命懸けで守る~『96時間』
96時間



  TAKEN


 元CIA特殊部隊員ブライアン(リーアム・ニーソン)は、離れて暮らす
キム(マギー・グレイス)
を溺愛していた。パリ旅行に向かったキムが、ブラ
イアンとの電話中に拉致される。救出に向かうブライアン、リミットは96時間・・・。

 リュック・ベッソン製作・脚本、パリを舞台にしたサスペンス・アクション。
先日、妻であるナターシャ・リチャードソンを亡くしたリーアム・ニーソン主演
突然の訃報には言葉もなかったけれど、彼にはこれからもアイルランドを代表
する俳優
として、活躍して欲しいと願う。

 で、本作。リーアム・ニーソンがとにかく強い! デカイ! リミッターが切
れた暴走特急、という感じ。拷問、窃盗、経歴詐称、傷害致死不法侵入
何でもあり。娘のためなら「命を懸ける」その徹底ぶりに、拍手。こんなにお
父さんに愛されて、キムがうらやましいよ。でも・・・。

96時間2

 ヨローッパにおける人身売買、それも貧しい東欧諸国から西欧へ、という問題
は、題名のない子守唄でも描かれていた。本作では、それには一国の中枢
機関
が関与している、とほのめかされる。娘の救出に精一杯のブライアン、彼の
心情は痛いほど理解できる。けれど、娘を助け出せれば、それでいいのか? と
思う私がいた。あの女の子たちは、どうなるの・・・。

 持ち前の知力と体力を駆使し、ブライアンは遂に娘を奪還する。父娘の抱擁
場面はとても感動的。だけど、何もなかったかのように笑顔で帰国する二人に
微妙な違和感が・・・。前半で描かれる、人気歌手の警備はラストへの布石
だったのだろうけど、あれは蛇足でしょう。再会シーンでエンディングにして欲し
かったな~。。

 しかし、緊迫感が持続する約90分という上映時間には好感が持てました。何
も考えずに観るのがいいのかも・・・。

96時間3

 (『96時間』 監督:ピエール・モレル/2008・仏/
   製作・脚本:リュック・ベッソン/主演:リーアム・ニーソン、マギー・グレイス
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[2009/08/29 21:25] | 映画 | トラックバック(34) | コメント(9) |
ハリー・イン・ザ・ダーク~『ハリー・ポッターと謎のプリンス』 【吹き替え版】
ハリー・ポッターと謎のプリンス



 HARRY POTTER AND THE HALF-BLOOD PRINCE


 闇の帝王ヴォルデモートが復活し、その影響力はホグワーツ魔法学校に迫
ろうとしていた。ダンブルドア校長(マイケル・ガンボン)ハリー(ダニエル・ラ
ドクリフ)
とともに旧友スラグホーン(ジム・ブロードベント)を呼び寄せ、トム・リド
であった頃のヴォルデモードの記憶を探るが・・・。

 世界的人気シリーズ、『ハリー・ポッター』第6弾。今まで原作も映画も全て素
通りしてきたけれど、今回初劇場鑑賞。予習(?)としては『賢者の石』のみDVD
鑑賞、原作斜め読み。残りはチラ観&大体のストーリーは把握しておりました。
公開から一ヶ月以上経過していますが、日曜日ということもあってか場内はほぼ
満席の入り。ハリー・ポッターって本当に人気あるんですね、と今更・・・。

 『賢者の石』では、ハリー、ロン(ルパート・グリント)、ハーマイオニー(エマ・
ワトソン)
三人のかわいらしさ、ワクワクするような魔法の世界、英国映画を代表
するようなキャストに魅了されました。これは最初から映画館で観たかった。。
来年、再来年のクライマックスまでに、リバイバル上映希望~~!!
ちなみに、一番好きなキャラはハーマイオニーかな。エマ・ワトソン、可愛い~。

