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映画が大好きです。いつまでも青臭い映画好きでいたい。 記事は基本的にネタバレありです by 真紅 (言葉を探す人)   ★劇場鑑賞した映画は Instagram にアップしています @ruby_red66 ★Stay Blue

~黄金週間☆真っ盛り~

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 Alex Fletcher
 (Hugh Grant)

 "Music and
  Lyrics"



 皆さま、こんにちは。GWはいかがお過ごしですか? 話題作もたくさん公開され、
シネフィルの皆さまは映画三昧な休日でしょうか。

 私と言えば・・。何の予定もありません(哀)。観たい映画はたくさんあるけど、いつ
になったら観られることやら? 今日はぶっ壊れたTV修理のため、一日待機・・。
「買い替えはったほうがよろしいわ」←わかってるけど簡単に買えたら呼んでないって!

ラブソングができるまでよかったなぁ~、と思い出す日々です。DVDは絶対買い、です
ね、あのPVがまた観たい~(ただし廉価版が出てからね)。
アレックス>グラハムホリデイ)な私って、少数派かな?

 でも6月になったら「ヒュー様と言えばヒュー・ジャックマンでしょ!」とか言ってそう
な気もします(笑)。

 4月も今日で終わりですね。新しい年度、新しい環境の下で頑張った皆さま、お疲れ
様でした! GW後半、よい休日をお過ごし下さいませ。
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テーマ : ゴールデンウィーク!
ジャンル : 日記

2007-04-30 : 徒然 : コメント : 4 : トラックバック : 0
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オリエンタリズム~『ハンニバル・ライジング』

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『羊たちの沈黙』『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』に続く、ハンニバル・レクター
シリーズ第4弾
。タイトル通り、世界一有名なカニバリズム・モンスターことハンニ
バル・レクター博士がいかにして誕生したかを描く物語。監督は真珠の耳飾りの少女
ピーター・ウェーバー、脚本は原作者のトマス・ハリス自らが執筆している。

 前三作はトマス・ハリス原作のサイコ・スリラー、ハンニバル・レクターシリーズで
あることは間違いないのだが、映画としては当然ながらそれぞれに独立性が強い作品
となっている。クラリス役も交代しているし、三作ともに出演しているのはアンソニ
ー・ホプキンス
のみ。監督も全て異なる。そして本作では若き日のハンニバルが描か
れるため、ホプキンスも出演していない。新たにレクターを演じるのはフランスの新鋭
ギャスパー・ウリエル

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 1944年リトアニア。両親を亡くし、妹を奪われ孤児となったハンニバル・レクター
が、フランスに住む叔父の未亡人レディ・ムラサキ(コン・リー)を頼って孤児院を脱走
する。彼女の庇護を受け、共に暮らしたハンニバルは日本文化に触れ、そしてあるき
っかけから復讐とカニバリズムに目覚める。医学生となった彼は妹を奪った元兵士た
ちを追い詰め、その手を血に染めてゆく・・・。

 あまりの怖さに気絶しそうになった『羊たちの沈黙』(あの真っ暗闇!)、怖いという
より気持ち悪かった『ハンニバル』(レイ・リオッタの最期!)、豪華キャストの『レッド・
ドラゴン』
(レイフ・ファインズの後姿!)と観てきて、本作が一番恐ろしさは薄れ、猟奇
的ではあるけれども衝撃的ではなかった
ような気がする(慣れの問題なのかもしれない
けれど)。レクターに大抜擢されたギャスパー・ウリエルは初見、この大役を見事に
演じきっていたと思う。細面の美しい横顔に浮かぶ傷がなんとも言えない雰囲気を醸
し出す。妹の死についての真実をグルータス(リス・エヴァンス)に告げられた時の、
苦悶の表情が秀逸。その後の狂気が恐ろしい。

 レディ・ムラサキを演じるコン・リーは今ひとつ輝いてなくて残念。前作『真珠の~』
でスカーレット・ヨハンソンをあれほど美しく撮ったピーター・ウェーバー監督には、
もう少しアジアの華を綺麗に撮ってあげて欲しかった。しかし『SAYURI』といい本作
といい、日本女性をアジア系とはいえ他国の女優が演じる現状は少し残念な気がする。
ハリウッドにとっては、オリエンタルな顔立ちであれば中国も日本も変わらないのだ
ろうけれど。そしてパリの日本人、カニバリズムとくればどうしてもあのパリ人肉事
を思い出してしまったのは私だけだろうか? トマス・ハリスはあの事件に何かイン
スパイア
されたのだろうか・・と少しだけ考えてしまった。ハンニバルの猟奇性が日本
文化に触発されて顕在化
したという描き方はまさしくオリエンタリズム。別に腹は立
たないけれど、気分はよくない。

