、そのお気楽さは際立っている気が
する。「ペッパー(グウィネス・パルトロー)とのこともちゃんとする」なんて、優柔
不断なところもいかにもお坊っちゃんだな~、って。

セレブなモナコでの休暇で、事件は起こる。トニーとその父に恨みを持つ謎の
ロシア人(ミッキー・ローク)が現れたのだった。全身タトゥーながら天才的な頭脳
を持つ彼は、最高の悪役キャラ。ミッキー・ロークの大復活は本当にうれしいけれ
ど、本作で彼よりも際立っていたのがサム・ロックウェル! トム・クルーズと見ま
がうほどの上昇志向バリバリ、器の小さい冷血男を熱演。いや絶対、トムクル的
演技を意識していたと思うなぁ。全然徳永英明に見えなかったもん(笑)。そして
その役作りが大当たり! お見事でした。
でもこの感想、絶対に女子目線ですね。男性ならたいがい「スカーレット・ヨハ
ンソン最高!」って思うでしょう。私的には、スカちゃんは肉感的過ぎてNG。身長
のわりにボリュームのありすぎるスタイルは、ちょっとアンバランスで好みでは
ないかな。。

唯一残念だったのは、前作でトニーの親友の軍人、ローディを演じたキュート
なテレンス・ハワードが降板していること。テレンスったらあんなにアイアンマン
スーツを着たがっていたのに。。しくしく 役を引き継いだのは名優ドン・チードル
なので、安心して観ることはできましたが。。
第三作への前フリもバッチリ。舞台はニュー・メキシコなのか? トニーとペッ
パーの仲は? 新たなる敵が登場するのか、それとも・・・。楽しみに待ちたいと
思います♪
( 『アイアンマン2』 監督・製作総指揮:ジョン・ファヴロー/2010・USA/
主演:ロバート・ダウニー・Jr、グウィネス・パルトロー、ドン・チードル、
スカーレット・ヨハンソン、サム・ロックウェル、ミッキー・ローク)
案ずるより 産むが易しと 思えるか~『結婚の才能』

大傑作『結婚の条件』の小倉千加子による、「結婚を考える」シリーズ(?)第
二弾。晩婚化、少子化、婚活、格差の拡大、などなど、人生の大命題「結婚」を
巡る状況は悪化の一途を辿るばかり。この混迷の時代に、日本を代表するフェ
ミニストの論客が指し示す「結婚の才能」とは? JJ族でTSUTAYA族でもある、
つまりエンタメ・ウォッチャーである小倉先生らしい、「時代」の読み方が面白い。
ちなみに、『結婚の条件』は本当に面白い、文句なしの名著です。今は朝日文庫
で読めます。一読推奨!
しかし、この本の読者層ってどんな人たち? と読みながら考えてしまった。
(1)小倉千加子の信奉者
(2)婚活真っ最中の方々
(3)『結婚の条件』が面白かった人
私はいちおう(3)ですが、幸せな結婚生活を送っていると自覚している人は、
まず手に取らない本、かもしれないですね。。
「しても、しなくても後悔する」、それが結婚だと言われた時代もありました
(今もか?)。 社会が成熟すると、晩婚化が進行するらしい。それって、みん
なが慎重(臆病?)になっている、ってことなのかなぁ。
( 『結婚の才能』 小倉千加子・著/朝日新聞出版・2010)
これが私の復讐です~『告白』

ある中学校。終業式当日の教室で、1年B組の担任教師・森口悠子(松たか子)
が告白を始める。
「娘の愛美は事故死などではなく、このクラスの生徒に殺されたんです」
湊かなえのベストセラー小説を映画化した、R15+指定のミステリー。原作は
実はかなり前に読んでいるが、なんとも後味の悪い小説で。。感想も書きたくな
いほどだった。それが本屋大賞を受賞し、中島哲也監督によって映画化される
と言う。しかも、岡田将生くんがキャスティングされているではないか! 少年A、
B、どっちよ? と思ったら教師役ですと・・・(驚)。二十歳そこそこの岡田くんに
教師役か~。現場ではエキセントリックなことで有名な中島監督、岡田くんを
いじめたら許さん!! と心配しながら、公開を待っていました。

