純粋悲性批判~『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』

『ヘヴン』の感動冷めやらぬまま、『そらすこん』に突入。
川上未映子がブログ「川上未映子の純粋悲性批判」に綴った文章を集めた一冊。
2003年からの三年間、三十路直前、凪いでいるような疾風怒濤のような、日々の
記録。デビュー随筆集である本作が文庫になると知り、早速購入。「キャロルとナ
ンシー」でいきなり「えーん」がきた。
彼女が弟を大学に行かせるために新地で働いていた、という話は知っていたけ
れど、断片的に語られるその生い立ちはかなりショッキング。イズミヤの冷蔵庫
で働いているお母さん。サボテンと暮らす上京娘。本を一冊も読破したことがな
いお姉ちゃん。猫パニック。欠落と過剰の大波小波に揺られながら、生むことが
できる自分に違和感。饒舌でどこか醒めていて、でもとことん情が深い、浪花節
全開な文章に惹きつけられる。
『ヘヴン』に村上春樹的な何かを感じたけれど、『羊をめぐる冒険』が出てきて
納得。ちなみに私の持っている上巻、フォントは異常なしです。『フラニーとゾー
イー』の関西語訳をやりたい、と何年も前から村上春樹は言っているけれど、川
上未映子はあっさり、ここでやってしまっていて、唖然。グルーヴ、確かに出てま
すね。
好き嫌いが極端に分かれる文体かもしれない。「オススメ」って言い切るのは
躊躇、でもでも、私は、
未映子にいうたりたい。
めっちゃいうたりたい。
「『ヘヴン』 を読んで感動しました、大好きです」 って、
『そらすこん』 も好きやったよ。
(『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』
川上未映子・著/2009・講談社文庫)
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すべての人に祝福を~『Disney'sクリスマス・キャロル』【3D・吹き替え版】

A CHRISTMAS CAROL
"God bless us, every one!"
19世紀、ロンドン。金の亡者スクルージ(ジム・キャリー)は、クリスマスが
大嫌いな孤独な老人。寄付を募る人々を一蹴し、甥っ子フレッド(コリン・ファ
ース)からのクリスマスディナーの誘いも断り、豪邸で一人、イヴの夜を過ご
すのだったが・・・。
19世紀の世界的文豪、チャールズ・ディケンズの古典をディズニーが3D
アニメ化。パフォーマンス・キャプチャーという手法で、限りなく実写に近い、
俳優たちの演技が堪能できる作品に仕上がっている。監督はロバート・ゼ
メキス。ディケンズの古典とハリウッドのビッグネーム、不似合いな組み合
わせのようでも、『クリスマス・キャロル』もひとつのタイムトラベルもの、と
考えれば腑に落ちるのだった。

主人公スクルージはカナディアンのジム・キャリーでも、脇を固めるのはUK
俳優、ゲイリー・オールドマンとコリン・ファース。ジムが主演だということ以外
は予備知識なく観たので、ゲイリーが小男の使用人であるのが何ともミスマ
ッチのような、意外性のある配役の妙のような、不思議な感じ。雪のロンドン、
上空を滑走するカメラが素晴らしい。この浮遊感・・・! 宮崎駿もビックリ、
なんじゃないかな。
3D作品を吹き替えで観ることにも慣れつつあるけれど、本作の声優陣は
違和感なく聴いていられたと思う。山寺さんの声、いいですね。しかしやっぱ
り、俳優さんの生の声が聴きたい、とも思うのだった。

相変わらず重たい3Dメガネも、かけていることを忘れるくらい物語(という
か映像)に引き込まれてしまった。粗筋も結末も知っているのに、この古典の
持つ普遍性に打たれる。お金は墓場までは持って行けない。自分のためでな
く、誰かのために働くこと。運命や未来は変えられる、自分が変わろうと思い
さえすれば・・・。
私の元にも、過去の精霊が現れてくれないかな。月に届くほど高く飛んで、
懐かしいあの場所に連れて行ってほしい。未来に何が待っているかはわから
ないけれど、大事なのは「現在(いま)」。今年のクリスマスは、温かい気持ち
で過ごせるといいな。メリー・クリスマス・・・。
(『Disney'sクリスマス・キャロル』 監督・製作・脚本:ロバート・ゼメキス/
主演:ジム・キャリー、ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース/2009・USA)
森は生きている~『神去なあなあ日常』