ハリー・ポッターと謎のプリンス2

 今回の作品では、キャストそれぞれの成長が感じられます。相変わらずのホグ
ワーツでの寮生活の中で、をし、自分の進むべき道、やるべきことを知る。
憎まれ役のドラコ・マルフォイ(トム・フェルトン)はますますダークサイドに落ち、
スネイプ(アラン・リックマン)はドラコの母と「誓い」を交わします。スネイプは、
果たして本当に悪役なのか? これも最終章にかけての見どころではないでしょ
うか。ハーマイオニーの思い人がロン、というのはちょっと意外。。癒しキャラ
ロンは、優等生の母性本能をくすぐるのかな? 変身上手なマクゴナガル先生
(マギー・スミス)
がお年を召したな、、というのも気になるところでした。

 映像は色味を抑え、青味がかったダークな雰囲気。子ども向けのファンタジッ
クな作品、という印象が強かった『賢者の石』に比べると、随分様変わりした感
があります。

ハリー・ポッターと謎のプリンス3

 そして今作のタイトルにもなっている、謎のプリンス=半純血のプリンスとは
誰なのか? という主題。本命は外しましたが、大体予想通りかな、という印象
です。ハリーを愛し、導き、後見人的存在だったダンブルドア先生亡き後の、
リーの運命
や、如何に? ホグワーツに別れを告げ、分割された魂を探す旅
出る三人。そして最後に待ち受けるのは、やはりヴォルデモートとの直接対決
なのか・・・。最終章までに、これは全作おさらいしておきたいですね。

 (『ハリー・ポッターと謎のプリンス』 監督:デヴィッド・イェーツ
  主演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン/2009・英、米)

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[2009/08/25 23:45] | 映画 | トラックバック(32) | コメント(4) |
I LOVE (TO)NY♪ ~ トニー賞授賞式2009 ~
トニー賞2009-1

 今年のトニー賞は大好きな映画『リトル・ダンサー』舞台版10冠獲得
というニュースを知り、「米演劇界最高の栄誉」と言われるトニー賞の授賞式
を(今頃ですが)観ました。

 アカデミー賞授賞式は毎年楽しみに観ていますが、トニー賞を観るのは初め
て。今年のアカデミーはミュージカル仕立て(ヒュー・ジャックマン!)で大変素
晴らしいエンターテインメント・ショーでしたが、こちらのトニー賞も負けず、劣ら
ず! さすがは、本場ブロードウェイ。今までミュージカルにはさほど執着して
いなかった私ですが、絶対、いつかNYに行ってミュージカルを観るゾ!と思っ
てしまいました(単純)。

 ところでトニー賞って名前の由来ですが。。私はてっきりミュージカルの名作
『ウエストサイド・ストーリー』の主人公に由来するのかと思っていましたが、
正式名称は「アントワネット・ペリー賞」と言うんだそうです。
「トニー」は「アントワネット」の愛称なんですね。なるほど~。。

トニー賞2009

 『ビリー・エリオット』の面々。若い彼らがトリプルキャストで、主演男優賞
を獲得。初々しい受賞スピーチがGood!


 映画界でも活躍する役者さんが、多数授賞式に参加していたり、ノミネート
されているんですね(当然ですが)。一番驚き、うれしかったのはトーチソン
グ・トリロジー
ハーヴェイ・ファイアスタインがプレゼンターとして出てきた
こと!  かなり恰幅がよくなってはいましたが、あの「ダミ声」は映画のまん
ま。彼をはじめ、『ビリー・エリオット』の立役者サー・エルトン・ジョン、スティ
ーヴン・ダルドリー
ら、ゲイであることをカミングアウトしている方々が目立っ
た授賞式だった気がします。

 さあ、『ビリー・エリオット』は日本で上演されるでしょうか? 観たいな~、
誰か輸入して下さい~♪

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[2009/08/24 20:16] | 舞台・ライブ | トラックバック(0) | コメント(2) |
この道草は甘い~『植物図鑑』
植物図鑑

 「雑草という名の草はない。すべての草には名前がある」

 凍てつく冬の日、独り暮らしのOL、河野さやか行き倒れの青年を見つける。
「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」

 ベタ甘系恋愛小説の名手、有川浩の「リアル落ち物女の子バージョン」小説。
いや~、これは最高によかった! 清々しくて、切なくて甘い、幸福感に満ち
満ちた作品。絶賛します。最高です。

