![]() First Love, Last Rites by Ian McEwan 英国のブッカー賞受賞作家、イアン・マキューアンの処女短編集。1975年、著者 27歳の時の作品。有望な新人に与えられるサマセット・モーム賞受賞作。 マキューアンは言うまでもなく映画『つぐない』の原作者である。『贖罪』を読む前 に、現代最高と言われる英国人作家の原点に触れてみる。 表題作をはじめ、本作は8編からなる短編集。幼児性愛や近親相姦、服装倒錯な ど、過激ともいえるテーマを静謐で巧みな筆致で読ませる。正直、これが処女作で あるとは信じ難いほど完成されている印象。一気に読めるタイプの小説ではないが、 興味のある方は是非手に取っていただきたいと思う。ちなみに私が一番面白く読ん だのは『押入れ男は語る』。ちょっと「ハルキ・ムラカミ」テイストを感じてしまった。 「訳者あとがき」によると、マキューアンはイースト・アングリア大学で学び、後に カズオ・イシグロも彼と同じ教授の指導を受けたのだという。映画の脚本を手がけ ているところ、ブッカー賞受賞作家であるところも二人の共通点だ。 早く『贖罪』も読みたいけれど、『Jの悲劇』も観たい! (『最初の恋、最後の儀式』イアン・マキューアン・著、宮脇孝雄・訳/ 早川書房・1999) ![]() |
![]() OUT OF AFRICA by Sydney Pollack (1934-2008) ・・・。 三月のアンソニー・ミンゲラの訃報に続き、彼の盟友が逝ってしまいました。 シドニー・ポラック。癌だったそうです。享年73。 ・・・。ショックです・・・。 近年は監督としてよりも俳優やプロデューサーとして活躍されていて、つい 先月『フィクサー』でそのお姿を拝見したばかりでした。今思えば、ちょっと痩せ たな、と感じたような気もします。残念です。。。 ![]() 一枚目の画像はオスカー受賞作『愛と哀しみの果て』の名場面。私は名作の誉れ 高い『追憶』を観ていません。近いうちに観て、偉大な映画人を偲びたいと思います。 改めて、ご冥福をお祈りします。合掌・・・。 それにしても、、今年は訃報が重なりますね(涙)。 テーマ:ハリウッド俳優・監督 - ジャンル:映画 ![]() |
![]() THE MIST 湖の畔の家で暮らす画家のデヴィッド(トーマス・ジェーン)は、記録的な嵐の 翌朝、霧が立ち込め始める中を息子と買い物に出かける。霧はすぐに濃霧とな り、デヴィッドや他の買い物客たちはスーパーマーケットの中に閉じ込められ てしまう・・・。 スティーヴン・キング原作、フランク・ダラボン監督・脚本の密室パニック・ホラ ー。恐怖映画は観ないし、恐怖小説も読まないけれど、20世紀の記念碑的 傑作『ショーシャンクの空に』の原作・監督コンビに敬意を表して鑑賞。恐怖度 はさほど高くないと思ったが、ラストの衝撃度、落ち込ませ度は半端じゃない。 ただのホラーではない、考えさせられる映画です。 スティーヴン・キング原作の映画って、観ている限りでは駄作はない気がする。 『シャイニング』『ミザリー』『スタンド・バイ・ミー』『ゴールデンボーイ』等など。 最近では『シークレット・ウィンドウ』も悪くは無かった。それはやはり、キングの 想像(創造)力が並外れているからなんだろうか。 ![]() 軍の極秘計画によって生み出された濃霧、触手を持つ怪物や巨大昆虫、毒蜘蛛 などのクリーチャーよりも、よっぽど怖いのが人間だとつくづく思う。密室の中では 状況によって支配、被支配の主従関係が生まれ、時間の経過に沿って集団の 力関係が変化してゆく。閉じ込められた人々の不安を煽り、「神」の名の下に服従 を迫る狂信的なミセス・カーモディを演じたマーシャ・ゲイ・ハーデンが鬼気迫る 怪演。怖いです。お近づきになりたくない! 