人生に過ちなんてない~『いつか眠りにつく前に』
いつか眠りにつく前に


 EVENING


「ハリスは私の最初の過ち」

 臨終間近な一人の老婦人が、死の淵で呼ぶ若き日の恋人の名。横たわる母アン
(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)
を見守る二人の娘、コニー(ナターシャ・リチャードソン)
とニナ(トニ・コレット)。
アンの記憶は若く輝かしい日、ニューポートでのある週末へと
還ってゆく・・・。

 スーザン・マイノットが自らの原作小説をマイケル・カニンガムとともに脚色、製作
総指揮
も共に務めた作品。監督は撮影監督としてキャリアの長いラホス・コルタイ
原作は未読だが、マイケル・カニンガム「信奉者」の私としては必見の映画。ヴァネ
ッサ・レッドグレーヴとナターシャ・リチャードソン、メリル・ストリープとメイミー・ガマー
の母娘共演
も興味深い。その他、衣装デザインはアン・ロス、音楽はヤン・A・P・
カチュマレク
と、キャスト・スタッフにオスカー受賞者がズラリと並ぶ豪華布陣。
しかしその感想は・・・。物凄く惜しい映画だな、と言うのが正直なところ。

いつか眠りにつく前に2

 古きよき時代の別荘地ニューポートの海はまさに青春の輝きを放ち、お金持ちの
令嬢ライラ(メイミー・ガマー)マリッジブルーやその弟バディ(ヒュー・ダンシー)
お坊ちゃま的モラトリアムも不自然ではない。若き日のアンを演じたクレア・デインズ
の歌声
にも感心したし、臨終間近のアンを演じたヴァネッサ・レッドグレーヴの老けっ
ぷり
も潔い。そしてもちろん、実娘の数十年後を演じ、僅かな出演時間で深い印象
残していくメリル・ストリープ、、と文句の付けようがないのだけれど、映画全体の完成
度が高いとは言い難い
と思った。

 過去と現在が交錯する作品は枚挙に暇がないし、特に奇をてらった演出でもない。
しかし導入部から物語のクライマックスまでテンポが悪く、メリハリが感じられない
ライラの結婚式前、バディとアンとハリス(パトリック・ウィルソン)のエピソードなど、
もう少し巧くまとめて欲しかった。アンのその後の人生に大きな影響を及ぼしたバディ
について描写する必要があったのかもしれないけれど、その分、現在のパートでコニー、
ニナ姉妹の確執や愛情、母との絆
をもっと描き込んで欲しかったと思う。

いつか眠りにつく前に3

 しかし、映画の主題や物語そのものが悪いわけでは決してないと思う。子を持
って初めてわかる親心
や、親になること、子を持つことへの不安、愛する人と出
逢い、添い遂げたいという願望、結ばれなかった恋人への断ち難い思い、、など
など、女性が人生で経験し、くぐり抜けるべき葛藤が描かれ、共感できる忘れ難
いセリフ
もあった。だから尚更「もったいない・・」と感じてしまうのだ。

 そして、この「今ひとつ感」音楽のせいもあるのかな、と思う。こういうしっとり
した映画には同じようなしっとり系音楽ではなく、フィリップ・グラスばりの煽り系
ドラマチックサウンド
のほうがいいのかもしれない。「音楽がうるさい」という声も
出てくるのだろうけれど、その方が感情移入は容易になると思う。そう、あの名作
『めぐりあう時間たち』のように。

『いつか眠りにつく前に』監督:ラホス・コルタイ/2007・米、独/
      脚本・製作総指揮:スーザン・マイノット、マイケル・カニンガム
         主演:クレア・デインズ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、トニ・コレット
スポンサーサイト

テーマ:気になる映画 - ジャンル:映画

[2008/02/29 00:33] | 映画 | トラックバック(18) | コメント(14) |
奇跡のつづれおり~『潜水服は蝶の夢を見る』#2
潜水服・本

  潜水服は蝶の夢を見る

 /ジャン=ドミニック・ボービー・著
 /河野万里子・訳
 /1998・講談社



 映画潜水服は蝶の夢を見る原作は、プロローグと28の章から成り、訳者に
よるあとがき(『魂のエレガンス』、必読!)
を含めても166ページという小さな本
しかし、著者がクロード・マンディビルの献身とESA版アルファベットの助けを借り、
左目の瞬きだけで綴った言葉の一つ一つ、句読点の一つ一つまでが限りなく重い
けれど、文章となって立ち上がってくるそれらは軽やかでスマートで、蝶のように
自由
だ。そして何より、愛に溢れている。いつもの読書よりも何倍もの時間をかけ
て、ゆっくり、ゆっくりと読み進む。ジャン=ドーユーモア時に笑い、時に涙し
ながら。


 読みながら映画の場面が浮かんで来て、ジュリアン・シュナーベル創造力
撮影監督であるヤヌス・カミンスキーが生み出したマジカルな映像のチカラ、その
偉大さと影響力に思いを馳せずにはいられなかった。読了後、再び映画館に向か
う。


潜水服・本2

 改めて、映画が原作に忠実に作られていることに驚く。全て「ほんとうに起こった
出来事」
だという重み

 初見時、スピーカー付き電話を設置する場面で「無言電話でもするつもりか」とい
うジョークに思わず笑ってしまった。けれど、言語療法士アンリエットの怒りに触れ、
不謹慎だったかな、と反省。しかし今回よく聴いてみると、ジャン=ドーもあの言葉
に大笑いしている!
なんだか救われた気分

 聖地ルルドでは、土産物屋に置かれたイエス・キリストのポストカード瞬き
している。深刻な題材なはずなのにこんな「遊びゴコロ」を忘れない、なんて素敵
な映画
なんだろう。灯台浜辺、波と、車椅子のジャン=ドーの姿を捉えたショット
が美しい。そして音楽の素晴らしさ!

潜水服・本3

 ペンを持つことも、キーボードを前にすることも出来ず、頭の中だけでこれほどの
文章を完成させたジャン=ドミニク・ボビー。彼は根っからの「表現者」であり、また
「自由人」だったのだと思う。記憶と想像力を解き放ち、「心」だけの存在になっても
なお「生きる」ことを諦めなかった。何かを表現することが即ち、彼にとっては生きる
ということだったのだろう。原作のカバー裏に載っている、「執筆中」のジャン=ドー
(とクロード)のモノクロ写真をしばし見つめる。これは「奇跡」だと言ったら、彼は
どんなジョークで返すだろう。


 ジャン=ドーが亡くなって10年アカデミー賞では惜しくも無冠に終わってしまった
けれど、内なる声に忠実に生きること人間性とは、魂の自由とは何かを問いかけ
てくるこの映画は、永く私の心に留まり続けるだろう。 

テーマ:潜水服は蝶の夢を見る - ジャンル:映画

[2008/02/28 14:09] | 映画 | トラックバック(5) | コメント(8) |
何も起こらないやさしい夜~『迷子の警察音楽隊』
迷子の警察音楽隊

 Bikur Ha-Tizmoret

 THE BAND'S VISIT



 中東がほんの少し、今より平和だった頃エジプト警察音楽隊イスラエル
空港に降り立った。バスで目的地「アラブ文化センター」に向かおうとした彼らが
着いた所は、何もない砂漠の街・・・。

 カンヌ映画祭をはじめ、ヨーロッパ映画祭、東京国際映画祭などで数々の賞を
受けたイスラエル映画。監督・脚本は本作が長編デビューだというエラン・コリリン
独特の間と空気感に、ジム・ジャームッシュの映画のようだと思いながら観ていた
が、エンドロールを眺める気分は「カウリスマキの映画を観た後」のよう。「異文化
コミュニケーション」
と呼ぶにはあまりに呆気なくさり気ない、異国でのあたたかく
やさしい、一夜の物語


迷子の警察音楽隊2

 あまりにも何も起こらないので、説明したり解釈したりするのは野暮な気がする
ほど。しかしアラブ人とユダヤ人拙い英語とボディ・ランゲージでコミュニケート
しようとする彼らの微妙な表情や仕草の中には、「人生」についての深い思念
隠されているような気がする・・・。多分。

 楽団長トゥフィーク(サッソン・ガーベイ)の顔に深く刻まれた、年輪のような
食堂の女主人ディナ(ロニ・エルカベッツ)の、孤独と人生への諦観が滲んだよう
な黒い瞳。「産める時には忙しく、欲しいと思った時には遅すぎた」。心にじんわり
と沁みてくるセリフ。感情的になるわけでもなく、投げやりになっているわけでも
ない彼らの人生。成すべきことを成し、生きるべき場所で生きようとする、普通
の人々の人生。
しかし平凡で何もないようでも、そこには後悔傷跡が必ずある
もの。主演の二人は味わい深い名演を見せてくれた。

迷子の警察音楽隊3

 女の子をナンパすることしか頭にない若い楽団員カレード(サーレフ・バクリ)の、
さり気ないやさしさもジーンとくる。「チェット・ベイカーは好き?」口説き文句のはず
のセリフが、対立ばかりしていたトゥフィークとの垣根も取り払う。男と女、アラブと
ユダヤ、若者と中年
。音楽に垣根はなく、世代も国も性別も越えた普遍的で偉大な
存在
音楽とは世界の魂なのかもしれない。
 
 ♪ My Funny Valentine......

