お知らせ ~ ブログを休止します ~
訪れて下さった皆さま、こんにちは。
明日からしばらくの間、ブログを休止します。
ここのところ全く余裕がなく、体調も今一つ。中途半端にグジグジと悩むよりは
と、思い切って休むことにしました。
コメントやTBは変わらず受け付けますが、レスやお返しは遅れますことをお許し
下さい。
皆さまお元気で! 再会の日を楽しみにしておりますね。
ではでは。。
真紅拝
明日からしばらくの間、ブログを休止します。
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真紅拝
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CIAメン~『バーン・アフター・リーディング』

BURN AFTER READING
CIAに勤務するオジー(ジョン・マルコビッチ)は国務省への出向を命じられ、
キレて辞職してしまう。歯科医である彼の妻ケイティ(ティルダ・スウィントン)
は、連邦保安官ハリー(ジョージ・クルーニー)と不倫中・・・。
『ノーカントリー』でアカデミー賞を受賞した、コーエン兄弟によるブラック・
コメディ。豪華キャストのギャラ以外は低予算で撮られたと思われる作品。
ダニー・オーシャンの格好良さを想像して、ジョージ・クルーニー(いい車が
好きだ、男ですから)見たさに劇場に足を運んだ人(私とか)は肩すかしを
食らうんじゃないだろうか。公開二日目の劇場内には、ビミョ~な空気が
流れていた(誰も笑わないんですから)。ブラピの弾けた演技(鼻血ブー)
は必見。しかし、ジョン・マルコビッチとティルダ・スウィントンが夫婦って・・・。
なんか怖い。

健康志向のはずのスポーツジムの従業員、リンダ(フランシス・マクドーマンド)
は全身整形希望。保安官のハリーは「走らなきゃ」が口癖で、彼らは出会い系サ
イトで相手を物色している。オジーはアルコール依存症気味で、夫婦関係は破綻。
社会的には至極まともな位置にある彼ら、実は全員病んでいる。彼らは現代の
アメリカの落とし子なのかと考えると、怖いような、笑えるような・・・。しかし振り
返って日本の状況を考えれば、笑ってる場合じゃない!
そしてさらに不気味なのが「視線」。オジーやハリーを尾行し、監視するのは誰
なのか。監視社会の恐ろしさっていうのも色んな映画で語られていること。そもそ
もこの映画のオープニングが、監視衛星のカメラがラングレーのCIA本部にフォー
カスするところで始まっているのだから、監督の意図は明らかだろう。オジーの父
もCIA職員だった、という場面が、日本の政界の世襲にダブる。

ハリーは重複不倫中。結局奥さんの元へ帰ろうとしても時、すでに遅し。劇
中、唯一の「いい人キャラ」である上司(リチャード・ジェンキンス)の気持にも
気づかず、ハリーの見てくれに惹かれ、脳天気男チャド(ブラッド・ピット)だけ
を頼りにするリンダが哀れにも見えてくる。それでも女たちは皆、それぞれの
望みを叶え、男たちは皆最悪の運命を辿る。J・K・シモンズと一緒に困り顔で
結末を眺めながら、エンドロールで聴こえてきた歌声に、皮肉のダメ押しをさ
れた。
(『バーン・アフター・リーディング』2008・米、英、仏/
監督・製作・脚本・編集:ジョエル&イーサン・コーエン/
主演:ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、ブラッド・ピット)
テーマ : バーン・アフター・リーディング
ジャンル : 映画
ファイナルダンサー!~『スラムドッグ$ミリオネア』

SLUMDOG MILLIONAIRE
"Who Wants To Be A Millionaire?"
2006年、インド・ムンバイ。スラム育ちの青年ジャマール(デーヴ・パテル)は
人気クイズ番組に出演、最高賞金額獲得まであと一問、というところで警察に
連行される。無学の彼が、何故回答を知り得たのか。そこにはジャマールが
辿った、壮絶な人生があった・・・。
ハリウッドスターは皆無、DVDストレートの予定がトロント映画祭で好評を博
し、あれよあれよと言う間にオスカー・レースの筆頭に躍進。第81回アカデミー
賞において作品賞・監督賞をはじめ8部門で受賞、2008年度の映画賞レース
を席巻したインディペンデント映画。インドのスラム街を縦横無尽に疾走する
カメラ、躍動感溢れる音楽、観る者の心を高揚させ、多幸感をもたらす歌と踊り
のハッピー・エンディング。監督はダニー・ボイル。

実はダニー・ボイル、それほど「お気に入り」の監督というわけでもない。彼の
出世作『トレインスポッティング』は映画好きなら誰でも観ている映画かもしれな
いけれど、公開当時私はあの「汚トイレ」シーンに大ショックを受け、好きな映画
とは言い難い。本作でも「ぼっとんトイレ」が登場し、主人公がそこにダイブする
という衝撃的なシーンがある。ダニー・ボイルって、本当に・・・(以下自粛)。しか
し少年ジャマールがまみれる汚物は、ピーナッツバターとチョコレートを調合した
ものだそうです、御安心下さい(笑)。う~ん、でもジャマールが持っていたブロ
マイド、どうして全然汚れてなかったんだろう?←突っ込み
経済的には急成長を続けるインドだけれど、あのスラム街の混沌は凄まじい。
宗教間の対立、貧富の差、ストリートチルドレン。インドの「今」を映しながら、
物語は一人の少年の初恋を追い続ける。「愛」さえあれば何処ででも生きてい
ける、と信じるジャマールのまっすぐな眼差し。美しく成長したラティカを演じた
フリーダ・ピントはもちろんのこと、幼少期、少女期を演じた少女のそれぞれが
魅力的なこと! ほぼ素人だという子役たちの達者な演技に驚く。裸足のまま
で、物乞いをしながらも逞しく生き抜こうとする少年・少女たちの大きな瞳が、
とても印象的だった。インドの青い列車も。。