 そしてピーター・ウェーバー監督の前作同様、音楽が印象に残らない映画でもあっ
た。だから尚更ラストの♪ドレミファソ、ラファミ・レ・ド♪が耳に残ってしまう。
レクター博士お得意の、新たな事件の予感を漂わせるラストも印象的だった。

『ハンニバル・ライジング』監督:ピーター・ウェーバー/原作・脚本:トマス・ハリス
  主演:ギャスパー・ウリエル、コン・リー、リス・エヴァンス/2007・仏、英、米)

テーマ : ハンニバル・ライジング
ジャンル : 映画

2007-04-26 : 映画 : コメント : 16 : トラックバック : 16
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愛と笑いと音楽~『ラブソングができるまで』

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 80年代人気ポップアイドルグループのボーカルだったアレックス(ヒュー・グラント)
は、今は落ちぶれ、過去の栄光にすがって生きている。そんな彼に超人気アイドル・
コーラから曲作りの依頼が舞い込む。観葉植物のメンテナンスに来たソフィー(ドリュー・
バリモア)
の言葉選びのセンスを見抜いたアレックスは、苦手な作詞をソフィーに協力
してもらい、浮上のチャンスを掴もうとするのだが・・・。

 今年4月に劇場公開される映画の中で、私が最も期待していたのが本作です。片や
ラブコメの職人、イギリスが誇るタイプキャスト王ヒュー・グラントと、ハリウッド
の定番ロマコメ女王ドリュー・バリモアの初共演
!ですよ奥さん!!ヒュー様の主演
作もドリューの主演作も好きな作品はたくさんあります。どんな映画に仕上がってい
るんだろ~、と期待も膨らむというもの。で、結果は定石通りのラブコメでした。

 意外にも、ヒュー様とドリューのケミストリーは劇的なものではなかったようです。
もちろん、ラブコメ界ではキング&クィーンのおふたりですから水準以上の映画には
仕上がっていると思うのですが、1+1が2以上にはならなかったのね・・というのが
正直なところ。舞台であるNYの街を活かし切れていないこと、屋内の場面が多く、
開放感や爽快感がないことがラブコメの大傑作に成り得なかった原因かな、と思いま
す。あとはワーキングタイトル製作じゃないことも一因?

 と、いきなり盛り下げるようなことを書いてしまいましたが、何はさて置いても、
ヒュー様の「腰振りダンス」これは是非観て欲しい!映画冒頭にアレックスが加入して
いたバンド"PoP"のPVが流れるのですが、これがもう最高。爆笑モノです。つかみ
はオッケー、みたいな。公式HPに行けば観られますのでこれだけでも観て下さい!
実によくできたトレイラーで、何回も観てしまいます♪

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 "Pop! Goes My Heart"

 80年代って、軽くて明るい
 いい時代でしたねぇぇ。。
 (しみじみ)



 アレックスは、自分が人気アイドルだった栄光の80年代をずっと引き摺ってる男
なのです。部屋にポスターを飾り、ウォーターベッドで眠り、足元はアディダスの
スーパースター
。クライマックスのライヴシーン以外は、ずっと履いていたのでは
ないでしょうか?このライブシーン、ヒュー様の弾き語りもいいのですがセット
凄いんですよ、もう、大笑い。絶対ありえへん。私はつい先日奈良東大寺へ行って
きたところだったので、余計爆笑でした。アレックスの精一杯の愛情表現と、歌姫
コーラの思いやりに涙ぐむ
ところだったんですけどね・・・。

 ドリューも相変わらず可愛くて超キュートなのですが、今回ばかりはヒュー様の
体当たり演技(?)に霞んでしまいましたね。サッカーボールがさり気なくアレックス
の部屋にあって、散歩の途中でボールを扱う場面、よかったなぁ。

「人生で一番大切なものは、愛と笑い」とドリューがインタビューで語っていました。
だからラブコメ(Love&Comedy)が好きなのだと。本作はそこに「音楽」
クリエイトする過程でお互いを理解するというエッセンスがプラスされ、誰が観て
も安心して楽しめる作品
に仕上がっていると思います。何だかんだ言って、オススメ
です!