 読めばたちまち散歩に行きたくなる。自転車で、ちょっと遠出してみたくな
る。身近な自然に触れてみたくなる。なんとも活き活きとした文体。主人公の
ときめきや、ワクドキ感がリアルに伝わってきて、お腹まで空いてくる。きっと
有川さん自身が純粋で心の綺麗なひとだから、こんな素敵な小説が生まれ
てくるんだな、と思う。

 しかしまぁ、、イツキの魅力的なこと! 近頃流行りの「草食系男子」では
あれど、男気と細やかな心遣いの両方を備えた好青年。長身でグッドルッ
キング、育ちの良さを感じさせる穏やかさ。こ~んな魅力的な男子が行き倒
れてたら、私だって拾いますとも~。

 イツキの道草料理レシピがおいしそうで、巻頭と巻末に付せられた植物の
写真
も目にやさしい。ああ~、「胸キュン」って、死語じゃなかったのね。
有川さん、ありがとう♪ この幸福に泣く。

 (『植物図鑑』 有川浩・著/角川書店・2009)

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[2009/08/23 21:47] | 読書 | トラックバック(3) | コメント(6) |
青春って奴は~『色即ぜねれいしょん』
色即ぜねれいしょん

 京都の仏教系私立男子高に通う乾純(渡辺大知)は、やさしい両親に愛され、幸せ
過ぎることが悩み。夏休みが近づいたある日、純は友人にこう誘われる。
「フリーセックスの島、行かへん?」

 平凡で「文化系男子」な一人の少年が、一夏の出逢いと別れを通じて成長していく
姿を描く、みうらじゅんの同名小説の映画化。観る予定はなかったのだが、敬愛する
ブロガー、「龍眼日記」のsabunoriさんに「面白いですよ♪」とオススメいただき
思わず鑑賞。ウチには文化系オタク予備軍の9歳男子@一人っ子がいるので、完全
「おかん」堀ちえみ目線で観てきました。いや~、なんだか身につまされるなぁ(笑)。
純情そのものの純の「悶々デイズ」がリアルで、かわいくて、なんだか胸がキュンキュ
鳴ってしまったのだった。監督は田口トモロヲ

色即ぜねれいしょん2

 ヤンキーにはなれず(両親が優しすぎてグレられない)、体育会系にもなれず(そ
もそも泳げない)、大人しく平凡な純。それでも彼には音楽という武器があり、ボブ
・ディラン
という「神」がいた。学校では黄金に輝く法然上人に見守られ、初恋の彼女
に挨拶もできない。そんな純に訪れた、恋の季節。眩しすぎる、オリーブ(臼田あさ美)
のノーブラ、白いビキニ! 上目遣いの、純のエロ目線に大笑い。こういう男の子、
いるよね~。

 ヒネたところの全く無さそうな、純の素直さにはほとんど感動してしまった。それ
は両親のおおらかな子育てによるものか、彼の生まれつきの気質によるものかは
わからない。しかしその彼の素直さが、さらに素敵な大人たちとの出逢いを引き寄
せているのは間違いない。あの「ヒッピー」家庭教師の兄ちゃん(くるりの岸田繁)、
サイコー!!
 説教臭さとは無縁で、わかりやすい挫折も笑い飛ばすようなこの
軽快さ。これは原作者のみうらじゅんや、監督の田口トモロヲが持ち続けている
「童貞マインド」が生み出す妄想力なんだろうね。

色即ぜねれいしょん3

 学園祭のステージでは、ちょっぴりリンダ リンダ リンダを思い出してしま
った。ヒゲゴジラを演じた峯田和伸は、末井昭さんが追っかけていた銀杏BOYZ
のひと。生瀬勝久に似た風貌で、海にダイヴするシーンでは激しいステージの
片鱗を観た気がした。

 私はまだ子どもだった70年代の雰囲気を、巧く再現していたとは思う。しかし、
あの四角いポストだけは惜しかった! 丸い寸胴なポスト、探せなかったのか
な~。純の部屋に、すでに仏像があったのには笑いました。

 純も(そしてウチのぼんも)、いつかは大人になるんだろうな。でも、いつまで
もその名の通り、純粋なオトコノコでいて欲しい。と、願わずにはいられない、
オカンな私なのだった。