横浜の高校を卒業し、フリーターになるつもりだった勇気は、三重県の山奥に
ある神去村で働くことになる。そこは林業で生計を立てる人々が暮らす、携帯の
電波も届かない場所。。
三浦しをんさんの小説を初めて読んだ気がする。「腐女子」であることをカミン
グアウトされている『シュミじゃないんだ』は読んだけれど、ちょっとわからなか
った。直木賞受賞作も、映画化された『風が強く吹いている』も未読。しかし本作
は、私の「父」である宮崎駿が「ぼくのおすすめ」として推薦文を書いているでは
ないか!!(と思ったら徳間書店だったんですね、大人の事情もあり?)
これは読まずにスルーするわけにはいきません。
期待に違わず、面白かった。宮崎駿が「映画にしたい」と熱望するのも納得の、
第四章の疾走感は『未来少年コナン』顔負け。深い草の香りが感じられる森の
描写、動物、子ども、おばあちゃん、美しい女のひと。是非ジブリのアニメで観た
い! 鈴木プロデューサー、よろしくお願いします!!
勇気の一人称で綴られる素直な文体が読み易い。都会っ子である勇気の、山
での暮らしに対する違和感や葛藤はほとんど語らないため、主人公であるはずが
一番影が薄いのが勇気でもある。他のキャラは、多少の濃い、薄いはあれど皆
個性的で魅力たっぷり。荘厳な山の風景、くっきりとした季節の移ろい、祭りの日
の高揚感を、是非映画館で追体験してみたい。
(『神去なあなあ日常』 三浦しをん・著/徳間書店・2009)
好きでやってます!~『なくもんか』

善人通り商店街で「行列のできる」ハムカツ屋「山ちゃん」を営む祐太(阿部サダ
ヲ)は、八方美人で「超」がつくお人よし。ある日、両親の離婚で会うこともなく育っ
た弟の祐介(瑛太)が、祐太の店にやってくる。彼は人気お笑いコンビの片割れと
して、店の取材にやって来たのだった。
『舞妓 Haaaan!!!』の監督、脚本、主演が再タッグ、下町人情と家族愛を描いた
ドタバタコメディ。私は何回も言うようですが、阿部サダヲの「暴力的」で「破壊的」
で「傍若無人」なハイテンション演技が大好きなので、迷わず鑑賞。
しかし、私より阿部サダヲが大好きなのは、間違いなく本作の脚本家、クドカン
だろう(当たり前)。阿部サダヲって、クドカンのイマジネーションの源なんだろう
な、と思う。NHKで放映された舞台『あべ一座 ~あべ上がりの夜空に~』なん
て、クドカンの頭の中って半分以上阿部サダヲなんじゃないかと思ったもん(笑)。

自分なりの処世術で生きてきた生き別れの兄弟。それぞれが新しい(疑似)
家族と出会い、幸せに暮らしながらも本当の家族、本当の自分と向き合い、再
生してゆく物語。阿部サダヲは、もはやオーバーアクトとも呼べない唯我独尊
演技で楽しませてくれる。「クドい」 「全く笑えない」という方もいらっしゃるよう
だが、彼の演技ってハマると癖になる。
徹子(竹内結子)との結婚パレードで「どーもすいません」って言いながら林家
三平だったり、涙を流すまいとして鼻をつまんだり。芸(パロディ)がわかりやす
く、細かい。そういえばこの映画、ひょっとして『涙そうそう』にインスパイアされた
んだろうか・・・兄弟モノだし、沖縄出てくるし。『涙そうそう』を観ていないからわ
かりませんが。。なんくるないさ~
しかし本作、楳図かずおとか徹子の整形疑惑とか、細かい部分では笑えたけ
れど肝心の物語は弱い気がした。「苦しむ子ども見て平然としてられるのが親
なら、親になんかなりたくない!」っていうのはクドカンの本音だろうな~、しかし
祐太の笑顔の下の悲しみも、祐介のポーカーフェイスに浮かぶ苦しみも、観てい
る私の胸にはあまり伝わってこなかった。もう一人の「兄さん」、塚本高史の人物
造形が一番、リアルに痛かったかも。
竹内結子はツバキな美人女優なのに、今回汚れっぽい役どころに果敢に挑戦、
なかなかハマってました。私生活での紆余曲折を逆手に取って、女優として成長
した感じ。人生、何事も経験ですね。。

(『なくもんか』 監督:水田伸生/脚本:宮藤官九郎/
主演:阿部サダヲ、瑛太、竹内結子、塚本高史/2009・日本)
今年は我らがジョニー!~ The Sexiest Man Alive 2009
ああ~、今年も早、このリストを目にする時期ですね~。。
米People誌が選ぶ「最もセクシーな男」、今年はジョニー・デップ!

う~ん、やっぱりカッコイイ! キャプテン・ジャック・スパロウことジョニー・
デップは、日本でも最も有名な(そして人気のある)ハリウッドスターですから
ね♪
「暴れん坊」だった彼も今や46歳、すっかり「良きパパ」。幸せな家庭を築い
てキャリアも順調、年末公開の『パブリック・エネミーズ』期待してますよん♪
ジョニーの他にも、ライアン・レイノルズやロバート・パティソンらが選ばれて
いますが、何といってもリストの三番目にジェイク・ジレンホールの名前(とフォ
ト)が出てきて、も~お、ビックリ!!
最近「熊」化したジェイクしか目にしてなかったので、なんか意外な気もしつ
つ、ファンとしてはうれしいな~♪ 新作『Brothers』がようやく来月公開、
露出が増えることを願って。。

米People誌が選ぶ「最もセクシーな男」、今年はジョニー・デップ!