『ラブソングができるまで』監督・脚本:マーク・ローレンス/
       主演:ヒュー・グラント、ドリュー・バリモア/2007・USA)

テーマ : ラブソングができるまで
ジャンル : 映画

2007-04-24 : 映画 : コメント : 36 : トラックバック : 14
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私をカンヌに連れてって~第60回カンヌ国際映画祭

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 風薫る五月、と言えばフランスはカンヌ映画祭。5月16日に開幕する第60回カンヌ
国際映画祭
コンペ部門の出品作が決定しましたね。

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 My Blueberry Nights

 Directed by Wong Kar Wai



 オープンニングは王家衛待望の新作、初の英語作品です。でも編集作業、間に合う
のでしょうか(笑)。

 そしてもうアメリカでは公開されている『Zodiac』も出品されていて驚き。

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 Zodiac

 Directed by David Fincher



 ちょっと待って下さいよ、ということはジェイクもカンヌにお出まし?!
 行きたい~~~~~(絶叫)!!

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 日本からは河瀬直美監督の『殯の森』。奈良でロケした新作ですね。

 そして真紅的待望のイ・チャンドン監督、『Secret Sunshine/密陽』

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 Secret Sunshine/密陽

 Directed by Lee Chang-dong



 近頃は韓国映画といえばキム・ギドク監督作ばかり注目されているような気がしま
すが、イ・チャンドン監督の映画はどれも本当に素晴らしいです

 おっと、キム・ギドクの新作もしっかり選ばれていますね~。カンヌで受賞、世界
三大映画祭制覇なるか?


Breath.jpg

 Breath/息

 Directed by Kim Ki-duk



 これはチャン・チェンくんが死刑囚の役・・。早く観たい!

 その他、コーエンブラザーズガス・ヴァン・サント、タランティーノなどおなじみ
の監督作が盛りだくさん。審査員もマギー・チャン、トニ・コレット、サラ・ポーリー、
『夜よ、こんにちは』マルコ・ベロッキオ監督など多彩な面々です。

 さて、パルムドールの行方は如何に?

テーマ : ★映画ニュース★
ジャンル : 映画

2007-04-23 : 映画雑談 : コメント : 2 : トラックバック : 0
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勝利への階段~『ロッキー・ザ・ファイナル』

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 冒頭、「ロッキー、ロッキー!」シュプレヒコールと手拍子が聴こえてきて、映画
が始まります。アカデミー作品、監督、編集賞を受賞した名作『ロッキー』シリーズ
最終章。
観てきました、初日に(笑)。最初にこの映画の話を耳にしたときは私も思い
ましたよ、「え、今更ロッキー?なんでスタローン?」って。でも本当に観てよかった
です、感動しました。シルヴェスタ・スタローン入魂の一作!

 高校生の時、テレビの○曜ロードショーで『ロッキー』が放映されたんです。もちろ
ん吹替えでカットもされていたと思うのですが、物凄~くよかったんですよ。翌日
友達に「昨日の映画、めっちゃ感動した!!」と言いまくったのをよく憶えています。
イタリア系のさえないボクサーがチャンピオンの対戦相手として選ばれ、全身全霊
をかけて闘う、という単純なストーリーなのですが、トレーナーとの友情やかの有名
「エイドリア~~ン!」との不器用な恋、ビル・コンティ作曲のテーマソング、と心
に響きまくりの映画なんです。とりわけ私が惹かれたのが、ロッキーという普通の
男の語る言葉。「小鳥って、空を飛ぶキャンディみてぇだなぁ」エイドリアンの勤める
ペットショップでのこの大好きなセリフは、本作でも回想シーンで登場しました。
その他、トレーニングでロッキーが生卵を飲むシーン、冷凍肉のサンドバックフィ
ラデルフィア美術館の階段を駆け上り、右手を突き上げるシーン
イン・ハー・シュ
ーズ
トニ・コレットもやっていましたね)なども含まれ、本作は『ロッキー』とま
さしく対になる映画と言えるでしょう。

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 元ヘビー級チャンプのロッキーは愛妻エイドリアンを亡くし、フィラデルフィア
の街でイタリアンレストランを経営している。息子は有名人である父を避けるよう
に就職して疎遠
となり、愛犬バッカスもいない孤独な日々。しかし彼は自分の内に
たぎるボクシングへの情熱を断ち切れず、もう一度リングへ上がる決心をする・・。

