女たちよ~『パーマネント野ばら』
パーマネント野ばら

 寂れた漁師町で唯一の美容院「パーマネント野ばら」。母が切り盛りするその
店に、幼い娘を連れて出戻ってきたなおこ(菅野美穂)は、高校教師のカシマ(江
口洋介)
と付き合っていた。

 男運の悪さを笑い飛ばしながら、強く逞しく生きる女たち。海と山に囲まれた
しい風景
とともに、彼女たちの歓びと哀しみを描き出した佳作大傑作にして怪作
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の監督、吉田大八は、デフォルメされた不幸
な女たち
を描かせたら天下一品西原理恵子叙情的な原作漫画を、劇画的に
偏ることなく、淡くきらめく光と、闇の手前の影をくっきりと、瑞々しく映像化してくれ
た。サイバラ信者である私はもちろん、原作は読んでいたけれども、、泣きました
波の音や、風の音で始まる映画って大好きなんです。

パーマネント野ばら2

 久々の主演作だという菅野美穂が、やっぱりいい。自然体に見せかけて、女の
様々な顔
をきちんと演じ分けているのがさすが。娘といるときは母の顔、幼馴染
たちといるときは少女の顔。そして、恋人といるときは、一番かわいい女の顔なの
だった。スクリーンのなおこを見つめながら、何度心の中で「かわいい・・・」とつぶ
やいただろう。どこか浮世離れしているなおこに対して、みっちゃん(小池栄子)
ともちゃん(池脇千鶴)「汚れ」っぷりは凄まじく、笑いを誘う。

 田舎町の人々が口にする、人生訓のようなセリフの数々。「男の人生は真夜中
のスナックや」
←説得力なし   「泣いたら金が逃げていくで」←その通り!
「人は二回死ぬんやて。一回目は生きるのがやまってしまう時。二回目は人に
忘れられてしまう時や」
。 なおこは、今でもカシマとの恋の中に生きている
彼女が娘の父親と離婚した経緯は何も語られない。そして影の薄い元夫は、も
はやなおこの心の中から消えている。なおこは高校時代からずっと、カシマと
二人でさやの中にいるのだ。忘れんぼのなおこ「デート中か」 「みっちゃん、
私狂ってる?」 なおこの好きにしたらええよ。。


パーマネント野ばら3

 原作で一番の強烈キャラとして描かれる、「大仏パンチ」のおばちゃんたち。
の不幸
も、自分の不運もガハハと笑い飛ばし、お下劣な毒を振り撒く彼女たちが、
なんとも活き活きと描かれていて嬉しい。いくつになっても恋バナで盛り上がり、
男に逃げられたと言っては泣きわめく。そんな彼女たちが、愛おしい。そして私も、
そんな女のひとりなのだ。

 なおこの穏やかな笑顔のクローズアップで、この騒々しくも哀切な物語は幕を
閉じる。そこそこ埋まっていたシアターには、男性客が一人もいなかった。確かに、
女だけで観たい映画、かもしれない。

( 『パーマネント野ばら』 監督:吉田大八/原作:西原理恵子
     主演:菅野美穂、小池栄子、池脇千鶴、夏木マリ、江口洋介/2010・日本)
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[2010/05/29 00:00] | 映画 | トラックバック(32) | コメント(10) |
進化しないマキメワールド~『ザ・万遊記』
ザ・万遊記

 独特のまったり世界観でベストセラーを連発する若手作家、万城目学氏の
エッセイ第二弾。この本、もう早く読みたくて読みたくて、読みかけだった新書
をほっぽり出して読みましたよ! 抱腹絶倒だったザ・万歩計に比べると、
「笑える度」はややおとなしめだけれど、それは本作執筆中、作者がアキレス
腱を完全断裂
したことと無関係ではないでしょう(いや、全く関係ないと思いま
すが、笑)。いい意味で「進化しない」マキメワールドが堪能できます。

 最近、顔出しインタビューなど、新聞等々でもお見かけすることが多くなった
万城目さん。表紙のイラストにご登場で、これがまたカワイイ~の。そして今回、
彼は既婚者だったという衝撃の事実が明かされています! し、知らなかった。。
ガーーーーーンン。←意味もなくショックを受ける、笑

 昔から歴史小説がお好きだったとのこと。彼の並外れた時空間把握能力は、
そこから育まれたのか、と納得。建築好き、というのも、物事を立体的に構成
する能力
に長けていることに繋がるのかな? 故郷大阪への、深~い愛情
感じられる一冊でした。

 ( 『ザ・万遊記』 万城目学・著/集英社・2010)

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[2010/05/28 13:57] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(3) |
ある教育~『17歳の肖像』
17歳の肖像


 AN EDUCATION


 1961年、ビートルズ登場以前の英国、ロンドン郊外女子高生ジェニー(キャ
リー・マリガン)
は、オックスフォード大を目指す優等生。ある雨の午後、彼女は
シックな車に乗った見知らぬ男から声をかけられる。

 英国人ジャーナリストの回想録ニック・ホーンビィが脚色・製作総指揮し、
アカデミー賞作品賞・主演女優賞・脚色賞にノミネートされた、英国映画らし
佳作。アカデミー賞受賞式でのキャリー・マリガンは、ブロンドのセシルカ
ット
がよく似合う小顔ちゃん。そのかわいらしさに目が釘付けになった私、こ
れは絶対に観なければ!と物凄く期待した映画。これは期待以上に素晴ら
しかった
です。キャリーが主演、キーラ・ナイトレイ&アンドリュー・ガーフィー
ルド共演
『わたしを離さないで』日本公開されますように!!