「人間は元々善良よ」と言うアマンダ(ローリー・ホールデン)に対し、「人間が二人 いたら最後は殺し合う、そうならないために政治と宗教があるんだ」というマーケット 店員のセリフが印象的だった。 そして本作も『贖罪』についての映画であったことに驚き。"ATONEMENT" ではなくて"Expiation"だったけれど・・・。 ![]() しかしこの救いのない、絶望的なラストはどうなんだろう? デヴィッドは息子 との約束−−「あの怪物に僕を殺させないで」−−を守るためにそうしたのだ ろうけれど、そこに至る彼の絶望(薬局とマーケットでの犠牲、迫り来る怪物、 妻の死、空になったガソリン)と、その後の更なる地獄はどうだ? 「地獄に堕ちろ!」と言い捨て、最初にマーケットを後にした女性の冷たい視線。 晴れてゆく霧、青い空、しかしそこには一筋の希望も無い。いや、希望を自ら 捨てたのはデヴィッドなのだろうか? 彼こそがミセス・カーモディが求めた「生贄の羊」なのかもしれない。彼がこれ から生きていけるとしたら、それは「贖罪」の人生そのもの・・・。ヘリコプターの 爆音が響くエンドロール、観客の誰も席を立たなかった。打ちのめされた。 (『ミスト』監督・脚本・製作兼:フランク・ダラボン/原作:スティーヴン・キング /主演:トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン/2007・USA) ![]() |
![]() THE BUCKET LIST 余命6ヶ月の宣告を受けた大富豪のエドワード(ジャック・ニコルソン)と、自動 車整備工のカーター(モーガン・フリーマン)。エドワードの経営する病院で偶然、 同室になった二人は意気投合、「死ぬまでにしておきたいこと」のリストを作り、 旅に出る・・・。 ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン。共に1937年生まれのアメリカを 代表する名優の初共演作。この二人の共演と知って「観たい!」と思い、期待 して劇場に向かった方が多いのでは? 私ももちろんその一人。うまくまとめて いるな、と言う印象の佳作だった。監督は彼らより10歳年下のロブ・ライナー。 ![]() ニコルソンもフリーマンも誰もが認める名優だけに、その演技は安心して観て いられる心地良いもの。白人と黒人、資産家と労働者、無神論者と敬虔な信者、 4回の離婚経験者と浮気ゼロの愛妻家・・・、と何もかも正反対な二人に、たった 一つ共通する「残りの人生の長さ」。お金はあっても孤独なエドワードと、家族が いてもどこか満たされないカーターは、案外似たもの同志だったのかもしれない。 スカイダイビングやレーシングカーを無邪気に楽しむ二人は、演技でなくて「素」 のようにも見える。長年連れ添った妻に「情熱が消えた」と言うカーターには女性 として納得行かない部分もあったけれど、最期は妻の元へ帰ってくれて安堵。 しかし、モーガン・フリーマンはこういう「知的な市井の人」が似合うなぁ。 我がままで自己中心的なエドワードの、完璧に有能で忠実な秘書トマス、又は トミー、マシュー、etc(ショーン・ヘイズ)が、実は重要な役どころ。二人の会話 はウィットに富み、ビジネスライクな中にも信頼と愛情を感じさせる。81歳で 生涯を閉じたというエドワードに、彼は生涯寄り添ったのだろう。エドワードの 死後も彼は忠実な部下であり、友人で在り続けた。 ![]() こういう作品に接すると、映画の出来・不出来よりも、誰もが自らの生き方や 死について、考えずにはいられないだろう。エドワードが「心臓麻痺で死ぬ奴が 羨ましい」とつぶやくシーンがあるけれども、私はもし死ぬなら(と言うかいつか 必ず死にますけども)、突然でなく余命を報せて欲しいと思う。そして、お世話に なった友人や家族に、しっかりお礼を言って逝きたい。謝らなければいけない人 もいるかもしれない。行っておかなければならない場所もあるかもしれない。そ して身の回りの整理も、きちんとしてから逝きたいと願う。 「目を閉じて、心を開いた」。そんな最期が迎えられたら最高−−メメント・モリ。 (『最高の人生の見つけ方』監督・製作兼:ロブ・ライナー/ 主演:ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン/2007・USA) テーマ:最高の人生の見つけ方 - ジャンル:映画 ![]() |