 カレードには必要だった「一夜限り」の関係も、トゥフィークには必要ない。彼には
わかっていたのだろう、何もない街では何もしない夜を過ごすべきだと。予めそこに
愛は在る。
ならば敢えて刺激や衝突を求める必要はない。「小部屋のような」協奏曲
こそが、人生に必要な音楽であると知るように。

 イスラエルとエジプトの国旗が並んではためく中、指揮を執りながらトゥフィークは
唄う。また人生があるなら、一瞬一秒同じでありたいと。しみじみ・・・。

『迷子の警察音楽隊』監督・脚本:エラン・コリリン
  出演:サッソン・ガーベイ、ロニ・エルカベッツ/2007・イスラエル、仏、米)

テーマ:アカデミー賞/映画賞関連 - ジャンル:映画

[2008/02/27 09:18] | 映画 | トラックバック(18) | コメント(20) |
結果発表!~第80回アカデミー賞
 年に一度の映画の祭典、アカデミー賞授賞式も幕を閉じました。oscar.com
より結果は以下の通りです。受賞した皆さん、おめでとうございます! そして
素晴らしい映画たちをありがとう

 ちなみに真紅的ダメダメ予想はこちら⇒。 ん? 結構当たってるかも・・・(笑)。

-------------------------------------
【作品賞】

 「ノーカントリー」 NO COUNTRY FOR OLD MEN

アカデミー賞・ノーカントリー

【監督賞】

 ジョエル&イーサン・コーエン  「ノーカントリー」

 コーエン兄弟、初受賞!おめでとう~。小さな頃から二人で映画製作の真似事を
して、今でもその頃とやっていることはそう変わらない・・、という感じのスピーチだっ
たようですね。映画の神様に選ばれた兄弟、本当によかったね~。

【主演男優賞】

 ダニエル・デイ=ルイス  「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」

アカデミー賞・ダニエル

 おお~、ダニエル・デイ=ルイス来ました~。大本命が二度目の受賞。ジョニー、
残念だったねー。でもまた次、ね。

【主演女優賞】

 マリオン・コティヤール  エディット・ピアフ~愛の讃歌~

 これはうれしい!拍手喝采!! マリオン嬢は一世一代の名演技でしたから・・。
フランス人女優が主演女優賞を受賞するのはなんと49年ぶりだとか。素晴らしい
ですね。おめでとう!

【助演男優賞】

 ハビエル・バルデム  「ノーカントリー」


 大本命が来ましたね!ハビエルさんはオスカーに十分過ぎるほど値する俳優さん
だと思います。彼は凄い。スピーチで言ってしまうほど髪形がイヤだったのね(笑)。
でも頑張りました、おめでとう~!

【助演女優賞】

 ティルダ・スウィントン  「フィクサー」


 うわ~、これは私の弱気の虫が的中してしまいました。ケイト、残念だったね。
ティルダは英国アカデミー賞とのW受賞ですね、おめでとうございます~。

【オリジナル脚本賞】

「JUNO/ジュノ」


 この部門は昨年のリトル・ミス・サンシャインと同じ流れですね。しかし
受賞したディアブロ・コディ初脚本で受賞、しかも元ストリッパーさんとは!
アメリカン・ドリーム、っちゅーやつですなぁぁ。

【脚色賞】

「ノーカントリー」


 ここも大本命が来ましたね。潜水服もよかったんだけどなぁ~。

【長編アニメ賞】

レミーのおいしいレストラン

 こちらも大本命。本当に良質な作品だったからうれしいです。

【外国映画賞】

 「ヒトラーの贋札」(オーストリア)


 この映画観逃したんですよ~。クヤシー!! 浅野くん、残念でした~。

 そして残念ながら「潜水服」無冠に終わったのでした・・・。総集編の映像が楽しみ
です♪

テーマ:第80回アカデミー賞 - ジャンル:映画

[2008/02/25 14:49] | 映画雑談 | トラックバック(13) | コメント(12) |
タバコって英語なんですね~『サンキュー・スモーキング』
サンキュー・スモーキング


 THANK YOU FOR SMOKING


 タバコ研究アカデミーの広報部長、ニック・ネイラー(アーロン・エッカート)は、
嫌煙運動が盛り上がるアメリカで孤軍奮闘するロビイスト。「人殺し」と呼ばれ命
を狙われながら、タバコ業界のスポークスマンとしてマスコミの矢面に立つ。
何故働くのかと問われれば「ローンの為」と答えるニックだったが、彼には離れて
暮らす一人息子ジョーイ(キャメロン・ブライト)父親の背中を見て欲しい、という
思いがあった。お色気記者ヘザー(ケイティ・ホームズ)の罠にハマり、絶対絶命
のニックの運命やいかに・・・。

 カラフルなタバコのパッケージデザインで始まるオープニングからして、おしゃれ
で愉快な雰囲気
が醸し出される。低予算でも大スターが出演していなくても、脚本
と製作者の心意気次第
で優れた作品は生み出し得る、ということを証明してくれる
社会派コメディの快作。初監督で脚本も担当しているジェイソン・ライトマンは、現在
アメリカでの賞レースを席巻している『JUNO/ジュノ』の監督でもある。口から先に
生まれたようなマシンガントーク男ニックをアーロン・エッカートが好演。この俳優
さんは声がとってもいいから、しゃべりまくっても全く不快じゃない。ロバート・デュバ
ル、ウィリアム・H・メイシー、マリア・ベロ
ら一癖ありそうな共演陣の中に、お懐かし
やのロブ・ロウもいる!

サンキュー・スモーキング2

 アメリカという国は本当に「ディベート」が好き、と言うか生活の一部なのだな、と
つくづく思う。それは今予備選たけなわのアメリカ大統領選を見ていても常に感じ
ること。相手の弱点を巧みに突き、自分が攻撃されたら論点をすり替え、とにかく
言い負かされたら終わり。
疲れないのかなぁと思う自分は「以心伝心」「言わぬが花」
を美徳とする大和民族なのだろう。

 タバコは身体に悪いだろう。吸わないほうが良いに越したことはない。それでも、
タバコへの憎悪が映画と言う「文化」を侵食し、過去の名画の喫煙シーンをデジタル
処理して消去
するなんていう発想は明らかに行き過ぎだし、映画への暴挙・冒涜
で怒りすら覚える。一番大切なのは自分の頭で考えることで、個人の選択の自由
を奪うべきではない
、というスタンスが貫かれた、潔い作品だと思う。

 ニックが(父)ジョーイ(子)の学校で、自分の職業について話をする、という場面
シティ・スリッカーズでもあった。父親の職業紹介って、アメリカの学校では
当たり前の授業なのかな。たとえ離婚して子どもと離れて暮らしても、父である自覚
を持ち、責任を全うしようとするニックに肩入れしてしまう。スパイダーマンの上司
ことJ.K.シモンズも、一度聞いたら忘れられないダミ声と独特の風貌でハマリ役。
画面分割やストップモーションなど、映像も凝っていて見応えあり。オススメです。

サンキュー・スモーキング3

『サンキュー・スモーキング』監督・脚本:ジェイソン・ライトマン
    主演:アーロン・エッカート、キャメロン・ブライト/2006・USA)

テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画

[2008/02/24 07:06] | DVD/WOWOW | トラックバック(11) | コメント(8) |
直前予想!素人ですけど~第80回アカデミー賞ノミネーション
アカデミー80回

 気がついたら2月も下旬・・。今年は寒いのでまだまだ冬真っ盛りという感じで
すが、陽射しには春の気配がチラホラ。呑気に構えてましたが、間も無くオスカー
授賞式
ですわよ奥さん!

