法で裁けない罪~『ヴェラ・ドレイク』
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 VERA DRAKE


 第二次大戦の記憶もまだ生々しい1950年の英国。夫と二人の子を持ち、家政婦
として働きながら困っている人々を助けずにはいられない一人の労働者階級の主婦、
ヴェラ・ドレイク。いつも鼻歌を唄い、夫と観る映画を楽しみに日々つつましく生
きている彼女には、家族にも言えないある「秘密」があった。
 罪と罰、法と良心、家族の絆、善と悪について、しみじみと考えさせられる傑作
監督は『秘密と嘘』マイク・リー、主演はイメルダ・スタウントン。2004年度の
ヴェネチア映画祭において、金獅子賞と主演女優賞をW受賞している。

「堕胎」という繊細なテーマを扱う作品だけに、この映画は賛否両論あるだろうこ
とは想像に難くない。ヴェラの義妹のように「そのうちに大変なことになるわよ」と、
ヴェラのしたことを否定的に見る人も多いのかもしれない。しかし、私は彼女を
否定する気には到底なれなかったし、ヴェラの心を「黄金以上、ダイアモンドだ」
誇らしげに語る夫スタン(フィル・デイヴィス)に共感する。ダイアモンドは傷つかな
いはずだけれど、この映画は傷ついたダイアモンドを描いているのかもしれない。

 ストーリーを追いながら、「何故、女性だけが心身に傷を負わなければならないのか」
という理不尽な怒りと悲しみで胸が潰れそうだった。希望の証であるはずの子ども、
神の賜物であるはずの妊娠が、貧困の根源として忌み嫌われる現実。父のない子を
産んだことで受けるであろう不当な差別。ヴェラの「秘密」と並行に、中産階級の女性
スーザン
「正当な」手順を踏んで堕胎するエピソードが描かれる。ここでマイク・リー
は、たとえお金があっても、女性の受ける傷は同じか、それ以上であることを訴え
たかったのではないだろうか
。レイプされて処女を失うという恥辱を受けた後に、
更なる屈辱が待っている酷薄。あまりに惨い。スタンやレジー、男たちが語る戦争
の記憶は、男の受ける傷として女の受ける恥辱と対比されているのだろうか?

 数々の受賞歴が証明するように、イメルダ・スタウントンの演技の素晴らしさは
言うまでもない。と言うよりも、私は彼女の本作での演技をどのような言葉で称賛
すればいいのかわからない。いかなる褒め言葉も白々しくなるほど、彼女の演技は
凄い。結婚指輪を外された左手薬指を所在無げに握る仕草など、細部まで表現し尽
くしたような凄まじいまでの「成りきり」ぶりと女優魂

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 ヴェラがどうして法を犯してまで「困っている」娘たちを助けようとしていたのか、
その行為の動機付けは語られない。けれど、ヴェラ自身が望まれない子どもだった
こと、「あなたも昔「困った」ことが?」という警部の問いかけに対するヴェラの表情
が、何らかの真実を語っているのだろう。

 しかし、この映画は彼女の「したこと」を糾弾するための映画ではないと思う。何が
あろうと妻を信じ、彼女の側で生きようとする夫スタンの。ヴェラの好意で家族
の温かみを知ったレジーが言う、「最高のクリスマス」という言葉。心に沁みる彼らの
こそが、本作の静かなテーマであるように思う。

 ラストシーンで描かれる、一家の精神的支柱である母の不在、寂しげな食卓。「狭い
ながらも楽しい我が家」を描写した、貧しいながらも温かさと愛が溢れる前半との
対比が鮮やか
だ。産科医と助産師であったという監督の両親に捧げられているこの
映画を観た後、法では裁ききれない「罪」もあるという真実について考えていた。

『ヴェラ・ドレイク』監督・脚本:マイク・リー
    主演:イメルダ・スタウントン/2004・UK、仏、ニュージーランド)
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【2007/08/31 17:32】 | DVD/WOWOW | トラックバック(7) | コメント(18)
やさしい嘘~『Dear フランキー』
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 DEAR FRANKIE