![]() ATONEMENT 1935年の夏。英国上流階級タリス家の令嬢セシーリア(キーラ・ナイトレイ)は、 使用人の息子ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)と愛を交わす。しかしその愛は、 セシーリアの多感な妹ブライオニー(シアーシャ・ローナン)がついた一つの嘘に よって引き裂かれ、戦争という時代の大きな波に翻弄される。 「戻ってきて。私のところへ」 監督ジョー・ライト、主演キーラ・ナイトレイの『プライドと偏見』コンビが再タッグ。 ジョー・ライトの冴え渡る映像感覚と印象的な音楽、豪華な英国俳優の競演に よる、スケール感のある悲恋メロドラマの秀作。ゴールデングローブ賞では作品 賞(ドラマ部門)を受賞、アカデミー賞では7部門の候補となり、作曲賞を受賞。 ラスト近く、インタビュアー役でアンソニー・ミンゲラがカメオ出演している。 大阪では4月26日からの上映で、既に三週目に突入しているのにほぼ満席! で驚いた。クチコミかな? 確かにこの映画、英国映画好きには垂涎ものの、 素晴らしく魅力的な作品だと思う。 ![]() 英国の短く美しい夏の光を捉えた映像も美しいが、この映画で特筆すべきは 「音」ではないだろうか。暗いスクリーンにタイプライターの音が響くオープニン グからエンドロールのピアノ曲まで、音の使い方が非常に印象的だった。ブラ イオニーがロビーの秘め事を知る時には蜂の羽音。タイプの音はブライオニー の内に物語を刻印する。息子が連行される車に向かって、ロビーの母(ブレンダ ・ブレシン)が傘で殴打する音、繰り返される「うそつき!」という言葉。 冒頭、邸宅の広い廊下を歩くブライオニーの姿に、観るものは彼女の資質を 知る。宝塚音楽学校の生徒のような歩き方に、彼女の生真面目さ、幼さの殻を 脱皮しようとする危うさが見える。美しく情熱的な姉への憧れと妬み、純粋で 包容力のあるロビーへの恋心。人生の負の側面を知らないその無垢さが、一つ の愛と二つの人生を転落させるとは、まだ誰も知る由も無い。 ![]() 物語の真の主役であるブライオニーを、三人の女優が演じている。鮮烈な印象 を残す13歳のシアーシャ・ローナン、つぐないを果たそうと告解する老年のヴァ ネッサ・レッドグレーヴに対し、ロモーラ・ガライの「もっさり感」が残念。 『エリザベス:ゴールデンエイジ』出演のためキャストできなかったというアビー・ コーニッシュで観たかった。 光輝くタリス家の一日が、視点を変えながら丁寧に描写される前半と、ロビー が送られた北フランスの戦場との対比が凄まじい。特に、ダンケルク海岸での 長回し映像は圧巻。身体の不調から精神が蝕まれてゆくロビーの姿は正視で きないほど辛く、痛々しい。野に散る少女たちの亡骸に涙し、戯れに川に飛び 込むブライオニーを回想するロビーにとって、彼女への遺恨は既に、遠い日の 記憶だったのではないだろうか。 「隣のお兄さん」的印象で、親近感溢れるジェームズ・マカヴォイが好演。そして キーラ・ナイトレイの、まさに「輝くばかりの」美しさ! 韻も装飾もなくても、ただ ただ美しく、そして官能的でもある。明確な意志と情熱を持って抱き合ったあの夜 と、同じ緑色の衣装で濁流に消えたセシーリア。許しを乞うこともできず、書くこと で自らの罪を刻印し続けたであろうブライオニー。彼女の「つぐない」の人生を、 あなたはどう受け止めますか? (『つぐない』監督:ジョー・ライト/原作:イアン・マキューアン『贖罪』/ 主演:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカヴォイ/2007・英、仏) ![]() |
