アンジー、マカヴォイ、フリーマン~『ウォンテッド』
ウォンテッド


 WANTED


 弱気でヘタレウェスリー(ジェームズ・マカヴォイ)は、彼女にも親友にも上司
にもコケにされ、うだつの上がらない毎日。そんなある日、彼はドラッグストアで
謎の美女に声をかけられる。「あなたの父上は、偉大な暗殺者だったのよ」

 車が宙返り、人間が飛び、弾道まで曲げてみせるアドレナリン全開のアクショ
ン映画
。小柄なジェームズ・マカヴォイ「世界最強の女」アンジー姐さんの向こう
を張り、暗殺者集団の血を引く「宿命の男」を熱演。面白かったけど、私は途中から
ちょっと飽きた
かな。動体視力がついて行かなくて、、疲れました(笑)。

ウォンテッド2

 アンジェリーナ・ジョリーオスカー女優、国連親善大使、6人の子の母親にし
パートナーはブラッド・ピット抜群のスタイルと美貌。いちゃもんの付けよう
がない、完璧な女性。でも個人的には、今まで特に好きな女優さんというわけ
でもなかった。しかし、本作で彼女の魅力に開眼しました。こういう、演技力と
言うよりはその存在感で見せる役に彼女は滅茶苦茶ハマってます
マイティ・ハートより、ずっとずっとよかったよ~

 ジェームズ・マカヴォイ。気の毒で笑ってしまうほどのダメダメ君から、ハード
『ファイト・クラブ』的修行を経て、ちゃんと冷徹な暗殺者の顔になっていまし
たね。彼は瞳の色が深くて凄く綺麗。唇も妙に赤いし

 モーガン・フリーマン別格の存在感。この人がしゃべると、神の啓示のような
気さえする。カリスマがありますね。そして音楽がカッコイイ~、と思っていたら、
道理でダニー・エルフマンだったのですね。天才

ウォンテッド3

 アンジー「お色気担当」でも主人公と恋に落ちるでもなく、あくまで暗殺者の一員
としてクールに描かれてたのがよかった。もちろん、そこは彼女の意向も反映されて
るのだろうけれど。。しかし、アクション映画って一体どこまで進化し続けるんだろう?
また『マトリックス』みたいな革新的な映画が現れて欲しいな。映像はもちろんだけど、
大切なのは作品が持つ世界観かも。

 (『ウォンテッド』 監督:ティムール・ベクマンベトフ/2008・米、独/
   主演:ジェームズ・マカヴォイ、アンジェリーナ・ジョリー、モーガン・フリーマン
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【2008/09/27 01:02】 | 映画 | トラックバック(40) | コメント(18)
踊る少年~『12人の怒れる男』
12人の怒れる男


  12


 21世紀のロシアチェチェン人の少年が、養父殺しの罪裁判にかけられた。
有罪か、無罪か12人の陪審員たちが下す評決有罪は確定的と思われたその
時、一人の陪審員が「無罪」を主張し始める・・・。

 シドニー・ルメット監督によるアメリカ映画『十二人の怒れる男』ロシア版リメ
イク
。2007年、ヴェネチア映画祭において特別獅子賞を受賞、アカデミー賞の
外国語映画賞にもノミネートされた(受賞はヒトラーの贋札)。監督のニキータ
・ミハルコフ
は製作、脚本も手がけ、陪審員長役で出演している。

 オリジナル版は90分少々の尺で、コンパクトにまとめられた密室劇の傑作であ
ることは言うまでもない。本作の160分という長さを知って一瞬たじろいだが、
長尺に足る力強さと、現代ロシアが抱える諸問題警鐘を鳴らす社会派の力作
ラスト以外はオリジナルストーリーをほぼ忠実になぞりながら、重厚で現代的な
映画
となっている。こういう作品を「換骨奪胎」と言うのだろう。第七芸術ここに
在り!

 エンドロールの後、良質な映画を観た満足感で胸がいっぱい。しかし、小説の
映画化と同じく、オリジナル版を未見である方がより楽しめた作品かもしれない。

12人の怒れる男2

 登場人物たちは、皆一様にしゃべる、しゃべる! ロシア人の辞書に「沈黙」
という辞書はないのかというくらい、陪審員一人ひとりの演説の長いこと! 
ロシア文学「長くて重厚」というイメージがあるが、映画もそうなんだろうか

 陪審員たちの職業は、元将校の芸術家、タクシードライバー、墓所の管理人、
旅芸人、チェチェン出身の外科医
etc・・・と様々。彼らが語る自らの人生経験
は、そのまま現代ロシアの問題点を浮き彫りにしていると言ってもいい。賄賂、
民族差別、貧富の差
、そしてチェチェン問題の現実。時折、被疑者少年の回想
として挿入される戦場シーンが生々しい。紛争の記憶と民族の誇りを体現し、
拘置所で踊り続ける少年が、強烈な印象を残す。

12人の怒れる男3

 オリジナルと異なるラストの評決シーンで語られる、厳しい現実に息を呑む。
少年が晒される向かい風を知ってもなお無罪を望んだ自分は、安全地帯でぬる
ま湯に浸かっているのだろうか。

「ニコライおじさんだよ」法より強い人間の慈悲が、この世界に希望をもたらし
て欲しい。そんな願いを感じたエンディングだった。

 (『12人の怒れる男』 監督・製作・脚本:ニキータ・ミハルコフ
    主演:セルゲイ・マコヴェツキー、ニキータ・ミハルコフ/2007・ロシア)

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【2008/09/25 17:43】 | 映画 | トラックバック(19) | コメント(16)
永遠に、海へ~『花蓮の夏』
花蓮の夏


 盛夏光年

 ETERNAL SUMMER



 台湾・花蓮に住む高校三年生のジェンシン(ブライアン・チャン)ショウヘン(ジョ
セフ・チャン)
は、小学校時代からの親友。夏、香港からの転校生・ホイジャ(ケイト・
ヤン)
が彼らの前に現れ、二人の関係は微妙に変化してゆく。やがて・・・。

 昨年観逃し、残念だった映画の一つ。なのにDVDが出ていたのを知らなかった。
これはやはり、映画館で観たかった・・・。冒頭、夜明けの海辺のシーンから心を奪わ
れる。湿気を帯びているのに乾いていて、透明感に溢れた映像が美しいアート映画
と言ってもいいほど、一つ一つの画が不思議な、淡くて強い光を放っている。背景に
流れるピアノスコア全編を瑞々しく彩り、少ないセリフと相まって静謐な印象を与え
る。是非、多くの方に観ていただきたい佳作

花蓮の夏2


 優等生で繊細なジェンシンを演じるブライアン・チャンは、松ケンウォンビン
を足して2で割ったような雰囲気。奔放で落ち着きがなく、動物的な匂いを放つ
ショウヘンは、いつも眉根を寄せた困り顔ジョセフ・チャン滅茶苦茶魅力的
です。二人を翻弄し、翻弄され、傷つきながらも離れられないホイジャケイト・
ヤン
小柄で無表情なのに、時々驚くほど大人びた顔を見せる。

 ジェンシンは、学校に馴染めないホイジャ幼い頃のショウヘンの面影を見て
いたのかも知れない。ジェンシンの包み込むような優しさに、ホイジャも身を任せ
たいと願う。しかし、誰にとっても通過儀礼のはずである行為が、自分にはでき
ない
とジェンシンは知る。彼の混乱と戸惑いに、胸が痛む。そんなジェンシンを、
ごく自然に受け入れるホイジャ・・・

 好奇心からホイジャに近付いたショウヘンだったけれど、彼女の中に自分と同じ
「孤独」を見たのだろう。惹かれ合う二人。しかしホイジャが見つめていたのは、
ショウヘンの中に住むジェンシンの姿
だった。

花蓮の夏3

 幼い頃、「二人合わせて百点満点」だったジェンシンとショウヘン。二人でいれば
それだけで世界は完璧だったのに、成長と引き換えに二人を取り巻く世界は変わっ
てゆく。「青春」とは、自らを知り可能性と限界の間で苦悩する時期なのかもしれ
ない。二人と一人の想い絡まり、もつれ、行き場を失くす。しかし叶わない想いの
中にこそ、「永遠」が存在し得るという真実。