 スコットランド、グラスゴー近郊の港町。シングルマザーのリジー(エミリー・
モーティマー)
は、母と一人息子のフランキー(ジャック・マケルホーン)とともに
引っ越してくる。暴力夫から逃げ、スコットランド中を転々とするリジーは、父
と偽ってフランキーと文通を続けていた。そんなある日、世界の海を航海する父
の乗る船が、フランキーの住む町に入港するという。リジーは「過去も未来もない男」
ストレンジャー(ジェラルド・バトラー)
に、「一日だけの父」を演じてくれるよう
依頼するのだった・・・。

 イギリス映画らしい小品でありながら、親子の絆、人と人との繋がりの大切さ、
誰かを愛し、守るということについて深く思いを巡らせてくれる感動作。観ている
途中から、涙が止まらなかった。本作は監督ショーナ・オーバックの長編デビュー
作ながら、カンヌ映画祭の「ある視点」部門に出品され、高く評価されたという。

 主演のエミリー・モーティマー、ジャック・マケルホーン、ジェラルド・バトラーがそれ
ぞれに、唯一無二の名演を魅せてくれる。夫の影に脅えながら何年も逃亡生活
を続け、身も心も疲弊しているリジー。聴覚障害を抱える息子を愛し、息子を守る
ために生きている、強くてやさしい母を、エミリー・モーティマーが熱演。こんな
にも自然な演技ができる女優さんだったんだ・・、としばし呆然。その生い立ちから
か少し醒めた表情ではあるけれど、思慮深く理知的なフランキー。劇中、彼が唯一
声を出すシーン
には嗚咽してしまった。そして、その母子の前に突然現れた「父」。
無骨だけれどじんわりと暖かく、大きな身体で包み込むようなやさしさを持つ男を、
ジェラルド・バトラーが圧倒的な存在感で魅せてくれた。初めての「再会」から息子と
一日を過ごし、翌日も一緒にいようと提案し、偽りの関係が真実の情へと徐々に
移ってゆく様が、ごくごく自然に、リアルに表現されている。

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 そしてこの映画は、脇役のキャラが皆素晴らしい。フィッシュ&チップスの店を
切り盛りし、リジーに手を差し伸べるマリー(シャロン・スモール)。私は母親として
リジーに自己投影すべきなのに、マリーにとても心惹かれ、こんな女性になりたい
な・・
と思ってしまった。母子をやさしく見守るチェーンスモーカーの祖母、湯上り
に一杯やりながらの、女同士の会話がいい。そしてフランキーの同級生の子役た
ち!
男の子も女の子も「こんな子、いるいる~」と思いながら見てしまった。

 ストレンジャーに惹かれながらも、マリーとの関係が気になるリジーの心情もわ
かる。自分もひととき、彼に身を委ねてしまいたい、最後の最後に唇が触れるほど
距離が近づきながらも、それ以上は互いを律する二人が切なく、愛おしい。

 子どもは、大人が考えている以上に、世の中の事情や親の気持ちがわかっている
ものなのかもしれない。リジーはフランキーを偽っていることに迷いや呵責があっ
たはずだけれど、最後の最後で救われた。人生には、サンタクロースのようなやさ
しい嘘
が、絶対に必要なんだ・・・。映画もある意味「嘘」だけれど、その嘘なしには
私が生きていけないように。


 スコットランド、グラスゴーといえば、英国の名匠ケン・ローチのお膝元。柔ら
かい日差しと、海沿いの情景が美しい。フランキーとマリーが「世界で一番好きな場所」
だと言う丘、そこから見下ろすクレーンや海の風景が、尾道水道に似ていると思っ
た。あの場所にいつか帰りたいと願うように、私はこの映画を思い出すだろう。 

『Dear フランキー』監督・撮影:ショーナ・オーバック/2004・UK/
  主演:エミリー・モーティマー、ジャック・マケルホーン、ジェラルド・バトラー

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【2007/08/28 14:42】 | DVD/WOWOW | トラックバック(6) | コメント(16)
怒りと痛みの哀歌~『受取人不明』
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 ADDRESS UNKNOWN