![]() THERE WILL BE BLOOD "I drink your milkshake! I drink it up!" ポール・トーマス・アンダーソン監督5年ぶりの新作。ご存知、英国の名優ダニエル ・デイ=ルイスが20世紀初頭の石油採掘王に扮し、主演男優賞を文字通り「総なめ」 にした作品。158分の長尺を全く感じさせない、濃厚でパワフルな傑作。観終わった 後、いい映画だけが残してくれる確かな手応えと高揚感に、全身が満たされていた。 アカデミー賞では本作と『ノーカントリー』が8部門の候補となり、作品賞と監督賞 はコーエン兄弟の頭上に輝いた。しかし私がもしアカデミー会員なら断然、この作品 に投票したと思う。掛け値なしの力作。観て下さい! ![]() この映画に関しては、後付けの解釈はしたくない気分。PTAの映画は、どこか 寂寥感が漂う作風を感じるのだけれど、本作もその印象は変わらなかった。音楽 を「鳴らしたい」人なんだなぁ、というのも相変わらず。 欲望の権化、金の亡者、自己中で孤独な怪物・・・。ダニエル・プレインビュー (ダニエル・デイ=ルイス)を形容するとしたら、そんな言葉が並ぶのだろう。しか し私はこの、どの角度から見ても感情移入し難い異形の主人公に、最高に魅了 されてしまった。それはもちろん、稀代の名優ダニエル・デイ=ルイス!に魅了 されたということなのだろうけれど。 この映画の予告を観たとき、ダニエルの「声」に驚かされた。いくつか観た彼 の過去作品の声とは全く違う。ジョン・ヒューストンの声を基にしたという話も あるが、彼はプレインビューの役作りに一年をかけたという。ずっと足を引き摺 っていたのも、まさか本当に役作りで骨折してたりして・・・。 不協和音のような音楽が示す通り、プレインビューは誰とも馴染まない、自分 の成功のためには手段を問わない人物だ。しかし、どうしても彼を根っからの 悪人として見ることはできなかった。それは息子H.W.(ディロン・フレイジャー、 名演技!)に対する彼の愛情が、プライオリティゼロではないにしろ、本物だ と感じたから。 キャンプのとき、少し後ろを歩く息子を振り返る姿、汽車の中に置き去りに した後、黙々と歩く姿、息子の部屋の広さを気にかける様子。もちろん、彼が 息子を連れ歩いたのは商売上の策略だというのはわかる。しかし家を出、人 を遠ざけ、孤独に生きようとするプレインビューも、息子との絆だけは信じてい たような気がする。いや、「信じたかった」と言うべきか。だから後年、息子が 独立しようとしたときの嵐のような怒りは、たった一つ信じようとしたものに 去られる辛さを誤魔化そうとしたようにも見えるし、「You're a bastard from a basket.」という言葉は聴こえるはずのない息子に向けてでなく、 自分自身に対して繰り返し絶叫していたように感じたのだ。 ![]() プレインビューよりもむしろ、身の毛がよだつほど嫌悪感を抱いてしまった のがイーライ(ポール・ダノ)のキャラクター。芝居がかった説教、金の無心、 聖者の顔をして振るう暴力。プレインビューにとっての石油がイーライにとって は信徒だというだけで、二人は正反対のようで合わせ鏡に映る一人の人物 のようだ。言い換えれば、それは欲望や猜疑心、暴力性だけが肥大した 「アメリカ」という国そのものなのかもしれない。 準備期間が僅か4日しかなかったとは信じ難いほど、ポール・ダノも好演し ていたと思う。