17歳の肖像2

 学校の誰よりも優秀なジェニー。両親からも先生からも期待されて、趣味の
チェロも受験のため。誕生日のプレゼントはラテン語の辞書。息が詰まるよう
退屈な日常に、憧れだったパリの香りの、華やかな世界を覗かせてくれる
人の男性
が現れたら・・・。女の子なら誰でも、に落ちずにはいられないでしょ
う。学校の先生たちも、ジェニーの母も、それはよくわかっている。だから誰も、
ジェニーを止めることはできない。

 60年代初頭、ってもう50年も昔の話。登場人物皆のセリフで、私たちが想像
する以上に、アフリカ系やユダヤ系への人種差別や、偏見の残る時代だった
ことがよくわかる。女性の地位職業選択の自由も、ごくごく限定的なものだっ
たのだろう。オックスブリッジを出ても、せいぜい公務員教師止まり。そうで
なければ専業主婦(=永久就職)になるくらいしか道はない。ジェニーのように
美しく利発な女の子にとって、その閉塞感は耐え難いものだったに違いない。

 「大学に行ったら、どうしてみんなブスになるの?」 「ラテン語なんてラテン
人も使わない、滅ぶ言語よ」 煌びやかな生活を送る(しかし教養はない)ヘレ
ンとダニー
に感化されて、どんどん洗練されていくジェニー。音楽会、ドッグレ
ース、絵画オークション。ダサダサのロングヘアはアップに、スッピン顔には
つけ睫毛を。そして遂に訪れた、恋人と見るパリの夕景のなんと美しいこと!
どんなに時が流れても、彼女はこの景色を忘れないのだろうな、絶対に。

17歳の肖像3

 しかし私が共感したのはジェニーではなく、アルフレッド・モリーナ扮する彼女
、なのだった。自分のような人生を娘には歩ませたくない、その気持ちが強
過ぎて、逆に娘を追い詰めてしまう父。経済的な不安を、妻や娘に癇癪玉のよう
にぶつけてしまう父。人心掌握術に長けたデイヴィッド(ピーター・サースガード)
にコロリと騙されてしまうこのごく普通のお父さんが、私はどうしても嫌いになれ
ないのだった。 「紅茶とビスケットだよ、ここに置くよ」

 人生に近道はない、と悟ったジェニー。校長(エマ・トンプソン)には拒まれて
も、小論文の先生(オリヴィア・ウィリアムズ)だけは彼女を受け入れてくれる。
普通であること、誠実に、地に足をつけて生きること。学校ではない場所で、そ
の大切さを学んだジェニー。ちょっぴり高い授業料だったけれど、彼女が自分
で学びとったんだもの。 「いい勉強」よね。

 ( 『17歳の肖像』 監督:ロネ・シェルフィグ/2009・UK/
               主演:キャリー・マリガン、ピーター・サースガード

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[2010/05/27 00:00] | 映画 | トラックバック(33) | コメント(2) |
大量破壊兵器は存在しない~『グリーン・ゾーン』
グリーン・ゾーン



 GREEN ZONE


 2003年、「大量破壊兵器が存在する」という大義名分のもと、アメリカはイラク
に戦争を仕掛ける。軍からの指令により、兵器発見の任務に着く陸軍隊長ミラー
(マット・デイモン)
は、度重なる誤情報に疑問を感じ始める・・・。

 「ジェイソン・ボーン」シリーズの監督・主演コンビによる、イラク戦争を舞台に
したサスペンス・アクション。主演はご存じ、ハリウッドにおける「ミスター質実剛
健」
ことマット・デイモン。真実を求めて奔走する、愚直な一兵卒がハマっている。
監督は気骨ある映像作家、ポール・グリーングラス。脚本を書いたブライアン・
ヘルゲランド
は快作『ロック・ユー!』の監督さんなんですよね。ここ数年は、脚
本書きに専念しているのかな。

グリーン・ゾーン2

 大量破壊兵器は存在しなかった--。今では世界中の「常識」となっている
この「真実」。しかし、当時戦地で闘っていた兵士たちは、上(国、政府、軍)か
らの指示を信じ、命の危険を冒して、そもそも存在すらしていない大量破壊兵
を探し求めていたんですね。。虚し過ぎる。。イラクと戦争をしたかった誰か
のために、世界中を巻き込んだウソが喧伝され、取り返しのつかない多くの
が払われた。爆撃、破壊、流される夥しい血。激しく揺れ動くスクリーンを見
つめながら、情けなさと怒りで頭がクラクラしてきた。そして、イラク戦争は未だ
に終結していない
。。終盤、ニュース映像で映し出された前アメリカ大統領は、
誰かに裁かれるべきではないのでしょうか?