 70年代韓国、米軍キャンプに程近い村を舞台に、三人の男女の残酷な青春の
日々を描いた衝撃作
。監督はキム・ギドク、私にとっては8番目のキム・ギドク
監督作品。主人公の一人は監督自身を投影したキャラクターであり、7割は事実、
創作部分は3割に過ぎないという。静かなオープニングから、2時間全く目が離
せない展開、ギドク・ワールド全開の一作


 米軍人と、娼婦だった母との間に生まれた混血児チャングク(ヤン・ドングン)は、
村はずれに打ち捨てられた「US AIRFORCE」の赤いバスに住む。チャングクの
(パン・ウンジン)
は、アメリカに帰国した夫に向けて手紙を書き続けているが、いつ
「ADDRESS UNKNOWN」のスタンプが押されて返送されてくる。
チャングクの友人ジフム(キム・ヨンミン)は家庭の事情で進学できず、米兵相手の
肖像画店で働き、幼い頃に兄の打った銃弾によって隻眼となったウノク(パン・ミン
ジョン)
に思いを寄せている。混血児であること、進学できなかったこと、隻眼で
あること。
それゆえ差別され、生き難さを抱えている三人。言葉少なな彼らの
絶望、焦燥、痛み、悲哀がジリジリと観る側に伝わり、胸を打つ。

 2001年に、キム・ギドクの7番目の作品として製作されたこの映画は、以降の
彼の作品の「原型」とも言うべきエッセンスが詰まった作品だった。
 まず思い浮かぶのは。村の男たちが「進入禁止」の立て看板に向かって放つ
矢、たらいに沸かした湯での沐浴、裸の背を流す愛情のこもった手。
 女子高生の夢、(合意の上ではあるけれど)春をひさぎ、夢を叶えようとする少女。
エリック・サティ「ジムノベティ」『サマリア』
 チャングクの母の乳房に彫られた文字は、『悪い男』の娼館の女将を思い出す。
「銭湯に行けない身体になりたいか!」
 そして、ウノクの白濁した瞳に米兵が雑誌の切り抜きを貼るシーンは、未見だ
『絶対の愛』を想起させる。

 同族を殺したことで叙勲される矛盾、愛玩物として犬を飼いながらも、売買し
食す
矛盾。そして他国の脅威から韓国を守るという大義名分の下、駐留する米軍
両刃の剣だという矛盾。英語をしゃべりたがる不良に対し「お前らみたいな英語
かぶれが、韓国をダメにするんだ!」と喝破し、在留米軍の功罪を真っ向ストレート
で描くキム・ギドクの男気と、責めの姿勢には脱帽する。

 最も心に残ったのは、チャングクに対する母の愛。息子に殴られて泣き叫ぼう
とも決して殴り返さず、愛人に対しても「あの子はかわいそうな子なんだ、勝手に
殴るな!」
とタンカを斬る母。いなくなった息子を探し、凍てつく荒地を走り、
息子の亡骸を食べ続ける異常なまでの深い愛。夫との日々、夫と自分を繋ぐただ
一人の息子が、彼女にとっては人生の全てだったのだろう。夫に送るために撮り
続けた息子のポラロイド写真とともに、バスに火を放つ彼女の最期。パン・ウン
ジンの鬼気迫る熱演と相まって、悲しくも名シーンと成りえていると思う。

 キム・ギドク節炸裂の本作、血なまぐささも満載のため、観る人を選ぶ映画か
もしれない。それでも、韓国が生んだ天才映像作家のエネルギー溢れるこの作品、
私のこの記事ではその凄みを全く伝え切れていないのがなんとももどかしい。
未見の方は是非、ご覧になってみて下さい。 

『受取人不明』監督・脚本:キム・ギドク/主演:ヤン・ドングン、
            キム・ヨンミン、パン・ミンジョン
/2001・韓国)

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【2007/08/27 15:58】 | DVD/WOWOW | トラックバック(6) | コメント(8)
お久しぶりに映画徒然~『Candy』『The Reader』『I'm Not There』
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 Candy


 皆さま、お元気ですか? そろそろ復活できそうなthinkingdaysでございます。
久々の更新なので、今日は徒然に新作、公開待機映画のお話など、など・・・。

 ↑もう、ず~っと前から待ちに待っているヒースの新作『Candy』、公式サイト
によれば単館ロードショーなのですか?!?! まじかよ・・・、ガッカリ。
数ヶ月遅れでもいいのでなんとか全国順次公開、とならないものでしょうか。
お願いしますよーワイズポリシーさん!!