 正直、ロッキーがトレーニングを始めるまでは退屈です。息子との確執は彼がリ
ングに上がるために必要なエピソードかもしれないのですが、リトル・マリーとの
交流は必要ないんじゃないかと思いました。ラストでロッキーが「リトル・マリー~!」
って叫んだらどうしようと思ってしまった(叫びませんけど)。珍しく睡魔に襲われた
のですが、あのテーマソングが再び流れるや否や物語は活気を取り戻します。この
トレーニング場面がいいのですよ・・。もっと長く観せて欲しかったくらい。そして
クライマックス、チャンプとの対戦です(人気のないチャンプとのマッチメイク、と
いうのも『ロッキー』と同じ)。

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 この映画、原題は『ロッキー・バルボア』。今までの続編に倣って『ロッキーⅥ』
せず、敢えて主人公のフルネームを持ってきたところにスタローンの気概が表れて
います。倒れても、打たれても前に進むんだ・・。この映画のテーマには「努力して挑戦
したなら、それだけでもう負けじゃない」
というリトル・ミス・サンシャインと通じ
るものを感じてしまいました。エイドリアンとオリーヴがメガネっ娘であるという
共通点(?)もあります。ロッキーに声援を送る観客と同じ気持ちになり、ラストでは
私も泣きながら拍手していました。エンドロールの映像は、『ロッキー』とこの映画を
観て感動した全ての人の気持ちを代弁してくれていると思います。私もあの階段を
駆け上がりたい!
是非映画館でご覧下さいませ。

『ロッキー・ザ・ファイナル』監督・脚本・主演:シルヴェスタ・スタローン
                             2006・USA)

テーマ : ロッキー・ザ・ファイナル
ジャンル : 映画

2007-04-21 : 映画 : コメント : 8 : トラックバック : 6
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2057: A SPACE ODYSSEY~『サンシャイン 2057』

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 太陽が衰退し、50年後の地球は滅亡の危機に瀕していた。太陽を再生させるため、
核弾頭を搭載した宇宙船「イカロス2号」が8人の宇宙飛行士を乗せて太陽に向かう。
あと僅かで任務決行というその時、彼らは7年前に消息を絶った「イカロス1号」の救援
信号
を受信する・・。太陽は再生するのか? 彼らの運命は?
監督は『トレインスポッティング』『普通じゃない』ダニー・ボイル国際色豊かな
キャスト
に、日本から真田広之も参加している。ちょっと苦手なSF映画、やっぱり
怖かった。

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 「イカロス2号」
 クルーの皆さん



★以下、ネタバレします★
 
 ダニー・ボイルは、地球上の生命体全ての源である「太陽」と、その太陽に手を加え
ようとする「科学」の傲慢さと素晴らしさを描きたかった、と語っている。 確かに、
太陽の映像はとてもリアルで美しく撮られているし、それに魅せられるクルーたち
の心情もわかるような気がする。オレンジの輝きに惹かれ、崇拝し、命と引き換え
にその姿を留めようとする彼ら。キャプテン・カネダ(真田広之)が帰還しなかったの
も、太陽の本当の姿を見たい!という欲求に逆らえなかったからだろう。展望室で
サングラス越しに太陽を見つめる彼の瞳は、間違いなく何かを求めていた。

 最初に死んでしまうカネダを筆頭に、クルーが一人減り、二人減り・・。そして
いきなり登場する「unknown」:イカロス1号のキャプテン・ピンバッカー(マーク・
ストロング)
。彼の登場でいきなりSFからホラー映画になってしまい、ここからの
展開がわかりにくいのが惜しい。キャパ(キリアン・マーフィー)とピンバッカーの対決
は決着がついたのかつかないのかわからなかったし、キャパはいつの間にか宇宙服
脱いでるし、核弾頭切り離したのにイカロス2号もろとも太陽に突入してるし・・。
おっと、いかんいかん、また考えて観てしまっている。感じなければ。

 本作ではキリアン・マーフィーが正義キャラで、とてもカッコよく、男前に撮ら
れていてうれしかった。冒頭のナレーションの声もよかった。日本期待の真田広之
は正々堂々、キャプテンを演じていたのだけれど、早々に画面から消えてしまって
残念。こんな重要な、人類の存亡がかかっているミッションなのに乗組員が少なす
ぎるとか、男性クルー数名が精神的に不安定過ぎるとかいろいろと突っ込みどころ
はあるが、怖がりつつも映像やキャストで楽しめた一作だった。