 政府はマスコミに「極秘情報」というエサを撒き、特ダネ欲しさにそのも取ら
ず、記事にしてしまう記者たち。世論というものはマスコミの情報操作でどちら
にも転び得るものだと思っているので、彼らの罪はアメリカ政府と同様に重いと
感じる。それゆえ、個人的には、ウォール・ストーリト・ジャーナル紙記者ローリ
ー(エイミー・ライアン)
には、もう少し物語の中心にいて欲しかった。演技派い
ぶし銀女優・エイミー
が、ちょっともったいない使われ方のような気もしたので。

グリーン・ゾーン3

 結局あの戦争は、「グリーン・ゾーン」=安全地帯で作られた戦争だった。この
題材を、単なる「娯楽アクション大作」として観るには、少々、気が重い。

 ( 『グリーン・ゾーン』 監督・製作:ポール・グリーングラス
       主演:マット・デイモン、グレッグ・キニア、ブレンダン・グリーソン、
                         エイミー・ライアン
/2010・仏、米、西、英)

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[2010/05/26 00:00] | 映画 | トラックバック(52) | コメント(0) |
マッド・ワックス~『パリより愛をこめて』
パリより愛をこめて



 FROM PARIS WITH LOVE


 在仏アメリカ大使館で補佐官として働くジェームズ・リース(ジョナサン・リス=マ
イヤーズ)
は、CIAの見習いエージェントという裏の顔を持っていた。彼の「相棒」
として、アメリカから凄腕エージェントワックス(ジョン・トラヴォルタ)がやってく
る。

 リュック・ベッソン原案による、バディムービーにしてサスペンス・アクション。
R15+に指定されているだけあって、ドンパチ&流血シーンの迫力はハンパじゃ
ない。『トランスポーター』ばりにアウディが疾走するカーアクションも迫力満点。
英会話がメインですが、フランス映画です。面白かった!

パリより愛をこめて2

 私生活ではかなり暴れん坊らしいジョナサン、本作では駆け出しのエージェント
役。彼は基本、泣き顔系だと思うので、困ったり切なかったりする表情は巧い。今
回、改めて彼のプロフィールを見てみると、両親に捨てられて孤児院で育ったのだ
とか。。う~ん、そうだったのか。。

 このジェームズ、最初はかなり「使えない」奴。盗聴器をガム(!)で取り付けよ
うとしてアタフタしたり、いざという時に引き金が引けなかったり。そんな彼を荒っ
ぽくコキ使いながら、CIAエージェントとしてのイロハを教え込んでいくのがワック
ス(ジョン・トラボルタ)
スキンヘッドに髭面で、どう見ても「その筋のお方」な上に、
問答無用でライフルをぶっ放し、自分用にコカインを押収するようなハチャメチャ
な男。でも笑うと愛嬌があって、声も妙に高くてやさしげだったりする。トラボルタ
が結構アクションもこなしていて(もちろんスタントも多々使っているだろうけれど)、
カッコ良かったのもうれしい驚き。スローモーションに二丁拳銃、いっそ白鳩も飛
ばせばよかったかも?

パリより愛をこめて3

 どう見てもその女は怪しい!、と誰もが感じるキャロリン(カシア・スムートニア
ック)
。キーラ・ナイトレイとヘレナ・ボナム=カーターをミックスしたような彼女は
もちろん、魅力的。しかし部屋の中にあれだけ盗聴器を仕掛けられながら、全く
気付いていなかったジェームズって一体
。。恋は盲目、にもほどがある(笑)。し
かし最後の最後で、彼は「男」になるんだよね。

 悪い奴らはチャイニーズや中東系で、パリのアメリカ人は正義の味方、という
マンネリな設定であることは否めない。けれど、派手なアクションが堪能できれ
ば、オススメですよ。

 ( 『パリより愛をこめて』 監督:ピエール・モレル/2010・仏/
            主演:ジョン・トラヴォルタ、ジョナサン・リス=マイヤーズ

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[2010/05/25 10:49] | 映画 | トラックバック(40) | コメント(2) |
脱北の真実~『クロッシング』
クロッシング



 CROSSING


 北朝鮮の炭鉱町で働く元サッカー選手のキム・ヨンス(チャ・インピョ)は、妻と
息子ジュニ(シン・ミョンチョル)の三人で、慎ましくも幸せに暮らしていた。しか
し、妊娠した妻結核に罹ってしまう。ヨンスは中国を買うため、脱北を決
意するのだったが・・・。

 北朝鮮で暮らす市井の人々過酷な日常と、脱北者たちの想像を絶する苦難
と深い家族愛
をリアルに描き出した、慟哭のドラマ。関西ではある人気番組で本
作が紹介され、劇場は連日立ち見が出る盛況ぶりらしい。私が観た回も、もちろ
満席でした。

 本作を観て驚いたことはたくさんある。まず何よりも、監督がキム・テギュン
だということが信じられなかった。『火山高』 『オオカミの誘惑』など、クォン・サ
ンウ
カン・ドンウォンを起用して青春映画を撮る人、という印象があったから。
彼がここまで社会性の強い映画を監督したことが、一番の驚きだった。

クロッシング2

 そしてもう一つの驚きは、数年前に実際に中国で起きた、脱北者による大使館
駆け込み事件
がモチーフになっていること。何度もニュースに取り上げられ、ま
だ記憶に新しいあの衝撃的な映像に、こんな隠された真実があったとは・・・。

 独裁者が全てだと洗脳され、「南朝鮮」に行くと臓器を取られる、と信じ込まされ
ている北の人たち。信仰の自由も、交易の自由も奪われる「収容所国家」という
言葉に戦慄する。慢性的な餓え、病気の蔓延、収容所での人権蹂躙ぶりは凄ま
じく、言葉もない。