 そしてこれも待ちに待っている『The Reader』ベルンハルト・シュリンク
世界的ベストセラー『朗読者』の映画化です。スティーヴン・ダルドリー監督、
ニコール・キッドマン&レイフ・ファインズ主演
、と聞いて色めきたった方も
多数おられるのではないでしょうか。
 アンソニー・ミンゲラが映画化権を取得、というのはもう何年も前から情報が
ありましたが、今年の6月にアンソニー・ミンゲラ監督・製作、デヴィッド・ヘア
脚本で2010年公開
、とアナウンスされたばかりだったのですね。アンソニー・
ミンゲラは監督を降りて、製作に専念するのでしょうか。他にもロバート・フォ
ックス、シドニー・ポラック
も製作に名を連ねております。まぁ、これは凄い、
オスカー級の作品になるのは間違いないとは思うのですが、ニック&レイフ
どうなんでしょう?? 私はミヒャエル役、ジェイクにトライして欲しかった
のですが・・・。
ハンナは絶対、ジュリエット・ビノシュで決まりだと言われてい
ましたけれども。。
 皆さま、どう思われますか? 私は原作が大好きなので、期待して待ちたい
と思います。

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 『朗読者』
 /ベルンハルト・シュリンク著
 /松永美穂・訳
 /新潮社・2000



 そして、これまた超期待!の作品『I'm Not There』。

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 I'm Not There


 ティーザー、皆さまご覧になりました? 意外に、栗平さんがはまってる感じ
で素敵、と私は思ったのですが・・。この映画の前にスコセッシが撮ったボブ・
ディランのドキュメンタリー
『ノー・ディレクション・ホーム』も要チェックかな、
と思っております。

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 NO DIRECTION HOME: BOB DYLAN


 近々映画感想もアップいたしますので、またよろしくお付き合い下さいませ♪
ではでは~。

テーマ:公開予定前の映画 - ジャンル:映画

【2007/08/23 13:14】 | 映画雑談 | トラックバック(2) | コメント(18)
残暑お見舞い申し上げます~更新お休みのお知らせ~
 皆様、こんにちは。いつも拙ブログにご訪問ありがとうございます。甲子園も
始まり夏真っ盛り、暑い日が続いておりますが体調はいかがですか。落ち込んだ
りすることもありますが、私は元気です。

 さて、私自身とても楽しみに続けているこのブログですが、都合により少し
更新をお休みします。とは言っても今月末くらいにはまた記事をアップできる
と思います。コメント、TBはこれまで通り大・歓迎ですし、反映、お返しもさ
せていただきますのでよろしくお願いします♪


 最近、意外な記事、古い記事に拍手をいただくことがあり、とてもとてもうれ
しいです。ああ、こんな記事でも読んでいただけているのだなぁ。。と思うと
しみじみしてしまいます。ありがとうございます!

 お盆休みで帰省される方、どうぞお気をつけて。旅行される方は楽しんで下
さいね、どこにも行かれない方は映画をご覧になりますか? おススメ映画、
ありましたら教えて下さいね!