 というわけで、今年も素人ノクセニ予想などして面白がってみたいと思います。
本命予想真紅的希望、ということで、主要部門だけいってみよう~。

-------------------------------------
【作品賞】
 「つぐない」
 「JUNO/ジュノ」
 「フィクサー」
「ノーカントリー」
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」

 どっちでもいいですがどちらかには必ず獲って欲しい。

【主演男優賞】
  ジョージ・クルーニー  「フィクサー」
 ダニエル・デイ=ルイス  「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
 ジョニー・デップ  スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師
  トミー・リー・ジョーンズ  「告発のとき」
  ヴィゴ・モーテンセン  「イースタン・プロミセズ」

 冷静に考えると、前哨戦総なめダニエル・デイ=ルイスでしょう・・・。
でも、そろそろジョニーにあげてもいいと思いません?

【主演女優賞】
  ケイト・ブランシェット  エリザベス:ゴールデン・エイジ
 ジュリー・クリスティ  「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」
 マリオン・コティヤール  エディット・ピアフ~愛の讃歌~
  ローラ・リニー  「The Savages」
  エレン・ペイジ  「JUNO/ジュノ」

 現代最高の女優はケイトかもしれないですが、ジュリー・クリスティの評価が高い
ようですね。エレン・ペイジはやはり只者ではなかった!

【助演男優賞】
 ケイシー・アフレック  ジェシー・ジェームズの暗殺
 ハビエル・バルデム  「ノーカントリー」
  フィリップ・シーモア・ホフマン  「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」
  ハル・ホルブルック  「イントゥ・ザ・ワイルド」
  トム・ウィルキンソン  「フィクサー」

 間違いなくハビエルさんでしょうが・・。ケイシーがノミネートされてうれしい!

【助演女優賞】
★☆ケイト・ブランシェット  「アイム・ノット・ゼア」
  ルビー・ディー  アメリカン・ギャングスター
  シアーシャ・ローナン  「つぐない」
  エイミー・ライアン  「Gone Baby Gone」
  ティルダ・スウィントン  「フィクサー」

 ケイトに獲って欲しいけど、ティルダ・スウィントンかも・・・(弱気)

【監督賞】
 ポール・トーマス・アンダーソン  「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
 ジョエル&イーサン・コーエン  「ノーカントリー」
  トニー・ギルロイ  「フィクサー」
  ジェイソン・ライトマン  「JUNO/ジュノ」
 ジュリアン・シュナーベル  潜水服は蝶の夢を見る

 コーエン兄弟だと思うけれど・・・。めっちゃ激戦区。個人的には「潜水服」。
PTAでもうれしい。

【オリジナル脚本賞】
 「JUNO/ジュノ」
  「ラース・アンド・ザ・リアル・ガール(原題)」
  「フィクサー」
 レミーのおいしいレストラン
  「The Savages」

 レミーは秘かに5部門も候補に上がってますが、作品賞にノミネートされても
よかったのでは? ホントにいい映画です! でも「JUNO/ジュノ」でしょう。

【脚色賞】
 「つぐない」
 「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」
潜水服は蝶の夢を見る
「ノーカントリー」
 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」

 ここも、秘かに激戦区ですね。「潜水服」ガンバレ!

【長編アニメ賞】
  ペルセポリス
★☆レミーのおいしいレストラン
  サーフズ・アップ

 レミーでしょう。ここだけ全作観ています。でもちょっと微妙なノミニーだなぁ。
「ペルセポリス」外国語映画賞でよかったのでは?

【外国映画賞】
 「ヒトラーの贋札」(オーストリア)
「ボーフォート -レバノンからの撤退-」(イスラエル)
「Mongol」(カザフスタン)
 「Katyn」(ポーランド)
 「12」(ロシア)

 イスラエル映画が強そう? 浅野くんがレッドカーペットを歩いてくれるなんて、
感無量です。ガンバレー。

 というわけで、授賞式観られる方は楽しんで下さい! ワクドキですね♪

テーマ:第80回アカデミー賞 - ジャンル:映画

[2008/02/22 19:38] | 映画雑談 | トラックバック(0) | コメント(9) |
ケイトの黄金時代~『エリザベス:ゴールデン・エイジ』
エリザベス:ゴールデンエイジ


 ELIZABETH:THE GOLDEN AGE


 16世紀後半イングランドプロテスタントの「ヴァージン・クィーン」として国
を統治するエリザベス(ケイト・ブランシェット)カトリックの王として全欧州を
治めようとするスペイン王は、スコットランド女王メアリーの処刑をきっかけに
無敵艦隊でイングランドに攻め込む。

 当代随一の名女優、ケイト・ブランシェットが再びエリザベス1世を演じた歴史劇
冒険家ウォルター・ローリー卿(クライヴ・オーウェン)への叶わぬ、スペインとの
海戦を前に天文学者にすがる姿など、一人の人間、女性としてのエリザベスに
焦点
を当て、苦悩しながらもイングランドを黄金時代に導く過程を描く。

 この映画、予告が物凄くよくできていたと思う。重厚な音楽とケイトの低音
スクリーンに響き渡って、身体が痺れるような感覚を憶えたほど。期待いっぱい
で鑑賞したが、なかなか見所のある作品だったと思う。

エリザベス:ゴールデンエイジ2

 女性だったら、この作品の衣装や鬘、装飾品の数々に目を奪われずにはいられ
ないのではないかな? エリザベスが左手薬指にはめるルビーの指輪にはもう、
目が釘付け。実際、エリザベスは着道楽で、何千着ものドレスを所有していたら
しい。

 そして私がもう一つ目を奪われ、「激萌え」だったのがウォルター・ローリー卿こ
クライヴ・オーウェン! この人のが好き~♪ 彼の初登場シーンは女王の
前の水溜りをマントで覆う『恋におちたシェイクスピア』にも出てくるお約束シーン
だったのだけど、エリザベスと同じく私も一瞬で恋におちてしまった。クライヴの
キャスティングはケイトの希望だったと聞いたような気がするけど、気が合うわ~
(笑)。


エリザベス:ゴールデンエイジ3

 ケイトの演技は期待通りで大満足!一国の女王らしく気品があって誇り高くて
スマート
で、それでも自分は決して持てない「自由」への嫉妬心や敗北への恐怖
も持ち併せる、人間臭い魅力的な女性を存在感十分に演じてくれていた。
スペイン大使に「嵐を起こしてみせる!」とタンカを切り、側近に避難を勧められて
も自ら民の先頭に立ち、士気を高めるその姿には思わずが・・・。そして実際、
嵐は起こるのであった。。あぁ、なんてドラマチックなの!