現在と過去、時間軸を行きつ戻りつ描かれるストーリーは、脚本と編集の妙で
観る者を最後までスクリーンに釘付けにする。困難な道程を経て、一人の青年
の初恋が成就するまで。「大金持ちになって、二人で暮らそう」。ラティカに求愛
しながら踊る幼いジャマール。映画のラスト、駅のホームで始まる祝祭のダンス。
クイズの行方を固唾を呑んで見守っていた観客にも、圧倒的な幸福感がスクリー
ンから降って来る。満たされた気分。オスカーおめでとう!!
(『スラムドッグ$ミリオネア』監督:ダニー・ボイル/2008・UK/
主演:デーヴ・パテル、フリーダ・ピント、アニル・カプール)
テーマ : スラムドッグ$ミリオネア
ジャンル : 映画
浪速の王国~『プリンセス・トヨトミ』

会計検査院に所属する調査官、松平、鳥居、ゲンズブール旭の三人は、新幹線で
大阪に向かった。彼らの検査対象には「OJO」という謎の団体が含まれていた・・・。
デビュー作『鴨川ホルモー』が映画化され、絶賛公開中の「文壇の不思議ちゃん」こと
万城目学。京都、奈良と続き、待望の新作は大阪が舞台。空堀商店街のお好み焼き
店・太閤の一人息子大輔と、その幼なじみ茶子を主人公に、相変わらず奇想天外な
物語が展開する。
この小説、読んでいる最中はかなり退屈。説明的文章が多いので、テンポが悪く
てなかなか進まない。私は大阪に住んでいて、JR森ノ宮駅から大阪城を右手に眺
めながら通勤していたこともあるので、物語の舞台が視覚的に浮かんでくる。だか
らまだ読みやすかったかもしれないけれど、関西以外に住んでいる方々はどう感じ
られたかな・・・。
大輔は「女の子になりたい男の子」なのだけど、彼の性格付けも今一つ頷けない。
セーラー服を着たいと彼が望んでいる以外、「女の子」を感じさせる性格描写が全く
ないのだ。大輔の父、真田幸一が「真田幸村」を意識した人物なのはわかるのだけれ
ど、大輔というキャラの設定意図はわからなかった。
しかし読み終わってみれば「面白かった」と感じてしまうところがまた不思議。大阪
女学館の南場先生も登場するから、もしかしたら万城目さんの小説って、すべてが
リンクして大きな物語になるのでは?なんて妄想してしまう。そう、「ギドク曼陀羅」
みたいにね。万城目さんの頭の中には、誰も考えつかないような長大な物語が進行
中なのかも・・・。
そういえば先日、あるところで万城目さんのことを【偽森見】と呼んでいるのを見
て笑ってしまった。確かに、出身大学や文体の傾向から、この二人は比較される
ことが多い。でも私は万城目っちを応援しているからね~。次も期待してますよ。
(『プリンセス・トヨトミ』万城目学・著/文藝春秋・2009)
消せない灯~『ミルク』

MILK
同性愛者であることをカミングアウトし、全米で初めて公職に就いたハーヴィー
・ミルク(ショーン・ペン)。1978年のある夜、彼は一人、カセットデッキに向か
って語りかけていた。「僕が暗殺されたら、このテープを公開して欲しい・・・」。
凶弾に倒れた彼の最後の8年間を、ドキュメンタリー映像を交えて描き出すドラ
マ。主演のショーン・ペンは第81回アカデミー賞主演男優賞をはじめ、数々の賞
を受賞。長いリサーチを経て脚本を執筆したダスティン・ランス・ブラックは同じ
くオスカーに輝き、授賞式での感動的なスピーチは記憶に新しい。彼がカメオ
出演していることは知らなかったので、顔が見られてうれしかった。音楽はダニ
ー・エルフマン、監督はガス・ヴァン・サント。必見。マスターピース。
私がハーヴィー・ミルクの存在を知ったのは、彼の名を関したLGBTの子ども
たちの為の公立学校「ハーヴィー・ミルク・ハイスクール」を追ったドキュメンタリ
ー『ヴィオイス・オブ・ヘドウィグ』を観たとき。同時にこの映画がショーン主演で
製作されるというニュースを知り、とても楽しみにしていた。期待通り、いやそれ
以上に素晴らしい作品だった。もう一度観たい、いや、何度でも・・・。
「僕はハーヴィー・ミルク、君たちを勧誘したい」