 行き止まりとしての新世界としての。彼らの想いは永遠に、あの夏の海へ
と還ってゆく
。ショウヘンの呼び声は、ジェンシンのに届いているだろうか。。

 (『花蓮の夏』 監督:陳正道レスト・チェン/主演:張睿家ブライアン・チャン、
              張孝全ジョセフ・チャン、楊淇ケイト・ヤン
/2006・台湾)

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【2008/09/24 22:45】 | DVD | トラックバック(4) | コメント(6)
生の尊厳~『おくりびと』
おくりびと

 チェリストの大悟(本木雅弘)は所属楽団が解散してしまい、妻(広末涼子)を連れ
て故郷の山形へ帰る。「旅のお手伝い」という広告と、高給に惹かれて就職した大悟
だったが、そこは納棺専門の会社だった・・・。

 モントリオール映画祭グランプリ受賞作。実は妻役の女優さんがあまり好きでは
ない
ので、観ようかどうか躊躇していました。しかし、観てよかった~。実にいい
映画です
モックン(いい意味で)若い! アイドル時代からほとんど変わっていな
いその容姿
に驚き、うれしくなりました。

 「旨いんだなぁ、困ったことに」

おくりびと2

 近しい人を見送った経験があるならば、誰しもどこか共感できるところのある作品
だと思います。「誰でもいつか死ぬんだよ、僕も、君も」。でも人は「死」恐れ、死に
接することを「汚らわしいこと」と考えてしまう。大悟の妻や幼馴染の言葉の端々に、
そのことを感じさせられます。私自身にも死に対して「怖い」という気持ちがない、と
言えばウソになるでしょう。

 記憶にある、初めて見た「遺体」母方の祖父でした。湯灌を親族で行ったのです
が、で拭かれる祖父の遺体を見て、高校生だった私は物凄い衝撃を受けたんです。
その衝撃の理由が、この映画を観て初めてわかった気がした。

「ご遺体の尊厳を守るために」という言葉がとても耳に残り心にスッと入って来まし
た。自分は亡骸となっても、たとえ身内であっても、を見られたくはないです。あの
時私が衝撃を受けたのは、故人の尊厳が守られていない、と感じたからなのかも
しれません。できれば私も、尊厳を持っておくられたい

   おくりびと3

 納棺師という職業を知らしめたことももちろんですが、生と死、生きること、食べる
こと、死ぬことは繋がっている
、というテーマが巧く描かれていたと思います。
死は生の一部であり、そして食の一部でもあると。私たちは無数の「死」の上に生か
され、そしてまた死んでいく
のだと。でも、死は決して終わりではない生命の連鎖
とは、死をいただいて生を得る、その繰り返しなのだと。。

 主演のモックンはもちろんですが、脇役の役者さんたちが皆、いい味出している
んです! 社長の山崎努さんの巧さは別格「想定内」なのですが、「門番」を演じ
笹野高史さん、いや~、よかった!! そして大好きだったのが、ワケあり事務員
余貴美子さん♪ もう、ユサユサで(笑)。いい女優さんだな~、と思います。
そして不安だった妻の役は・・・。宮沢りえちゃんで観たかった。←CMか!

 欠落感を抱えて育った青年の成長物語としても、よくできた映画でした。音楽
久石譲さんだったのですね、チェロの音色が素晴らしかった!

 「いってらっしゃい、また逢おうでぇ」

 (『おくりびと』 監督:滝田洋二郎/2008・日本/
    主演:本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子、笹野高史

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【2008/09/23 23:14】 | 映画 | トラックバック(38) | コメント(24)
真打登場!~『赤めだか』
赤めだか

 「落語とは人間の業の肯定である」--立川談志

 落語家・立川談春の初エッセイ。前座時代の修業の日々を綴ったこの本は雑誌
『en-taxi』連載時から評判を呼び、単行本化された後に講談社エッセイ賞を受賞
している。

 正直、立川談春のことはこの本の評判を聞くまで全く知らなかった。同門の
志らく志の輔はテレビでお馴染みだけれど、元々落語を聴いたことがない私
は当然落語家さんには疎い。しかしこの本は面白かった!!

 初めて人に読ませる文章を書いたとは思えないほど、歯切れよくリズミカルな
文体
笑いどころを押さえた上で、自分の言いたいことの核心もスパっと書ききる。
そこにはもちろん、落語への情熱、志半ばで去った同期への思い、同門の先輩
・後輩との、そして何より、イエモトこと立川談志師匠への愛が溢れている。

 「修業とは矛盾に耐えることだ」というイエモトの言葉通り、師匠が黒と言えば
白いものも黒である世界
。17歳で高校を中退し、実家も出て新聞配達をしながら
の食うや食わずの日々。ただただ、師匠に褒められたいと願い、師匠の労いの
一言で全ての辛苦も吹き飛ぶほど、談志に惚れ抜いた著者。念願の二ツ目
なれたとき、浮かんできたのが母親の顔だった、というエピソードもいい。

『ゴッドファーザー』のワンシーンに例える米朝師匠のオーラの描写は映画以上
に映画的
だし、何よりも後輩にしてライバル・志らくの好敵手ぶりが面白い。
そして最終章、小さん師匠と談志との、恩讐を越えた深い、深い師弟愛・・・
泣けます。文句なし。落語家って、ホンモノ「芸人」なんだなぁ。

 (『赤めだか』 立川談春・著/扶桑社・2008)

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【2008/09/22 00:12】 | 読書 | トラックバック(0) | コメント(2)
夢の女~『RURIKO』
RURIKO.jpg

「この小説に一番驚き、一番感動したのは私かもしれません」--浅丘ルリ子

 戦後の日本映画全盛期日活の専属女優として一世を風靡し、今もなお輝き続け
女優・浅丘ルリ子。一人の美少女が石原裕次郎小林旭の相手役を経て大女優
となり、様々な映画スターや監督との恋や友情を得、石坂浩二との結婚、離婚に至
るまで。作家・林真理子が取材に基づいて描くフィクション。事実は1割程度、「見て
きたような嘘」
だと著者は言うが、俳優・女優はほぼ全て実名で登場させているとこ
ろが凄い。しかし主人公のを表現するのに「ぬれぬれと」という表現が三回も出て
きたのには笑ってしまった。林真理子は「通俗的であること」に徹しているのが潔い

 美空ひばりがいて、石原裕次郎がいた。写真週刊誌も、携帯電話もない時代。
「スター」正しく光り輝いていた時代。今や、かつてスターと呼ばれた俳優・女優
「セレブ」と名を変え、有名人や富豪と変わらない存在になってしまった。しかし
そんなことには頓着せず、にも名声にも固執することなく、飄々と時代を生き抜く
信子=浅丘ルリ子がカッコイイ。女優という天命を与えられた彼女に、羨望と敬意
を惜しまない一冊。

 (『RURIKO』 林真理子・著/2008・角川書店)

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【2008/09/21 00:48】 | 読書 | トラックバック(0) | コメント(4)
飛び出す絵本・映画版~『パコと魔法の絵本』
パコと魔法の絵本


 PACO and The Magical Book


 患者も職員も、一風変わった人間ばかり集ったとある病院。その中でも超偏屈
嫌われ者「クソじじぃ」大貫(役所広司)は、毎日同じ場所で絵本を読んでいる
パコ(アヤカ・ウィルソン)という少女と出逢う・・・。

 天才映像作家・中島哲也監督の新作は、前作嫌われ松子の一生で見せて
くれた極彩色のド派手映像はそのままに、3DCGアニメーション実写と融合
飛び出す絵本・映画版をスクリーンいっぱいに広げてくれる。舞台劇の映像化
だという本作は、映画という枠組を軽々と飛び越えた爆笑×号泣極上エン
ターテインメント
豪華キャストノリノリの大熱演も相まって、中島哲也監督、
またまたやってくれました! まぁ私の場合、阿部サダヲが主要キャストという
だけで観る前から期待度もアップするし、も二つくらい増えるんですが(笑)。
しかしこの映画、絶対に観て損はさせません! パコを演じたアヤカ・ウィルソン
超絶可憐可愛さと、「世界のヤクショ」こと役所広司のこのメイクだけでも一見
の価値アリ。 ↓↓↓↓↓↓ ゲロゲ~ロ♪