 エリザベスとメアリー(サマンサ・モートン)の関係が今ひとつ理解できず、彼女
処刑に当たってのエリザベスの苦悩が唐突に感じたのが残念。スコットランド
とイングランド
、歴史に疎い観客のためにもこの関係はもう少し描き込んで欲し
かったと思う。

 ジェフリー・ラッシュアビー・コーニッシュというキャンディ組が揃って、ヒース
を思い出して感傷的になりかけてしまった。彼らオーストラリア出身俳優の活躍が
目覚ましい昨今、ケイトにはそのフロントランナーとして、これからも順調にキャリア
を築いて欲しいと願う。

『エリザベス:ゴールデン・エイジ』監督:シェカール・カプール
  主演:ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ/2007・英、仏、独)

テーマ:エリザベス:ゴールデン・エイジ - ジャンル:映画

[2008/02/21 09:33] | 映画 | トラックバック(25) | コメント(15) |
雨と夢の後に~『ラスト、コーション/色・戒』#3
ラスト、コーションポスター

 初見から8日後に再見。初見時もそうだったが、今回も観客の年齢層が非常に
高い
。中高年男性が多く、途中退席される方が多い。私の隣は(多分)未婚のカ
ップル。仲良き事は美しき哉、しかし上映中に二人の世界でのおしゃべりは止め
て欲しかった。

 原作も読んでの再見だったけれど初見時同様見事に引き込まれ、長い上映時間
は全く気にならなかった。今回、気になったのは雨のシーン。性愛シーンと同じく、
雨のシーンも三回ある。

 一度目は、抗日演劇の舞台を終え、まだ学生だったチアチーたちが肩を組んで
歌うシーン。青春の素晴らしさを称える歌とは裏腹に、暗い空からはが降って
いる。飛び乗ったバスの窓から顔を出し、雨をその顔に受けるチアチー

 二度目は、チアチーとイーが初めて言葉を交わすシーン。台風によるこの雨は
イーを自宅に戻し、夫人やチアチーと共に麻雀卓を囲む。麻雀に疎い私は確信が
持てないのだが、このとき、イーはチアチーに勝たせるよう、牌を回していたよ
うに感じる。

 三度目は、イーとチアチーが初めて関係を持つ日。雨の中、映画館に出かける
チアチーを運転手が呼び止める。車に乗り込むチアチー。この雨も、二人の未来
を暗示
しているのだろうか。

ラスト、コーション7

 イー夫人は、夫とチアチーの関係に気付いていたのだろうか。チアチーが抗日
のスパイだということはわからなかったとしても、夫との関係は薄々気付いてい
たような気がする。足が冷えるイーを温めるという夫人だけれど、二人が性的に
夫婦である印象は薄い


ラスト、コーション5

 初見の感想で、チアチーを「生まれながらの女優」と書いた。彼女が抗日運動に
突き進んでいったのは、愛国心からと言うよりはマイ夫人を演じることの充足感
からだったような気がする。香港での夏休み、学生のサークル活動のようなノリ
の仲間の中にいて、チアチーは一人、その演技力を研ぎ澄ませてゆく。まだ経験
のない生娘だとは信じられないほど、巧みにイーを誘惑するチアチー。三年後の
上海で、彼女がクァンの活動再開への誘いに乗ったのは、「また舞台に上がれる」
という高揚感からだったのかもしれない。

 宝石店でイーを逃した後、人力車の上でチアチーは薬を手にする。何故、彼女
は薬を飲まなかったのか。クァンや仲間たちと運命を共にしたいという気持ちも
あっただろう。そしてもしかしたら、イーの手に堕ち、イーの元で命を終わらせたい
という潜在的な願望もあったのかもしれない。

「ウーは取り逃がした」というイーの秘書のセリフから、クァンやチアチーという
若者だけが利用され、犠牲になったことへの怒りも湧いて来る。束の間、愛に似
た夢
を見た男と女。戒めを破った代償はあまりに大きく、夢の果ては深く、暗い
谷底だったのか。

テーマ:ラスト、コーション - ジャンル:映画

[2008/02/20 13:36] | ラスト、コーション/色・戒 | トラックバック(3) | コメント(12) |
魂のはばたき~『潜水服は蝶の夢を見る』
潜水服は蝶の夢を見る

 LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON

 THE DIVING BELL AND THE BUTTERFLY



 鼓動とともに、ぼやけた視界が現れる。ここは病院、昏睡状態から醒めたジャン
=ドミニク・ボビー;ジャン=ドー(マチュー・アマルリック)
は、自分が全く動けず、
しゃべることも出来ないロックトイン・シンドローム(閉じ込め症候群)であることを
知らされる・・・。

 映画が始まる前に、この作品がカンヌをはじめ世界の映画祭・映画賞で受賞した
履歴が映し出され、その数に圧倒される。世界の映画人が絶賛するに値する、素晴
らしい映像美、人間賛歌。フランスのファッション誌ELLEの編集長だった主人公
20万回にも及ぶ左目の瞬きだけで綴った自伝を基に、ジュリアン・シュナーベル
映画にしかできない、映画でこそできることをやってくれた。ジャン=ドーは瞬き、
私は目を見開いて瞬きを忘れる

潜水服は蝶の夢を見る2

 冒頭から中盤まで、ジャン=ドーの目がカメラとなり、観客は彼の視点で映画を
観ることになる。そのせいか、私は全く彼に同化したような感覚を憶えた。スクリー
ン=彼の視界
がぼやければ私も自然にが溢れたし、テレビを消されたら本気で
ムカついた。「子ども達に会いたい?」と聞かれて二度瞬きしたのを責められている
ような気がして、叫び出したくなった

 を望んだジャン=ドーが初めて「Merci(ありがとう)」と綴ったとき、その言葉
絶望の淵から再生への扉を開いたかのように、彼の世界は大きく広がる。彼に残
された身体的機能は左目聴覚だけだったけれど、彼の精神、意識、人間性は全く
損なわれていなかった。「想像力」「記憶」を駆使して、彼はのように自由に羽ば
たき、真新しい「世界」の中で真新しい「生」を得る。

 ありのままの自分を受け入れる覚悟が出来た彼。失って初めて、それがかけがえ
のないものだったと気付く経験
は誰にもあるだろう。しかし彼は失われたものを嘆く
ことなく、本を執筆するという限りなく前向きな挑戦をする。

潜水服は蝶の夢を見る3

 そんな彼を取り巻く女性たち、「妻でなく子ども達の母親」セリーヌ、言語療法士の
アンリエット、理学療法士のマリー、編集者のクロード
らの美しさとその献身ぶりに
感銘を受ける。クロードが「あなたは私の蝶よ」と言ったように、ジャン=ドーの生き方
人間性が彼女たちから自然なパワーを引き出していた気がする。話すことも動くこ
ともままならなくても、彼の肯定的なエネルギーは輝く光を放つ

ミュンヘンで演じたファミリーのメッセンジャー役が強烈な印象を残したマチュー・
アマルリック
をはじめ、エマニュエル・セニエ、アンヌ・コンシニ、パトリック・シェネら、
フランス映画に全く詳しくない私でも知っている豪華キャストもうれしい。
そしてアメリカ人であるジュリアン・シュナーベルが、フランス語でこの映画を撮
ったことが一番素晴らしい
と思う。ジョニーのフランス語も、聴いてみたかった気
もするけれど・・・。

 少し前に入手して、我慢していた原作を今から読みたいと思う。ジャン=ドーの
言葉
を一つ一つ噛み締めて、再見できたらと思っている。

★原作読了後、再見の感想 ⇒ 潜水服は蝶の夢を見る #2

『潜水服は蝶の夢を見る』監督:ジュリアン・シュナーベル
  主演:マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ/2007・仏、米)

テーマ:潜水服は蝶の夢を見る - ジャンル:映画

[2008/02/19 13:13] | 映画 | トラックバック(32) | コメント(28) |
望郷~『ペルセポリス/Ⅰイランの少女マルジ、Ⅱマルジ、故郷に帰る』
ペルセポリス本1 ペルセポリス本2

 2007年、カンヌ映画祭にて審査員賞を受賞したアニメ映画の原作漫画。1969年、
イランに生まれた著者の体験を基に、1979年のイスラム革命以降の激動のイラン
現代史
を、一人の少女の視点から描いている。本書はアメリカにて優秀な外国語
の本のアメリカ版に贈られるハーベイ賞、米国図書館協会のアレックス賞を受賞
している。

★映画の感想はコチラ⇒『ペルセポリス』★

 映画が素晴らしかったので原作も読みたいと思ったのだが、予想通り面白く読
むことができた。映画と同じくモノクロの版画のような画。この画、どこかで見たよ
うな・・・とずっと思っていたのだけれど、わかりました。蛭子能収さんの描く漫画
に似ていないだろうか? ちょっとだけちょっとだけ似てないかな・・・(小声)。

 映画は原作のエッセンスをうまく絞ったな、という印象。映画ではマルジのおば
あちゃん
が飛び切り魅力的な人物としてクローズアップされていたけれど、原作
ではおばあちゃんよりも両親の方がマルジに与えた影響は大きいと感じさせる。
たった14歳の一人娘(マルジは一人っ子)を、海外に留学させる両親。保守的な
国の保守的な時代に、心から娘の将来を思っている親にしかできないことだと思
う。もちろん経済的な問題も大きいけれど。ちなみに映画を観たとき謎だった、
マルジのお父さんの職業は、設計技師さんのようです。