 (『色即ぜねれいしょん』 監督:田口トモロヲ/原作:みうらじゅん
    主演:渡辺大知、峯田和伸、堀ちえみ、リリー・フランキー/2009・日本)

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[2009/08/21 00:02] | 映画 | トラックバック(10) | コメント(4) |
モードの先駆者~『ココ・シャネル』
ココ・シャネル



  COCO CHANEL


 1954年、パリで15年ぶりのコレクションを開いたココ・シャネル(シャーリー・
マクレーン)
。しかし、プレスの評価は惨憺たるもの。復活を期すココは、自らの
半生を回想する・・・。

 ガブリエル・ココ・シャネル生誕から125年、ブランド発足100周年を記念して、
今年はシャネルの伝記映画がいくつか公開される。その第一弾が本作。劇場
は妙齢のお嬢さん方でほぼ満席、シニア率が高そうな客層でした。
 私はシャネル・スーツは一着も持っていないけれど、小物や化粧品はいくつ
か愛用している。やっぱり、女性の永遠の憧れですよね、シャネルって。
期待を胸に鑑賞した本作だったけれど、ちょっと期待外れだったかも。それは、
「マドモワゼル」と呼ばれながらもココが英語をしゃべっている、という違和感だ
けではなくて。

ココ・シャネル2

 母を亡くし、父に捨てられ孤児院で育ったココ。お針子として身を立てようと働
きに出るも、彼女はたちまちに落ちる。相手は上流階級の将校、エチエンヌ
(サガモア・ステヴナン)
。このエチエンヌっていう男が、金持ちなだけのとんでも
ない食わせもの(ハンサムだけど)。彼に囲われて過ごした、郊外でのエピソード
が長過ぎる! 「そんなことはどーでもいいから、デザイナーとして自立していった
過程を早く見せてよ!」
とイライラしてしまった。

 同じフランス人の世界的歌手、エディット・ピアフの生涯を描いたエディット・ピ
アフ 愛の讃歌
はピアフの「人生=歌」そのものに焦点を当て、若き日々から
晩年までを演じ切ったマリオン・コティヤールの演技も凄かった。しかし回想シーン
から始まる本作は、若き日々の何が、ココの仕事に決定的な転機をもたらしたか
に焦点が当てられず、恋愛エピソードがメインで散漫な印象が否めなかった。
「成功でなく、失敗が人間を強くする。私は逆流を遡って強くなった」。そう語る
ココの激動の半生を、もっと突き詰めて描いて欲しかったと思う。

 ココの若い頃を演じたイタリア人女優、バルボラ・ボブローヴァは真木よう子
に似たコケティッシュな雰囲気の女優さん。好感は持てたけれど、ココが放っ
ていたであろうカリスマ性は感じられず、どちらかと言うと平凡な「隣のお姉
さん」的印象。70歳のココを演じたシャーリー・マクレーンはさすがの貫禄
けれど、残念ながら希代のファッション・デザイナーのイメージじゃない。「オス
カー女優が主演」
という惹句が必要ならば、ヴァネッサ・レッドグレーヴのほう
が適役だったんじゃないだろうか。

ココ・シャネル3

 、、と、好き勝手なことばっかり長々と書いてしまったけれど、華やかな衣装
コレクション風景は目の保養でございました。昔は自社ビルでコレクション
を開いていたんだな、とか、ブランドの雰囲気は50年前から、今も変わらず
継承されているんだな、とか。
「香水を選べない女に未来はない」っていう言葉は、耳が痛かった。ただただ、
女性を自由に、楽に生きさせたい、というココの信念を忘れず感謝して、私も
いつかは、シャネル・スーツに腕を通してみたい。

 (『ココ・シャネル』 監督:クリスチャン・デュケイ/2008・伊、仏、英/
   主演:シャーリー・マクレーン、バルボラ・ボブローヴァ、マルコム・マクダウェル)

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[2009/08/20 23:11] | 映画 | トラックバック(22) | コメント(6) |
移民の街、非寛容な国~『扉をたたく人』
扉をたたく人