 「神様は豊かな国だけにいるのか? 何故北朝鮮を放っておくんだ!」 キム・
ヨンスの叫びが、胸に突き刺さる。命を賭けて得ようとしたものが、隣国では「タダ」
で手に入る現実。ヨンスの同僚はつぶやく。「家族を残して一人で脱北するなんて、
なんて奴だ」
。正直、私もこの映画を観るまではそう思っていた。しかし、脱北の裏
には、それぞれに命がけの事情があったのだ。豊かで自由な国に生きる自分の、
不明を恥じるしかない。

クロッシング3

 神など到底信じられなくても、息子の無事を願い、神に祈るしかないヨンス。
誰もいない砂漠で、(盗まれるわけがないのに!)ひとりを抱え、眠りにつく
ジュニ。一体どれほどの数の人々が、モンゴルの砂漠で、中国国境の河で、
命を落としたのだろう? 一体誰が、何のために、何の権利があって、ここま
で人々に苦痛を強いるのだ?
 どうすればいいのか、何から始めればいいの
か、正直わからない。それでも、観るべき映画を観たのだ、という思いは残る。

 ( 『クロッシング』 監督:キム・テギュン/2008・韓国/
          主演:チャ・インピョ、シン・ミョンチョル、チュ・ダヨン

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[2010/05/21 21:42] | 映画 | トラックバック(20) | コメント(4) |
機械仕掛けの終末~『9 ナイン~9番目の奇妙な人形~』
9.jpg



  9


 自らが生み出した機械によって、人類が滅んだ後の荒廃した地球。ある研究
室で、背中に「9」と書かれた人形が目覚める。

 この映画のそもそものはじまりは、2005年のアカデミー賞・短編アニメーショ
ン部門にノミネート
された、11分の同名短編。それを観たティム・バートンが惚
れ込み、長編製作に手を挙げたという。生命を吹き込まれた9体の人形が、仲
間たちと助け合いながら、機械製のモンスターたちと闘う。予備知識はほとんど
無しで鑑賞したため、ここまで「戦闘」が全編で描かれる、迫力ある映画だとは
思わなかった。もう少しファンタジックな作品をイメージしていたのだが、終末感
漂う、ダイナミックな映像は圧巻。同じ「9」でも、第9地区より個人的にはずっ
お気に入りです。ダークな世界観は、ティム・バートンがいかにも好みそう。
ただ、上映時間80分よりは長く感じたかな。

9-2.jpg

 麻袋で作られた「1」から「9」までの人形たちは、それぞれに個性があって
かわいい。特に暴れん坊キャラの「8」は、ナイトメア・ビフォア・クリスマス
ブギーマンにソックリ! 個人的には、双子の「3」と「4」がツボだった。
 人類が去った荒廃した地球、という状況設定ピクサーウォーリー
似ているけれど、物語の方向性は全く違う。人形たちは人工知能ではなく、
その「成り立ち」にはある秘密があったのだ。

 イライジャ・ウッド、ジョン・C・ライリーを始め、声優陣もAクラスのハリウッド
スター
が集結している。紅一点「7」ジェニファー・コネリーの声があんなに
勇ましいとは、初めて気がつきました。

 機械モンスターの犠牲となった5体の魂が天に昇る。このラストシーン
少し、弱い気がしたけれども、降り出した雨粒は緑色に発光していた。彼ら
魂が輪廻し、新しい生命体のソースになるとしたら。。それもまた、いいと
思えるのだった。

9-3.jpg

 ( 『9 ナイン~9番目の奇妙な人形~』 監督・原案:シェーン・アッカー/2009・USA)

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[2010/05/15 00:00] | 映画 | トラックバック(21) | コメント(2) |
「証拠」の残り香~『ほかならぬ人へ』
ほかならぬ人へ

 名家の三男に生まれた宇津木明生は、優秀な兄たちへの劣等感から「生まれ
そこなった」
と感じていた。大学を出、就職した明生は、キャバクラ嬢のなずな
出会い、結婚するのだが・・・。

 恋愛小説の形をとりながら、愛だけでない生と性、生と死という人間の「業」その
ものについて考察されている小説。表題作のほかに、中編「かけがえのない人へ」
が収められている。直木賞受賞作品

 白石氏の著作は初めて読んだが、とても面白く読めた。特に「ほかならぬ人へ」
うるうるしながら読み進み、ラストでは、もう涙が鉄砲水状態。劣等感に苛まれ続
けた一人の「平凡な」男が、愛し、失い、理解し、たどり着き、そして再び失うまで

 何不自由ない名家の御曹司に生まれついても、人生が生き辛いと感じる人もい
るのだろうか。明生は、本人が思っているよりもずっとずっと、魅力的な人物だと
私には感じられた(先輩の東海さん「非凡」だと表現したように)。彼を利用し、
裏切ったなずなも、私は決して嫌いにはなれない。むしろ、初恋を貫き、ここまで
「狂った女」に成り切れる彼女は、逆に「清々しい」とさえ思えるほど。たとえその
相手が、どうしようもない女たらしであったとしても。。

 明生や、東海さんが語る人生、愛についての言葉の数々がいい。「どうしてみん
な、間違ってしまうんだろう」
「どうして、ちゃんとした人間から死んでいくんだろう」
「人間は、自分に裏切られながら生きていくしかないんだ」