 ではでは、皆さまどうぞお元気で、楽しい夏を。。

                             真紅拝

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【2007/08/10 00:16】 | 徒然 | トラックバック(0) | コメント(10)
運命と天才~『ピアノの森』
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 The Perfect World of Kai


 ピアニストの家系に生まれ、自らもピアニストになる夢を持つ少年、雨宮修平
祖母の病気のために転校した小学校では、学校近くの森に捨てられているピアノ
が怪談めかして語られていた。いじめっ子たちに転校生としての洗礼を受ける修平
に助け舟を出した同級生・一ノ瀬海は、音が出ないというそのピアノをただ一人
奏でられる「天才」だった。修平と海はピアノを通じて友情を育んでゆくのだが・・・。
 モーニング誌に隔週連載されている一色まこと氏のコミックを原作としたアニ
メ作品。私は原作は未読だけれど、ピアノ教師である友人は号泣しながら一気読
みしたという。今年は音楽映画の当たり年という説もあるようなのに『神童』も観逃
してしまったし、あの世界的名匠、ウラディーミル・アシュケナージ氏がアドバ
イザーとして参加し、ピアノ演奏も担当しているとなれば俄然、観たいではない
ですか。

 私自身はピアノも弾けないしクラシック音楽に造詣が深いわけでもない。それ
でも、映画館の暗闇に深緑の森が映し出され、身体全体にピアノの透明な音色が
満ちる
、映画館という「音響空間」で音楽を聴くという体験は、想像以上に素晴らし
かった。音楽って理屈や教養じゃない、身体と心で「感じる」ものなんだ。

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 幼い頃から様々なことを犠牲にしてピアノに打ち込み、手を守るために白い手袋
をする修平。酒場で働く母との貧しい暮らしの中で、捨てられたピアノと共に育
った海。対照的に見える二人の少年がお互いの才能に敬意を払い、切磋琢磨しよ
うとする姿は胸を打つ。

★以下、ネタバレあります★

 コンクールという競争の場で、「敵は誰でもなく、自分の中にある」ことを悟り、
自分の演奏をしようと全力を尽くす修平と海。しかし、海の自由奔放で型破りな
演奏
は聴衆を魅了はしたものの、コンクールという枠の中では評価されなかった。
ヴァイオリニストの五嶋みどり・龍姉弟を育てた五嶋節氏は、一度も姉弟をコン
クールに出したことがない、という逸話を思い出してしまった。

 完璧な演奏をすることと、人の心を動かす演奏をすることは似て非なるもの。
ただ単に「巧く弾く」だけではない、聴く者の胸を打つ演奏とは、どんなものなのか。
海の紡ぎ出す音は技術を超えて、魂が跳躍するように聴く者の心へ響く。何百年
も前に楽聖たちが生み出した「神の音」に触れ、涙が溢れて止まらなかった。

「便所姫」こと誉子と海のやりとりで、少し映画のテンポが狂った感があったのは
残念。声優陣も違和感はなく、特に阿字野先生の声は誰だろう・・と思っていたら
エンドロールで雨上がり決死隊の宮迫博之であることを知り、演技の巧さに驚
かされた。 

「海には、日本のコンクールは小さ過ぎる」。彼はその後、どんな音を奏でるのか。
物語の続きが知りたくなった。

『ピアノの森』監督:小島正幸/原作:一色まこと/2007・日本)

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【2007/08/06 08:53】 | 映画 | トラックバック(4) | コメント(4)
陽気にサヨナラ~『今宵、フィッツジェラルド劇場で』
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 A PRAIRIE HOME COMPANION


 この夏は世界の映画界から訃報が相次いだ。スウェーデンの巨匠、イングマール
・ベルイマン監督。イタリアの巨匠、ミケランジェロ・アントニオーニ監督
。そして
ドイツ人俳優、善き人のためのソナタの主演俳優ウルリッヒ・ミューエ「映画の
時代の終焉」
と書かれた新聞記事を読んで寂しい思いが募ったが、昨年11月にも
世界的名匠が惜しまれながらこの世を去っている。ロバート・アルトマン、享年
81歳。『今宵、フィッツジェラルド劇場で』は、図らずも彼の遺作となった群像劇
豪華キャストの歌の競演が素晴らしい。

 ミネソタ州セントポール。アメリカ中西部のこの街で、30数年間続いた公開
ラジオ番組が幕を下ろそうとしていた。収録場所であるフィッツジェラルド劇場
が、テキサスの企業に買収されたのだ。劇場向かいのダイナーから夕食を終えた
保安係のガイ・ノワール(ケヴィン・クライン)がやってきて、出演者たちが楽屋に
集い始める・・・。