1970年、ニューヨーク。40歳の誕生日を迎えたハーヴィーは、地下鉄の階段で
スコット(ジェームズ・フランコ)と出会う。一目で恋に落ちた二人。「新しい人生」
を生きるべく西へ向かったハーヴィーとスコットは、サンフランシスコのカストロ
通りで小さなカメラ店を開く。そこはいつの間にかゲイたちの溜まり場となり、ハ
ーヴィーは政治に目覚め、市の執行委員に立候補する。
3度の落選の末、4度目で当選を果たすハーヴィー。同志たちとの出会い、スコッ
トとの別れ、新しい仲間、若いメキシコ人の恋人ジャック(ディエゴ・ルナ)。
「すべての人間は等しい権利を持つ」という信念のもと、ハーヴィーは同性愛者の
公民権獲得のために闘う。人を逸らさず、抜群のユーモアとジョーク、柔らかい物
腰で、多くの人々を惹きつけるハーヴィー。しかし公職に就いた彼は、腹芸や根回
しとも無縁でない、政治家らしい人間だったとも言えるだろう。
この映画で一番感動的なのは、ハーヴィーの人間性でも、虐げられた人々の怒
りのパワーが爆発する様でもなく、勝利のカタルシスでもない。それはハーヴィー
とスコットの間に存在した、絶対的な愛情ではないだろうか。男としてではなく、ま
してやゲイとしてでもなく、ただ「人間として」お互いを思う姿。ハーヴィーがスコット
を撮った、モノクロ写真の美しいこと!! ジェームズ・フランコのクローズアップ。
監督の愛が溢れている。
スコットは政治に傾きすぎたハーヴィーから離れてゆくけれど、それは決して
スコットの愛が消えたわけではない。愛する者を独占できない不安に、彼が負け
ただけ。彼の心は終生、ハーヴィーとともにあった。「50歳になれそうだね」。ハー
ヴィー48歳のバースディパーティで、初めて出会った夜の会話を思い出す二人。
その後に待っている悲劇。涙が溢れる。
ショーン・ペンはもちろんのこと、ジェームズ・フランコ、エミール・ハーシュら、
若手の麗しき俳優たちの演技も素晴らしい。個人的には、ルーカス・グラビール
(『ハイ・スクール・ミュージカル/ザ・ムービー』)の出演が無性にうれしかった。
カストロカメラ店で働くフォトグラファー、ダニーを演じた彼。出演していることは
知らなかったけれど、ガス・ヴァン・サントの精巧な「美少年レーダー」に引っか
かったのだろう。金髪碧眼の彼は、画面のいい「挿し色」になっていたと思う。
俳優たちはモデルとなった実在の人物たちと驚くほど似ていたのに、唯一の
女性キャラだったアン・クローネンバーグだけは、実物のほうがずっと美しかっ
たのが印象的。監督の、無意識の意図を感じる。

ショーンがオスカー受賞スピーチで「孫の代までの恥だ」と断罪した、同性婚
禁止法案「提案8号」。映画を観ながら、ハーヴィーが闘い、そして勝利した
「提案6号」との不思議な符丁を感じてしまう。ハーヴィーが逝って30年、今の
状況を「まだまだ」と捉えるか、「ここまで来た」と感じるか。
もう少し、きっともう少しなんだと思う。命を賭けて、彼が伝えたかった「希望」
は、右からも左からも、上からも下からも奪うことなどできない。あの夜のマーチ
の灯のように、それは決して、誰にも消せないはずだから。
(『ミルク』 監督:ガス・ヴァン・サント/2008・USA/
製作総指揮・脚本:ダスティン・ランス・ブラック/
主演:ショーン・ペン、エミール・ハーシュ、ジェームズ・フランコ)
決戦天下~『レッドクリフ Part Ⅱ/未来への最終決戦』

RED CLIFF: PART Ⅱ
赤壁 決戦天下
今から1800年前、中国、群雄割拠の時代。80万の曹操軍に対する5万
の劉備・孫権連合軍だったが、疫病の流行により、劉備軍は撤退してしまう。
天才軍師諸葛孔明(金城武)と指揮官・周瑜(トニー・レオン)の選んだ戦法
とは・・・。『三国志』に描かれた「赤壁の戦い」の火蓋が、いよいよ切って
落とされる。
昨秋公開され、大ヒットした『レッドクリフ Part I』の続編。ジョン・ウーが
私財を投じて撮り上げた一大スペクタクル。炎の量と兵士の数が半端じゃ
ないです。映画館で観て欲しい。
レッドクリフ御一行の「道頓堀船下り」には驚きました。全く情報が無くて、
翌朝の新聞で知ったんですけどね。トニー、どーして電話くれへんかったん?(笑)。
半年前から続編を楽しみにしていた本作。しかし・・・。懺悔します。体調が
いまいちでかなり寝てしまいました。もう、吐き気がするほど眠くて、出ようか?
と思ったほど(号泣)。ごめんよ~、トニー。朝から眠かったので鑑賞を迷った
のですが、これから怒涛の公開ラッシュ、後が詰まっているので今日しかない!
と思い、されど撃沈・・・。ロングランを期待して、後日必ずリベンジしたいと思
います。
何が悔しいって、噂(?)の「周瑜のお団子イッキ」が記憶に無いんです(爆)。
クライマックスの合戦シーンは、なんとか目を見開いていたのですが・・・。
しかしこの映画、敵役の曹操(チャン・フォンイー)が一番印象に残りますね。
さすが、80万の大軍を率いるだけの貫録を感じます。トニー、金城くん、チャン
・チェンくん、3人揃ってやっと太刀打ちできる感じかな。