ストーリーの好き嫌いはともかく、映画としては非常によくできていたと思う。
色味を落とし、ブルーがかった暗い色調の寒々しい映像が、登場人物たちの
ダークな心情とうまくシンクロしている。極彩色のイメージが強い監督が、随分
冒険したのではないだろうか。お約束のミュージカルシーンはうれしかったな。
カーブミラーが「目撃者」となる設定も見事。
しかし、作品自体はやはり、好きにはなれない。第二次性徴を迎え、自己顕
示欲と妄想と嫉妬が渦巻く中学校の教室。ケータイメールやウェブが日常を
侵食し、ネットに繋がれている子どもたち。その鎖から逃れることは、精神的な
「死」を意味する。だからみんな本心を隠し、暴力と嬌声の中に自らを埋没させ
てゆく。
まだまだ学生服が似合いそうな岡田くん、熱血KY教師ウェルテルを演じるに
は荷が重いのでは、、という心配は、彼の迷いのない演技が払拭してくれた。
彼の素材の素晴らしさを、改めて感じずにはいられない。

我が子を教え子に殺されるという、想像を絶する体験によって、能面のような
復讐の鬼と化した悠子。我が子を溺愛する余りに視野狭窄となり、悲惨な末路
をたどる少年Bの母(木村佳乃)。救いようがない憎悪のスパイラルの中で、ラ
ストの悠子の声だけは潤んでいた。それが、監督の善性を表していたような気
がするのは、私だけだろうか。
( 『告白』 監督・脚本:中島哲也/原作:湊かなえ/
主演:松たか子、岡田将生、木村佳乃/2010・日本)
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ジャンル : 映画
命をつなぐ~『孤高のメス』

急死した看護師の母の葬儀のため、新米医師の弘平(成宮寛貴)は寂れた漁
師町に帰って来る。母の遺品を整理するうち、彼は「1989」と書かれた古い日記
帳を見つける。そこには、離婚して弘平を引き取り、市民病院でオペ看として働い
ていた頃の亡き母の胸の内が綴られていた・・・。
現役医師によるベストセラー小説の映画化。地域医療に人生を捧げ、タブーに
触れてまでも「命」を救うために奮闘する外科医の姿を、彼を一番近くで見つめて
いた看護師の視点で描く。主演は堤真一。監督は『フライ、ダディ、フライ』 『クラ
イマーズ・ハイ』(脚本)でも堤さんとタッグを組んでいる成島出。地味だけれど、
こうなって欲しい、こうなるべきだという当たり前の「正義」が貫かれた、誠実で
後味のよい作品。脳死、臓器移植というデリケートな題材を扱う映画だけに、賛
否は当然あると思う。しかし個人的には、とっても、とってもよかったです。

会っていきなり「説教」するような気真面目な当麻(堤真一)に、最初は反感を憶
える浪子(夏川結衣)。しかし当麻の「手品のような」オペを目にし、浪子の心はた
ちまち高揚する。患者の命を救うこと、「全力を尽くす」ことしか頭にない、あくまで
自然体(天然キャラとも言う?)の当麻。若い医師たちも、当麻の技術と孤高な精
神性に、尊敬の念を深めてゆく。でも、何でまた都はるみなワケ? 当麻先生。
「都はるみは、日本の宝だぞ」って、美空ひばりのほうがアルファ波出そうな気が
するのだけどな。。
時代は昭和から平成へ、元号が変わった頃。脳死は人の死であるか、否かで
議論がなされ、明確な判断基準はなかった。脳死肝移植。まだまだタブーとされ
ていたその手術を、当麻は決行しようとする。
当麻を異端視し、組織から排除しようとする勢力の中心、オペが下手で、倫理観
も欠如している野元(生瀬勝久)が、あまりにも劇画チックに描かれ過ぎていたの
だけが残念。日本で一番巧い役者の一人だと思っている生瀬さんだけれど、今回
だけは勘弁、だった。しかし他のキャストは皆素晴らしかったと思う。余貴美子は
もちろん、刑事役の隆大介も、短い出演時間ながらも迫力だったし。