う~ん、やっぱりカッコイイ! キャプテン・ジャック・スパロウことジョニー・
デップは、日本でも最も有名な(そして人気のある)ハリウッドスターですから
ね♪
「暴れん坊」だった彼も今や46歳、すっかり「良きパパ」。幸せな家庭を築い
てキャリアも順調、年末公開の『パブリック・エネミーズ』期待してますよん♪
ジョニーの他にも、ライアン・レイノルズやロバート・パティソンらが選ばれて
いますが、何といってもリストの三番目にジェイク・ジレンホールの名前(とフォ
ト)が出てきて、も~お、ビックリ!!
最近「熊」化したジェイクしか目にしてなかったので、なんか意外な気もしつ
つ、ファンとしてはうれしいな~♪ 新作『Brothers』がようやく来月公開、
露出が増えることを願って。。

子どもの時間~『天然コケッコー』

海に面した、島根県の小さな山間の村。小・中合わせて生徒が6人しかいない
学校に、東京から転校生がやってくる。
「あ・・・イケメンさんじゃぁ~」
で、『天コケ』である。待望の。焦がれた。
くらもちふさこの原作漫画を渡辺あやが脚本化し、山下敦弘が撮った瑞々しい
佳作。公開されるや絶賛され、各映画賞に輝いたのは記憶に新しい。
山下監督は田舎を舞台に、ゆるい作風ながら人間関係の深淵を伺うような作品
を撮る若手、というイメージ。私の中では西川美和監督とタイプが被る。
本作は、作品にファンタジックな要素を盛り込むのが巧い渡辺あやの脚本に、
監督が自分の作家性を抑え、忠実に応えている印象だった。う~ん、これは映画
館で観たかった。テレビサイズで体験するには惜しい、おおらかにやさしく、健や
かに流れる子どもたちの時間。青春にもまだ早い、思春期のフワフワした恋心。
淡く切なく消えゆく、至福のときよ・・・。

正直に言いますが、岡田将生くんが観たかったんです。そよ(夏帆)があんぐり
と口を開けて見つめる気持ちが120%わかるほど、この大沢くんはカッコイイ!
飾り気のない率直さ、察しの良さ、強引ではないのに吸い寄せられてしまうよ
うな佇まい。今年になって岡田くんの主演作が5作も公開されていることも納得
の、銀幕に愛されるべき美しさ。一見して都会的な少年であっても、意外なほど
純朴な岡田くん自身に、大沢広海がダブって見える。
しかしこの映画の主人公は、まぎれもなく夏帆なのだった。おさげ髪の健康的
美少女、そよ。岡田くんが見たかった私なのに、気づくとそよを追っていた。この
映画から2年後の今年、二人が再共演したドラマでも変わらず瑞々しく、可憐
な夏帆は素晴らしい! 思春期太りで見るも無残な若手女優もいるのに、夏帆
ちゃんはエライ、のだった。

「行って帰ります」 「何はぶてとるん?」 「おおきに」 「また来るけぇ」。
中国地方の方言が混じり合ったような田舎言葉は懐かしい響きだけれど、
少女が自らを「わし」と呼ぶことには軽い衝撃を覚えた。集落すべてが一つの
大きな家族のような環境なのに、この映画には過疎地特有の閉塞感や、息
苦しさが微塵もない。恋につきものの嫉妬や駆け引きも、疼きもない。そもそ
も、そよと大沢くんの間にたゆたう感情は、恋と呼ぶにはあまりにも、淡過ぎ
る・・・。
大沢くんの進学にまつわる展開は意外だった。ラストシーン、あのワンカット
のために坊主にした岡田くん、君もエライ! いつまでも、変わらないでいて
ね。
(『天然コケッコー』 監督:山下敦弘/原作:くらもちふさこ/
主演:夏帆、岡田将生、夏川結衣、佐藤浩市/2007・日本)
マイケル、宇宙へ還る~『ムーンウォーカー』

MOONWALKER
『THIS IS IT』を観て不満だったこと。「ビリー・ジーン」でマイケルがムーン
ウォークしなかったこと。「スムーズ・クリミナル」で「斜め45度(ゼロ・グラヴィ
ティ)」見せてくれなかったこと! う~ん、残念。。と思っていたら、マイケルが
製作総指揮・原案・主演を務めた映画『ムーンウォーカー』が劇場リバイバル
されるというではないか。。あの映画の中で、「スムーズ・クリミナル」の超ド級
ダンスパフォーマンスが観られるらしい!というのを思い出した。DLPでもいい
から大きなスクリーンで観たくて、劇場に駆け付ける。