しかしこのダサイ副題、一体誰が考えたのでしょうか?? 意味がわかり
ません(怒)。「決戦天下」のままで何がいけないのでしょう? 理解に苦しみ
ます。Part Iは大ヒットしたし、PART Ⅱの公開前に地上波テレビ放送もし、
DVDも発売され・・・。ジョン・ウー監督、資金回収できましたよね? 前・後
編とさすがに長過ぎたので、3時間くらいの「ディレクターズカット・完全版」
も作って欲しいなぁ。(逆にもっと長くなったりして、笑)
(『レッドクリフ Part II/未来への最終決戦』
監督・製作・脚本:ジョン・ウー/2009・米、中国、日本、台湾、韓国
/主演:梁朝偉トニー・レオン、金城武、張豊毅チャン・フォンイー)
もっと、高く~『クローズZERO Ⅱ』

CROWS ZERO Ⅱ
芹沢軍団との闘いを制し、鈴蘭高校の「頂上(テッペン)」を取ったGPSの頭、
滝谷源治(小栗旬)。しかし彼はリンダマンとのタイマンに連敗し、鈴蘭の「カラス」
たちをまとめられないことにいらだちを覚えていた。
2007年秋、大ヒットした『クローズZERO』の半年後から、卒業までを描い
た続編。鈴蘭高校のワルメンは揃って続投、新たな敵「鳳仙学園」のスキン
ヘッド軍団を迎え撃つ。
いや~、一年半前と同じこと言いますけど・・・、小栗旬、カッコイイ~!!
今や押しも押されぬ大スターとなった彼ですが、鋭い眼光変わってないな~。
あの「上目遣い」は反則でしょう! もちろん、立ち姿のカッコよさも全く衰えて
ない。「三池監督、惚れたか?!」と思ってしまうほど、小栗旬がカッコよく撮ら
れているんです・・・。しかしこの続編での源治は、結構悩める「ダメダメ君」な
のでした。

♪ワイルドサイドの~、友だちにぃい~♪ この曲で一気に、映画は鈴蘭とい
う「無法地帯」へとワープします。「鈴蘭VS.鳳仙」っていうメインのストーリーに
傍流のエピソードが重なっているけれど、観終わったときに消化不良感が全く
無く、これだけ多くのキャストなのに、ワルメンたち一人ひとりの個性が際立っ
ている。タバコ吸って、たむろして喧嘩して血ィ流して。ホントにただそれだけの
映画なんだけど、でもそれだけじゃない。「男は素手だろ!」とか、「カラスは
簡単に群れないだろ」とか、印象的で胸が熱くなるようなセリフが散りばめられ
ていて、グッと来たりもする。単純なことをシンプルに、ストレートに描くって、
結構難しいことだと思うんです。三池崇史監督、今回もやってくれました。
個別キャラでは、鳳仙学園の鳴海を演じた金子ノブアキがよかったなぁ。「頭
割れたらセメダイン♪」の三上ブラザーズもスキ☆ 芹沢はね、、山田孝之が
「ホルモォォォォ~~~」って叫び出さないか、もう気が気じゃなかった(笑)。

源治たちは卒業したわけだけど、更なるシリーズ化に含みを持たせた作りだっ
たと思います。でもね、正直源治が抜けたクローズって想像できないなぁ・・・。
三浦春馬くんはおいしい役どころだったけど、「クローズ」の看板一人で背負うの
はダテじゃないよぉ。
ところでこの映画、レディースディの朝一に観たんですが。。劇場に入って
ビックリ!「ここはPTA総会か?!」ってくらい、妙齢のお嬢さん方(爆)でいっ
ぱいでした。「新学期でバタバタやけど、給食も始まったし。そろそろ小栗旬
でも観に行かへん?」と誘い合ったのであろうママ友グループでいっぱい。
まぁ私も、その中に全く違和感なく馴染んでたと思うねんけどね(笑)。
(『クローズZERO II』監督:三池崇史/2009・日本/
主演:小栗旬、山田孝之、金子ノブアキ、高岡蒼甫、桐谷健太)
世界を支配するシステム~『ザ・バンク 堕ちた巨像』

THE INTERNATIONAL
巨額の不正資金が集まるルクセンブルクの国際銀行IBBCを、インターポール
の捜査官サリンジャー(クライヴ・オーウェン)とNY検事局のエラ(ナオミ・ワッツ)
は数年に渡って内偵していた。情報提供者との接触が叶ったとき、関係者が
次々と消され始める・・・。
ドイツ出身の才人、トム・ティクヴァの新作。ベルリン、ニューヨーク、ミラノ、
イスタンブール、世界を飛び回る主人公たちが巨悪と闘うサスペンス・アク
ション。実は私、クライヴ・オーウェン大好きなんです。。だから、密かに楽しみ
にしていた作品。クライヴだけじゃなく、ウルリッヒ・トムセン(『ある愛の風景』)、
アーミン・ミューラー=スタール(『イースタン・プロミス』)も登場して、渋めの
豪華キャストがうれしい。恋愛沙汰は一切なしだけれど、ヒロインは「闇の女王」
ことナオミ・ワッツ。