 漫画ではあるけれど、当然映画や小説と同じく翻訳されている。この訳が素晴
らしい
と思った。出過ぎず、固過ぎずやわらか過ぎず、わかり易く読みやすい。
訳者は園田恵子さんという詩人の方らしい。

 著者は「永遠に」故郷イランを離れ、フランスに移住している。日本にもイラン
出身
の方は多いが、先日ダルビッシュくんがTVインタビューでこんなことを語っ
ていた。
「僕にはイランの血が半分流れているので。そのことで苦しんだ時期もあったけ
ど、イランのためにもという気持ちで(オリンピック予選は)戦いました」


 著者の中にも、イランへの想いは深く、強く根付いていることだろう。この本は
異国で生きる著者の、母国へのラブレターなのかもしれない。

『ペルセポリス/Ⅰイランの少女マルジ、Ⅱマルジ、故郷に帰る』
        マルジャン・サトラピ著、園田恵子訳/2005・バジリコ)

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

[2008/02/18 15:56] | 読書 | トラックバック(0) | コメント(2) |
それでも「ボク」に獲らせない~第31回日本アカデミー賞授賞式
東京タワー受賞

 第31回日本アカデミー賞

 【最優秀作品賞】
 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン


 何だかんだ言いつつ毎年楽しみにしている授賞式堤さんがすっかり「常連」顔
なってるのがうれしいような、何か違うような気も・・・。

 結果は皆さまご存知の通りですが、最優秀主演男優賞だけは「どっちの『ボク』
獲るのかな~」
とワクワク思っていたのに、まさか茶川さんとは・・・。
まぁ、日本アカデミー賞は「賑やかし」ですから! 

 ・・・・・・・・

 オダジョー。あのメイクでも誰よりも男前なのに今更ビックリ・・・。どうして結婚
しちゃったんだよー(泣)。


 そして一番の発見は「内田也哉子の声がしずちゃん(@南海キャンディーズ)
ソックリ」
だってこと。骨格が似ているのだろうか・・・。まぁ、どーでもいいですね
そんなことは(笑)。

 来年も観るんだろうなぁ~。本家のほうの予想も、そろそろしないとね。

テーマ:日本アカデミー賞 - ジャンル:映画

[2008/02/16 17:15] | 映画雑談 | トラックバック(9) | コメント(12) |
切なさの行方~『人のセックスを笑うな』
人のセックスを笑うな・本

★映画版の感想はコチラ⇒『人のセックスを笑うな』★

 39歳のユリ19歳のオレ、磯貝みるめ。美術専門学校で講師と生徒として出会
った二人は恋に落ちる。しかし、ユリにはがいた・・・。
 粗筋だけ書いてみると、主人公たちの年齢設定だけ突飛な、ありふれたラブス
トーリー
のよう。けれども、この短い小説の中には「恋の不思議」がぎゅうぎゅうに
詰まっている。切なさ、愛しさ、会いたさ、見たさで病めるマイ・マインド。

 本作が文藝賞を受賞したとき、高橋源一郎氏が絶賛していたのはよく憶えてい
る。それでも手にとってみる気にならなかったのは、タイトルのインパクトと著者の
ペンネームの変テコリンさに引いてしまったからかもしれない。映画は素晴らしか
ったけれど、小説ももちろん素晴らしくいい!この作品の映画化を企画してくれた
方々に感謝。もしも映画にならなかったら、危うくこの名作を知らずに生きていく
ところだった。

 私は映画を観てからこの原作を読んだのだけれど、読んでから映画を観る方に
は、タイトルと設定が同じだけで全く別の作品だと思って観ていただきたいと思う。
セリフにも登場人物たちのキャラクターにも微妙に手が加えられているし、特に
ユリは全くイメージが違う!でも、どちらのユリも私は好きだ。映画の自由奔放
なユリ
には憧れを抱くし、小説のユリには共感する。彼女の「病的に弱い」ところに。

 人が誰かを好きになったら、どうしようもなく切なくなるのは何故なのだろう?
その人と同化してしまいたい、その人の一部として生きてゆきたいのに、その願い
永遠に叶えられることはない。ベッドの中でするありきたりな動作に酔うことし
かできないから、愛と苦悩はセットなんだ。 

 小説のラスト、冬の花火映像的にとても美しいシーンになったんじゃないだろ
うか。それが映画で観られなかったことだけが残念。ユリの代わりを求めず、彼女
のいない寂しさやストレスを一生、抱えて生きようとするみるめの「潔さ」感動すら
憶える。一読推奨。文庫もあります。

人のセックスを笑うな・文庫

『人のセックスを笑うな』山崎ナオコーラ・著/2004・河出書房新社)

テーマ:オススメ本 - ジャンル:小説・文学

[2008/02/16 05:57] | 読書 | トラックバック(5) | コメント(12) |
原作読了、あれこれ~『ラスト、コーション/色・戒』#2
色、戒文庫


 アイリーン・チャン短編集
 ラスト、コーション 色|戒

 集英社文庫/2007



 アイリーン・チャンによる『ラスト、コーション/色・戒』原作を読了。女性作家による
短編小説の脚色
というところもBBMと本作が「姉妹作」と言われる一因だが、BBM
同様、映画はこの短い物語を本当に巧く膨らませていると思う。イー宅の麻雀風景
に始まり、一貫してチアチーの視点から物語を回想しながら、ラストはイーの視点
に切り替わる構成
は見事。映画では三回に渡って徹底的に描写された性愛シーン
は原作にはないが、チアチーがイーとの逢瀬から心に響くものを感じたことは暗示さ
れている。女性たちの服装や装飾品、香港や上海の街並みが、映画の中でいかに
忠実に再現されていたか。原作を読みながら、映像が立ち上がってくるかのようだっ
た。

 原作では、イーとチアチー双方が「相手が自分を本当に愛していた」と感じている。
二人の関係が偽りのものだったとしても、そこにあった感情は確かなものだったと
信じているのだ。

ラスト、コーション8

 そしてこの物語も「若さとイノセンスの喪失」についての物語ではないか。チアチー
やクァンは若さゆえの無防備さで抗日運動に突き進み、それは後戻りできない道
った。殺人を犯したこと、望まない相手と「練習のために」ベッドをともにしたことで
「若さとイノセンス」を喪った二人。「どうして、三年前にしてくれなかったの?」若さ
ゆえに、成し遂げられなかった、気付けなかったこともある。もう二度とその場所
へ戻れない
ことは、若いときには決してわからないものだ。「遅すぎたのだ」

 ところで、初見のときに感じてどうしても書いておきたいことを二つ。
一つはやはり、あの「ボカシ」。観た方の感想もほとんどこのことについて怒りを持っ
て言及されているようだけれど、私も猛烈に腹が立った。あれは一体何の意味があ
って「ボカシ」ているのだろう? 映画そのものや監督や、俳優たちにもう少し敬意
払って欲しいと思う。いっそのこと、アン・リーが編集し直したという性愛シーンなしの
「中国版」を観てみたいと思った。DVDでは「無修正」になっていることを希望。

 そしてもう一つは、指輪のシーン。出来上がった指輪の入っている赤いケースが、
カルティエのものとソックリだったこと。と言うか、エンドロールでカルティエに
Special Thanksがクレジットされていたから、あの指輪(とケース)はカルティエ
のもの
なのだろう。ということはあの店はカルティエなのだろうか? いや、そん
なはずはない。なんだかあの場面は混乱してしまった。ケースを映すことがタイア
ップの条件だったのかな? ちょっと納得行かない

 映画のラスト、チアチーの部屋のベッドに腰掛け、物思うイー。夢の跡のような
シーツの皺をじっと見つめる。午後10時を告げる時計の音を聴く彼の哀切な表情
を生み出したトニー・レオン。やっぱり、凄い。

テーマ:ラスト、コーション - ジャンル:映画

[2008/02/15 09:56] | ラスト、コーション/色・戒 | トラックバック(1) | コメント(2) |
Valentine's day, 2008.
バレンタイン