← これです
『THIS IS IT』のラストシーン(黒のローファー、白く輝くレッグウォーマーの
アップ)から映画は始まる。J5時代の映像やグラミー賞受賞時の映像など、こ
れはPVか? と思わせるような前半部。映画撮影中のマイケルがファンに囲
まれそうになり、バイクで逃げる・・・というクレイアニメと実写を融合した中盤。
この部分はかなりイタイ。マイケル、君は一体何がやりたかったの? と言い
たくなる(笑)。
そして、3人の子どもたちを守るべく、マイケルがサイボーグ(?)に変身して
悪と闘う後半部分。ジョー・ペシが麻薬王に扮し、マイケルに魔の手が・・・と
いうストーリーの中に、「スムーズ・クリミナル」が挿入される。

Annie, are you okay? Are you okay? Are you okay, Annie?
いや~、ホントに凄いですね! 一番クラクラ来たのはあのターン。。両足を軸
に、流れるように回転するマイケル。機械のような精巧さというか、人間離れした
技術というべきか・・・。いや、マイケルって、実は宇宙人だったんじゃない? 死
んだなんてウソで、実は宇宙に帰っただけなのかも、なんて妄想してみる。
3人の子どもたち、男の子(ショーン・レノンなんだそうな!)、女の子、男の子
の3人が、マイケルの本当の子どもたち(プリンス、パリス、ブランケット)に見え
てきてしまう。マイケルって、根っから子どもが好きだったんだなぁ。。というか、
マイケル自身が精神的には子どものままだったのだろう。
マイケル熱が高じて、『ライブ・イン・ブカレスト』のDVDまで購入してしまった。
いいんです。人類の至宝、一家に一枚!
(『ムーンウォーカー』 監督:ジェリー・クレイマー、コリン・シルヴァース/
製作総指揮・原案・主演:マイケル・ジャクソン/1988・USA)
マイケルは絶対にあきらめなかった~『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』

THE TEXTBOOK OF ”MICHAEL JACKSON”
「彼はバッハやモーツァルトのように、未来の教科書に載るような、本当に偉大
な音楽家なんです」 (著者あとがきより)
ロック・バンド「ノーナ・リーヴス」の西寺郷太氏による、マイケル・ジャクソンの
「ヒストリー」。題名に「教科書」と冠されているように、マイケルの誕生からその
死までが丹念にドキュメントされています。特に『スリラー』以前のマイケルにつ
いては詳しく知らなかったので、興味深く読みました。語りかけてくるようなやさ
しい文体で、著者の「マイケル愛」の大きさが感じられる本です。
中西部の工業都市で、ワーキング・クラスの子どもとして育ったマイケル。兄弟
で結成したジャクソン5。ソロデビュー、クインシー・ジョーンズとの出会い。彼に
とって、『スリラー』がいかに怪物的な成功だったか。ジーン・ケリーやフレッド・
アステアをも唸らせた『モータウン25』でのパフォーマンス。初めて披露された
ムーンウォーク。それは彼を育てたモータウン・レコードとの決別だったこと。
完璧主義が高じて周囲から孤立し、次第に長くなってゆくブランク。マスコミが
彼にしたこと、彼から搾取しようと群がった人々。しかし恋愛や結婚、離婚など、
私生活についての記述よりもマイケルの音楽活動を中心に書かれているため、
ワイドショー的な興味からこの本を手にすると肩すかしを喰らうかもしれません。
マイケル・ジャクソンとは、何だったのか・・・。それは『THIS IS IT』を観れ
ばわかること。彼がいかに優れたミュージシャンであり、パフォーマーであり、
愛に溢れた謙虚な人物だったか。映像は雄弁です。そしてあの映画を観て
彼についてもう少し知りたい、彼が人生の節目に誰と出会い、どんな音楽を
生み、世界を変えて行ったのかを知りたいと思ったとき、少しでも多くの方に
この本を手にとっていただけたら、と思います。

(『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』 西寺郷太・著/ビジネス社・2009)
好きだよ~『僕の初恋をキミに捧ぐ』

心臓に重い病を抱えた少年・逞(岡田将生)は、20歳まで生きられないと宣告さ
れていた。彼は恋人・繭(井上真央)のために、別れる決心をするのだったが・・・。
ベストセラー少女コミックの映画化。余命僅かな少年と、彼を一途に恋する少女
の純愛ラブストーリー、と聞けば「サブイボが出る」と毛嫌いされる方も多いと思う。
実は私も、観に行くかどうしようか、随分迷った。しかし、岡田将生くんの魅力には
抗えず・・・。中学生と思しき男女で満席の中、観てきました。
内容は確かに少女漫画だけど、これ結構いい映画ですよ。眠気が一瞬も襲って
こなかったし、時間を忘れた。逞の一挙手一投足を見つめながら、私は繭になり、
逞の母(森口瑤子)になり、昂(細田よしひこ)の母になり・・・。その度に涙は溢れ
まくったのだった。観てよかった! 本当に。。