これは実話に基づくストーリーなのですね。91年に破綻したBCCIっていう巨大
銀行がモデルなのだそう。米国発「リーマン・ショック」になぞらえて「金融危機
を予見した映画」なんて宣伝がなされているけど、全然違います(爆)。まぁ、根
っこは同じ、と言われればその通りなのでしょうが・・・。
トム・ティクヴァがまたどんな斬新な映画を観せてくれるんだろう? と期待
していたのだけれど、特に奇をてらった演出もなく、「トム・ティクヴァ印」と言え
るような内容の作品ではなかったと思う。クライマックス、ニューヨークの美術
館での銃撃戦に至るまでの展開はスリリングで、銃撃戦もかなりのド迫力な
のだけれど、そこらから後がグダグダ、蛇足な展開になってしまった感あり。
特にラスト・・・。国際的な大銀行の頭取が、丸腰で単独行動なんてあり?
と白けてしまった。もう少し、説得力ある展開にできなかったものか。ちょっと
残念。
インターポールって逮捕権はないのですね。。でも、銭形警部ってルパンに
向かって「逮捕する」とか言ってなかったっけ?(笑)

とは言え、クライヴ・オーウェンがカッコよかったから満足ですけど。クライヴ
って背は高いけど男前!とは言い難いし、「ムサい」と言われれば反論できな
い。しかし、何とも言えない「男の色気」を感じるんだよね。。ジュリア・ロバーツ
と再共演する新作『デュプリシティ』も来月公開。こちらも楽しみにしてます♪
(『ザ・バンク 堕ちた巨像』監督・音楽:トム・ティクヴァ/
主演:クライヴ・オーウェン、ナオミ・ワッツ/2009・米、独、英)
働くことは生きること~『この世でいちばん大事な「カネ」の話』

理論社のYA新書、中学生以上のすべての人のための「よりみちパン!セ」シリ
ーズに、あのサイバラが降臨! 漫画家・西原理恵子が語る、お金と労働の話。
これは素晴らしい本です。読み終わった瞬間、「私も「サイバラ教」に入信しよう!」
と思いましたから。いや、まじで。
10代の子どもたちが、親や身近な大人に面と向っては聞きづらい内容を、各界
の第一人者がやさしく、語りかけるように説いてくれるこのシリーズ。実はいつも
図書館で立ち読みするくらいで、一冊ちゃんと読んだのは初めてかもしれません。
サイバラさんの漫画は結構好きですが、そんなに多くの作品を読んでいるわけ
ではないのです。しかし、どの作品にも彼女自身が抱える「哀しさ」や「痛み」の
ようなものが通奏低音として流れていると感じていました。その「~のようなもの」、
サイバラさんが乗り越えてきた茨の道が、率直で飾らない文章で語られます。
正直、これはもっと若い頃に読みたかったと思いました。しかし、大人だから
こそ肯ける内容でもあるかもしれない。貧乏=お金がないことがどれだけ人間
を苦しめ、その魂を蝕んでいくか。再生産される貧困から、彼女がいかにして
抜け出したか。サイバラさんが信念を持って語りかけてくれるから、お金の大切
さ、働く場所があること、「働ける」ことの素晴らしさ、ありがたさがストレートに
伝わってくるんです。
高知出身の「はちきん」さんであるサイバラさん。その「酔狂」ぶりに拍手。
(『この世でいちばん大事な「カネ」の話』西原理恵子・著/理論社・2008)
テーマ : YA(ヤング・アダルト)
ジャンル : 本・雑誌
時代の犠牲者~『ある公爵夫人の生涯』

THE DUCHESS
18世紀後半、英国スペンサー家の令嬢ジョージアナ(キーラ・ナイトレイ)は、
17歳で英国有数の貴族であるデヴォンシャー公爵(レイフ・ファインズ)に嫁ぐ。
幸せな結婚生活を夢見ていたジョージアナだったが、公爵は妻を「跡継ぎを生む」
ための相手としか見ていなかった・・・。
故ダイアナ妃の先祖に当たる、実在した公爵夫人の苦難の人生を描くコスチュ
ーム劇。18世紀の社交界を舞台に、貴婦人たちの華麗な姿を再現した衣装は、
アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞している。オスカーも納得の、美しくきらびや
かなドレスや帽子にうっとり。英国の貴族邸宅をロケした映像も美しい、さすが
英国BBC製作の、見応えのあるドラマ。