パコ2

 記憶が一日しか保たない女の子といえば、本作でも室町(妻夫木聡、熱演)
その名を叫ぶ元名子役、ドリュー・バリモア50回目のファースト・キス。ドリュー
が演じたルーシーとパコの髪型が同じなのは単なる偶然?「お前が私を知っている
だけで腹が立つ」
なんて言っていた偏屈ジジィが、パコの無邪気さとイタイケな瞳
触れて、「この子の心にいたい」と願う・・・。大貫は、パコにをしたんですね。
この子の心に何かを残したい、自分の命があと僅かであればこそ、尚更・・・。
パコに絵本を読み聞かせる、役所さんのがいいんです。大貫の読み方は上手く
はない
のだけど、一生懸命さ、一途さが伝わってくる。

 脇を固める役者たちも、全員キャラが立っていて素晴らしいの! 私が特に好
きだったのは、國村隼さん演じる「おネエMAN」。あの『エーゲ海に捧ぐ』が最高!
♪うぃんでぃずぶろいんふぉむえい~じゃ~♪・・・爆笑土屋アンナ『下妻物語』
からずっと監督の作品に参加しているだけに、このミラクルワールドにフィットして
いるのは当然としても、意外や小池栄子もよかった! 加瀬亮くんもあの丸眼鏡
マッシュルームヘアが似合ってるし、あんなハジけた上川さんも初めて見た。
そしてやっぱり、我らがアベサダでしょ~。あのハイテンションないちびり、決して
ブレない芸風
、彼って日本一の役者じゃないかと思う今日この頃・・・。違う?
しかし堀米って、一体病院で何してたんでしょうね? 医者でもなく看護師でも
なく、もちろん患者でもなく。。謎。

パコ3

 意外なラストでしたが、あの後室町とヤンキーナースがうまくいってるといい
なあ。。室町の子役時代の少年異様なほどのかわいらしさで、パコといい
『下妻』の深キョンといい、中島監督って本当にかわいい子が好きなんだなー
と思いました(笑)。最初に監督のことを「天才」って書いたけれど、彼は天才
というより、異才とか、鬼才っていう言葉のほうが合うかもしれない。とにかく、
尋常でない才能の持ち主です。最高でした次回作も期待してますよー。

 (『パコと魔法の絵本』監督・脚本:中島哲也/原作:後藤ひろひと/
   主演:役所広司、アヤカ・ウィルソン、妻夫木聡、土屋アンナ、阿部サダヲ、
      加瀬亮、小池栄子、劇団ひとり、山内圭哉、國村隼、上川隆也
/2008・日本)

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【2008/09/18 22:38】 | 映画 | トラックバック(29) | コメント(12)
ざわわ ざわわ~『八月十五日の夜会』
八月十五日の夜会

 An Evening Party on August 15, 1945



 大学生の東江(あがりえ)秀二は、亡くなった祖父の散骨のために沖縄を訪れる。

 児玉清氏が絶賛し、私も大好きな恋愛小説『水曜の朝、午前三時』で覆面作家とし
てデビューした、蓮見圭一氏の長編小説。当時は文壇から無視されたり、新潮社
の社長が書いたのではないかという噂
まであった蓮見氏だけれど、現在はプロフィ
ールを公開
している。

 本作は、題名と小説の語り口に『水曜の朝~』との共通点を感じた。朝と夜、日付
と曜日、時刻
。ある人物が受け取ったカセットテープ、そこから物語られる、長い
長い、忘れ難い記憶
。。70年代と第二次大戦末期、恋愛小説と戦時を描いた小説
いう違いはあるが、『水曜の朝~』にもヒロインの祖父が「A級戦犯」だった、という
「戦争の影」が織り込まれていた。

 究極の同世代体験であり、かつ個人的な体験でもある「戦争」沖縄の離島
起こったこと、起きなかったこと。夏の陽射しの中で知らされなかったこと、命を
奪われたものたち・・
若いということが「哀しいこと」だったあの時代。そして哀し
いはずのことを「哀しい」と口に出して言えなかったあの時代・・・。静かに語られ
るからこそ、凄みを感じる。今、こうして「生かされている」ことへの感謝の念と、
鎮魂の思いが溢れる。

 (『八月十五日の夜会』蓮見圭一・著/2008・新潮社)

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【2008/09/18 00:27】 | 読書 | トラックバック(1) | コメント(0)
TOKIOはスーパーシティなんだゾ!~『TOKYO!』
TOKYO.jpg


 TOKYO


 大都市・東京を舞台に、三人の外国人監督が競作したオムニバスミシェル・ゴン
ドリー
大好き♪だし、ポン・ジュノ『殺人の追憶』に唸ったし、レオス・カラックス
はやっぱり『ポンヌフの恋人』だし・・・、と、物凄く楽しみにしていた作品。
なのに、なのに、アレレレレ?

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 ★ インテリア・デザイン ★ Interior Design by Michel Gondry

 東京の旧友を頼って上京した「自称」映画監督(加瀬亮)とその彼女(藤谷文子)
住む部屋も見つからず、車はレッカー移動され、「志が低い」と言われた彼女は・・・。

TOKYO4

 期待したほどにはゴンドリー流・映像マジックが感じられなかった作品。舞台と
なる東京の「狭い」部屋もごちゃごゃしてやけにリアルで、ポップじゃない。映画監督
が上映する自主制作映画なんかは、いかにもゴンドリーが好きそうな感じだな、と
思ったけど・・・。あ、これ長回しだ、と気づいたシーンがあり。しかし、椅子になる
って凄い発想だなぁ。不条理劇みたい。
------------------------------------
 ★ メルド ★ Merde by Leos Carax

 マンホールから現れ、破壊と攻撃を繰り返す「下水道の怪人」メルド(ドニ・ラヴ
ァン)
。捕らえられた彼は裁判にかけられ、絞首刑となるのだが・・・。

TOKYO3

 これね、松本人志が観たら地団駄踏んで悔しがりそうな発想だな、と思いまし
た。オープニングの感じが大日本人みたいだったし。しかしこれは外国人監督
じゃないと絶対撮れない作品
だと思う。もちろん、日本人には撮って欲しくも無い
けどね。かなり不愉快
 何故って、こういうシニカルさを前面に出した映画にはユーモアが必要不可欠
だと思うのだけど、それがないから。全くない。そしてそれ以前に、東京への愛
が皆無
怒怒怒
 「糞」って自虐ネタですか。しかしドニ・ラヴァン怪人っぷりがハマリ過ぎです。
怖いよ
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 ★ シェイキング東京 ★ Shaking Tokyo by Bong Joon-ho

 10年間引きこもり生活を続けていた男(香川照之)が、ピザ配達人女の子(蒼井
優)
と出会い、外に出る決心をする・・・。

TOKYO2

 映像が綺麗で、一番「安心して」観られた作品だった。タイトルの「Shaking」
には地震と、「ゆれる」っていう意味もあるのかな。芸術の域にまで達した「整理
整頓」
は素晴らしいけれど、「東京よ、小さくまとまるな!」っていうメッセージ
にも感じられた。ラスト、蒼井嬢のかすかな微笑みに、希望が見える。
-----------------------------------

 三作品通して、外国人の見ている東京のイメージ、っていうのはこんな感じな
のか・・・、と、ちょっと悲しくなってしまった。狭くてゴチャゴチャしてて、暗くて
湿っぽくて
。私は東京に住んではいないけれど、もうちょっと愛情を込めて、日本
の首都
を撮って欲しかったと思う。東京が、クールでポップで魅力的な街だと思う
のって、田舎者の幻想なんだろうか。

 (『TOKYO!』2008・仏、日本、独、韓国/
    :『インテリア・デザイン』監督・脚本:ミシェル・ゴンドリー
                  主演:藤谷文子、加瀬亮
    :『メルド』監督・脚本:レオス・カラックス
                  主演:ドニ・ラヴァン、ジャン=フランソワ・バルメ
    :『シェイキング東京』監督・脚本:ポン・ジュノ/主演:香川照之、蒼井優

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【2008/09/17 22:42】 | 映画 | トラックバック(14) | コメント(13)
一人と三匹~『アルビン/歌うシマリス3兄弟』
アルビン


 ALVIN AND THE CHIPMUNKS


 静かなから、クリスマス間近な街へ運ばれたシマリスの3兄弟歌が得意
彼らは、売れないソングライターのデイヴ(ジェイソン・リー)の家に居候を始める。
メガネのサイモン、いたずら好きなアルビン、甘えん坊のセオドア。デイヴの旧友
レコード会社社長のイアン(デヴィッド・クロス)の元でCDデビューした彼らの歌は
大ヒットし、スター街道まっしぐらだったが・・・。