ETERNAL
SUNSHINE
OF THE
SPOTLESS
MIND



 寒い日が続きますが、皆さまお元気ですか? バレンタインデーといえば、この
映画エターナル・サンシャイン。大好きです。

------------------------------------

 いつの間にか映画カテゴリ記事が100を超えていました。とはいえBBM『ラスト、
コーション』
別カテゴリにしましたし、記事にできなくて残念だった作品もあります。
例えばこちら。

ルイスと未来泥棒


 『ルイスと未来泥棒』

 MEET THE ROBINSONS


 昨年末に観たのと少し寝てしまった(!)のとで、結局感想は残せませんでした。しか
し、決して面白くなかったわけじゃないんですよ! ちょっと疲れていたのかな・・・。

 ひとりぼっちの少年ルイスが、未来の世界を守る為に奮闘する『バック・トゥ・ザ・フュー
チャー』
みたいなタイムトラベルものです。ディズニー映画だけあって、TDLのトゥモロー・
ランドが「トゥディ・ランド」になって出てきたり、勧善懲悪で素直に楽しめる作品だったと
思います。そしてサプライズはエンドロール。「ん?なんかこの気だるい歌声、聴いたこと
があるぞ・・・?」と思って目を凝らしていると、やっぱりルーファス・ウェインライト!
まさかディズニーのアニメ映画で彼の歌声が聴けるとは・・・!もちろん『The Maker
Makes』
みたいな物悲しい曲じゃないんですが(笑)。音楽は、ダニー・エルフマン
彼が担当していたのでした。

 アニメ映画といえど、昨年のベスト作の一つレミーのおいしいレストランのように良質
な作品はたくさんありますし、こんな風に思わぬプレゼントをもらった気分にさせてくれる
作品もあります。感謝、感謝・・・。

 これからも、アニメでも邦画でもドキュメンタリーでも、いい映画をいっぱい観たい!
と思っています。目指せ、200記事!

テーマ:映画関連ネタ - ジャンル:映画

[2008/02/14 16:14] | 映画雑談 | トラックバック(0) | コメント(0) |
命のつながり~『海を飛ぶ夢』
海を飛ぶ夢


 MAR ADENTRO


 事故により、20数年間寝たきりで過ごすことを余儀なくされた男性が、「尊厳ある生」
を求めて闘う、スペインの実話に基づく物語。主演のハビエル・バルデムはその演技
が絶賛され、監督・脚本のアレハンドロ・アメナーバルとともに数々の賞を受賞した。
また、アメナーバルは編集・音楽まで担当している。まさに恐るべき才能! アカデミ
ー賞外国語映画賞受賞作品


 こういった「尊厳ある生き方とは?」という主題の物語は、観る人の立場によって様々
な評価がなされると思う。本作も、公開当時は絶賛とともに否定的意見もあったに違い
ない。自ら死を望む主人公ラモン・サンペドロ。彼の生き方を、あなたはどう感じただろ
うか。


 若い男性が首から下の機能を全て失う、という悲劇。一体、どれほどの絶望感と
後悔
が彼を苛んだだろう。諦観に包まれたラモンの穏やかな微笑みは、多くの女性
たちを彼の元に引き寄せる。

海を飛ぶ夢2

 尊厳死支援団体のジェネ不治の病を抱える弁護士のフリア、孤独なシングルマザ
ーのロサ
、義理の姉で、ラモンを「本当の息子のように」献身的に介護するマヌエラ
ロサに電話するラモンをフリアが詰問し、ラモンの介護に手を貸そうとするロサにいい
顔をしないマヌエラ。彼を巡る、女たちの不思議な関係。実際、ラモンには少なくとも
5人の恋人がいたのだという。

 車椅子を嫌い、外出をせず自室でのみ過ごすラモンが、想像の世界で自由に羽ばた
く場面
が美しく感動的だ。韓国映画『オアシス』の名場面を思い出す。窓を飛び出し、森
を越え、大好きな海で愛するフリアを抱き締める。この浮遊感、映画館で観たかったな
と思う。

海を飛ぶ夢3

 観ている途中から涙が止まらなかった。生きるってどういうことだろう?

どうして、ニュースで聞く見ず知らずの人の死に胸が痛むのだろう? 人はどうして
死を恐れるのだろう? 身体の自由を失ったとき、死を望むのは許されることなのだ
ろうか?

 
 ラモンの言葉は哲学的で、心にダイレクトに響いて観るものを揺さぶる。彼は言う、
「死は生の一部であり、我々の中にあるのだ」と。だから自分が死を望むことは、生の
尊厳を守ることだと
。そんな彼を全否定する神父「絶対に死ぬことは許さない」と怒
りをぶつける兄。「彼が望むことが大切」と静かに見守るマヌエラ。ラモンと旅立つ日
約束しながら、夫の元で生を全うすることを選ぶフリア。

 自ら死を選んだラモンも、記憶を失いながら生きるフリアも、どちらが善くてどちら
が悪い、という二分法では片付けられない問題だと思う。人の数だけ人生はあるし、
死もある。どんな生き方、死に方を選択するのも自由だともいえるし、与えられた生
を全うすべきだという考えもある。それぞれが、否定されたり、非難されることなく
尊重されるべきなのだ、と強く思う


 命は繋がっているのだと思う。それは家族の中で単に「血」が繋がっているという
次元ではない。人種も宗教も時代も越えて、命は繋がっている。だから誰かの「死」
は、私自身の死でもある。生命の源である、そこへいつも還りたかったラモン。
彼の死と、ジェネと弁護士の間に新しく生まれた命を同時に描くことで、監督も「命
のつながり」
を描きたかったのではないだろうか。そしてそこにはいつも「海」があ
る・・・。


 年若い甥、ハビを見守るラモンの眼差しと、彼に贈った言葉が胸に迫る。ラモンの
乗った車を、目に涙を浮かべて追いかけるハビ。命だけでなく、愛情もまた確かに、
繋がっている。


『海を飛ぶ夢』監督・製作総指揮・脚本・編集・音楽:アレハンドロ・アメナーバル
      主演:ハビエル・バルデム、ベレン・ルエダ/2004・スペイン、伊、仏)

テーマ:考えさせられた映画 - ジャンル:映画

[2008/02/12 09:30] | DVD/WOWOW | トラックバック(11) | コメント(14) |
浜野佐知さんを知っていますか~『女が映画を作るとき』
女が映画を作るとき

 浜野佐知さんという女性映画監督を知っていますか? 30年以上に渡って300本
以上の「ピンク」映画を製作・監督した、日本の女性映画監督の先駆けです。

 昨年12月に、NHK・ETV特集にて愛と生を撮る~女性映画監督は今~
いう番組が放映されました。私は最初の数十分間録画に失敗した上、観たのは
今年に入ってからというドン臭さなのですが、なかなか興味深い番組でした。
シネカノン社長・李鳳宇プロデューサーをナビゲイターに、西川美和ゆれる)、
荻上直子かもめ食堂)、蜷川実花(『さくらん』)ら、近年活躍が目覚ましい
女性映画監督たちに迫ったドキュメンタリー。中でも浜野佐知さんという監督
に、私は目を奪われました。

 化粧っ気のない顔にサングラス、伸ばしっ放しの髪。映画監督に憧れ、凄まじ
い差別とセクハラ
を受けながらも「映画を作りたい!」という一念でピンク映画業界
に飛び込んだこと。父の突然のによって、女手一つで育ててくれた母を見なが
「手に職をつけたい」と強く思ったこと。
 ともすれば湿っぽい苦労話になりそうなところを、自己憐憫に沈み込まない潔さ、
率直さ
で語るその姿から、人間としての彼女の魅力が立ち昇っていました。

「女性たちを、心も体も解放したい!」50歳を過ぎて、自主制作で2本の映画を撮った
こと。2作目の『百合祭』高齢者の性を描いた作品だったことにより、激しいバッシ
ング
を受けたこと。力強い口調で澱みなく語る浜野さんには李さんもタジタジで、
「浜野さんって、監督以外向かないですよね。声が大き過ぎですよ」なんて腰を引きな
がら話す姿には大笑いでした。そして私は「この人のことをもっと知りたい!」と思っ
たのです。