 そして明生は思う、自分をこの世界に送り出した何者かに、抗い続けるのが人生
なのだ
と。

 一方、「かけがえのない人へ」。婚約者を裏切り続け、「あんな男どうでもいいの
よ」と言い放つみはるのことは、どうしても好きになれなかった。そのせいで、この
全体の印象があまりいいものとはならず、胸を張って「オススメです」と言えない
のが、少し残念。

 ( 『ほかならぬ人へ』 白石一文・著/祥伝社・2009)

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

[2010/05/14 12:00] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(2) |
不思議の国のアリス~『アリス・イン・ワンダーランド』【3D・吹き替え版】
アリス・イン・ワンダーランド



 ALICE IN WONDERLAND


 19歳のアリス(ミア・ワシコウスカ)は、幼い頃から見続けている奇妙な夢
悩まされていた。貴族青年から求婚され逃げ出してしまった彼女は、大きな木
の根元にある竪穴に落ちてゆき・・・。

 ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』原作に、ティム・バートンが描く
ダークでアンダーグラウンドなファンタジーランド。バートンならでは、相変わ
らずの映像美が、今回はデジタル3Dでも展開される。3Dはメガネ&字幕&
画面の暗さが苦手なので、2Dの字幕版で観たかったのだけれど・・・。3D・
吹き替え版
にて鑑賞。青い芋虫がスネイプ先生だったから、ま、いっか。で
も、時間が合えば再見したいです、2D・字幕版で。

 子どもの日に観たので、シネコンは親子連れだらけ。マナーが悪い子ども、
注意しない親・・・。きっと親が観たくて、子どもたちを連れて来てるんでしょう
ね。

アリス・イン・ワンダーランド2

 映像キャラクターデザインは、とっても楽しめました。ストーリーもとても
解り易く、赤=悪、白=善勧善懲悪。そこに少女の成長物語が加味されて
いる。いかにも、なディズニー映画。お馴染みのバートン組、ジョニー・デップ、
ヘレナ・ボナム=カーター
に加え、アン・ハサウェイクリスピン・グローヴァー
もいい感じ。ただ、主役のアリス、ミア・ワシコウスカが個人的に好きなタイプじ
ゃなかったかな。グウィネス・パルトロウに似てると思ったのですが、彼女オー
ジー
なんですね。。ロシア系っぽい名前&雰囲気ですけれども。

 陶器のような白い肌に金髪、美しいに違いないのだろうけれど、常に眉間に
皺の不機嫌顔
で、かわいらしさがない。ストッキングやコルセットが大嫌いな、
ちょっと変わった19歳、らしいといえばらしいのだけれど、どうも魅力に欠ける
気がしたなぁ。。奇妙で魅力的なサブキャラたちに喰われていたのかもしれな
いけど。

 しかし、全体としては引き込まれ、楽しく観られましたよ。音楽もダニー・エ
ルフマン
なのですよね。

アリス・イン・ワンダーランド3

 ティム・バートンって映画監督として大成功していますが、日常生活ではすご
「変人」なんじゃないかと思ってます(笑)。でも、偉大な人は皆、ちょっと変わ
っている
んだよね。

 ( 『アリス・イン・ワンダーランド』 監督:ティム・バートン/2010・USA/
      主演:ミア・ワシコウスカ、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター

テーマ:アリス・イン・ワンダーランド - ジャンル:映画

[2010/05/13 00:00] | 映画 | トラックバック(18) | コメント(2) |
そこがいいんじゃない!~『みうらじゅんの映画批評大全 2006-2009』
みうらじゅんの映画批評大全

 雑誌『映画秘法』連載の、みうらじゅん氏による映画コラム集。「サブカル・キン
グ」
の異名を取るみうら氏らしく、洋邦、様々なジャンル(もしくはB級)映画への、
愛と憧憬がいっぱい詰まった一冊。

 まずは「まえがきにかえて」、この一文にめちゃめちゃカンドー&共感してしま
った。「私だけじゃないか?」と思ってしまうこと、私もあるもん。今をリアルタイム
にするために、無理して時間作って映画館に駆けつけるんだから。

「映画だって恋だろ? いくら評判が悪くたって、オレだけは素敵なところを見つ
けてやる自信があるんだよ!」
 ・・・ジーーーンン。←感動している

 しかし、あまりにも下ネタ満載映画評&イラストには、クククと笑いつつも、
ちょっとタジタジ。今は亡き水野晴郎センセイとの対談は、いくつになっても
臭く映画を語る
お二人に涙。色即是ねれいしょん渡辺大地くんに対しては、
ちょっと「おにいさん」なみうらさんがいたりして。。

 正統派のシネフィルの方々や、評論家は絶対に読まない本かもしれない。
でも、そこがいいんじゃない!?