  THE VISITOR


 コネティカットに住む大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)は、
所有するニューヨークのアパートに不法入居していたシリア人青年タレク
(ハーズ・スレイマン)
と出会う。

 長いキャリアながら、主演は初というリチャード・ジェンキンスがアカデミ
ー賞主演男優賞にノミネート
され、数々の賞を受賞して話題となった本作。
どうしても、どうしても観たかったのです。CGもド派手なアクションもない、
大スターも出てこない、小さなインディペンデント系作品。しかしシリアスと
ユーモアの匙加減が絶妙
で、予想以上に素晴らしい作品だった。これは
個人的に、今年のベスト作かも。監督は脚本も書いているトム・マッカー
シー
。俳優さんらしいが、偉大な映画監督になるかも、、憶えておこう!

扉をたたく人2

 頑固で口下手で偏屈なウォルターは、きっと妻が亡くなるずっとずっと前から、
心を閉ざして生きていたのだろう。音楽や芸術への憧れは人一倍強くても、その
プライドの高さゆえ、素直に教えを乞うことができない。しかし、その薬指にマリッ
ジリングを着け続ける彼は決して悪人ではなく、不法滞在と思しき有色人種の
カップルを見過ごすことができない善良な人物。別の見方をすれば、ウォルター
にとって彼らは「異邦人」であったがゆえに、固く閉ざした心が開かれたのかも
しれない。

 「あんなにも善良な人間」だとウォルターが言うタレク。音楽を愛し、恋人を、
母を愛し、生命力に満ち溢れた、若いアラブ人の青年。しかし、9・11後のニュ
ーヨーク
は、そんな健全な彼を許容する街ではなくなっていた。移民の国アメリ
カは、他者を受け入れるよりも「排除」することに神経を尖らせる、非寛容な国
に変わってしまったのだ。

 タレクが逮捕されたことに良心の呵責を感じるウォルターの前に、一人の「訪問
者」が現れる。タレクの母、パレスチナ人のモーナ(ヒアム・アッバス)。邦題の
「扉をたたく人」とは、彼女のことだったのか・・・。アラブ系女優の代表、大好き
ヒアム・アッバスの出演は知らず、彼女の美しさに思わず、息を呑む。

扉をたたく人3

 美しい母、モーナにときめくウォルターの表情が、次第に柔和になってゆく。
タレクを巡る状況は厳しさを増し、それに反比例するかのように、ウォルターと
モーナの距離は近づいてゆく。雨のブロードウェイ、とびきりの赤ワイン。しか
し幸せな時間は長くは続かず、別離の時は近づいていた。

 ウォルターが初めて感情を爆発させたとき、その理不尽さに涙がれる。良心
も、音楽も、家族への愛も、国家権力の前ではあまりに無力だった。星条旗が
涙で滲む、永遠の別れ「ハビティ」愛しい人・・・。それでもウォルターはジャンベ
を叩く。タレクの願った場所で、この怒りよ、地球の裏側まで響け、と。

扉をたたく人4

 (『扉をたたく人』 監督・脚本:トム・マッカーシー
     主演:リチャード・ジェンキンス、ヒアム・アッバス/2007・USA)

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[2009/08/18 00:00] | 映画 | トラックバック(25) | コメント(10) |
ある職場の風景~『ここに消えない会話がある』
ここに消えない会話がある

 新聞のラテ欄を作る配信会社に勤務する広田は、見た目オタク系の青年。同じ
職場のは小説を書いている。二人は25歳。

 ここのところ精力的に作品を発表している、山崎ナオコーラの新作。どこにで
もありそうな会社の、職場の風景と人間模様を描いた「職場小説」。とても薄い
小説なので、読む人によっては「何コレ?」な内容かもしれない。しかし、正社員
と契約社員の待遇の格差や、いわゆる「草食系」な男子の生態が描かれ、今と
いう「時代」の空気を上手に捉えている作品だと思う。文章は相変わらず詩的で
的確で、巧い
です。広田と岸の視点がいつのまにか入れ替わっているところなど、
技あり。ナオコーラーな私としては、この小説も好きです。 そういえば、
何かでも配信会社が舞台だったことがあるな。表紙の写真がとてもユニークなの
だけれど、読めばその意味がわかります。