 アメリカであのレミーのおいしいレストランよりもヒットしたという、実写CG
アニメ
合成したコメディ。アルビンたちは50年前から人気のキャラクターである
らしく、エンドクレジットでは発案者のロス・バグダサリアンへの献辞が流れる。
吹き替え版にて鑑賞(大阪では字幕版の上映はないんです)。

アルビン2

 オープニングで、彼らが歌っているのがダニエル・パウター『バッド・デイ』なん
ですよ。いきなりキターー、という感じ。ここでもう、一気に惹き込まれます。幸い、
歌の部分は吹き替えではなかった。彼らの「肝」なのですからね。

 しかしまぁ、歌い踊る彼らの悶絶かわいいこと!毎度思うことだけど、CGアニ
メーションの技術って、本当に凄いですね。。実写との合成でも、全く違和感と
いうものがありません
。彼らと共演したジェイソン・リーの演技もいい! 本当に、
動いて喋るシマリスが、そこにいるみたいなんですよ・・・。アルビンがたくさんの
風船につかまって飛ぶシーンは、赤い風船へのオマージュ? と思ってしま
った。

アルビン3

 ストーリーはコレと言った捻りもなく、デイブとアルビンたち兄弟、双方が
「本当に大切なもの=家族」を手にする物語。気軽に、楽しく観られます。

 ・・・、なのに、日曜昼間のシネコン、この映画は私を含めて12人(!)しか
観客がいませんでした。。公開二日目なのに~、なんでこんなに空いてるの?
まぁ、日本ではほとんど知られていないキャラクターだからでしょうか。

アルビン1



 みなさ~ん、観に来てね♪

 ボクたち頑張ってるから~


 (『アルビン/歌うシマリス3兄弟』監督:ティム・ヒル/2007・USA/
   主演:ジェイソン・リー、デヴィッド・クロス、キャメロン・リチャードソン)

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【2008/09/16 22:28】 | 映画 | トラックバック(11) | コメント(4)
うれし泣き~『ビクトル・エリセ DVD-BOX』発売!!
エル・スール ミツバチのささやき

 う・う・う、、うれしい~~~!!(絶叫)
 
 そうなんです、『ビクトル・エリセ DVD-BOX』遂に、遂に出るんです!!
あるサイトで見かけて半信半疑だったのですが、Amazonでも予約開始、これは
間違いないよね~。うれしい~~~。。。
(ちなみに人名表記「ヴィクトル」じゃなくて「ビクトル」になっています)

 エリセの作品、今までどんなに捜しても、捜しても見つからなかったんですよ。
以前発売されていたDVDは、ネットオークション中古市場には多少、出回って
いますが凄い金額です。泣く泣く諦めていたんだけど、やっと出るんですね。。
感激。。。『10ミニッツ・オールダー』は観てないんですけど。

 大好きな小説である、島本理生ナラタージュに、エリセ『エル・スール』
が出てくるんです。観たことがある方は「うんうん、わかるわかる」という感じだ
ったと思うのですが、私はエリセを知らなくて・・・。昨年のぶっちぎりベストワン
作品
パンズ・ラビリンスを観たあとも、「エリセの『ミツバチのささやき』に似て
いますよ」
と何人かの方から教えていただいて・・。そしてあの『となりのトトロ』
も、エリセの影響を受けているとか、いないとか。。 ああ! とにかく、ずーっと、
ずーーーっと、待っていたんです!

 本当にうれしい11月29日首が伸びそうです。

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【2008/09/15 23:23】 | 映画雑談 | トラックバック(0) | コメント(6)
ニムの島~『幸せの1ページ』
幸せの1ページ


 NIM'S ISLAND


 南太平洋の孤島で、海洋学者の父ジャック(ジェラルド・バトラー)と暮らす少女
ニム(アビゲイル・ブレスリン)冒険小説の主人公アレックス・ローバーに憧れる
彼女は、ある日アレックスからのEメールを受信する。それは新作の執筆に行き
詰った作家アレクサンドラ(ジョディ・フォスター)からのものだったが・・・。

 外出恐怖症と極度の潔癖症ゆえ、引きこもりとなった世界的作家が外の世界
に触れ、新しい人生を切り開く姿と、父の不在という不安を抱えながら、自分の
島を守ろうと奮闘する少女。愛して止まない海の自然に翻弄されながらも、娘と
約束を守り通す父親。三人三様のドラマがラストで収束する、ファミリー向け
のファンタジー
。シリアスな役柄が多いジョディ・フォスターコミカルな演技
披露し、ジェラルド・バトラーはニムの父とアレクサンドラの「もう一人の人格」
アレックス・ローバーの二役を演じている。

幸せの1ページ2

 邦題と、ジョディ・フォスターの来日キャンペーンの様子から思い込んでいた
ストーリーとは随分違う内容
だった。日本ではジョディは別格のビッグ・ネーム
かもしれないけど、この映画アビゲイルちゃんがトップ・クレジットなんですよ
ね。ちょっとビックリ。しかし、この邦題は・・・。絶句

 せっかくの豪華キャストなんだから、ジョディVS.アビゲイル新旧天才子役
対決!
みたいなバリバリの演技合戦が観たかったかも・・・。アレクサンドラを
もっと早く孤島に着かせて、ニムとの心の交流をメインに描いて欲しかったかな。
原作を忠実に映画化したのかもしれないし、子ども向けにはこれでいいのかも
しれないけど、SATCの後にこの作品を観るのは、ちょっとキツかったです・・・。
自分が悪いんだけどね。ジェリーさんは『P.S.アイラブユー』期待。以上。

幸せの1ページ3

 (『幸せの1ページ』監督・脚本:マーク・レヴィン&ジェニファー・フラケット
    主演:アビゲイル・ブレスリン、ジョディ・フォスター、
                   ジェラルド・バトラー
/2008・USA)

テーマ:アメリカ映画 - ジャンル:映画

【2008/09/15 22:17】 | 映画 | トラックバック(17) | コメント(6)
Dear Woman~『セックス・アンド・ザ・シティ』
SATC.jpg



 SEX AND THE CITY


 NYに住むコラムニストキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)40歳サマンサ
(キム・キャトラル)、シャーロット(クリスティン・デイヴィス)、ミランダ(シンシア・
ニクソン)
との友情を育み、長年の恋人ビッグ(クリス・ノース)との結婚式も控え、
幸せの絶頂にあるキャリーだったが・・・。

 大ヒットドラマの映画化。私はドラマは全く観たことがないし、ファッションブラン
ドにも詳しくないし、無縁の映画かなぁと思っていたのだけれど・・・。が電話で
「面白かった~、よくできてる!観てみて~」興奮気味に語るのですよ。。
ちなみに母も、ドラマ版は全く観ていません。アラフォー、アラフィフどころか、
アラセヴ(笑)のミーハーおばあちゃんアメリカ映画が大好きなんです。
しかしお母さんったら、どの辺りが気に入ったのかな? やっぱり塗り絵
シーン?(爆)

SATC3.jpg

 で、正真正銘アラフワ(アラウンド不惑、笑)の私が観ても、面白かったです。もち
ろん、ドラマ版を観てファンだった方の思い入れ、感動度には全く及ばないとは思
いますが。。予備知識がなくても、女としてのキャリア20年以上あれば誰でも、
どこか共感できる普遍的な物語ではないでしょうか。2時間半近くなる長尺の映画
ですが、そんな長さを感じさせません。劇場は、さすがに女だらけ

 主演のSJP「絶世の美女」でないのも好感度大。しかし彼女の鍛えられた細身の、
筋肉質ボディは素晴らしい!ハイヒールが似合います。でも、爪が異常に短いのが
気になったな~。ネイルもしていないし、爪を噛むクセでもあるキャラ設定なのか?
と思ったほど。

 ヴィヴィアン・ウエストウッド本人からウェディング・ドレスが届くほど、セレブなキャ
リー
。でも結婚願望が捨て切れなかったり、結婚式の準備に夢中になってしまう
ところはごく普通の女性と同じ。だからこそ、ビッグのあの仕打ちは許せなかった
な~。キャリーは初婚なんだよ? 「僕はバツ2だ」ってそんなこと知るか!(怒)
結婚式は、花嫁のためにする儀式でしょうが~。女心をわかってくれよ~。傷つい
たキャリー
を必死で守ろうとする、シャーロット)、ミランダ)、サマンサ
の姿に涙、涙・・・。

 人生いろいろあるけれど、女であることを楽しみ、それぞれの人生に貪欲に、
自分自身に誠実に生きている彼女たちが大好きジェニファー・ハドソンの歌声
をはじめ、音楽アメリカ映画っぽくてとってもよかった。で、結局サマンサ
隣人ダンテロマンスはなかったんだよね? 何はともあれ、40歳になっても、
50歳になっても、パワフルな4人
元気をもらいました。60歳の彼女たちにも、
会いたい!!