「私たちの結婚は最初から3人で始まった」という故ダイアナ妃の言葉は有名だ
が、ジョージアナにも甘い新婚生活とはかけ離れた現実が待っていた。公爵が
女中に生ませた娘シャーロットを引き取り、女児を産んだジョージアナに公爵は
「男児を産むはず」と怒りを露わにする。冷えきった夫婦関係に疲れた彼女がミス
・エリザベス(ヘイリー・アトウェル)と出逢い、彼女との友情に慰みを得た頃、公爵
とエリザベスの愛人関係が始まる・・・。
「妻妾同居」の日々。いかにジージアナが新進の気質を持った女性であったとは
いえ、彼女の苦悩は計り知れない。夫の裏切りと、親友の裏切り。それでも朝夕
の食事を共にしなければならない理不尽さ! きっと現実は、もっともっと厳しいも
のがあったのだろうと想像する。「早過ぎた結婚をし、真実の愛に気づくのが遅すぎ
た」。男子を産んだら即、堂々とチャールズ・グレイ(ドミニク・クーパー)の元へ走る
ジョージアナ。しかし結局、彼女は公爵の館へ戻ることになる。
ジョージアナの母、レディ・スペンサー(シャーロット・ランプリング)の言う「個人
の満足より、品位を」という言葉が全てを物語っているのだろうと思う。たとえ貴族
の令嬢であろうと、妻であろうと、財産相続権も選挙権もなかった当時の女性たち。
彼女たちにとっては、男子を産んで財産分与を受け、経済的な保証を得るしか「品位」
を保つ術はなかった。「個人」よりも、「家柄」が重視された時代。「変革」を叫んだ
チャールズ・グレイが首相になるのは、ずっと先の話。当時の上流女性にとっては、
社交界の華となり、賭博やファッションに喜びを見出すしか、生きる甲斐はなかっ
たのかもしれない。
たとえ親友を裏切っても、男の地位や財力は利用するもの、という信念に基づい
て行動するレディ・エリザベスのしたたかさが印象的。子どもを産んだ女は強い。
子どものために諦めざるを得ないものも、確かにあるとしても・・・。公爵は酷い奴
だけれど、彼もまた時代の犠牲者だと思えなくもない。

そしてやっぱり、この作品の一番の見どころは華麗な衣装の数々だろう。高く結
い上げたジョージアナの髪型は『マリー・アントワネット』を思い出すし、ファーや
羽根を使った帽子がめちゃめちゃオシャレ。「女は、衣装で自分を表現するのです」
というジョージアナの言葉に、大いに頷いたのでした。
(『ある公爵夫人の生涯』監督・脚本:ソウル・ディヴ/2008・英、仏、伊/
主演:キーラ・ナイトレイ、レイフ・ファインズ、シャーロット・ランプリング)
この世に映画がある限り~『キネマの神様』

The Name above the Title
80歳を目前にしても映画とギャンブルに熱中し、多重債務を抱えた老父。片や
40歳を目前にして会社を辞め、課長の椅子と年収一千万を捨てた娘。崖っぷち
親子に訪れた、温かな奇跡とは・・・。
原田マハさんの本は初めて手に取った。そして久々に、早く読み進みたいのに
読み終わりたくない、という小説に出会った。終盤は涙でボロボロ。。映画と映画
館と映画好きブロガーが主人公の、出逢いと再生の物語。読んでいる間中、いつ
もお付き合いして下さっている、しかし会ったこともないたくさんのブロガーさんたち
の顔(?)が浮かんできた。そしてこの本を紹介して下さったのも、そんなブロガー
さんの一人であったことが何よりもうれしい。
変な話だけど、私も「キネマの神様」の存在を信じている。一人で座る映画館
のシート。予告編上映が終わって「映画が盗まれています・・」というキャンペーン
CMが流れ始めると、私は眼を閉じて掌を組む。「神様、映画をありがとうございま
す」。心の中でつぶやくと、もう本編が始まる。 「観るたびに思う。映画は旅なの
だと」。
40にもなる娘と両親の関係があまりに濃密だし、あり得ないサクセスストーリ
ーだと一笑に付す人もいるかもしれない。しかし、この小説に溢れている映画へ
の愛と敬意は本物だ。英文タイトルの意味は、最後まで読んでのお楽しみ。そ
して『ニュー・シネマ・パラダイス』を映画館で観ることができた自分は、本当に
幸せ者なんだなぁ、と改めて思った。映画大好き。。映画万歳!!
(『キネマの神様』原田マハ・著/文藝春秋・2008)
最終便に間に合えば~『旅する力 深夜特急ノート』

朝日新聞に月一回掲載される『銀の街から』というコラムがある。沢木耕太郎氏
による映画評なのだが、ネタバレしている事が多く、私は未見の作品の回は斜め
読みしかしない(その代わり、切り取っておいて観た後にちゃんと読む)。
しかし先日、テアトル梅田に『そして、私たちは愛に帰る』を観に行ったときの事。
斜め前に座った御婦人が、上映前に沢木氏の『銀の街から』の切り抜きを読んで
いた。やっぱり、新聞の映画評って影響力あるんだなぁ、としみじみ思ってしまった。
沢木耕太郎の『深夜特急』は、私も夢中になって読んだ。電車の中で読んでいて、
駅を乗り過ごしそうになったほどに。ちょうど「マカオ」の賭場の辺りだったと思う。
多くの若者がそうであったように、あの本に影響され、会社を辞めて旅に出た
友人もいた。「知らない街を歩いてみたい」旅という抗しがたい誘惑。『深夜特急』
とは、そこに新たな媚薬を付け加えた作品なのかもしれない。
本書は、その「最終便」とでも言うべき一冊。若き日の「取り返しのつかない旅」
を、何とかその手に留めようと著者は述懐する。
何年か前にブームを巻き起こした「猿岩石」についても、記述があることに驚いた。
そして少なからず、沢木氏が彼らとその現象について、快く思っていないことにも。
それは当然といえば当然の思いなのだろうが、クールなイメージの彼が、タレントの
テレビ番組に反応するとは意外な感じがしたのだ。
きっとそれだけ、あの旅は沢木氏にとって特別な時間だったのだろう。旅を終えて
何十年も経てからもなお、「最終便」と称して回顧せずにはいられないほどに。取り
返しのつかない旅、取り返しのつかない時間。そこには経験した者にしかわかり得
ない「かけがえの無さ」がある。
「恐れずに。しかし、気をつけて」
(『旅する力 深夜特急ノート』沢木耕太郎・著/新潮社・2008)
大統領の敗北~『フロスト×ニクソン』