リミットがあると最初から知りながら、こんなにもお互いを思い合えるなんて。。
純粋に、逞と繭の関係は奇跡だと思う。一生懸命で、一途過ぎる繭の思いが切
な過ぎるよ・・・。井上真央ちゃんは制服姿もそろそろリミットか? と思いつつ、
気丈で真っ直ぐな役どころがピッタリなのだった。
そんな繭に土下座されても、あの場面で「YES」と言えない昂の母の気持ちも、
痛いほどわかる。繭の頬を打つ逞の母の気持ちもわかる。しかし最後に、彼女
が繭に「ありがとう」と言ってくれて、本当によかったと思うのだった。
学園の王子「昂サマ」を演じた細田よしひこは初見。ミッチーキャラで憎めない
男の子だけれど、豹柄に紫の靴下だけはありえないと思ってしまった・・・。

そして、岡田将生くん。もう、言葉がありません。彼がこの現実世界に存在し
ていることが信じられない。彼の周りの人たちは、彼がそばにいて平常心を保
てるのだろうか? 塀を乗り越えようとしながら「繭も行く?」と言った彼は、私
の心の引き出しに永久保存されるだろう。
ラストの繭のモノローグは長過ぎたような気もするけれど、本物の涙で演じ切
った井上真央をほめたい。エンディングで流れる平井堅の歌声は、繭へ捧げる
逞のアンサーソング。涙、涙、涙・・・。
さよなら ありがとう 好きだよ 好きだよ
さよなら 笑ってよ 泣くなよ バカだな
伝えたい言葉は止めどなく溢れる
何度も、何度でも 僕は君に恋をする
さよなら また会おう ごめんね 好きだよ
さよなら 笑ってよ 怒んなよ バカだな
恋しい 苦しい 愛しいじゃ足りない
何度も 何度でも叫ぶよ
好きだよ
さよなら
(『僕の初恋をキミに捧ぐ』 監督:新城毅彦/2009・日本/
主演:井上真央、岡田将生/主題歌:平井堅『僕は君に恋をする』)
神様のしるし~『ヘヴン』

クラスでいじめの標的となっている14歳の「僕」は、ある日短い手紙を受け取
る。 「わたしたちは仲間です」
それは「僕」と同じようにクラスで疎外され、虐げられているコジマからのメッ
セージだった。
『乳と卵』で芥川賞を受賞した、川上未映子の受賞後第一作。90年代初めの
地方都市の中学校を舞台に、陰惨で絶望的ないじめの渦中で育まれる友情、
思春期の戸惑い、別離の「向こう側」にある希望が描かれる。吐き気を催すほ
どの壮絶ないじめの描写に嫌悪感を覚え、涙しながらも、本を閉じることがで
きなかった。
読み進みながら、この小説の中に「村上春樹」的な何かを感じていた。彼の
唯一のリアリズム小説『ノルウェイの森』に似たものを。
孤独で内向的な、一人称で語る「僕」。何故かカタカナの「キズキ」と「コジマ」。
「僕」がコジマといるときの心の揺れはワタナベくんと直子の逢瀬を思い出させ
るし、百瀬の詭弁としか思えない言葉の数々は、永沢が語る「システム」のよう
だ。そして、直子とワタナベくんも「文通」をしていたのだった。
私の中学時代は校内暴力の嵐が吹き荒れていたけれども、その暴力の矛先
は自分たちの「外側」の教師や、学校そのものであって、ここに書かれているよ
うな「同級生」たちへの内にこもるいじめは存在しなかった(と思う)。今は大人に
なった90年代の中学生たちにとって、この小説は悪夢のような記憶を呼び覚ま
す忌まわしきもの、なのかもしれない。
女子のほうが精神的に大人で、男子はリードされる側、という思春期の男女の
立ち位置が巧く描かれている。苛めに苦しみ、追い詰められながらも、コジマから
の手紙と共に過ごすひとときに微かな光明を見出す「僕」。悶々としながらも彼が
コジマを想う心は、間違いなく純粋な「恋」だったのだと思う。
しかし、「僕」よりも少し大人びたコジマの言葉は、やや独善的に聞こえる。君
の目がすきだよ・・・。わたしにとってのいちばんは、君なんだよ・・・。そのささや
きは「僕」の心の中に波紋を描くけれど、「美しい弱さ」という言葉には自己陶酔
の匂いがする。コジマは確かに強く、やさしく、弱い存在だ。「僕」が傷つける側
に回ろうとしたとき、彼女は身を挺して「僕」を守ったのだと思う。それでも、彼女
は「僕」が変わろうとする気持ちを変えることはできないんだ。私は「僕」が逃げ
たのでも、負けたのでもないと思う。私は信じている、彼はそうすべきだったのだ
と。その「世界」の美しさが、束の間の幻影だったとしても。。人間は、天国にはいら
れないんだよ
「僕」を巡る大人たち、「母さん」と総合病院の先生が強く印象に残る。思春期
の子どもたちには、「親」でない大人の存在が必要なんだと。痛みや悲しみをくぐ
り抜け、生き延びている「大人」が。コジマにも、そんな誰かがいてくれればよか
ったのに。。。
川上未映子さんは、映画女優になれるくらい美人で、歌手でもあり、(もう結婚
はされているけれども)望めばどんな玉の輿にだって乗れただろう。セレブタレン
トになって、奥様雑誌の表紙を飾ることだってできたと思う。しかし彼女は華やか
さとは対極にあるような「文学」の道を選び、(恐らく)苦しんで苦しみぬいて、こん
なにも私の心を揺さぶる「つくりもの」を産み出した。「僕」を苛めぬく主犯・二ノ宮
は、小説を「正真正銘の嘘」で「圧倒的につまらない」と言い放つ。しかし、小説が
「本物の魔法」になり得ることを、本作は証明している。この力強い傑作と「作家」
川上未映子に、私は拍手とエールを送りたい。
(『ヘヴン』 川上未映子・著/講談社・2009)
地獄への呪文~『スペル』