 本書では、テレビのインタビューでも語られた映画人としての歴史に加え、『百合祭』
が各国の映画祭に参加し、そこで生まれた世界の女流映画人たちとの交流や、岩波
ホール支配人・高野悦子
さんのインタビューなども盛り込まれています。故・深作
欣二監督
が浜野さんのドキュメンタリーを撮りたがっていたことに驚き、やはり、
相当魅力的な人物なのだなと思わずにいられませんでした。そしてもう一人、故・
石原郁子
さん(『菫色の映画祭-ザ・トランス・セクシュアル・ムーヴィーズ』の著者)
も彼女を支えた一人だったと知り、感慨深いものがありました。女性映画監督たち
の昨今の活躍ぶりを、浜野さんも、そして天国の石原さんも喜んでおられることと
思います。

 自らを「遅れてきたフェミニスト」と呼び「女は50歳から」と喝破する著者。私も
元気を出さないと!
と、励まされたのでした。

『女が映画を作るとき』浜野佐知・著/2005・平凡社)

テーマ:紹介したい本 - ジャンル:本・雑誌

[2008/02/10 01:44] | 読書 | トラックバック(1) | コメント(4) |
天使を誘惑~『人のセックスを笑うな』
人のセックスを笑うな


 Don't laugh at my romance.


「ユリはいっつもどっか汚れてるね」

 田舎町の美大生みるめ(松山ケンイチ)は、39歳リトグラフ講師ユリ(永作博美)
をする。幸せの絶頂で、みるめはユリにがいることを知る・・・。
 山崎ナオコーラの文藝賞受賞作である同名小説の映画化カメラを固定し、徹底
した長回しの映画的空間
の中で、今をときめく役者たちナチュラルな演技で魅せ
る。温かくて柔らかな光に包まれたような、瑞々しくも切ない恋の記憶

「会えなければ終わるなんて、そんなもんじゃないだろう」

人のセックスを笑うな2

 実は、動く松ケンを見たのは初めてだったりする。リンダ リンダ リンダ
ソンちゃんに告白する男の子が彼だと知ったのは映画を観たずっと後だったので、
どんな感じだったかほとんど記憶にない。これからもきっとご縁はないだろう・・・、
と思っていたのだけれど、ある雑誌で彼のインタビューを読み、俄然興味が湧い
てしまった。
 彼は「撮影現場では本当に永作さんに恋をしていた、彼女を忘れられないと次の
恋愛はできない」
と語っていた。しかも、同世代のトップランナー蒼井優嬢のこと
「豆みたい」とまで言い切っている・・・。豆って、いくらなんでも(笑)。
でも、ここまで自分の素の想いを率直に語る役者さんってなかなかいないんじゃ
ないかな。彼がそこまで入れ込んだ作品を観てみたい、と思ってしまったのです。
役者だってやっぱり生身の人間だから、その人が魅力的だと演じる役も輝くと思
うから。

 で、初・松ケンの印象はと言うと・・・。結構、背が高い痩せているけど、肩幅は
意外と広く
、虚弱な感じは受けない。かと言ってマッチョでもなく、不思議な存在感
蒼井優ちゃんと兄妹みたい。どことなく似ていて、とてもお似合い。

人のセックスを笑うな3

 物語は、どこにでもいそうな学生たち、恋したり友達とダラダラしたり、バイト
したりしてる彼らの日常に静かに寄り添い、流れていく。あんなにわかり易いえん
ちゃん(蒼井優)
の恋心に全く気付かず、ユリに夢中で翻弄されまくるみるめ。恋に
堕ちた瞬間、時間も風景も止まり、その人しか見えなくなる。痛々しいほど真っ直
ぐな彼の想い・・・。ええ、笑いませんとも

 芸能界における子ども顔族銀色夏生筆頭永作ちゃんの、まぁ魅力的なこと!
これでは、松ケンがメロメロになるのも無理はない。でも私は猪熊さん(あがた森魚)
が一番好きだった、ユリの保護者みたいな、仏様みたいなやさしい夫
「いろいろあって一人で考えたくて」猪熊さんと一緒にインドに行ったユリ。「猪熊さん
と一緒だったら一人じゃないじゃん!」
ってみるめは叫ぶけれど、違うんだ。猪熊さん
がいないと、ユリは一人になれないんだよ・・・。
それもまた、確かな愛のカタチなんだ
と思う。

 みるめ、ガンバレよ! 忘れなくていいから、これからもいっぱい恋をしなさい

「人生長いんだから。慌てることなーいの」

『人のセックスを笑うな』監督・脚本:井口奈巳/2007・日本/
                主演:永作博美、松山ケンイチ、蒼井優

テーマ:気になる映画 - ジャンル:映画

[2008/02/08 10:24] | 映画 | トラックバック(21) | コメント(14) |
これもまた、愛の物語~『ラスト、コーション/色・戒』
ラスト、コーション


 LUST, CAUTION

 色・戒 Se, jie



 日中戦争下、抗日運動の女スパイとして親日傀儡政権の幹部イー(トニー・レオン)
に近付くワン・チアチー(タン・ウェイ)。貿易商マイ夫人としてイーを誘惑し、愛人とな
ることに成功したチアチーだったが、孤独なイーと次第に心を通わせるようになり・・・。

ブロークバック・マウンテンで世界を騒がせた巨匠アン・リーが、再び愛のタブー
に挑戦、2作連続でヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞した話題作。性愛シーンの
過激さばかりが取り上げられている感があるが、158分の長尺を全く感じさせない
素晴らしい人間ドラマだった。人間の心の深淵に迫り、情欲の中で生まれる愛と
葛藤
を描き切って見事。再見確定!

 ちょうど一年前、この映画の公開が決定、という記事を書いた。その後、賛否両論
の中でヴェネチアでグランプリを取ったり、アカデミー賞・外国語映画賞のノミネート
から外されたり
(純粋な台湾映画ではない、という理由?)、中国では性愛シーンが
カットされたりといろいろあって、やっと日本でも公開の日がやってきた。待って、
待っての作品だけに、感激もひとしお。何もかもが素晴らしいのだけれど、まずは
主役二人の演技から。

ラスト、コーション4

 この映画を端的に表現するならば、「ワン・チアチーの物語」ではないかと思う。
生まれながらの女優であり、演じることと実人生が逆転してしまった一人の女スパ
イ。ほとんどのシーンでチアチーが出ずっぱりであることに驚いたし、映画初出演な
がら難役を(文字通り体当たりで)演じ切ったタン・ウェイには拍手と、最大級の賛辞
を送りたい。北京語、上海語、広東語、英語を澱みなくこなし、『天涯歌女』を歌い、
トニーとの二人芝居でも決して引けを取っていない。それを可能にしたのはもちろん、
彼女を抜擢し、鍛え、演出においては全く妥協を許さなかったであろうアン・リー
ですね(笑)。彼はキャスティングの鬼であり、演出の鬼であり、新人のタン・ウェイ
にとっては最高の教師だったのだろうと思う。そして、彼女とともに最高難度の大役
を演じたトニー・レオン。改めて彼の凄さを思い知らされた映画だったようにも思う。

ラスト、コーション2

 私がトニーに感電したのは『花様年華』だったのだけれど、彼の目からは「何か」
出ているとつくづく思う。実際の彼がどんな人物なのか知る由もないけれど(きっと見
かけ通りのやさしい人だと思うのだが)、役によってどんな人物にも成り得る、稀有な
才能
を持った役者だと思う。涙なんかは序の口、そのさえもコントロールしてしまう
技量に改めて感動してしまった。彼は演技の神様に選ばれた人なのだ。
 イーという人間は、用心深くて狡猾で孤独で臆病なサディストなのだけれど、どこか
滑稽にも映る。トニー以外にはこの役はできなかった、などと言うのは傲慢かもしれ
ないが、トニーがこの役を演じてくれて私はよかったと思う。身も心も曝け出し、「死に
たくなるほど辛かった」
としても、彼以外のイーは見たくなかった。ただ、老け役といえ
どもトニーはかなりの童顔ゆえ、イー夫人を演じたジョアン・チェンがどうしても「姉さん
女房」
に見えてしまったのだが・・・。