FROST/NIXON
ウォーターゲート事件により、アメリカの歴史上初めて任期途中で辞任した
大統領、リチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)。英国のテレビ司会者デビ
ッド・フロスト(マイケル・シーン)は、アメリカのショービズ界への進出を目論み、
ニクソンのインタビュー番組を企画する。
アメリカで史上最高の視聴率を上げたという元大統領の伝説的インタビュー
番組を、ロン・ハワードが映画化。元は舞台劇だった戯曲を、原作者のピータ
ー・モーガン自らが脚色、主演のフランク・ランジェラとマイケル・シーンも舞台
版と同じ役柄を演じ、アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞など主要5部
門にノミネートされた。本国での高評価も納得の、一級のエンタメ作品。
面白かった! 舞台劇の映画化と言うより、最初から映画向けの題材だと思
える。そこはロン・ハワードの手腕だろうか? 客層はちょっと高め、やっぱり。

映画は時系列に沿ってインタビューの顛末を描くだけでなく、フロストのブレー
ンやニクソンの側近たちが当時を振り返るインタビュー映像を挿入する。作り笑
いが顔に張り付いたフロストは、コメディアン上がりだと見下されながらも、自分
のジャーナリストとしての力を信じている。ニクソンに「オックスフォードだったか?」
と言われ「ケンブリッジです」と即座に言い返す場面に、彼の矜持を感じた。
賞レースでは蚊帳の外だったけれど、マイケル・シーン、巧いです。
インタビューという名の一本勝負は、百戦錬磨のニクソン有利で回を重ねる。
「その靴は女性的だと思わないか?」「彼女とはもうヤッたのか」。カメラが回る
直前、フロストに対して心理的に揺さぶりをかけるニクソン。小憎らしいほど
の貫録。フロストのブレーンの一人、ゴリゴリの反ニクソンの論客ジェームズ
・レストン(サム・ロックウェル)でさえも、彼のカリスマ性に圧倒され、思わず
握手してしまう場面にもニヤリ。サム・ロックウェルって相変わらず徳永英明
に似てる、八重歯が。そして更にどうでもいいですが、プロデューサーのジョン
・バードってジョン・キューザックが演じているとばっかり思って観ていたのだ
けど、違うんですね。。『プライドと偏見』でMr.ダーシーを演じた役者さん、
マシュー・マクファディンでした。もう、ビックリ。

インタビュー最終日。起死回生の大逆転を狙うフロストは、周到に用意したファ
イルを最後の最後に捨て、ノーガードの真剣勝負を挑む。
「大統領が行えば、その行為は不法行為ではなくなる」。フロストがニクソンか
らこの言葉を引き出した時、ニクソンの鼻の下には汗が滲んでいた。。。お見事、
フランク・ランジェラ!!
テレビというメディアを知り尽くした男の、会心の勝利。エンドロールの謝辞が
「SIR David Frost」だったのが、なんだか感慨深かった。
(『フロスト×ニクソン』監督・製作:ロン・ハワード/
製作総指揮・脚本・原作戯曲:ピーター・モーガン/
主演:フランク・ランジェラ、マイケル・シーン/2008・米、英、仏)
ハッピーおじさんコレクション~『手』

配信会社に勤めるサワコは、かなり年上の男性と付き合うのが好きな25歳。
「ハッピーおじさんコレクション」と題したブログは三日に一度更新、自分が若い
うちに、なるべくたくさんの「おじさん」の話が聞きたいと思っている。
山崎ナオコーラの新作は、芥川賞候補になった表題作+3つの短編(『笑う
お姫様』『わけもなく走りたくなる』『お父さん大好き』)からなる作品集。晩秋の
公園にたたずむ中年男性の表紙は、書店で手に取るには少し躊躇してしまい
そうな雰囲気。
前作『長い終わりが始まる』同様、主人公は「自分の将来」に興味がなさそう
な若い女性。共感や同情はできないのだけれど、著者の描く人物像にはどこか
頷ける部分もある。
例えば、『お父さん大好き』で語られる「職場のランチ風景」。女子社員は必ず
決まったグループ(派閥とも言う)でランチを取らねばならない。3時には暗黙の
了解でお菓子を配らねばならない。ああーーー、イヤイヤそういうの!! という
著者の叫びが行間から滲み出ているようで、私は「ご同輩♪」と思わずにいられ
ない。「たとえ気が合わなくても、頑張っている人のことは応援したい」っていうの
も、わかる、わかる。
しかし、「好き」がわからない彼女たちのことはわからない。20代なんて、恋愛
に夢中にならないで何に夢中になるのサ。おじさんの話が聞きたいサワコが、
一体何を得たいのかも、、よくわからない。
でも、わからなくてもいいんだ。無理にわかろうとしなくてもいい。また次の作品
も、きっと読みますよ。
(『手』山崎ナオコーラ・著/文藝春秋・2009)
~ R.I.P. ~
2009-04-03 :
BROKEBACK MOUNTAIN :
コメント : 4 :
彼以外のドイツ人~『ワルキューレ』