DRAG ME TO HELL
銀行で融資係として働くクリス(アリソン・ローマン)は、ある日ローンを滞納
した老婆(ローナ・レイヴァー)から支払い延期を懇願される。自らの昇進のた
めに、老婆の申請を拒絶したクリスだったが・・・。
サム・ライミ監督によるホラー・コメディ。滅多に観ないジャンルだけれど、「笑
える」「最高!(タランティーノ談)」という評判を聞き、初日に鑑賞。←楽しみにして
たんか・・・。
ホラーにA級があるのかどうかわからないけれど、B級テイストたっぷりの作品。
セットは書き割りみたいだし、胡散臭い呪術師は出てくるし・・・。そして残念なが
ら、ホラー慣れしていない私はそれほど笑えなかった。怖くて(泣)。

しかし、ひっさびさにケチを付けまくりたくなる邦題ですねコレ。「スペル」って
「呪文」っていう意味らしいけど、日本でスペルって言ったら普通「綴り」でしょ!?
わざわざ原題と全く異なるカタカナ邦題にする意味がわかりません・・・。って言
うか、『スペル』なら『呪文』でいいんじゃない? 普通に。漢字で。
農家の娘で、昔太っていたことがコンプレックスなクリスは、老婆に恥をかか
せたことで逆恨みされてしまう。一筋縄では解けない悪魔的な呪いをかけられ
るも、命懸けで身を守ろうと奮闘。飼っていた子猫は生け贄にするわ、墓は掘
り起こすわ、かなり根性据わった娘です(笑)。アリソン・ローマンが体当たりで
大熱演。鼻血ブーだわ、泥まみれだわ、顔が変形してるわ。。監督もやりたい
放題ですね。
良家のお坊っちゃんで、若き心理学者の彼氏、クレイ(ジャスティン・ロング)も
いい味出してるんだけど、、無力でしたね。。。無念。
クリスに呪いをかけるおばあちゃんがもう、最強なんですよ。。神出鬼没だし。
滅茶苦茶汚いし。わけわからない物体を吐きまくるし。観てるこっちが吐き気し
そう。死ぬまでクリスに付きまとうと思いきや、あっけなく逝ってしまうし・・・。
「人を呪わば穴ふたつ」ですかね。

この映画の教訓。「封筒の中身は確認しよう!」 伏線が生きてましたね。普通
は中身だけ突っ込みそうな気もしますが・・・(笑)。
(『スペル』 監督・脚本:サム・ライミ/2009・USA/
主演:アリソン・ローマン、ジャスティン・ロング、ローナ・レイヴァー)
狂気は回る~『母なる証明』

MOTHER
韓国の田舎町で小さな漢方薬局を営む母(キム・ヘジャ)は、殺人事件の容疑
者となった最愛の一人息子・トジュン(ウォンビン)を救うべく奔走する。
韓国の若き天才、ポン・ジュノ監督の長編第4作。濃厚過ぎる母と子の愛情、
断ち難い絆、狂気をまとう母性を描くサスペンス。兵役を経たウォンビンの映画
復帰作でもあり、ウォンビンは「コンミナム返上」とばかりに、難しい役柄に挑戦
している。
監督の演出には、観る者に対してこの親子に対する安易な感情移入を許さな
い、複雑さと厳しさを感じる。母と子のストレートな愛情を描いた凡百の映画とは
一線を画す、一瞬たりとも目が離せない秀作。不気味で不穏なオープニングか
ら、息をするのも忘れてしまうほど引き込まれた。涙も出ない。