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 出番ギリギリまで冗談を言っている司会のギャリソン・キーラーは、実在する
ラジオ番組で本作の原題でもある「プレーリー・ホーム・コンパニオン」のホストだ
と言う。陽気なカウボーイズ、ダスティ(ウディ・ハレルソン)&レフティ(ジョン
・C・ライリー)
、トウの立った姉妹デュオ、ヨランダ(メリル・ストリープ)とロ
ンダ(リリー・トムソン)
。ヨランダの娘ローラ(リンジー・ローハン)、年老いた
シンガーのチャック(L・Q・ジョーンズ)。ジョン・C・ライリーの芸達者ぶりは
知っていたけれど、メリルやリンジーがここまで聴かせるとは思わなかった。

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 番組の終焉にかけてか、映画には陽気な歌声とは裏腹な「死の予感」が充満してい
る。白いトレンチコートの天使(ヴァージニア・マドセン)の言葉「定めの時と霊を
心に受け入れれば、この世の生きる支えになる」「老人が死ぬのは悲劇じゃないわ」

これらは図らずも、ロバート・アルトマン自身を送る言葉のようにも聞こえる。

 多くの出演者が登場する群像劇ではあるけれど、物語の舞台は劇場と向かいの
ダイナーのみで、登場人物の繋がりも予め把握できる。番組に少しのトラブルは
起こるけれど、百戦錬磨の出演者たちのアドリブによって滞りなく進行し、ラス
トにどんでん返しもない。驚くほど素直な構成であるにも関わらず、観終わって
こんなにも温かい気持ちで満たされるのはどうしてだろう?

 エンドロールで、ポール・トーマス・アンダーソンSpecial Thanks
捧げられていた。病身のアルトマン監督のスタンバイとして、PTAが現場に立ち
会っていたのだと言う。巨匠が遺した志や映画への愛は、PTAに引き継がれると
信じたい。私はアルトマン監督作は村上春樹~レイモンド・カーヴァーつながり
『ショート・カッツ』くらいしか観ていないので、これからはできる限り観ていき
たいと思っている。人生やショウは幕を下ろしても、映画は決して終わらないは
だから。

『今宵、フィッツジェラルド劇場で』監督:ロバート・アルトマン
  原案・脚本:ギャリソン・キーラー/主演:ギャリソン・キーラー、
        メリル・ストリープ、ケヴィン・クライン
/2006・USA)

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【2007/08/05 21:05】 | DVD/WOWOW | トラックバック(9) | コメント(12)
暑中お見舞い申し上げます~愛しの映画館バトン
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 THE
 PURPLE
 ROSE
 OF
 CAIRO



 皆さま、暑中お見舞い申し上げます。

 さて今日は、「愛しの映画館バトン」を。このバトン、映画ブロガーの皆さんアップ
しておられて「いいな~、廻ってこないかな?」と思っておりましたがどなたにも頂け
なかったので、勝手にアップします、すみません!こういうのはバトンとは言わな
いですね。。
 でも言い訳させて下さい、映画ブログをやっているくらい映画が好きな方になら
ば、映画館という「非日常空間」がどれほど愛しく、恋しい場所であるか。おわかりい
ただけますよね? というわけで、今日はバトンという名を借りて「愛しの映画館」
の思いを語ってみたいと思います、よろしければお付き合い下さいませ。

 それでは早速、スタート!

1.年に何回くらい映画館で映画を観ますか?

  今年は週一くらいのペースで観ることができていますので、50本ほどでしょうか。

2.最後に観た映画は?

  レミーのおいしいレストランとってもよかったです。

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3.初めて観た映画は?

  これは憶えてないです。でも、おばあちゃんに映画に連れて行ってもらう姉が
 羨ましくて大泣きしているのが、はっきり憶えている最初の記憶かも。

4.映画館では飲み食いしますか?

  始まる前にお茶を飲んだり、飴を口に入れたりしますが上映中はまずしません。
  集中、集中・・。

5.主に誰と観にいきますか?