しかし、プレインビューの洗礼場面でのビンタは、ちょっと腰 が引けていたのではないかな。そして本来「ポール」だけを演じるはずだった 彼がイーライをも演じたことで、ポール/イーライは双子という設定になったら しい。ここは観ていて少し混乱してしまったので、字幕で「双子の弟」とセリフ に入れるなど、何か工夫ができなかったものだろうか、松浦美奈さん? そして圧巻は、やはり「ミルクシェイク」の場面。狂気と暴力衝動が炸裂し、 ダニエル・デイ=ルイスの「青筋」も破裂寸前、最高潮に達している。あの シーンを観た後では、もう誰も彼以外に主演男優賞を授けようとは思えない だろう。助演男優賞の『ノーカントリー』ハビエル・バルデムともども、「笑って しまうほど怖い」狂気の役どころなのが奇妙な符丁だ。役への理解とか、 説得力とか、物語さえ超越している。演技の神様と言うよりも、悪魔と取引 したかのようなギラギラ感。荒野を吹き上がる原油よりも濃い、役者魂を 振り切った超絶技巧を堪能すべし! ロバート・アルトマンも思わず苦笑い しながら、天国で拍手喝采してるんじゃないだろうか。 (『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』監督・脚色・製作兼:ポール・トーマス・ アンダーソン/主演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ/2007・USA) テーマ:この映画がすごい!! - ジャンル:映画 ![]() |
![]() I'M NOT THERE 音楽界の生ける伝説、ボブ・ディランの半生を、6人の俳優によるアンサンブル で独創的かつ多面的に、時間も空間も飛び越えて自由に描いたユニークな映画。 「ボブ・ディランを同時に6人の俳優が演じる」という破天荒なアイデアだけでも、 既にこの映画に惹きつけられるし、演じる俳優たちの豪華さ!がまた凄い。 ボブ・ディランを演じるは、クリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェット、リチャード ・ギア、マーカス・カール・フランクリン、ベン・ウィショー、そして亡きヒース・レジ ャー。中でもケイト・ブランシェットの演技は絶賛され、ヴェネチア映画祭、ゴール デングローブ賞で最優秀女優賞を受賞、アカデミー賞にもノミネートされた。 ジェンダーを軽々と超越する彼女の演技は、オスカーを受賞しても誰も文句は 言わなかったに違いない。監督・原案はトッド・ヘインズ。今までの監督作品は 未見なので、是非観てみたいと思った。 ![]() 覚え書きを兼ねて、6つのパートの概略を。 ・クリスチャン・ベイル:ジャック/ジョン牧師 プロテスト・フォークを唄う革命家。後にキリスト教に傾倒し、ペンテコステ 派の牧師となる。『ノー・ディレクション・ホーム』風の擬似ドキュメンタリー 形式で撮られ、ここにもジェームズ・ボールドウィンが登場。同志であり恋人 でもあったジョーン・バエズがモデルであるアーティストにジュリアン・ムー アが扮する。 ・ケイト・ブランシェット:ジュード フォークと決別したことで、ファンから批判されるロックスター。彼と関わる ニューヨークのモデル、ココ役にミシェル・ウィリアムズ。ケイトのカメレオン ぶりが圧巻。ビートルズが「サヨナラ」と言っていたように聞こえたけど?? ・マーカス・カール・フランクリン:ウディ・ガスリー ギターを抱え、自らの音楽を探して放浪する、幼き吟遊詩人。黒人の少年が 演じて強い印象を残すパート。 ・ベン・ウィショー:アルチュール・ランボー アルチュール・ランボーを名乗る詩人。「聖書の予言」のように、詩的な言葉で 観るものを翻弄する。 ・ヒース・レジャー:ロビー 新進映画俳優。