 I Love NY, I Love you ALL!!

SATC2.jpg

 (『セックス・アンド・ザ・シティ』2008・USA/
    監督・製作・脚本:マイケル・パトリック・キング
    衣装:パトリシア・フィールド/主演:サラ・ジェシカ・パーカー、
       キム・キャトラル、クリスティン・デイヴィス、シンシア・ニクソン

テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画

【2008/09/14 23:31】 | 映画 | トラックバック(20) | コメント(4)
煌くオマージュ~『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』
ホウ・シャオシェンのレッド


 LE VOYAGE DU BALLON ROUGE


 人形劇師母スザンヌ(ジュリエット・ビノシュ)と暮らす少年シモン(シモン・イテ
アニュ)
は、ある日赤い風船を見かける。チャイニーズベビーシッター、ソン(ソン
・ファン)
と二人で過ごす彼の日常を、赤い風船はそっと見守っていた・・・。

 アルベール・ラモリス監督赤い風船オマージュを捧げた、台湾の名匠ホウ
・シャオシェン侯孝賢監督
の新作。パリ・オルセー美術館開館20周年記念事業
一環として製作され、ラストシーンオルセー美術館で撮影されている。侯孝賢
初めて、アジア圏以外で撮影した映画でもある。

 風船に話しかける少年の声。カメラが上昇してゆき、樹上の赤い風船を捕らえる。
あの赤い風船に再び出逢えた歓びで、私の胸もいっぱいになった。

ホウ・シャオシェンのレッド2

 本作の赤い風船は、少年シモンと友達になるわけではない。どこか遠い空から、
守護天使のように彼をやさしく見守っている。シモンには、風船の姿が見えている
のか、いないのか・・・
。冒頭のシーン以外で、シモンと風船が触れ合うことはない。

 彼のベビーシッター・ソンは、中国(あるいは台湾)からの留学生。映画学校に通
う彼女は、シモンに映画『赤い風船』について語る。そして自らカメラを回し、赤い
風船が登場する映画
を撮り始める・・・。

 演技初体験だというソン・ファンが、穏やかで控えめで誠実なアジア人として
存在感たっぷり。対してジュリエット・ビノシュ演じるスザンヌはエキセントリック
な性格で、私生活にトラブルを抱え、精神のバランスを崩しがちなフランス人
女性
。ビノシュに金髪は似合わないと思うけれど、本作では真っ黒な髪のソン
好対照になっていて、よかったと思う。東洋と西洋、オリエンタルとラテン

 映画はストーリーに起伏が乏しく、起承転結さえないと言える。私の中では
「催眠術師」異名をとる侯孝賢のこと、このゆるい空気から眠気を逃がす目的
半分で、スクリーンの中に監督が残した刻印をさがす。線路と電車、狭い空間
(スザンヌのアパルトマン)での長回し
、演技でないような、自然な演者たちの
ふるまい。ガラスに屈折する光、赤いカーテンから漏れる柔らかい光撮影
リー・ピンビンピアノの旋律も心地良く、音楽が素晴らしかった。

ホウ・シャオシェンのレッド4

 帰路、十三から梅田へと向かう。阪急電車の先頭、運転席の真後ろに立ち、
侯孝賢的鉄道愛好気分に浸ってみる。淀川にかかる橋、同時に向かってくる
宝塚線、神戸線、京都線それぞれの下り電車
。梅田駅のホームの端には、三脚
を立てて撮影中の「鉄ちゃん」の姿も見える。久々に、『恋恋風塵』が観たくなった。

 (『ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン』監督・脚本:侯孝賢
     主演:ジュリエット・ビノシュ、シモン・イテアニュ、ソン・ファン/2007・仏)

テーマ:ヨーロッパ映画 - ジャンル:映画

【2008/09/12 09:52】 | 映画 | トラックバック(3) | コメント(2)
小宇宙~『大島弓子セレクション セブンストーリーズ』
大島弓子

 映画グーグーだって猫であるを観た後は、原作ももちろんですが大島弓子の
作品
を読みたくなります。この本は、映画の中で使用された7作品をまとめたもの。
なんだか私って、角川さんの思うツボ?!と自分で笑いながらも、映画
を観終わってすぐ、一気に読みました。厚さ4センチ、ボリュームのある本です。

 ★収録作品★
  ・ダイエット
  ・綿の国星
  ・四月怪談
  ・バナナブレッドのプディング(Part1~Part5)
  ・金髪の草原
  ・夢虫・未草(ゆめむし・ひつじぐさ)
  ・8月に生まれる子供


 私は「初」大島作品なので、これらが大島弓子の代表作なのかはわかりませ
ん。しかしいづれも、生と死、魂の深い部分に触れてくるような、どこか哲学的
でそのままで一つの世界、小さな宇宙を形成しているような物語です。画の感
じは『ポーの一族』萩尾望都に似てると思ったかな。

 特に好きだったのは、、全部だけど、敢えて選ぶなら、、うーん、選べない(笑)。
ただ、『ババナブレッドのプディング』『四月怪談』をもし10代で読んでいたら、
私も映画のナオミみたいに漫画家のアシスタントを目指していたかもしれません。
少女時代に彼女の作品と出逢い、DNAに刷り込むように感性を育んでいった多く
の読者
が羨ましい。キョンキョンもその一人なんだそうですね。

 映画はあまり好みではなかったけれど、大島弓子に触れ合う機会を与えてくれ
たんだからから。やっぱり監督、ありがとう。

 (『大島弓子セレクション セブンストーリーズ』大島弓子・著/
                   角川グループパブリッシング・2008)

テーマ:コミック - ジャンル:本・雑誌

【2008/09/10 14:14】 | 読書 | トラックバック(0) | コメント(6)
キョンキョンだってgoodである~『グーグーだって猫である』
グーグーだって猫である

 東京・吉祥寺。伝説的漫画家麻子(小泉今日子)は、15年間生活を共にした
愛猫サバに先立たれ、ペットロスで茫然自失の日々。ペットショップで見つけた
仔猫「グーグー」と名づけ、飼い始めた麻子だったが・・・。

 原作は、手塚治虫文化賞短編賞を受賞した大島弓子エッセイ漫画。授賞式
に欠席した大島先生の代わりに、小泉今日子がサプライズ登場したというニュース
を新聞で読みました。私は少女時代、少女コミックよりも『少年サンデー』なんかを
読んでいたような子どもだったので(兄がいたわけでもないのに)、大島漫画の原
体験
というのは残念ながらありません。『グーグー』も、悲しいかな『通販生活』
掲載されていた回を一度だけ読んだことがあるかな、という程度。以下、原作者に
も、漫画作品にも思い入れのない人間の感想
です。 

グーグー2

 主人公・麻子=大島弓子を演じるのは小泉今日子彼女以外のキャスティング
は大島先生が許さなかった
とか。私にとっては永遠のアイドル・キョンキョンだから、
彼女の美しさやオーラ最大級全面に出した映画なのかと思っていたら・・。
そこには「人生を諦めた人」みたいな寂しげな彼女がいました。小泉今日子、なん
だかいい女優さんです。彼女を嫌いな人はいるかもしれないけど、彼女を認めな
い人
っていないんじゃないかな。上野樹里ちゃんはお肌がピチピチしていてかわ
いいし、加瀬亮くんも小柄なキョンキョンと並ぶとなんともカッコよく見えるのだけ
れど・・・。やっぱり彼女とは「年季が違う」感じです。森三中は食べ過ぎだし(笑)。

グーグー3

 グーグーはかわいいし、サバとの再会場面などいいシーンもあったのだけれど、
全体として無駄なシーンが多かった気がする。監督としてはもちろん、全てのシー
ンに意味を持たせているのだろうけれど、私にはそれが感じ取れなかった。若い
ナオミ(上野樹里)の出番が多いのは、中年に差し掛かった麻子との対比? そこ
がうまく機能していない感じで。殺陣の練習風景も、意味がわからなかった・・・。
いきなり出てくるマーティ・フリードマン。。『英語でしゃべらナイト』かよ!(笑)
もうちょっと麻子さんの人生を細かく細かく追って、もうキョンキョン(とグーグー)
が出ずっぱり!みたいな映画
にしてもよかったんじゃないかな? 