ラスト、コーション3

 他にもいろいろと書きたいことはあるのだけれど、今日はひとまず初見の感想
して、また改めたいと思う。キネマ旬報原作や、プログラムなどもじっくり読んで、
再びこの作品に対峙したい。

『ラスト、コーション/色・戒』監督・製作:アン・リー
    主演:トニー・レオン、タン・ウェイ/2007・米、中、台湾、香港)

テーマ:ラスト、コーション - ジャンル:映画

[2008/02/07 12:58] | ラスト、コーション/色・戒 | トラックバック(30) | コメント(28) |
デンゼル・ワシントンがカッコよすぎる件について~『アメリカン・ギャングスター』
アメリカン・ギャングスター



 AMERICAN GANGSTER


 60年代後半から70年代、ベトナム戦争が泥沼化するアメリカ、ニューヨーク
黒人ギャングのボスの運転手から、その才覚でハーレムの麻薬王に昇りつめた
フランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン)。腐敗がはびこる警察組織の中でその
「正直さ」ゆえに孤立し、閑職に追いやられたリッチー・ロバーツ(ラッセル・クロウ)。
二人の対照的な男の生き様と駆け引きを描く、実話に基づく犯罪ドラマ。157分の
長尺を感じさせない、メリハリの効いた力作巨匠リドリー・スコットのメガホン、
二大オスカー俳優の競演という看板に偽りなし。映画好き必見の作品ではないで
しょうか。

 兎にも角にもデンゼル・ワシントンがカッコいいので、それ以上何も言いたくない
気もするのだけれど・・・。リドリー・スコット&ラッセル・クロウのコンビは気心の知
れた間柄だろうから、デンゼルにを持たせたのかな?と思ってしまうくらい、彼は
カッコよかった。皆さん、最後ちゃんと撃たれましたか? 長いエンドロールの間、
続々と席を立つ人の多いこと!最後に残ったのは全体の2割くらいだったかな?
皆、何故かうれしそうにニヤニヤしていました。「撃たれた~、なのにうれしぃ~♪」
みたいな・・・(爆)。

アメリカン・ギャングスター2

 黒人と白人、ギャングと刑事、妻を愛しファミリーを大切にする良き家庭人と、女癖
が悪く家族を失った男。この対比が効いているし、二人が後半の山場まで相対しな
いという構成がドラマを盛り上げ、緊張感を持続させていたと思う。そう、教会で初め
て二人が相対する場面
-それはフランクのビジネスの終焉を意味する-、この場面
半端じゃなくカッコいい。デンゼル・ワシントンはもちろん、ラッセル・クロウもカッコ
イイじゃないか!アメイジング・グレイス!

 しかし、フランクはカッコはいいがやることはかなりエゲツナイ。ディスカウントショッ
プの仕入れ方法からヒントを得、麻薬の密輸入を新しいビジネスにしてしまうところ、
いつもスーツを身にまとい、表向きは堅実な実業家の顔をしているところに、彼の
の良さ、スマート
さを感じる。しかしキレるのも早いのだ。彼が「心の平安」を失った
ときに爆発させる暴力は、本当に怖かった。「ブルー・エンジェル」のODで命を落とす
ジャンキーたち。彼らの姿に、フランクの悪事は許されないと怒りを憶える。対する
リッチーは、どこまでも正義感を失わない熱血漢。ニューヨークの汚職警官を一掃し
た、彼の執念は凄い!

アメリカン・ギャングスター3

 デンゼル・ワシントンもラッセル・クロウもオスカー俳優だけに、当たり前だけど
本当に素晴らしい演技だった。何気ない表情や仕草の全てが計算し尽されてい
て、役柄に命を与えている。「成り切っている」と言ってもいいだろう。今回のアカ
デミー賞には二人ともノミネートはされていないが、ママ・ルーカスを演じたルビー
・ディー
が助演女優賞にノミネートされているのは驚き。功労賞的な意味合いも
あるのかもしれないけれど、儲け役だったんじゃないだろうか。

『アメリカン・ギャングスター』監督・製作:リドリー・スコット
        主演:デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ/2007・USA)

テーマ:アメリカン・ギャングスター - ジャンル:映画

[2008/02/05 16:52] | 映画 | トラックバック(32) | コメント(18) |
パンクは死なず~『ペルセポリス』
ペルセポリス


 PERSEPOLIS


 パリ、オルセー空港。望郷の念にかられた一人の女性がやってくる。彼女が空港
のベンチで回想する、自身の思春期イラン激動の時代。監督であるマルジャン・
サトラピ
自伝的グラフィック・ノベルを原作とする、革命や戦争という時代の波に
翻弄
されながらも、両親と祖母の愛情に支えられ精神の自由を失わなかった一人
の少女の成長物語。2007年、カンヌ映画祭で審査員賞を受賞、ゴールデングローブ
では外国語映画賞、アカデミー賞では長編アニメ賞ノミネート(レミーの強敵?!)
されている話題作。ペルセポリスとは、ギリシア語でペルシアの都市のこと。

 ヨーロッパのアニメ作品を、劇場鑑賞したのは初めてかもしれない。ジブリやピク
サーによる色鮮やかで実写以上の臨場感を持つCGアニメを見慣れているからか、
モノクロでシンプルな描線の画がとても新鮮に感じられた。また、アニメは吹き替え
で観る機会が多いせいか、画面に集中しながら字幕を読むのに少しだけ戸惑って
しまう。今回はフランス語版での鑑賞だったが、英語版ではショーン・ペンイギー
・ポップ
が参加しているという。より「パンク」な仕上がりになっているのではないかな。
そちらも観て(聴いて)みたいと思う。

ペルセポリス2

 革命国家間の争いで、傷ついたり翻弄されるのはいつも一人ひとりの人間たち。
石油利権武器貿易が戦争を引き起こしているという現実。飲酒や西洋文化を禁じ
られ、抑圧されながらも知恵と勇気を絞り、逞しく生き抜く市井の人々。それらが
一人の等身大の少女の目線で、ユーモアたっぷりに綴られてゆく。

 主人公マルジの祖母が、人生の節目節目で彼女にかける言葉が胸に沁みる。
「いやな思いをしたら、相手が愚かなのだと思いなさい」「一度目の結婚は予行演習、
二度目はもっと素晴らしくできる」
大切なのは世間体ではなく、常に自分自身に対し
公明正大であること。志半ばで死んでいった者たちのことを忘れないこと。自分が
今、生かされていることを感謝すること・・・。

 また、登場する女性たちがヴェール(スカーフ、チャドル、マグナエ)に対して強い
反発を抱いていることも印象的だった。パリ、ジュテーム「セーヌ河岸」に出て
きた少女は「自分の意思で」ヘジャブをかぶっていたけれど、マルジたちはヴェール
女性に対する抑圧の象徴だと感じている。度々出てくる「ヴェールを被り直せ」
いう言葉。その度に、マルジの中で「ここは自分の居場所ではない」という思いが
膨らんでゆく。

ペルセポリス3

 マルジは最後に「自由は代償を伴うもの」と悟る。祖国との決別は、家族との決別
でもある。人生の師であった祖母を喪っても、彼女は自身が「イラン人」であることに
誇りを持ち、これからも自分の居場所を探し続けるのだろう。生きるということは、死者
と語ることだということ。マルジの胸の中で、祖母は死ぬことはない。ジャスミンの花
咲き、香り続けるように。ド下手な『アイ・オブ・ザ・タイガー』には大爆笑。原作も、是非
読んでみたいと思います。

『ペルセポリス』監督・脚本:マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
          原作:マルジャン・サトラピ/声の出演:キアラ・マストロヤンニ、
               カトリーヌ・ドヌーヴ、ダニエル・ダリュー
/2007・仏、米)

テーマ:ヨーロッパ映画 - ジャンル:映画

[2008/02/02 16:19] | 映画 | トラックバック(11) | コメント(17) |
| ホーム |
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

Recent Entries

Categories

What's New?

真紅

Author:真紅
Every cloud has a silver lining.

Recent Comments

Recent TrackBacks

Archives

My Favorite

Search this site

RSS

Thank You!