フランス人の妻モリー(シャルロット・ゲンズブール)との出逢い から結婚、離婚に至る日々に、背景として在るヴェトナム戦争。 ・リチャード・ギア:ビリー・ザ・キッド 田舎町で隠遁生活を送るアウトロー。「古き良きアメリカ」の精神を象徴する彼 の キャラクターが、ちょっとわかりにくかったのが残念。このパートが長く感じ られ、全体の流れから浮いている印象も受けた。しかし、ラストで冒頭のウディ に繋がるシーンは感動モノ。 映画は時系列もエピソードもバラバラにして、事実をほんの少しずらしながら、 カラー、モノクロと自在に進んでゆく。手を伸ばしても届かない、掴まえようと しても逃げてゆく、正体を見せない主人公。そして最後に「本物」のボブ・ディラン の姿が少しだけ映し出され、エンドロールでは『ライク・ア・ローリングストーン』 『ノッキン・オン・ヘヴンズドア』が流れる。 ![]() この映画のコンセプト自体にも惹かれたけれど、やっぱり私にとっては「ヒース の出演作」という部分が大きかった。だから観る前は少し、ちゃんと作品と向き 合えるのかな、自分?っていう不安もあった。 ヒースの声が聞こえてきた時、ああ・・・。やっぱり涙が出たけど、ウェットな気分 は幸い、長くは続かなかった。と言うか、「こんな場面で泣くな!」と自分に喝を入 れたのかも。でも物凄く魅力的なミシェルも登場するし、かわいい娘を得ても崩壊 してしまう夫婦なんて、ヒースはどんな気分で完成したこの映画を観たんだろう? なんてことを考えもした。 ロビーのパートは苦悩するディランを描いている。しかし監督はシャルロットの ファンなのか、と思ってしまったくらい、ロビーよりも妻中心に描かれていたよう な気がして不満だった。ヴェトナム戦争への怒りと、夫への絶望感。このパートは 「ディラン」視点でなく、妻の目線で二人の関係と時代が描かれている。 (シャルロットじゃなくてヒースを映して!っていう潜在意識がそう思わせたのか?) 型に嵌められるのを極端に嫌った「生ける伝説」を、型破りのキャスティングと 構成で描いてみせた『アイム・ノット・ゼア』。そこには確かに「ボブ・ディラン」は いないかもしれない。しかし、夭折してしまったヒースはそこにいる。 He IS there... (『アイム・ノット・ゼア』監督・脚本兼:トッド・ヘインズ/2007・米、独/ 主演:クリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェット、ヒース・レジャー、 リチャード・ギア、マーカス・カール・フランクリン、ベン・ウィショー) ![]() |
![]() 少女拉致監禁事件の被害者だった作家が、手記を残して失踪した。そこには、 事件の真実が綴られているのか? 実在の事件に触発されて書かれた、直木賞 作家桐野夏生による長編。柴田練三郎賞受賞作。 桐野夏生の小説は、生々しい描写、湿度の高い文章という印象がある。その 湿度を生むのは、血や汗という人間の体液だ。心の闇に分け入り、人間の行動 や感情、悪意や衝動を形作るものの正体を暴き、描き切ろうとする作家・桐野 夏生の意欲と覚悟に戦慄さえ覚える。人間の「関係性」という迷宮に挑むその 姿勢は、孤高な戦士のようでもある。 望まないままに極限状態に置かれた人間が、生きる希望として残されるはず の「想像力」と「記憶」。『潜水服は蝶の夢を見る』の中で、ロックトイン・シンド ロームに陥った主人公ジャン=ドミニク・ボビーはそれらを蝶の羽根として、 自由に羽ばたいた。しかし本作の主人公は彼とは逆に、「想像力」と「記憶」 の囚われ人となり、自由とも希望ともどんどん遠ざかってゆくかのようだ。 子どもであったり、女性であったりする「存在」それ自体が「欲望」の標的と なり、悪意と邪念の中で汚される不条理。残虐と言うには余りにも理不尽な 弱者の運命に、読後しばし、言葉を失くす。 (『残虐記』桐野夏生・著/2007・新潮社) ![]() |