細く暗い路地を行く少女の白いふくらはぎに、傑作『殺人の追憶』がダブる。こ
の作品もまた、血と暴力、狂気と紙一重のほとばしる激情を描く、韓国映画の王
道を往く作品だと言える。しかし、敢えて自分の代表作と似た背景を持つ題材を
選んだ、監督の意図はどこにあるのだろう。
その答えは、タイトルロールである母を演じたキム・ヘジャの表情に、見開かれ
た大きな瞳に宿っている。過去に自分が犯した罪への呵責から、息子に対して
盲目的な愛情を捧げる母。「血を分ける」などという生易しい表現では到底、表し
ようがないほど、この母の息子への思いは狂気に苛まれている。血の巡りが悪
い息子・トジュンは、5歳の時に自ら成長を止めてしまったかのような青年。彼の
ことを「純粋」だとか「無垢」だとか、私は表現したくない。彼は「パポ野郎」と言わ
れることが何よりも嫌いな、プライドを持った一人の人間なのだ。

何があっても子どもの無実を信じる--これは母親であるならば、ごく当たり
前な感覚だろう。しかし彼女は行き過ぎてしまった。情動は極限を超え、新たな
悲劇を生む。母と子だけが知る真実、決して許されない罪が明かされるスリリン
グな展開に、息を呑む。
全て意味のある完璧なショットの数々は、もう一度観ればさらに深みを感じら
れそうな気がする。イ・ビョンウによる哀愁を帯びたギターがまた、素晴らしい。
踊る母の姿とともに、あのテーマ曲が耳に残って離れない。
ただ、ポン・ジュノの過去作品は、傑作、良作と思いこそすれ「好きな映画」だ
とは思ったことがない。本作も、まさに、まさしく、そういうタイプの作品だった、と
思うのだった。
(『母なる証明』 監督・原案・脚本:ポン・ジュノ/
主演:キム・ヘジャ、ウォンビン/2009・韓国)
テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画
地域限定・正義の味方~『三匹のおっさん』

幼馴染で、「アラ還」という年齢に差し掛かった今でも交流のあるおっさん三人
組が、秘密の自警団を結成する。キヨ、シゲ、ノリ。精神的にも経済的にもゆと
りある世代による「世直し」物語。
目下絶好調なライトノベル作家・有川浩さんの作品。いつもながら、有川さん
自身の真っ直ぐな性格がよく表れている作品だと思う。正義感の塊のようなおっ
さんたちはもちろん、キヨの孫・祐希とノリの娘・早苗の二人も、今日びこんな
清々しくて初々しい高校生いるんか?! と思ってしまうくらい純粋。読んで楽
しいお話ではある。
しかし、ちょっと最近この劇画ちっくな「有川調」にも、飽きてきたかもな~、
と思ったりして。。いやいや本当に面白いんですよ、サクサク読めるしね。有川
さんに、深刻で長大な作品なんて求めてないし。う~ん、私がちょっと疲れてい
るだけなのかもしれない。潔くて気風がよくて、とことんまっしぐらな有川さんが、
ちょっと眩しい日もあるのだった。
(『三匹のおっさん』 有川浩・著/文藝春秋・2009)
キング・オブ・ポップ~『THIS IS IT』

Michael Jackson's This Is It
2009年6月25日、目前に控えたロンドン公演のリハーサルを重ねながら50歳
で逝った天才アーティスト、マイケル・ジャクソン。舞台演出を担当したケニー・オ
ルテガによってそのリハーサル映像が映画となり、2週間限定で公開されてい
る。チケット発売日に指定席はゲット。シネコンの一番大きいシアターは満席。
感無量です。
「怒ってないよ、愛”L-O-V-E”なんだ」

マイケルと踊るために世界中から集まった若いダンサーたちのコメントから、
もうウルウルモード。彼らが幼い日、歌い踊るマイケルを観てどれほどの衝撃
を受けたか。彼らはマイケルのファミリーであり、一番熱狂的なファンでもある
ことが、映像から強く深く伝わってくる。
10年ぶりのツアー(リハーサル)でありながら、マイケルの歌とダンスが全く
錆びついてないことに驚かされる。フロアに吸いつきながら、柔らかく自在に
動く長い脚。軸がぶれない上半身、能弁な腕。一度観たら、決して忘れられ
ないそのパフォーマンス。凄い、凄過ぎる。『ビリー・ジーン』で着る予定だった
という電飾の付いた衣装、見てみたかった。
完璧主義者であり、挑戦者だったマイケル。そしてそれ以上に、謙虚さと思
いやりに溢れていたマイケル。若いギタリストをサポートする、やさしいマイケ
ル。そして一番印象的だったのが、監督であるケニー・オルテガへ向けられ
た愛と信頼だった。ケニー・オルテガはマイケルの死後「彼は天使だった」と
語っている。