 山崎ナオコーラの小説は、一貫して「人より得をしたり、時間を節約したり、お金
をたくさん儲けたりして、それが何?」
と言わんばかり。日本で二番目に偏差値が
高い大学(京大、多分)を出ても、正社員として働いていない広田。そんなこと全然、
オッケーでしょう
、というナオコーラのつぶやきが聞こえてきそう。

 「先に続く仕事や、実りのある恋だけが、人生を成熟へと向かわせるわけではな
い。ストーリーからこぼれる会話が人生を作るのだ」


 名言ですね。

 (『ここに消えない会話がある』 山崎ナオコーラ・著/集英社・2008)

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[2009/08/17 18:29] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(0) |
視界良好~『サンシャイン・クリーニング』
サンシャイン・クリーニング


 SUNSHINE CLEANING


 ニューメキシコ州アルバカーキ。元チアリーダーでシングルマザーのローズ(エイ
ミー・アダムス)
は、高校時代の恋人と不倫中。妹のノラ(エミリー・ブラント)は定職
に就かず、実家で父親(アラン・アーキン)と同居中。そんな二人が、事件現場の
清掃業
を始めることになり・・・。

 問題を抱えたプア・ホワイト一家の再生、「太陽」の黄色、アラン・アーキンのお
じいちゃん、そのものズバリ「サンシャイン」というタイトル
リトル・ミス・サンシャ
イン
に連なるインディ系ヒューマン・ドラマ。ずっと楽しみにしていたけれど、予想
以上に素敵な物語だった。個人的には『リトル・ミス~』よりこちらの作品のほうが
好きかも。姉妹の物語であり、終盤に登場する靴のエピソードもあり、イン・ハー・
シューズ
もちょっぴり思い浮かぶ作品。ファーストシーンから流れる音楽がナイス
で、サントラが欲しいと思ってしまった。

サンシャイン・クリーニング2

 高校時代は学園のスターとして人気者だったローズは、今は同級生の誰よりも
お金に困っている。美人で正義感が強いノラも、自身の生き方に迷い、居場所を
探して堂々巡り。しかし偶然始めた「バイオハザード」な清掃稼業によって、二人
はずっと蓋をして生きてきた「過去」と向き合わざるを得なくなる。

 私は姉でもあり、妹でもあるので、ローズにもノラにも感情移入して観ていた。
姉はつい妹の世話を焼き、妹はついそれに甘えてしまう。幼い日、母を亡くした
彼女たちには、「自分は美しくて、可能性に満ちているんだ」そんな自尊感情が
欠落
してしまったのかもしれない。ローズが高校時代の恋人マック(スティーヴ・
ザーン)
と切れないのは、一番輝いていた高校時代の自分を手放したくないか
ら。今の自分は「Fuckin' Loser」だとわかっていながら・・・。

 エイミー・アダムス、エミリー・ブラント。ともにジュリア・ロバーツ的「大輪の華」
タイプではないにしろ、安心感のある雰囲気と確かな演技力を持つ、若手女優
筆頭。二人とも大好きです。

サンシャイン・クリーニング3

 姉妹をさり気なく手助けするウィンストン(クリフトン・コリンズ・Jr)がいい。
彼が片腕をどこで失くしたのか、ローズの息子オスカーの父親が誰なのか。
説明されないことも多い。(多分)レズビアンのリン(メアリー・リン・ライスカブ)
についても、もう少し突っ込んで描いてくれてもよかったとも思う。東へ向かっ
ノラの未来も、ウィンストンとローズの関係も、これからどうなるのかはわか
らない。それでもこの不器用なやさしさに満ちた映画は、こんなセリフで私の
心を鷲掴みにしてくれた。
 「バスタードってどういう意味?」 「ローズは未婚であなたを産んだの。最高
にクールってことよ」


 誰もが秘密を抱え、過去に囚われ、引きずりながら傷だらけで生きている。
時にやっかいで、困惑させられる「家族」というかけがえのない存在。全てを
失くしても、またゼロから始めればいいんだね、家族と一緒に。

 (『サンシャイン・クリーニング』 監督:クリスティン・ジェフズ
   主演:エイミー・アダムス、エミリー・ブラント、アラン・アーキン/2008・USA)