・・・。 あ〜あ・・・。
みんな幸せそうだなァ・・・。 しょぼ〜〜〜〜〜ん。。 ![]() ![]() ウソウソ(笑)。どちらもお似合いだし、幸せそうであたしゃウレシイですわ! (強がりじゃない!泣いてなんかないよぉ〜) これからも、いい恋愛していい役者になってネ♪ ![]() |
![]() NO DIRECTION HOME: BOB DYLAN 「ユダ!」 「信じないぞ、嘘つきめ」 マーティン・スコセッシ監督による、ボブ・ディランの音楽ドキュメンタリー。 生い立ちからデビュー、1966年のヨーロッパ・ツアーまで、「生ける伝説」の初期 の映像とケネディ、冷戦、公民権運動、ベトナム反戦運動に至る当時の記録映像、 そしてディラン本人と友人たちへの膨大なインタビューで構成されている。 DVDは二枚組み、3時間半を一気に見せる力を湛えた作品。元々はテレビ番組と して放映されたもので、製作にはNHKも関わっている。 私はフォーク世代でもディランのファンでもなく、『風に吹かれて』や『ライク・ア・ ローリングストーン』などの代表曲を聴いたことがある程度。実は彼がアメリカ人 であることさえ知らなかった。『アイム・ノット・ゼア』を観る前に、この世界的アー ティストに触れておきたい気持ちから鑑賞。ちなみに作品タイトルの『ノー・ディレ クション・ホーム』とは、『ライク・ア・ローリングストーン』の歌詞の一節から採られ ている。 ![]() まず、若い頃のディランの中性的な美しさに驚く。『アイム・ノット・ゼア』では 女性であるケイト・ブランシェットがディランを演じると聞いて耳を疑ったけれど、 この映像を観れば誰もがそのキャスティングに納得するだろう。60年代の ニューヨークが舞台の『ファクトリー・ガール』ではヘイデン・クリステンセンが ディランらしき人物を演じているらしく、これも謎のキャスティングだと思って いた。しかしディランの「三白眼」を見て、なんとなく納得。 「違う両親の元に生まれた」と感じ、「家を探しに」今も旅をしているようだと語る ディラン。彼の詩は「聖書の預言」だと言われ、まさしく現代の吟遊詩人であるが、 その姿は哲学者のようにも、求道者のようにも見える。声を変え、姿を変え、その 生き方は一定の姿かたちに留まることはない。まさに『アイム・ノット・ゼア』を 体現している。 「愚かでなければ恋などしない」 「やさしさが時には人を殺すこともある」 様々なディランを巡るインタビューの中で、公私共にパートナーであったジョー ン・バエズの言葉が一番印象的だった。「貧者や弱者の気持ちがわかっていて プロテストソングは作るけれど、デモや座り込みには決して行かない。中心的 存在になりたがらない複雑な人」 ![]() 60年代の記録映像では、ジェームズ・ボールドウィン(『もう一つの国』)が映し 出されて驚いた。ジョニー・キャッシュ(『ウォーク・ザ・ライン』)は映画で彼を 熱演したホアキンよりもイイ男! 一人の人物にフォーカスしたドキュメンタリー と言えば、その人物を礼賛する余り逆に真実が見えてこない、もどかしさの残る 作品もある。しかし本作は、記録映像とインタビュー、ライヴ映像の絶妙なバラ ンスにより、60年代という激動の時代に生まれるべくして生まれた稀代のアー ティストの魅力と時代性が十二分に伝わってくる。そして60年代以降のディラン の姿も見てみたいと思わせる、優れたドキュメンタリーフィルムと成り得ている のではないだろうか。 (『ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム』/2005・英、米、日本/ 監督・製作兼:マーティン・スコセッシ/出演:ボブ・ディラン) ![]() |
ゴールデン・ウィークも終わり・・・。皆さんどんな休日を過ごされましたか?