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 Cillian Murphy


 そして改めて思ってしまったのだった。『2001年宇宙の旅』はやっぱり、凄い。

『サンシャイン 2057』監督:ダニー・ボイル/脚本:アレックス・ガーランド/
   主演:キリアン・マーフィー、真田広之、クリス・エヴァンス/2007・UK)

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

2007-04-19 : 映画 : コメント : 26 : トラックバック : 12
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SMAPでリメイク希望~『キンキーブーツ』

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 イギリスの田舎町・ノーサンプトン靴工場の4代目・チャーリー・プライス(ジョエル
・エドガートン)
は、父の急死で嫌々ながらも社長の座に就く。倒産寸前の工場を立て直
すべく、彼が目をつけたのはドラッグ・クィーンたちのための「キンキーブーツ」。
ミラノの国際靴市場に出品すべく、チャーリーとロンドンで知り合ったドラッグ・クィ
ーンのローラ(キウェテル・イジョフォー)と、熟練の工員たちとの「プロジェクトX」
始まる。工場の運命はいかに? 「偏見を捨てる」ことで成長する人々をコミカルに、明る
くやさしく描いた、観た後で元気になれる佳作。なんと、実話に基づいているらしい。

 いかにもイギリス映画、という趣の作品だった。いかにも、というのは「小さな映画」
であるということ。アメリカ映画は独立系の低予算映画であっても、その土地の広大さ
や道路の幅、居住空間などによって「広く、大きな映画」である印象を受ける。その対極
にあるのが、本作のような映画だ。こういった作品に、居心地の良さとやすらぎを感じ
るのは、私一人ではないだろう。

 ドラッグ・クィーンのローラを演じたキウェテル・イジョフォーがとてもいい。メイク
をし、ドレスを纏えば怖いものなしの彼女が、ジーンズをはけば気弱な一人の男サイモン
になってしまう落差の表現が効いている。そんな「馴染めない」彼と意気投合するチャーリー
も、「何も決められない」情けない男から、伝統ある工場を守るべく、熟練工たちと信頼
関係を築いてゆく過程は感動的
だ。

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 ローラが歌うショーの場面もとてもいい。彼女の歌の中で、「wicked」という単語に
反応してしまった。ヘドウィグ・アンド・アングリーインチで歌われた『薄汚れた街』
(Wicked Little Town)
を思い出してしまう。ギャラリーの中に、ヘドウィグキトゥン
プルートで朝食を)、アーノルドトーチソング・トリロジー)の姿を探して
しまう。人の痛みや傷に敏感なローラの、「ここって落ち着くわ。クズってなかなか味わ
い深いわよ
」というセリフも沁みる。そして「赤よ、赤!!!」の連呼は少し、恥ずかし
かった(自分が真紅だけに)。

 自分のアイデンティティに悩み、幼い日、赤いハイヒールで踊った桟橋にひとり佇む
ローラ。「旅券の写真の格好で来い」と言われたステージに、思いっきり弾けた天使たちと
彼女が歌い踊るクライマックスは最高!チャーリーとローラの出逢いのシーンを再現し
ているのもよかった。偏見やこだわりを捨て、自分の一番大切なものに気付いた彼らが
輝いている。

20070418092238.jpg

 何コレ?
 ダサ過ぎ!!



 そして実は、女装したローラが香取慎吾にしか見えず、「これ絶対スマップでリメイク
して欲しい!」
などというバカなことを考えながら観てしまったのだ・・。ローラは当然、
香取慎吾。気弱な工場主チャーリーは草剛不動産屋の彼はゴローちゃんでどうだろ
う? キムタクはちょっと悪役のドン、慎吾ローラとのアームレスリング対決が観たい!
で、中居くんは・・、女装してローレンとか。スマスマの1コーナーでもいいので、実現
希望(笑)。

『キンキーブーツ』監督:ジュリアン・ジャロルド/2005・米、英/
       主演:ジョエル・エドガートン、キウェテル・イジョフォー

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2007-04-18 : BD/DVD/WOWOW/Streaming : コメント : 16 : トラックバック : 13
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母としての人生~『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』

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「ひらがなで書かれた聖書」リリー・フランキーによる自伝的同名小説の映画化。
200万部以上のベストセラーとなり、ドラマ化、舞台化され、今や国民的・社会的
現象となった感のある『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
いよいよ「真打ち登場」という感じですね。観てきました。