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[2009/08/16 21:24] | 映画 | トラックバック(26) | コメント(6) |
忠犬ハチ公~『HACHI 約束の犬』
ハチ




 Hachiko: A Dog's Story


 大学教授パーカー(リチャード・ギア)は、クリスマス間近な冬のある日、駅で
迷い犬と出逢う。「八」のプレートを付けたその仔犬は、日本から運ばれた秋田
だった。

 日本人なら誰でも知っている(だろう)忠犬ハチ公の物語が、アメリカ映画にな
った。主演はリチャード・ギア、監督はラッセ・ハルストレム。監督の作品だから
・・・、という理由でこの映画を観る人、結構多いんじゃないかな。私ももちろん、
その一人です。ギア様も素敵だったけど、ハチのうるんだ瞳には敵いません。
洟をすすっている人が多かったな。。ハンカチ必携の映画です! ただ、「泣か
せよう」系の過剰な演出は皆無ですので、ご安心下さい。

ハチ2

 渋谷駅のハチ公像は見たことがないし、ハチの物語についても、今回初めて詳
しく知った私。実際のハチの飼い主は東大教授で、飼い主の死後、ハチは9年間
も渋谷駅前で待ち続けたらしい。「ハチ」という名前の由来は、日本で縁起が良い
とされる数字の「八」で、天に昇って地に還るという意味があるそうだ。なるほど、
主人を毎朝見送り、定時に迎えに行くハチの生活に至極当てはまっているかも。
(しかし、電車通勤なのに毎日夕方5時に帰れる大学教授って、どんな職業よ! 
と思ってしまった)

 秋田犬はボール遊びで主人を喜ばせたりすることには興味がないらしい。実際
にはさほど飼い易い犬種ではないんだとか・・・。それでも、ハチがパーカーに見せ
「忠誠」は凄いの一言!! 「待つ」と決めたら、ハチの生活はその一点に集約
されるのだ。夕方5時に駅に来て、雪の日も、雨の日も、来る日も来る日も主人を
待ち続ける。パーカーの異変に唯一気づいていたのも、ハチだった。人知を超えた
が生まれていたんだね。。

 ナレーションやキャプションを極力排し、淡々と流れるストーリー。時折「ハチ
目線」のモノクロ映像が挿入されるのがアクセントになっている。音楽も過剰で
はなく、パーカーが奏でているかのようなピアノスコアが美しい。

ハチ3

 パーカーの妻ケイト(ジョーン・アレン)はハチを飼うことを頑なに拒んでいた。
動物を飼うことは一つの命を預かることで、大きな責任を伴う。飼い主にもしも
のことがあったらどうするか、本当はそこまで考えないといけないんだな、って
思った。動物は言葉がしゃべれない分、絶対に裏切らないから、人間が勝手に
「癒し」や「慰め」だけを求めて飼うのはいけないことなんだ、って。

 全然関係ないけど、吉本ばななさんの『ハチ公の最後の恋人』っていう小説が、
私は大好きなんです。ばななさん、最近全然読まないけど、あの作品だけは特別。
映画を観ながら、また読み返したいって思ってました。

ハチ4

 (『HACHI 約束の犬』 監督:ラッセ・ハルストレム
           製作・主演:リチャード・ギア/2009・USA)

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[2009/08/12 20:30] | 映画 | トラックバック(27) | コメント(12) |
スーパー・ドッグ!~『ボルト』 【吹き替え版】
ボルト



 BOLT


 ボルトは、飼い主で子役スターのペニーに忠誠を誓うタレント犬。自分をドラマ
の中の超能力犬だと信じ込んでいるボルトは、ある日ハリウッドからニューヨー
へと送られてしまう・・・。

 ディズニー/ピクサーの新作アニメ。撮影スタジオの中を現実だと信じて生き
る犬が、新しい出逢いの中で「本当の自分」を見つけるロードムービー。企画の
段階から3D映画として製作された作品らしいけれど、残念ながら2D版にて鑑賞。
しかし、全く問題なく楽しめました。動物と子どもには、勝てませんね。。涙、涙。。