  ほとんど一人で行きます。

6.映画館でうれしかった思い出

  映画に行けない時期が長かったので、映画館のシートに座る度、なんとも言え
 ない幸福感に包まれます。大袈裟じゃなくて。
  映画館に行けたなら、それはいつもうれしい思い出です。

7.映画館で悲しかった思い出
8.映画館で困った思い出


  皆さん、上映事故って遭われたことあります? 私は3回もあります!
  一度目は『プラトーン』、クライマックスの戦闘シーンで急に音声が消えた!
 最初演出かと思いましたが、エンドロールまで音声はナシ。映画館から謝罪も
 ナシ。文句言ってる人もいたけど・・・。後にビデオで再見しました。

  二度目は『稲村ジェーン』。オープニングから音声ナシ!でもしばらくしたら
 復旧して、ラストまで鑑賞。♪四六時中も好きと言ってぇぇ~

  三度目は『ブラザーフッド』。これも予告から音がおかしい?と思っていたら
 本編で音声が出ない!場内めっちゃざわめいてました。大声出す人もいたり・・。
 結局上映中止となり、振り替えの鑑賞券をいただいて後日無事 鑑賞しました。
 この時、斜め前の席にボクシングの某世界チャンプ(当時)がいて、上映前から彼が
 気になって仕方なかったので、とても印象に残ってます。

 音が出なかったらビックリですよね~。。画が出ないほうがビックリか(笑)

9.パンフレットは買いますか?またそのタイミングは?

  めったに買いませんが、買うとしたら上映後。でもブロークバック・マウンテン
 は上映前に買ったな~。。

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 もう一度、
 映画館で
 観たいです。



10.次に回す人

  映画を愛する方、どうぞお持ち帰り下さい。
  そして映画館にまつわる思い出を教えて下さい。

--------> コピペ用 <-----------

1.年に何回くらい映画館で映画を観ますか?
2.最後に観た映画は?
3.初めて観た映画は?
4.映画館では飲み食いしますか?
5.主に誰と観にいきますか?
6.映画館でうれしかった思い出
7.映画館で悲しかった思い出
8.映画館で困った思い出
9.パンフレットは買いますか?またそのタイミングは?
10.次に回す人
--------------------------

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【2007/08/04 21:32】 | バトン箱 | トラックバック(4) | コメント(16)
☆☆☆☆☆~『レミーのおいしいレストラン』
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 RATATOUILLE


 生まれつき嗅覚の鋭いネズミのレミーは、料理が大好き。フランス一のシェフ、
グストーを尊敬し、料理を作ることを夢見ている。家族とはぐれたレミーはパリ
たどり着き、グストーの店の見習いシェフ、料理の苦手なリングイニの手助けをす
ることになるのだが・・・。

 アニメーションスタジオ・ピクサーによるCGアニメーション。ピクサーのCG
技術がもはや実写以上、芸術の域に達していることは言うまでもないが、この作品
はCG以外の要素も素晴らしい!2時間近い上映時間があっという間に過ぎた。
監督は『Mr.インクレディブル』ブラッド・バード。ちなみに吹き替え版にて
の鑑賞だったが、字幕版でもう一度観たいくらい。超オススメです。

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 実はこの映画の予告を観たとき、正直「ええ~、ネズミが料理~?!」と思って引い
てしまい、さほど観たいとも思わなかった。しかしこの映画は、そう思うであろう
多くの大人を感動させる力を持った作品だと思う。アニメと言っても子ども向けで
はなく、大人にこそ観て欲しい映画なのです。

 冒頭から語られる、レミーの料理への愛情や情熱。おいしそうな食材、パリの街
夜景の美しさ!それだけでも胸がいっぱいになるほど、輝くエッフェル塔。スピ
ーディな展開
は全くダレることなく、レミーに操縦されるリングイニの動きに笑わ
されながら、ネズミと人間のコンビが作り出す料理に釘付けになりながら、ストー
リーは流れていく。