印象に残ったのは、「医者になることよりも、医者であり続けることのほうが何倍
も難しいんです」という当麻先生のセリフ。医者に限らず、どんな職業でも、その
職務に誠実であろうとすればするほど悩みも深いだろう。移植手術最後の縫合を
終えると、患部に手を当て、じっと眼を閉じた当麻先生に涙が溢れた。これが最後
のメスかもしれない、どうか命がつながって欲しい。。万感の思いがこもった、「手
当て」だったと思うから。
亡き母の想いを知り、当麻の元に赴任する弘平。売名や名誉欲から一番遠い
ところにいる当麻の精神が、弘平にもきっと、引き継がれてゆくのだろう。
( 『孤高のメス』 監督:成島出/原作:大鐘稔彦/2010・日本/
主演: 堤真一、夏川結衣、余貴美子、吉沢悠、成宮寛貴、柄本明)
上京、帰郷~『やさぐれるには、まだ早い!』

フリーペーパーに連載されていたエッセイをまとめた、豊島ミホの作品。初
めて読んだ『リテイク・シックスティーン』がよかったので、このエッセイ集も読
んでみた。短いセンテンスで繰り出される、自虐的とも言える面白エピソード
満載で、あっと言う間に読めてしまった。しかし、この2作品を最後に休筆して
しまうとは・・・。何とももったいない、と思う。豊島ミホはこんなにも若くて、才能
に溢れているのに。残念。
本書では、彼女が大学進学を機に上京してからの思い出と、北国の実家へ
帰郷するまでが描かれている。大学在学中の二十歳で作家デビュー、順調に
作品を世に出し、連載を抱える。傍目には順風満帆に見える彼女の作家生活
は、実は悩みだらけの日々だったらしい。不思議なほど、妙に自己評価が低い
のが気になる。詳しい事情や心情はわからないけれど、いつの日かきっと、彼
女はまた物語を紡ぎ始めるんじゃないかな。いや、書かずにはいられないだろ
う、と希望的観測。
( 『やさぐれるには、まだ早い!』 豊島ミホ・著/2009・メディアファクトリー)
テーマ : 気になる本をチェック!!
ジャンル : 本・雑誌
運命の時~『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』

PRINCE OF PERSIA: THE SANDS OF TIME
古代ペルシャの貧民街に育った少年ダスタンは、その勇敢な行動を認められ
王の養子となる。15年後、成長したダスタン(ジェイク・ジレンホール)は二人の
兄らとともに、古都アラムートに攻め入る。そこには美しい王女タミーナ(ジェマ
・アータートン)がいた。
ジェイク・ジレンホール久々の主演作は、なんとジェリー・ブラッカイマー製作
のアクション・アドベンチャー大作。時間を巻き戻すことのできる砂と短剣を巡
り、父殺しの汚名をそそぐべく闘う王子を演じる。ロン毛にマッチョ、トレーニン
グによって大改造された肉体を駆使した、新しいジェイクを堪能。普段は観な
いタイプの映画ですが、ジェイクファンの端くれとして初日に駆け付けました。
ジェイクが出ていること以外はほぼ予備知識なしで鑑賞したけれど、意外と(?)
面白かった!

平和な美しい古都に攻め入った大国ペルシャの大義名分が、「武器の製造」に
あったとは。。そしてその情報は捏造されたもので、武器などなかった、、ってこれ
は明らかにアメリカとイラク戦争。記憶に新しい『グリーン・ゾーン』ですね。
しかしこの映画、別名「目張り映画」と呼びたい。ヒロインはもちろん、ダスタン
の叔父、ニザムに扮するベン・キングズレーの目張りにビックリ! アルフレッド
・モリーナなんて、目張りが濃過ぎてエンドロールで確認するまで彼だって確信
が持てなかったくらい、別人(笑)。目張りと言えばジャック・スパロウ、こういうメ
イクってもしかして、ジェリー・ブラッカイマーの好みなんだろうか。。チガウダロ
内省的な青年を演じることが多かったジェイクが、こんなアクション大作に主
演するなんて、、大丈夫なんだろうか?! ってずっと思っていたのだけれど、
どうやら杞憂に終わったようですね。アクションは物凄くカッコよく決まっていた
し、基本、ファニーフェイスだけどところどころ「べっぴん」さんだったし。ロン毛
だって意外と似合っていたじゃない? さて、興行的にはどうでしょうか。
唯一残念なのは、ヒロインが魅力薄なこと。こういう大作映画のヒロインには、
ちょっと美しさと優雅さが足りない気がしたな。。まぁ、それは個人的な好みの
問題ですけれども。