しかし、10年というのは決して短いブランクでないこともまた、現実。イヤホン
の音に慣れず、「歌えない、耳に拳を突っ込まれているみたいだ」と訴えるマイ
ケルは痛々しかった。そして、その直後に流れるのは『I'll be there』。
この映画の中でジャクソン5時代の歌、とりわけ私が一番好きなあの曲をマイ
ケルが唄うとは、思ってもみなかった。兄弟と両親への愛と感謝を口にするマ
イケルに、この人は本当にピュアな魂を持っていると感じる。涙、涙・・・。
スキャンダルにまみれ、表舞台から遠ざかっていた彼を、迷子のように感じ
ていた。しかし、真実が見えていなかったのは私の方だったのだ。マイケルは、
ずっと変わらずそこにいたのに。彼を理解しようとしていなかったのは、私の
方だったのだ・・・。
「地球を守ろう」というメッセージとともに、映画は幕を閉じる。そしてその
瞬間、力強い拍手がシアター内に鳴り響いた。ファイナル・カーテンコール。
魅せてくれて、ありがとう。
(『THIS IS IT』 監督:ケニー・オルテガ/
主演:マイケル・ジャクソン/2009・USA)
テーマ : この映画がすごい!!
ジャンル : 映画
母親は如何に生きるべきなのか~『クリーン』

CLEAN
売れない歌手エミリー(マギー・チャン)は、カナダでの巡業中、ドラッグの過剰
摂取で元スターだった夫リーを亡くす。麻薬所持で服役したエミリーは、かつて
働いていたパリで再出発を期すのだが・・・。
元祖「アジアの小顔ちゃん」であり、カンヌ映画祭で主演女優賞を獲得したこの
作品を最後に半引退状態が続いている張曼玉マギー・チャン。久々に出演する
のでは?と期待していたタランティーノの新作にも登場しないようで、この機会を
逃すともう二度とマギーをスクリーンで拝めないかも。。そんな思いで劇場へ。
彼女の元夫でもあるオリヴィエ・アサイヤス監督作品は初見。
しかし、マギーといいイ・ヨンエといい、脂の乗り切ったアジアを代表する大女優
の新作が観られないというのは寂しい限り。映画って、いい男が出ていればそれ
でいいってものでもない。いつかまた、スクリーンに大輪の花を咲かせて欲しい。

落ちぶれた女が子どもとの触れ合いを求め、結局「自分の居場所」に帰ってゆく。
マギーの背中を追うカメラを観ながら、『レスラー』みたいな話だな、と思っていた。
ミッキー・ロークにはいたく感動させられた私だけれど、残念ながら本作は、さほど
心に沁みる作品というわけでもなく。。前夜の夜更かしも祟って、ひたすら「眠い」
映画だった。
エミリーが夫のリーや、息子のジェイや、自らの歌に対してどれほどの「思い入
れ」を持っていたのかが、全然伝わってこなかった。だから、ラストシーンの涙も、
私の心には響いて来なかったんだと思う。4年越しで観たい、観たいと願い続け
てきた作品だっただけに、残念。しかし、エミリーの義父アルブレヒトを演じたニッ
ク・ノルティはよかったと思う。息子を亡くし、孫を愛し育てても、結局「おじいちゃ
ん」でしかない彼。子どもは、母親を求めるものだから・・・。

心斎橋にあるミニシアターは、大好きな映画館の一つ。単館上映作品が多く、
みなさん本当に、映画がお好きなんだろうな~、という感じのお客さんが多い気
がする。そしてこの作品を観た日は、なんとベビーカーを押した若い女性が鑑賞
していた。
赤ちゃんは、推定1歳未満児。場内が暗くなって、怖がって泣き出すんじゃな
いか、と私は気が気でない。案の定、ぐずって泣きだす。あやすお母さん。泣き
やまない、立ち上がってあやし始める。
子どもが生まれてしばらく、本当に長い年月、映画館に行けなかった。だから
私は『千と千尋の神隠し』を映画館で観ていない。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
も観ていない。でも、当時はそれが当たり前のことだと思っていた。
エミリーは、ジェイ(ジェームズ・デニス)を義両親に預けて、夫と夢に賭けて
いた。あのままずっとリーが生きていたら、エミリーはジェイをどうしていたのだ
ろう。誰もが母親である前に、一人の人間である、それはわかっているのだけ
れど・・・。英語、フランス語、広東語を自在に操るマギーを見つめながら、どう
してもエミリーに感情移入できない私がいるのだった。
(『クリーン』 監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス/
主演:張曼玉マギー・チャン、ニック・ノルティ/2004・加、仏、英)