( 『みうらじゅんの映画批評大全 2006-2009 そこがいいんじゃない!』/洋泉社・2010)

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[2010/05/12 00:00] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(2) |
ミニモイの国~『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』
アーサーと魔王



 ARTHUR AND THE REVENGE OF MALTAZARD


 祖父母の家の裏庭にある、不思議な地下世界「ミニモイの国」を行き来する
少年アーサー(フレディ・ハイモア)10番目の月が昇る夜、ミニモイの国への
再訪と、王女セレニアとの再会を心待ちにしていたアーサーだったが・・・。

 リュック・ベッソンによる、実写+CGアニメファンタジーアーサーとミニモイの
不思議な国
の続編、三部作からなる第二作。前作はついこの間観たような気
がするけれど、もう3年も前のことなのですね。。光陰矢のごとし。まだまだ少年
の面影
を残す、フレディ・ハイモアくんがかわいい。

アーサーと魔王2

 しかしこの作品。。かなりブーイングです。いくら三部作とはいえ、前作を観
ていない人にはあまりにも不親切な物語。しかも、説明中心で盛り上がりに欠
けるな、と思っていたらいきなり「To Be Continued...2011」って、唖然。。

 まぁ、こうなったらなるべく最終章も観ようとは思いますが、本作があまりに
「つなぎ」的位置づけなのがチト寂しい。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』パー
ト2
を観たときも「To Be Continued」にはかなりショックを受けたけれど、こ
こまで露骨じゃなかった気がする。これで第三作がつまらなかったら、怒りま
すゼ。ハードル上げたな、ベッソン!

アーサーと魔王3

 ( 『アーサーと魔王マルタザールの逆襲』 監督・製作・原案・脚本:リュック・ベッソン
                         主演:フレディ・ハイモア、ミア・ファロー/2009・仏)

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[2010/05/11 00:00] | 映画 | トラックバック(11) | コメント(2) |
お前は逃げられまい~『真昼なのに昏い部屋』
真昼なのに昏い部屋

 在日アメリカ人ケニー・ジョーンズは、同じ町に住む主婦・美弥子さんに恋し
ていた。ジョーンズさんが「フィールドワーク」と呼ぶ散歩を通して、二人の距離
は徐々に縮まってゆくのだったが・・・。

 江國香織さんの新作は、ズバリ「不倫」がテーマの長編小説。私は江國さんの
ファンで、新作が出れば必ず読む。直木賞受賞以降は、執筆ペースが随分ゆっ
くりになって寂しかった。しかし、満を持して放たれた本作は、江國節全開「本
当は怖い不倫のお話」
。日常が静かな狂気の裂け目に侵食されてゆく過程がな
んともリアルで、グイグイ引き込まれて読みました。

 まずはこのカバー、ブックデザインを見て下さい。薔薇の花にレースがあしら
われ、その中心に不気味なゴヤの版画甘さと残酷さが同居する、江國さんの
描く世界観にピッタリな、美しい本に仕上がっています。

 家事や手仕事が大好きで、何事も「きちんとしている」のが好きな主婦・美弥子
さん。私のようなグータラ人間からしたら、宇宙人のようなキャラです。しかし、
正直この美弥子という女性、少々、というかかなり、頓珍漢で常識外れではなか
ろうか。。

 昼日中、ご近所でも一際目立つお屋敷に住む若き社長夫人が、外国人男性と
手をつないで(!)お散歩
してたら、そりゃあ「世間様」が黙っていないでしょう。
「そういうこと」してなかったらいい、ってもんじゃないんですよ美弥子さん。そして
何より、夫のことをよそ様に対してまで「ひろちゃん」って言うのを何とかしてくれ~。
こういう人、「天然」じゃなくて「かまとと」って言うんじゃないだろうか?(暴言)

 大学教師のケニーは、奥さんと長年別居中、友人のナタリーや、元教え子数人
とも「大人の関係」を楽しんでいるらしいから、それはそれは魅力的な男性なので
しょう。しかし結局、籠から逃げ出した小鳥は、もう彼が渇望する「小さきもの」
はなくなっているんですね。おもちゃが欲しいと駄々をこね、それが手に入るとも
う他のおもちゃを見ている、幼子と同じだと感じてしまった。なんとも皮肉な幕切
です。

 夫と離婚して、美弥子は幸せになれるのだろうか? 彼女はきっと、いつまで
もあの家を懐かしく感じるのだろうし、経済的に自立して生きていくタイプにも思
えない。しかし、「世界の外」に出てしまったら、もう二度と元には戻れないのか
もしれないですね。それを「悲劇」と呼ぶかどうかは、また別の話

 ( 『真昼なのに昏い部屋』 江國香織・著/講談社・2010)

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[2010/05/10 12:52] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(0) |
奇跡のコンサート~『オーケストラ!』
オーケストラ!


 LE CONCERT


 ロシアボリショイ交響楽団で、清掃員として働くアンドレイ(アレクセイ・グシュ
コフ)
は、かつて天才と呼ばれた指揮者だった。ある日彼は、支配人の部屋で
パリ公演依頼のFAXを見つける。

 ユダヤ人排斥に反対したかどで解雇された指揮者が、かつての仲間を集め
リターン・マッチを画策する。ドタバタ喜劇のように見えていた物語が、やがて
大きな感動のうねりを呼ぶ佳作。クラシック音楽に明るい人も、そうでない私の
ような人も、「決して裏切ることのない」音楽の奇跡に胸が震えるだろう。

 映画の日に重なった大阪上映初日は、毎回立ち見席まで売り切れ。こういう
映画は劇場で観たいですよね。最高でした。

オーケストラ!2

 映画自体はフィクションでも、ブレジネフ政権時代、ユダヤ人音楽家の粛清
が行われたことは事実であるらしい。マエストロと呼ばれ、尊敬と称賛を一身
に浴びていたアンドレイの、失意の日々。タクトを奪われ、アルコール依存症
に苦しみながらも、彼から音楽を奏でる歓びを奪うことは、誰にもできなかった。