そしてもうすぐ『マイ・ブラザー』も公開。こちらも楽しみにしていますよ♪
( 『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』 監督:マイク・ニューウェル/
主演:ジェイク・ジレンホール、ジェマ・アータートン/2010・USA)
永遠の野バラ~『パーマネント野ばら』 #2

なんだか書き足りない気がして、『パーマネント野ばら』ふたたび。
実家に出戻っているなおこを、はじめのうちは羨ましいくらいの気持ちで見つ
めていた。受け入れてくれる、帰れる実家があるなんて幸せなことよ、と。
なおこの娘のももは「お父さん」を慕っている。それでも離婚したなおこを、母
も、故郷の町の人々も、辛辣な冗談を飛ばしながらも温かく受け入れているの
だから。
亭主に浮気されたり、殴られたり、お金を入れてもらえなかったりして、辛い
思いをしている女は多いと思う。子どもを抱えて、どこにも行くところがない女
が。
映画を観終わり、帰宅してからすぐに原作を読み返した。ともちゃんの子ども
たちが映画に出てこないな、と思っていたのだけれど、私は大きな「聴き間違い」
をしていたのだ。
「あんた、息子何人?」「二人」「じゃあ二個、備えとき」。私にはこう聴こえたこの
会話、実際にはこうだ。
「あんた、水子何人?」「二人」「じゃあ二個、供えとき」。これが正解。なんともブ
ラックな、サイバラ節全開、なのだった。
江口洋介は、素敵だったよね。。ロクでもない、「残りカス」みたいな男たちの中
で、異質な雰囲気を醸し出す。あんな白衣着た理科教師がいたら、もう授業どこ
ろじゃないって(笑)。そんなカシマに「あまがみ」するなおこ。誰にも言わないでお
こう、って二人で決めても、みんな知っていたんだろうなぁ、二人の仲を。。大仏
パンチの夏木マリは、ちょっともったいない気もしたけれど。あれくらい抑えてくれ
たほうが、「見守る母」らしいのかも。
しかしこの映画の白眉はやはり、ラスト近くのあの劇的な大転換。それまでの
ストーリーが全て引っくり返るあのシーンには、やられた。菅野美穂をはじめと
する女優たちの演技、寄せては返す波、一握の砂、沈む夕陽。傑作だというつ
もりはないし、穴が無い映画だと思っているわけでもない。でも、本当に心に沁
みる、やさしくて美しい映画だったと思う。今年のマイ・ベストかも。

なぜマイケルは誤解されたか~『マイケル・ジャクソン』

『新しいマイケル・ジャクソンの教科書』の著者による、MJ本第二弾。新書であ
ることで、間口がぐっと広がったのではないでしょうか。そのものズバリ、なタイ
トルに、著者の「覚悟」や自信、矜持が伺えます。またブックデザインが非常に
カッコイイのですが、講談社現代新書って中島英樹さんが装幀されているので
すね。COOL!
著者によると、この本は「大きく誤解されている93年の「少年虐待疑惑」につい
て真正面から切り込んだ、日本で初めての本」ということらしい。しかし私は、MJ
の最後の日々を鮮明に焼き付けた映画『THIS IS IT』についての記述(第五章)
が、この本の白眉だと思う。もう、今すぐにでもあの映画が観たい! という気持
ちになります。(恐らく)日本で一番、MJを愛している西寺さんだからこその、臨
場感溢れる文章だと思う。そして欲を言えば、ジャクソン兄弟に言及する箇所を
削って、MJのキャリアのハイライトである「モータウン25周年」ライヴについて、
触れてほしかったと思う。
今月25日の命日には、『マイケル・ジャクソン キング・オブ・ポップの素顔』と
いうドキュメンタリー映画も公開されるMJ。WOWOWもMJ特集を組むようだし、
まだまだマイケル熱は収まりそうにない。

( 『マイケル・ジャクソン』 西寺郷太・著/講談社・2010)
テーマ : マイケル・ジャクソン
ジャンル : 音楽