 しかし、麻子さんがグーグーの健康や長寿を願う気持ち、自分が彼を看取れま
すように、と祈る気持ち
純粋な愛情に溢れていて。。人間も、猫も、命は同じな
んだなぁ
、と、。。

 繁華な駅前から数分で閑静な住宅街が広がり、井の頭公園がある。吉祥寺という
素敵な街
が、本当の主役なんだろうな。行ったことないけど。。そしてまことちゃん
(楳図かずお先生)
「ぐゎシ!」には笑いました。若い子は、絶対わからないだろ
うなぁ、と思いながら・・・。

 (『グーグーだって猫である』監督・脚本:犬童一心/原作:大島弓子『グーグー
      だって猫である』
/主演:小泉今日子、上野樹里、加瀬亮/2008・日本)

テーマ:グーグーだって猫である - ジャンル:映画

【2008/09/10 14:01】 | 映画 | トラックバック(15) | コメント(10)
大丈夫だよ。~『崖の上のポニョ』#2
ポニョ



 Ponyo on the cliff by the sea


 夏休みも終わった日曜日、ポニョ再見。いろいろ観たい映画は他にもたっく
さんあるのですが、諸般の事情というものがありまして・・・。でも、また観に行
けるんだー、とウキウキだったのも本音。封切りから一ヶ月半、シネコンでの
2スクリーン上映はさすがに終わっているけれど、まだ一番大きなスクリーン
での上映。しかも7割は入っています。子どもがもちろん多いのだけれど、私の
はお年を召したご夫婦でした。素敵ー。

 初見では気になったこと、宗介がポニョを水道水に浸けるだとか、リサが宗介
を置き去りにする
とか、そんなことは何故か、全く気にならなかった。今回一番
感動したのは、ポニョフジモトの部屋に侵入して「海の魔法」解き放つ場面。

 初見では、一体どうしてあんなこと(大津波)が起こったのか今ひとつわからない
まま観ていました(トキさん「人面魚が陸に上がると津波がくるよ」予言してい
たけど)。しかしフジモトのセリフをよく聴いてみると、あれはカンブリア紀、デボン
海の生き物たちが再生したということなのですね。金色の光とともに海の
生命が爆発
し、ポニョの妹たち巨大魚になるところは圧巻海は爆発だ!?

ポニョ2

 ところで宗介の母、リサって25歳っていう設定なんですよ。ちょっとびっくり
20歳で宗介を生んだのかー。しかしそれにしては山口智子声が落ち着き
過ぎてませんかね
。 

 ポニョは人間になり、魔法を失います。でも、トキさんたちの足は治ったまま
だから水没した街も、きっと元通りになっていますよ。心配御無用

 上映後、スクリーンを後にする大勢の子どもたちの中から「ポーニョ、ポーニョ
ポニョさかなの子♪」
大合唱自然に湧き起こりました。ビックリして、同時
になんだかが出てしまった・・・。子どもって、ホントにかわいい監督に見せ
てあげたいと思った風景
でした。

テーマ:崖の上のポニョ - ジャンル:映画

【2008/09/09 22:28】 | 映画 | トラックバック(0) | コメント(2)
長い長い、魂の彷徨~『EUREKA/ユリイカ』
ユリイカ


 EUREKA


 福岡県甘木市路線バス運転手沢井真(役所広司)は、ある朝バスジャック
遭遇する。同乗していた中学生の直樹(宮崎将)と小学生の梢(宮崎あおい)兄妹
とともに生き残った沢井は、三人で奇妙な同居生活を始めるが、直樹と梢は言葉
を失っていた。やがて兄弟の従兄秋彦(斉藤陽一郎)が現れ・・・。

 2000年のカンヌ国際映画祭において、国際批評家連盟賞を受賞した青山真治
監督
の代表作。217分、3時間37分という常識外れの長尺ではあるが、その長さ
必然とする説得力ある傑作。監督による「北九州サーガ」三部作第二作
位置しており、監督自ら小説化した原作三島由紀夫賞を受賞している。

ユリイカ2

 しかし217分、普通の映画二本分は余裕である長さ。この長さにこだわった監督
と、それを許したプロデューサーの肝っ玉敬意を表したい。青山真治監督は、
解釈を観る者に委ねることはせず、映像の全てにはっきりとした意図を持ってい
るのだと思う。無駄に長く冗漫な映画には鉄槌を下すべきだけれど、人間の「生」
と「死」、その間にある「魂」
揺らぎと再生を真摯に見つめ、寄り添うためにはこの
長さしかなかったのだ、と思いたい。セピア色の画面はときに輝き、ときに幻影
ように儚く頼りなく・・・。それでいて限りなく、美しい

 本作で初めて(とは言っても主演映画は『Shall We ダンス?』くらいしかまと
もに観た記憶がないのだけれど)、役所広司って本当に、すごい役者なんだなぁ
「わかった」。ちなみに「ユリイカ」とは、ギリシア語「発見した」という意味なん
だそうだ。

 そして宮崎あおい、恐るべし・・・。朝ドラのヒロインから22歳にして大河ドラマ
の主役にまで上り詰め、今や「国民的女優」とも言うべき彼女。撮影当時は13歳
くらいだろうか、彼女なくしては成り立たない、極めて重要な役どころを完璧に演
じている。

 その「死」刻印された三人の、それぞれの「生」への向き合い方。直樹は
生きるために殺し、梢はそんな兄を見守り受け入れ、沢井は「他人のためだけ」
生きようとする。三人と同じ経験をしながらも、現実と折り合いをつけ「一線」を超え
ずに生き延びている秋彦。そんな彼の「一般論」に、沢井は初めて激高する。そし
てこの映画の白眉はやはり、沢井のこのセリフだろう。

「生きろとは言わん。ばってん、死なんでくれ」

 ラストシーン言葉を獲得した梢の世界がつく。もう、家に帰ろう。自分に
帰ろう。世界は美しい。


-------------------------------------
 残念ながら、私の拙い文章ではとてもこの映画の素晴らしさは伝えられていない
と思う。頼む、この映画を観ずに死なんでくれ。。(長いけど)。

 (『EUREKA/ユリイカ』監督・脚本・原作・音楽・編集:青山真治
     主演:役所広司、宮崎あおい、宮崎将、斉藤陽一郎/2001・日本)

テーマ:心に残る映画 - ジャンル:映画

【2008/09/08 22:21】 | DVD | トラックバック(6) | コメント(10)
最も暗い夜の、最も輝ける光~『波打ち際の蛍』
波打ち際の蛍

 心に傷を負い、カウンセリングに通う麻由。彼女は待合室で出会った「蛍」に惹
かれてゆくのだが、自身の過去とどうしても折り合いがつけられないでいた・・・。

 内容もさることながら、島本理生の本はいつも、とても綺麗だ。単行本の装丁
が素敵
すぎて、文庫になったらガッカリするほど。本作も、いわさきちひろ調の
カバーの画
に、見返しとしおり紐はティファニー・ブルー。手に馴染む重みが愛
おしい。

 前作クローバーが若々しく瑞々しいラブコメ調だったので、島本さん、結婚
されて幸せモード全開? なんて勝手に想像して喜んでいた。なのに今回、また
DVという暗い題材に戻ってしまって・・・。正直、ページを閉じてしまいそうになる
ほど酷い描写がある。主人公・麻由にシンクロしてしまって、読み進むのが辛い・・

 島本さんのDV性虐待をテーマにした作品からは、いつも彼女の悲痛な叫び
が聞こえる。子どもは傷つきやすくて、脆くて弱い存在なんだ。だからどうか大人
たちよ、親たちよ
子どもたちをもっとしっかり見て、守ってあげて、と。

 しかし、ラスト救いがあります。彼女が惹かれたのが「蛍」であった必然
夜明け前こそが最も暗いと信じられる、希望と再生の予感。しばし、号泣

 ... the brightest lights in the darkest night.