 どんなに冷遇されようとも、故国ロシアが生んだ偉大な作曲家、チャイコフス
キー
の音楽を愛するアンドレイ。究極のハーモニーを追い求め、彼がソリスト
に指名したアンヌ=マリー(メラニー・ロラン)もまた、チャイコフスキーのヴァイ
オリン協奏曲
を演じるのが夢だったと言う。彼女のCDや演奏評を、秘かに蒐集
していたアンドレイ。パリ在住の若きヴァイオリニストと、ロシアの元指揮者であ
る中年男性
。この二人の秘められた関係を、観る者はたやすく推測してしまう。
しかしこのミスリードが、クライマックスの感動を思いがけないものにし、語られ
ることのなかった悲劇の濃度を上げる。

オーケストラ!3

 「神様、いるなら奇跡を起こしてくれ」。誰が聴いても素人以下の寄せ集め集
。彼らがリハーサルもなしで、客前で演奏すること自体が狂気の沙汰に思え
る。しかし、30年の時を超えた音楽への熱き思いは、両親を知らない若きソリス
トに伝播するのだ。アンドレイを支え続けた妻にも、イスラエルの離散家族にも。
そしてまた、映画を観ている私たちにも。何に心動かされているのか、意識する
前にが溢れていた。言葉ではなく、もちろん詩でも、映像でもない。そこには、
何よりも雄弁な「音楽」だけがある。御伽噺のような成功譚。神様はいたんだ。

 ( 『オーケストラ!』 監督・脚本:ラデュ・ミヘイレアニュ
           主演:アレクセイ・グシュコフ、メラニー・ロラン
                         2009・仏、伊、ルーマニア、ベルギー)

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[2010/05/09 00:00] | 映画 | トラックバック(33) | コメント(10) |
この世界にたった一人~『月に囚われた男』
月に囚われた男



 MOON


 近未来。燃料エネルギー・ヘリウム3を採取するため、サム(サム・ロックウェル)
はたった一人、月の裏側に派遣されていた。契約期間は三年。あと2週間で地球
帰還できるというその時、サムの身体に異変が起こる・・・。

 たった一人で宇宙空間に三年間、という気の遠くなるような「究極の単身赴任」。
出演者はほぼ一人、舞台は月面基地のみ、というシンプルなSF映画。ほぼ予備
知識なしで鑑賞したためか、これが滅法面白い! 前日に同じく「月」が重要な役
割を果たす映画
を観てイマイチだったためか、すっごく得した気分、拾いものです。
いや~、SF映画はこうでなくっちゃ。

 監督は、本作が長編デビュー作ダンカン・ジョーンズ。第一作にして数々の
賞を受賞した彼に、「デヴィッド・ボウイの息子」なんていう惹句は必要ないでしょ
う。次回作はジェイク・ジレンホール主演だって。期待~♪

月に囚われた男2

 妻子を地球に残して、ひとり月の裏側にいるサム。彼がジョギングしている姿
や、相棒のコンピューター・ロボット、ガーティには、やはり『2001年宇宙の旅』
を思い起こさせられる。スタンリー・キューブリックによる、あのSF映画の金字塔
から逃れられる映画は、これからもなかなかないんじゃないかな。ガーティの
機質な声
「HAL」のようで、最初は不気味さしか感じなかったのだけれど・・・。

 不慮の事故から、自分のクローンが存在すること、そして自分自身も(!)クロ
ーンであることを知ってしまうサム。クローンであるからして、サム・ロックウェル
は当然、二役を演じるわけだけれど、とても巧く撮っているし、演じ分けているな、
と感心。観る者は、ここで「三年」という契約期間の意味=クローンの寿命を悟る。
しかしクローンの存在が明らかになり、二人のサムが対峙してからは、無駄に長
かった
気がしたのが残念。決して長い映画ではない(97分)けれど、思い切って
あと10分くらい、短くてもよかったんじゃないかな。

月に囚われた男3

 サム・ロックウェルは、いつどう見ても私には「徳永英明」に見えてしまう(ファン
の方、ごめんなさい)。ニコちゃんマークで感情を表すガーティの声は、ケヴィン
・スペイシー
だとエンドロールで知ってビックリ。さすが、巧いわ! 彼がいい奴
でよかった。。

 宇宙基地の中にハングルが見えたり、アナウンスが韓国語(アンニョンヒガセヨ
=気をつけていってらっしゃい)
だったり、ルナ産業は韓国系企業なのかな、と思
ってしまった。恐らくは物凄く低予算、かつローテクであろうこの作品。映画はやっ
ぱりアイデア次第、と改めて感じさせられたのだった。

 ( 『月に囚われた男』 監督・原案:ダンカン・ジョーンズ
        主演:サム・ロックウェル、ケヴィン・スペイシー/2009・UK)

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[2010/05/08 00:00] | 映画 | トラックバック(34) | コメント(8) |
狼男~『ウルフマン』
ウルフマン



 THE WOLFMAN


 1891年、英国・ブラックムーア。シェークスピア劇の舞台俳優として活躍して
いるローレンス(ベニチオ・デル・トロ)は、兄ベンが失踪したとの報せを受けて
帰郷する。生家タルボット城には、疎遠だった父(アンソニー・ホプキンス)と、
兄の婚約者グエン(エミリー・ブラント)が待っていた。