VALKYRIE
÷ 9 0
第二次世界大戦の最中、アドルフ・ヒトラーによる独裁政権下のドイツ。過激な
発言から最前線に送られ、瀕死の重傷を負ったシュタウフェンベルク大佐(トム・
クルーズ)は、祖国のために独裁者を暗殺する計画を企てるが・・・。
トム・クルーズ主演、ブライアン・シンガー監督、製作による実話の映画化。撮影
中も完成後も物議を醸した作品ではあるけれども、見応え十分な映画に仕上がっ
ていたと思う。信じられないほどの豪華キャストとプロダクション・デザインのおか
げで、個人的には堪能。トム・クルーズ、頑張りました☆

初めて予告を観たとき、英国有名俳優がこれでもか、と次々登場するのに驚かさ
れた。ケネス・ブラナー、ビル・ナイ(大好きなんです)、トム・ウィルキンソン、テレン
ス・スタンプ。そしてトムの妻ニーナには『ブラック・ブック』でブレイクしたカリス・ファ
ン・ハウテン。どうでもいいけど、この人の顔が「山本リンダ」に見えてしまうのは私
だけでしょうか・・・。『ブラック・ブック』とそっくりな場面が挿入されていたのも印象
的。そして『戦場のピアニスト』のドイツ人将校が忘れ難いトーマス・クレッチマン。
軍服が最高に似合っていて、さすが!!です。
ヒトラーの暗殺計画が何度も企てられ、実行されていたとは今回初めて知った。
どの国でも(もちろん日本でも)そうだと思うけれど、挙国一致体制を上から押しつ
けられても、全ての人間が右向け右、なんてことは絶対、あり得ない。自らの保身
よりも、真に祖国が辿るべき道を模索していた人々。あの戦争中もきっと、そんな
「名もなき英雄」がたくさんいたのだろう。
シュタウフェンベルク大佐が、処刑されるオルブリヒト将軍(ビル・ナイ)にかける
言葉が胸を打つ。「国民は忘れませんよ」。そう、決して忘れられることなく60年
以上経った今、全世界があなたがたの勇姿を目に焼き付けましたよ。最後まで
身を挺して大佐を守ろうとした、ヘフテン中尉(ジェイミー・パーカー)の姿にも感動。。

しかし・・・。どうしてシュタウフェンベルク大佐は爆発音を聞いただけで、確認する
こともなく「総統死去」の情報を配信してしまったのだろう? 極限まで緊張を強い
られた状況では、彼ほどの人物でさえ冷静に判断する余裕がないほど動転してい
た、ということか。ワルキューレ作戦の失敗は歴史的事実であり、その失敗の過程
を描いて見せた作品としては、十分成功していると思う。個人的には、家庭人とし
てのシュタウフェンベルク大佐と妻、子どもたちの愛情を表現するシーンがもう少し
あってもよかったかな、と思った。ニーナがお腹に手をやるシーン。彼女は新しい命
を授かっていたのか・・・。それがとても気になったから。
(『ワルキューレ』監督・製作:ブライアン・シンガー/2008・米、独/
主演:トム・クルーズ、ビル・ナイ、トーマス・クレッチマン)
水槽の中の宇宙~『ディスカスの飼い方』

how to breed discus
1999年の夏、僕は木造モルタルの一軒家に引っ越した。「熱帯魚の王様」ディス
カスを飼育するために・・・。庭先に現れた一人の少年、別れた恋人の記憶。
タイトルに魚の名前が冠された大崎善生の小説、と言えば、彼の小説家として
のデビュー作『パイロットフィッシュ』。あの小説が大好きな私は、大崎さんの著書
が出版されると必ず手にとる。それは新作への期待というよりも、あの物語を書い
てくれた著者への感謝の気持ちから、と言ったほうがいいかもしれない。
本作は、熱帯魚飼育を理解することは宇宙や死を理解することに等しいという、
哲学的な命題に取り憑かれた青年が主人公。私も金魚を一匹飼っているけれど、
自分の時間と財力と労力を全てディスカスに注ぎ込むブリーダーの「生態」は到底、
理解できるものではない。主人公も半ば自嘲しているように、それは恋人との結婚
や安定した人生からの「逃げ」なのかもしれない。
水槽の前で、主人公は失った恋人の声を聴き、その声に導かれる。真夜中の
電話、感情と記憶の永遠というテーマは既視感があるし、少年の登場する意味も
不可解。しかし、この不思議で独特な読後感は何なのだろう? いつの間にか私
は、主人公と一緒にディスカスの水槽の中の「宇宙」を横切っていたのかもしれな
い。
(『ディスカスの飼い方』大崎善生・著/幻冬舎・2009)