私は「こんな休日は、絶対、絶対、イヤだ〜〜〜〜!」と叫び出したくなるよう な映画を観てしまいました。。 ![]() FUNNY GAMES 夏のバカンスに、湖の畔の別荘にやってきた裕福そうな一家。しかし、突然の 訪問者が、穏やかに過ごすはずだった彼らの休日を崩壊させてゆく・・・。 人間の心のダークサイドを描き出し、その作品が持つ「底意地の悪さ」「後味の 悪さ」では他の追随を許さない映像作家、ミヒャエル・ハネケ。本作を観た後では もはや彼を「悪魔」とさえ感じてしまう。「怖い」と言うよりはあまりの不快さ、不気 味さ、不愉快さに身震いする。人間が、ここまで感情を排した残酷な映画を撮れ るものなのか。そしてタイトルを「FUNNY GAMES」としてしまうその感覚! ・・・。もう、絶句・・・。 しかし、気分が悪くなりながらも結局途中で止めることなく、最後まで観てし まった。そこがまたハネケ先生の「チカラワザ」なんだと思ったりもする。 ![]() ディンギーを牽引しながらドライヴする車を空撮の俯瞰で捉え、オペラを流す オープニングの画からして、既に不気味で「ハネケ」している。平穏で耳にやさ しいクラシック音楽とともに、カメラは徐々に登場人物に近付き、音楽は突然、 神経を逆撫でするようなパンクに変わる。長回しと対象を大きく切り取る構図の 多様、冷たくて無機質なハネケの世界がそこにある。巻戻しや、観るものへ語 りかけるセリフで「これは映画ですよ」と断りつつ、観るものをこの陰惨な「ゲーム」 に参加させようという監督の意図もまた、腹立たしさ倍増。ラストのストップモー ションは、目を逸らさずにいられない。 美しく、お高く留まってさえいたアナ(スザンヌ・ロタール)の、崩壊寸前の体当 たり演技が凄い! 最初は彼だとわからなかった、夫役の若きウルリッヒ・ミュ ーエも、理不尽な暴力と屈辱に苛まれる壮絶演技。彼らの一人息子役の少年に とって、この演技体験がトラウマになっていないか心配になるほどだ。 ![]() そして驚くべきことに、この作品、ハリウッドでハネケ自身が英語版をセルフ リメイクし、この三月から世界各地で公開されているのだ! オリジナルに忠実 に撮られた作品らしく、それならわざわざリメイクしなくても・・・、と思わないでも ないのだけれど。。 主演はナオミ・ワッツとティム・ロス。ナオミは製作総指揮も務めているようだか ら、アナ役をやる気満々だったのだろうか。謎・・・。そして悪魔の化身、ポール 役にはマイケル・ピット! う〜ん、無茶苦茶ハマッてそう(笑)。日本での公開 予定は無いのだろうか? 二度とハネケは観たくないと言いつつ、公開されたら 観に行ってしまいそうな自分が怖い・・・。 ![]() (『ファニーゲーム』監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ/1997・オーストリア/ 主演:スザンヌ・ロタール、ウルリッヒ・ミューエ、アルノ・フリッシュ) テーマ:この映画がすごい!! - ジャンル:映画 ![]() |
![]() 「作家は、処女作に向かって成熟する」という言葉を聞いたことがある。 第一作に書き手のエッセンスは凝縮されるものだし、如何にデビュー作を 超える作品を生み出すか、苦闘している作家は多いだろうと思う。 本作は、山崎ナオコーラ氏初の書き下ろし短編集。全体に一貫したテーマ があるわけではなく、人が出てこない話だったり、年表形式だったり、著者本人 としか思えない人物が登場したり。かなり実験的な試みをしつつ、各編がどこ かで繋がりを持つ手法を採る、なかなかの覚悟を持って書かれた労作だと 感じた。 しかし。同時に、文藝賞を受賞し、芥川賞候補にもなった『人のセックスを 笑うな』で華々しくデビューした著者にとっても |