 (『波打ち際の蛍』島本理生・著/角川グループパブリッシング・2008)

テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

【2008/09/07 23:00】 | 読書 | トラックバック(3) | コメント(4)
ヤミヨノクラゲ~『アカルイミライ』
アカルイミライ



 BRIGHT FUTURE


 おしぼり工場で働く仁村(オダギリジョー)は、世間とうまく折り合えない性格。
同僚の守(浅野忠信)のように慕うが、守は飼っていたクラゲを仁村に託し、
姿を消してしまう・・・。

 眠ると未来の夢を見ることが出来たのに、近頃は眠っても夢が見られないこと
に苛立ち、焦る仁村。まだ何者でもない若い彼が、猛毒を持つクラゲに触発され
ながら、不透明な未来に何かを見出してゆく物語。映画初主演オダギリジョー
はまだ髪型も普通(?)で、少年のような初々しさ。身のこなしにはまだ「仮面ライ
ダークウガ」
が入っているし、浅野忠信、藤竜也という大先輩の胸を借りながら
懸命に演技しているのがよくわかる。これから伸びて行く人特有のオーラが出て
いる感じ。

 この作品、レンタル店の棚を探していてもなかなか見つからなくて・・。なんと、
「松山ケンイチ出演作」のコーナーにあったんですよ! まぁ確かに出てはいる
けれども、ホントに小さい役ですよ。ちなみに松ケンも、この作品が映画初出演
なのですね。加瀬亮くんも、守の弟、藤竜也の息子役でワンシーンに出演して
いる。加瀬亮くんって、ずっと前から加瀬亮くんだったんだなー、と思った(当たり
前だけど)。彼の役柄が、私は一番恐ろしかった無関心、って何だか怖い。

       アカルイミライ2

 浅野忠信は、やはりタダモノでない存在感で圧倒的。監督は彼を「この人がいた
ら他の俳優はたまらないな、っていうすごい人」
と評していたし、オダギリジョーも
「この役で浅野さんに挑戦したい」と語っていた。彼の周りだけ空気の振動が違う
ような、薄い透明な膜に包まれているような人だな、と思う。それは守という人物の
得体の知れなさでもあり、浅野忠信自身の資質でもあるように思う。

 仁村と守の豪華な2ショットは、北村道子の担当する独特な衣装の効果もあり、
なんともになる。象徴的な意味での「女性」は全く出てこない映画であり、仁村と
守、仁村と守の父というほとんど「野郎二人」の映画だけれど、物語の中に同性愛
的側面やメタファーは皆無
(だと思う)。監督にも出演者にも、そういう視点が全く無
いのだろう。

 画面の色を変化させ、質感を変え、分割する。様々な映像的手法世代間の
ギャップ
若者の不安、ワケのわからなさを表現しているのだろう。しかし今は
考えて解釈するのではなく、感じたままにとどめておきたい。遊歩道を我が物顔
に歩いていた高校生たちゲバラTシャツを着て、何かに触発されるように車道
へ出、意志的に進んでゆく。「アカルイミライ」は彼らに託されたのか。

 「ずーっとここにいていいよ」息子が何者かわからなかった父にもたらされた
「救い」やさしい映画なんじゃないかと思う。

 (『アカルイミライ』監督・脚本・編集:黒沢清/2003・日本/
              主演:オダギリジョー、浅野忠信、藤竜也

テーマ:邦画 - ジャンル:映画

【2008/09/06 17:32】 | DVD | トラックバック(0) | コメント(2)
底知れぬ懐の深さ~『サッド ヴァケイション』
サッドヴァケイション


 SAD VACATION


 密航の斡旋から運転代行へと職を変えた健次(浅野忠信)は、ある夜、かつて自分
を捨てた母千代子(石田えり)
と再会する・・・。

 青山真治監督による「北九州サーガ」完結編。冒頭、1989年9月10日に起こった
事件のテロップが流れる。それはまさしく監督のデビュー作Helplessで描か
れた物語であり、この映画が主人公・健次のその後を描いたものであることが宣言
される。母親への憎悪と思慕、復讐と執着、紙一重の感情が錯綜する、人間という
強く、脆い存在
。それらを全て受け止め、包み込む「母性」。男と女、親子の複雑
「情」「縁」を描いた傑作。観ている間、が自然にボロボロこぼれて止まらな
かった。「感動」とは違う、心のどこかで求めていた何かを描き出した作品なのかも
しれない。本作を観たあと『Helpless』を観て、再び本作を鑑賞。
私、『Helpless』とこの映画だったら何回でも観られます

サッドヴァケイション2

 初見ではセリフが所々聞き取り辛くてストレスを感じたけれど、乱暴な言い方を
すれば「どうでもいいセリフ」はわざとヴォリュームを落としたのかもしれない
それが監督の意図なのだと思うことにする。

 健次は母の家庭へ入り込み、母への復讐を遂げようとするのだけれど・・・。私に
は、最初から最後まで彼が母を狂おしいほど求め、母の愛を乞うているようにしか
見えなかった
。キツイ眼差しに怒りを秘め、バイクにまたがる勇介(高良健吾)は、
かつての健次そのもの。健次は昔の自分を葬り去ることで「復讐」を遂げ、消せない
十字架を背負う。

 クラスで唯一人、秋彦(斉藤陽一郎)苛めなかった健次孤児のアチュンとユリ
(辻香緒里)
見捨てられない健次。そんな健次が、はぐれ者たちを雇い、更正させ
る間宮(中村嘉葎雄)
に「何故そこまでするのか」と問う。彼は、自身の「やさしさ」
無自覚だった。そんな彼を見つめ、自らを投影し、復讐への舵を切らせる梢(宮崎
あおい)
。女の冷淡さ、執念深さ。何があっても泰然と微笑み、全てを受け入れて
ゆく千代子
スカートから覗くしっかりとしたふくらはぎが、大地を感じさせる。血の
つながり
さえあれば、何事にも動じない強靭な存在感。参りました・・・。ラスト近く、
後藤(オダギリジョー)膝に抱く梢にも、既に母性が備わっているところがまた、
恐ろしい

サッドヴァケイション3

 浅野忠信が最高に光っている。特に冴子(板谷由夏)告白するシーンには撃沈
せられた。九州弁も相まって、彼の不思議な存在感捉えどころの無い魅力堪能
秋彦の言う「もう一回、健次に会いたいと思ったんです」これは監督自身の思いでも
あるのではないだろうか。

「人間が、一番大事なことって何? ただ生きることでしょう」
チャイニーズ・マフィアの男のこの言葉が、この映画の主題なのかもしれない。

 (『サッド ヴァケイション』監督・脚本・原作:青山真治/2007・日本/
      主演:浅野忠信、石田えり、宮崎あおい、オダギリジョー、板谷由夏)

テーマ:心に残る映画 - ジャンル:映画

【2008/09/05 10:49】 | DVD | トラックバック(11) | コメント(10)
NEVER MIND~『Helpless』
Helpless.jpg


 Helpless


 1989年9月10日、北九州。刑務所から仮出所してきた安男(光石研)は、幼馴染
健次(浅野忠信)と再会する。

 青山真治監督が自ら脚本・音楽も手がけた長編デビュー作。乾いた銃声のように
やるせない若者の生き様を、晩夏の一日を通して描く80分。浅野忠信は初主演作
にしてこの存在感、凄い

 実はこの映画の存在は、今まで全く知らなかった。サッド ヴァケイション
のエンドロールで「映像使用/Helpless」とあり、あのリアルな浅野忠信の回想
シーン
は映画だったのか、、と知った次第。『サッド ヴァケイション』も本作も、
もちろん独立した作品として素晴らしいけれど、両方鑑賞することでより味わい
深く、考えさせられる作品
になっていると思う。『サッド~』健次アチュン
与えたウサギの意味、冒頭の廃屋となった喫茶店の意味、兄を待ち続けるユリ・・・。
 ちなみに、本作と『ユリイカ』、『サッド ヴァケイション』で青山真治監督の
「北九州サーガ」トリロジーが完結したらしい。『ユリイカ』も未見、観たい気持
ちは山々だけれど、217分の長尺。。浅野くん出てないし。。とちょっと尻込み中。

Helpless2.jpg

 まだ高校生らしき健次は、自分の内側に怒りをたぎらせ、そのやり場のなさ
苛立っている。その怒りの原因は明らかにされず、若者特有の衝動的な暴力
して運命を悲劇へと駆り立てる。そして失くしてしまった自らの右腕を捜すかの
ように、自らの存在理由を証明しようともがく安男