 製作も兼ねたベニチオ・デル・トロが主演、アンソニー・ホプキンスが共演の
濃厚なホラー。これ、物凄く怖かったんですけど・・・。狼男のビジュアルが、M
J
『スリラー』っぽいな、と思ったら、特殊メイクはかのリック・ベイカーなんで
すね。まぁ、『スリラー』狼男のリメイク(+ゾンビ)、と言えないこともないから
ね。監督は佳編遠い空の向こうにジョー・ジョンストン。音楽はダニー・エ
ルフマン
。豪華。

ウルフマン2

 R15+指定されるだけあって、スプラッタ描写が半端じゃないです。狼父の最期
なんてもう、正視できません・・・。ストーリーも、結局は「親の因果が子に報い」
という話なんだと思うけど、狼男と流浪の民(ジプシー)との関係が、今一つよくわ
からなかった。「愛する者だけが救いうる」 「運命のままに」という言葉は、ローレ
ンスがグエンの弾丸によって最期を迎えたことで、果たされたということなのかな。

 警部役ヒューゴ・ウィーヴィング、何年経っても「エージェント・スミス」だと
思ってしまう。しかしアンソニー・ホプキンス翁は、こういうおどろおどろしい役柄
が似合いますね。若手女優ナンバーワン、エミリー・ブラントも綺麗(バックヌー
ドはもろサービスカットだと思うけど)。彼女の低い声が大好きです。

 しかし、個人的にはあまり楽しめなかったな。。昔々からある『狼男』を、この
21世紀にリメイクする、という映画自体の製作意図に、あまり価値を見出せな
かったです。残念。

ウルフマン3

 ( 『ウルフマン』 監督:ジョー・ジョンストン/2010・UK、USA/
     主演:ベニチオ・デル・トロ、アンソニー・ホプキンス、エミリー・ブラント

テーマ:ウルフマン - ジャンル:映画

[2010/05/07 13:43] | 映画 | トラックバック(30) | コメント(2) |
大切なあなた~『プレシャス』
プレシャス


 PRECIOUS: BASED ON THE NOVEL
 PUSH BY SAPPHIRE



 1987年、ハーレム。16歳の少女プレシャス(ガボレイ・シディベ)は二度目の
妊娠が学校に知られ、退学処分となる。校長の計らいでフリースクールに通うこ
とになったプレシャスは、そこでミズ・レイン(ポーラ・パットン)と出逢う。

 サンダンス映画祭でグランプリと観客賞を獲得し、大絶賛のうちに賞レースを
席巻。アカデミー脚色賞、助演女優賞を受賞した、慟哭インディ映画超肥満
で読み書きも満足にできず、同居する母親には虐待され、家出した実の父親
の子どもを産み
、再び妊娠させられているプレシャス。白昼夢に逃避し、絶望
闇の中で生きる彼女に、一人の教師が「書く」ことの喜び希望を与える。涙、ま
た涙
の感動作。素晴らしい作品です。R15指定ではあるけれど、これは是非、
多くの人に観て欲しい。

プレシャス3

 教師次第で子どもは変わる。これは自分自身の経験からも、親としても痛感す
ること。真剣勝負で子どもたちと向き合うレイン先生、美しい彼女は同性愛者
もある。先生と一緒にいると、「心がほかほかする」と感じるプレシャス。出産直後
のプレシャスに、「あなたは自分に一番責任がある」と説き、学ぶことを諦めては
いけない
、と繰り返す先生。あなたの可能性は「無限大」だと。自分は誰からも愛
されない、無価値な人間
だと泣くプレシャスに、先生は叫ぶ。「”私”が、あなたを
愛している!」
。 私も学生時代、こんな教師に出逢ってみたかった。

 プレシャスの両親、特に、詳細に描かれる母親(モニーク)非道ぶりは凄まじ
い。3歳の頃から我が娘を傷つけていた父親と、それを知りながら放置し、逆に
傷ついたのは自分だと泣く母親。彼女もまた、家庭内暴力の被害者なのかもしれ
ない。しかし自らの傷の代償のために、娘の存在、人格、可能性の全てを否定し、
利用してきた彼女に同情の余地はない憎しみからは何も生まれないことを、彼
女が理解する日はやって来るのだろうか。

プレシャス2

 これ以上ないと思える過酷なプレシャスの人生を、更なる不幸が襲う。
"Why me?" 何故、私なの? 何故、私だけが・・・。絶望し、取り乱すプレ
シャスに、レイン先生は言い放つ。「書きなさい!」 逆境の中、考え、そして
書くことだけが、自らを未来へ導くのだと。

 学業と子育て、どちらも手放さない選択をしたプレシャス。多難であることは
想像に難くない
けれど、彼女の未来に幸多かれ、と願わずにはいられない。

 "for precious girls everywhere." (全てのいとしい女の子たちのために)

 拙い緋文字で書かれたこの献辞が浮かび上がったとき、かつて「女の子」だっ
た私
はまた、涙が止まらなくなってしまったのだった。

 ( 『プレシャス』 監督・製作:リー・ダニエルズ/2009・USA/
     主演:ガボレイ・シディベ、モニーク、ポーラ・パットン、マライア・キャリー

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[2010/05/01 00:00] | 映画 | トラックバック(39) | コメント(10) |
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いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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