★以下、内容に触れます★

 最も感動的だったのは、料理評論家イーゴがレミーの作ったラタトゥイユを一口
食べた瞬間に、幼い頃に引き戻されるシーン。「おふくろの味」にはどんな高級食材も
かなわない!このラタトゥイユ、日本だと筑前煮とか、肉じゃがとかのイメージな
んだろうか?このイーゴがナイトメア・ビフォア・クリスマスに出てきそうな死神
的キャラ
で、彼の部屋が棺桶の形をしているところも笑ってしまった。

 このラタトゥイユに対するイーゴの評論がまた素晴らしく、考えさせられる内容
なのだ。「辛口の批評は書くほうも読むほうも面白く、お金にもなる。しかしどんなに
三流の料理でも、その批評よりは価値があるだろう
」。これは料理評論に置き換えた
監督の「モノ作り」=映画への思いと、好き勝手に批評するメディアや受け手へのアン
チテーゼ
のように感じられた。作り手への敬意を持とう、批評する前に映画を観ら
れることへの感謝の気持ちを持とう、それが最低限のマナーであるのだ、と。

 ネズミが料理をするという「新しい発想」に拒絶反応を持つ人や、「たかがアニメ」
と思っている人にこそ、この映画を観て欲しい。そして、意外な美味しさに驚いて
欲しい
。食わず嫌いが一番、損をしているものだから。 

『レミーのおいしいレストラン』監督・原案・脚本:ブラッド・バード
               製作総指揮:ジョン・ラセター/2007・USA)

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【2007/08/02 17:08】 | 映画 | トラックバック(20) | コメント(20)
お気楽コメディ~『オーシャンズ12』
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  OCEAN'S TWELVE


 大ヒットした痛快作『オーシャンズ11』の続編。スティーヴン・ソダーバーグ監督、
ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット
らキャストが再結集し、新たにキャサ
リン・ゼタ=ジョーンズ
ら大物キャストを揃え、イタリア、オランダ、フランス
各国でロケした大作。間も無く公開される第三作『オーシャンズ13』が待ちきれず、
一応予習、ということで・・・。

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 今回、イレブンが再結集した動機は『11』で盗んだ金をベネディクト(アンディ・
ガルシア)
返済する、というもの。しかし、途中からフランスの大泥棒ナイトフォ
ックス(ヴァンサン・カッセル)
オーシャン(ジョージ・クルーニー)との「世界一
の大泥棒」
の座を賭けた騒動になる展開。ラスティ(ブラッド・ピット)の食べ物ネタ
や、ライナス(マット・デイモン)の大ボケぶりなど相変わらずのネタに、オーシャン
「老け」ネタでも笑わせてくれる。実際、ジョージとブラピは2歳しか違わないのに、
かなりジョージが上に見える。『11』では、元妻テス(ジュリア・ロバーツ)奪回
すべく動くオーシャンのスマートさに惚れ惚れしたものだけれど、今回ジョージも
「カッコよさ」は封印して、ひたすらコメディに徹している感がある。監督はじめ、
キャスト皆仲良く、和気藹々と楽しんで作っている感じ。ならば観ている我々も深く
考えず、大いに楽しんで観ようではありませんか!

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 今回、眼を奪われたのはキャサリン・ゼタ=ジョーンズの美しさ!『11』では、
ジュリア・ロバーツの驚異的な顔の小ささにいつもながら感嘆させられたけれど、
妊娠中のためかジュリアは今回存在感は薄い「本人ネタ」も今ひとつ乗れず残念。
同じく本人役で登場のブルース・ウィリスがノンクレジットなのも驚き。

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 音楽も映像もスタイリッシュでかっこよく、ストーリーもそこそこ面白い、
ターを観て楽しむべき映画
。私的には、ドン・チードルにもうちょっと活躍して
欲しい気がするのだけれど・・。さて、『13』ではどうなりますか。楽しみです。
(観に行けますように・・祈)

『オーシャンズ12』監督:スティーヴン・ソダーバーグ/2004・USA、AUS/
 主演:ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

【2007/08/01 22:57】 | DVD/WOWOW | トラックバック(7) | コメント(10)
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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