 10年以上前の作品なりに浅野忠信は若いけれど、少しハスキーな声細い目
変わらない。彼の演技には「自然体」という陳腐な言葉しか思い浮かばないほど、
孤独で翳のある若者にはまっている。光石研もさすがの演技!荒々しく、破滅へ
と一直線に突き進むしかない男の狂気と哀感
。ちなみに私は九州弁が大好きなの
で、安男や健次の「きさん(貴様)」にいちいち反応してしまった。

 長回しを多用したカメラ。鳴き狂うセミの声をバックに、晩夏の焦燥を乾いた
空気の中に映し出す映像。これは隠れた名作じゃないだろうか。

 (『Helpless』監督・脚本・音楽:青山真治/1996・日本/
           主演:浅野忠信、光石研、辻香緒里、斉藤陽一郎)

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【2008/09/05 10:33】 | DVD | トラックバック(5) | コメント(2)
切ない東京散歩~『転々』
転々

 大学8年生の文哉(オダギリジョー)はある秋の日、借金取り福原(三浦友和)
から「散歩に付き合ったら100万やる」と持ち掛けられ、男二人の奇妙な東京散歩
に出掛ける。

 三木聡監督作品は初見。噂の『時効警察』も未見。しかし麻生久美子警察官
のコスプレ姿
カメオ出演していたのはわかった。小泉今日子の経営するスナック
「時効」という店名なのも楽屋落ちで笑える。ゆる~い脱力系コメディ映画にして
笑いどころ満載、かつ主人公たちの切ない心情もじんわりと伝わってくる、温かな
佳作
笑って、泣いて、じ~んときて・・。この映画大好きです! すっごくよかった、
DVD欲しいくらい。

 東京という土地には全く馴染みがない私だけれど、東京ってこんなに素敵なと
ころだったんだ・・・、と画面に見入ってしまった。いつもセカセカして時間に追わ
れて、ゆっくりと「歩く」なんてことを忘れてしまったかのような自分の生活も反省。 
まばゆいほど黄色に色づいた、神宮外苑の銀杏。やっぱ画になります。

転々2

 爆発頭オダギリジョーが演じる文哉は、本当の親と生き別れた孤独な青年
最初は胡散臭く感じていた福原「親父」と呼び、離れ難いほどの親愛の情
生まれる過程をカメラは自然体で追う。福原に父親の面影を重ねる文哉が、父親
の顔を知らずに育ったというオダギリ自身とオーバーラップ
するようで、観ている
私までしんみり。。彼の抱える孤独を理解することはできないかもしれないけれど、
日曜の夜、サザエさんが終わる頃の寂しい、やるせない気持ちは私にも十分理解
できる。擬似家族の団欒のひととき、涙目でカレーを食べる文哉が愛おしくて。。
ほろり

 文哉の「相棒」ワケあり男・福原を演じる三浦友和は、エクステ髪でも彼自身
の持つ真面目で誠実なイメージは崩れない。彼は妻を、本当に愛していたんだ
ろうな・・・、って。しかし頭のネジが(10本中)3本くらい飛んでいる吉高由里子
ビックリだった。岸部一徳ボケ倒しのジャージ三人組(ちょっとナイトスクープ
のノリ?)も楽しい。岩松了さんってああいうお顔だったのね。

 そして一番印象的だったのは、ムーンライダーズの音楽だったかも。エンド
ロールと共に流れる『髭と口紅とバルコニー』。これは、、きます。細部にまで
こだわりが感じられる、とても丁寧に作られた映画なんじゃないだろうか。オス
スメ


転々3

 (『転々』監督・脚本:三木聡/原作:藤田宣永『転々』/
      主演:オダギリジョー、三浦友和、小泉今日子/2007・日本)

テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画

【2008/09/03 21:19】 | DVD | トラックバック(10) | コメント(8)
本屋さんへ行こう~『わたしを離さないで』文庫版
わたしを離さないで文庫

 カズオ・イシグロわたしを離さないで文庫化されました。文庫版のカバー
も、単行本と同じカセット・テープのイラストなのがうれしい!

 欲望のままに本を買い漁っていると、経済的にも収納場所にも困ることになり
ます。ですから本はほとんど買わず、図書館で借りるようにしています。新聞の
書評欄、広告欄はくまなくチェックし、新刊は見逃さないように。そして読みたい
本はすかさずリクエスト! しかし、どうしても手元に置いておきたい・・・。
そんな気持ちが抑えがたくなる本に時々出逢えることも、読書の喜びの一つ。
『わたしを離さないで』ももちろん、そんな大切な本です。

 ちょうど二年前に書いた感想はこちら。今読むと気張っていて、恥ずかしくなる
ような文章だけれど、この本を読んだときの熱い思いは今も、私の中で温度
失っていません。抑制された美しく端正な文体が紡ぎ出す、不思議で残酷で瑞々
しい「人生の物語」

 
 この秋オススメ、未読の方は是非。堪能なさって下さい。

 (『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ著/土屋政雄・訳/
                    早川書房・ハヤカワepi文庫/2008)

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

【2008/09/02 08:39】 | 読書 | トラックバック(0) | コメント(4)
闇夜の狂宴~『ダークナイト』#2
ダークナイト

 THE DARK KNIGHT

 Why so serious?


 日本公開も三週目。上映回数も少なくなる中、ようやく二度目の鑑賞。一度目は、
ゴッサム・シティの闇に呑み込まれたようなあっという間の2時間半だったけれど、
今回は少し、落ち着いて観られたような気がする。

 しかし改めて驚いたのだけれど、この映画R指定はおろか、PG指定にもなって
いない
のですね? 映倫の基準って全くわからないけれど(ちなみにアメリカでは
PG-13)、ちょっとこの映画は子どもだけでは観せたくないと思った。トゥーフェイス
なんて、大人の私でも怖くて、出てきたら目を逸らしてましたから・・・。

ダークナイト4

 つくづく、この映画脚本がよくできてるな、と思う。物語前半、マフィアの暗躍を
阻止しようとバットマン/ゴードン警部補が奔走する中、結構説明的セリフも多
かったりする。登場人物も多い。しかし全く不自然にも不明瞭にもならず、ストー
リーが円滑に流れる構成の妙。この映画を観て「話がややこしくて混乱した」って
いう人、少ないんじゃないかな? しっかり練られた脚本の成せる技だと思う。

 ブルース・ウェイン=バットマンを巡る三角関係--バットマン/ジョーカー/
トゥーフェイス、ブルース/レイチェル/ハービィ--
が、善と悪、恋と正義の間
で揺れるブルース=バットマン複雑かつ重層的なキャラクターに成し得ている
と思う。バットマンが生身の人間であるからこそ、悩み傷つき、嫉妬し、迷う姿
胸キュンしてしまう(違う?)。翳りある瞳の持ち主、クリスチャン・ベイルは本当
ハマリ役。彼あっての新・バットマンシリーズだと思わずにはいられない。

ダークナイト2

 そしてそのクリスチャン・ベイルのバットマンを遥かに凌駕した、激情ほとばし
る演技
を見せてくれたのがヒース・レジャー=ジョーカー。薄汚れたメイクが一見、
グロテスクではあるけれど、持て余し気味の長い手足、エレガントでさえある身
のこなし
悪の権化を演じながらも本当に美しい人だとつくづく思う。足首が覗く
長さのパンツの丈も絶妙(そして靴下の柄も)。稀代の悪役を、こんなにスマート
な役者に演じさせるなんて。。初見時はこの役をヒースが演じたことが悲しくて
堪らなかったけれど、彼からこの演技を引き出したクリストファー・ノーランには
やはり、感謝すべきなのかもしれない。ヒースの演技に対してはアカデミー賞
ノミネート
が噂されているけれど、ノミニーだけじゃなく、絶対受賞して欲しい、
いやすべきだと思う。作品自体も傑作だと思うし、これ以上のキレた演技、今
まで観たことありますか?

 "You complete me."

 ビル爆破のリアリティ、バットポッド、バットモービルのカッコよさ! トレイラー
が横転でなく、縦にひっくり返るという離れ業。そしてジェームズ・ニュートン・ハ
ワード+ハンス・ジマー、巨匠二人
による重厚な音楽。映画を彩る全て完璧
に融合
し、壮大なスケールゴッサム・シティの闇乱反射する。何度でも観た
い、観る価値のある傑作。もう一度観たい!

テーマ:ダークナイト(The Dark Knight) - ジャンル:映画

【2008/09/01 09:11】 | 映画 | トラックバック(5) | コメント(13)
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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