ボルト3

 しかし、これ3Dだったらどんな感じだったんだろう?! 2Dでもボルトの動き
は物凄く激しかったから、大迫力だったんじゃないかな? 個人的には、ボルト
の声が佐々木蔵之介さんだったのが少々、気になりました。ハムスターのライノ
天野くんだったのね、全然気づかなかった・・・、結構巧いじゃん。
 好きだったキャラは、ペニーのマネージャー氏「クリップで止めてぇ~、後で
ゆっくり考えよう♪」


 人物造形が巧く、琴線に触れるストーリー運びに長けた、ピクサーの王道を行
く作品。次から次へと面白くて、質の高い映画を生み出す彼らの力量は、凄いの
一言。予告で流れた『カールじいさんの空飛ぶ家』が、今から楽しみです。

メーターの東京レース

 そしてお馴染みの併映短編作品は、なんと『カーズ』のスピンオフ!!
『メーターの東京レース』(原題:TOKYO MATER)。『カーズ』はDVD鑑賞だっ
たので、大きなスクリーンであの作品を感じることができて、とってもうれしか
った。

 (『ボルト』 監督:バイロン・ハワード&クリス・ウィリアムズ/2008・USA)
 (『メーターの東京レース』 監督:ジョン・ラセター/2008・USA)

テーマ:ディズニー - ジャンル:映画

[2009/08/07 10:57] | 映画 | トラックバック(21) | コメント(8) |
さよなら子どもたち~『骸骨ビルの庭』
骸骨ビルの庭上骸骨ビルの庭下

 大阪・十三に建つ、通称「骸骨ビル」。戦後の混乱期、このビルで多数の戦争
孤児
を引き取り、育てた二人の男がいた。

 宮本輝の小説は、新刊が出ると必ず、癖のように必ず読む。最初に読んだ彼
の小説が何だったのか、もう記憶の彼方ではある。しかし、同時代を生きる人間
としていつまでも気になる存在の、輝さん。新作は「無償の善意」とは何か、が
テーマの長編小説。

 8月5日付の朝日新聞朝刊に、各書誌、絶賛の書評とともにこの小説の一面
広告
が載っていて驚いた。小説の一面広告って、あまり記憶にない。。

 宮本輝の小説は、『流転の海』シリーズなどを除けば、近年は物語そのもの
よりも、作者がどうしても伝えたい「言葉」のために書かれているような気がす
る。本作で言えば、「魂魄」だとか「永遠性」だとか。物語よりも先に言葉があっ
て、その言葉を肉付けしていくために物語があるような。本作も、そんな印象
だった。

 正直、主人公・八木沢省三郎(ヤギショウはん)に人間的魅力が感じられず、
彼の日記形式で進む物語は「一気読み」させてくれるような剛脚ではない。し
かし、ラストの怒涛の展開、静かな凪から感動の嵐が沸き起こる運びはさすが、
と言うしかない。

 子育ては、私にとっても「祈り」そのものかもしれない。この子をお守り下さい、
この子が今日一日、楽しく過ごせますように。ランドセルを背負った後姿を見送
りながら、自分だけの神様に祈る。未熟な人間が、新しい一人の人間を育てる
という「使命」を仰せつかったとき、必要なのは絶対君主ではなくむしろ、謙虚
でひた向きな献身
なのだろう。

 涼しくなったら、十三にねぎ焼きでも食べに行こうかな。骸骨ビルは、もうない
けど。

 (『骸骨ビルの庭』上・下 宮本輝・著/2009・講談社)

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

[2009/08/06 23:51] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(2) |
~ 暑中お見舞い申し上げます ~
岡田将生2

 やっと近畿地方も梅雨が明けました。
 ギラギラ太陽に挫けそうになる毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか。


 『オトメン』、例によってチラ見ですけれども、↑このお方のキラ☆キラぶり
 にワタクシもう、クラクラでした(笑)。

 さぁ、いつ観れるかな、
『扉をたたく人』 と 『サンシャイン・クリーニング』
 間に合うといいんですけど・・・。

テーマ:季節の話題 - ジャンル:ブログ

[2009/08/04 02:33] | 徒然 | トラックバック(0) | コメント(4) |
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真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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