 原作は大号泣しながら読みましたから、映画化の話を聞いたときから楽しみにして
いました。しかもボクをオダギリジョー、オカンを樹木希林が演じるというのですか
ら期待も高まるというもの。(ちなみに、ドラマ化された2作品は観ていません)
そして、映画は期待を裏切らない出来栄えだったと思います。ボクが東京に出るまで
の前半はナレーションも含めてやや冗漫に感じたのですが、後半一気に魅せます。
142分、全く時間を忘れて観入っていました。涙腺決壊

 ボクを演じたオダギリジョーが素晴らしい!ゆれるでもいい演技をしていたと
思いますが、この映画の彼は本当に自然に、ボクを等身大に演じて全くブレたとこ
ろがない。瀕死のオカンを抱き締める姿は演技を超えていました。そして彼のこの
演技を引き出したのは、誰でもない「オカン」、樹木希林の力量だと思います。樹木
希林という女優さんは、その独特な容貌から「樹木希林的演技」から自由になれないと
いうハンデを負っていると思うのです。しかしそこを逆手に取って、樹木希林にし
かできない演技、出せない存在感をものにしている。何を演じても樹木希林、しか
しそこには誰にも真似できない芸が確かにある。二人といない女優さんです。
小林薫も、もちろんよかった。内田也哉子の起用も大成功。内田裕也も出ればよか
ったかも?でもそうなると『オカンと、オトンと、時々オダジョー』って半ドキュメン
タリーになってしまいそうですね。カメオ出演、誰か打診しなかったのかな。

 この映画が広く観られることの意味は、決して小さくはないと思います。小説の
テーマである「マザコンで何が悪い!」という叫びは、世の男性の本音「嫁より彼女よ
り、オカンが大事」
(違います?)を公にしました。そこが私にはちょっと懐疑的だっ
たのですが(原作の感想はコチラ)、この物語にはもうひとつ大きなテーマがあると
思うのです。それは母親の「息子のために生きて何が悪い!」(言い過ぎ?)という思い。
オカンはボクに書きます。「オカンは結婚には失敗したけど、マー君がやさしい子で
幸せでした」


 昨今「産むなら女の子、持つなら娘」という風潮があります。男の子は手がかかって
育てにくい。女の子は大人しくて育てやすい、成長しても友達みたいに買い物した
り、映画をみたり、旅行したり・・。楽しそうですよね。でもこの映画を観れば、
母親と息子もいいものだな・・と思えてきます。

 人は皆、母から生まれてくる。大なり小なり、母親は自分を犠牲にして、自分の
命を切り分けて子どもを産み育てる。
そして生きている限り、別れの日はいつか必
ずやってくる・・・。ごくありふれた親子の「小さな話」であり、普遍的な「観た方全
ての胸にハマる形の想い」
(オダギリジョー)。華々しさとは無縁の「母としての人生」
が、かけがえのない愛しいものだと信じさせてくれます。

『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』監督:松岡錠司/
    脚本:松尾スズキ/原作:リリー・フランキー/
    主演:オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子、小林薫/2007・日本)

テーマ : 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
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2007-04-17 : 映画 : コメント : 27 : トラックバック : 18
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善と悪が出会うところ~『オール・ザ・キングスメン』

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 1950年代、アメリカ・ルイジアナ州の片田舎から、貧困層の味方として知事の座に
ついた清廉な男が、権力を握ったことでに染まってゆく。彼の側近として仕える元
新聞記者が見た、善と悪、理想と現実、権力と腐敗が混然一体となった政治の裏世界
を描く重厚なドラマ。知事ウィリーショーン・ペン側近ジャックジュード・ロウ
が演じ、ケイト・ウィンスレット、アンソニー・ホプキンスら豪華キャストが脇を固
める。ジェームズ・ホーナーの重厚な音楽も印象的。原作は実話に基づく、ロバート・
ペン・ウォーレン
のピュリッツァー賞受賞作。

 冒頭からジュード・ロウ=ジャックのクローズアップ、ナレーション。主役は知事
ウィリーということになってはいるけれど、これは完全にジャックの物語だった。
ジュード目当てで劇場に足を運んだ身としてはそれでも構わないのだけれど、映画と
してはどうなのだろう? 原作は未読だし、1949年に製作されたという同じ小説の
映画化作品も観ていない。予備知識なしで観たためか、ちょっと余裕がなかったかも
しれない。字幕を読み、ストーリーを追うのに忙しかった。

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 ショーン・ペンは相変わらず巧い。彼は目が独特、何も映していないようで、全て
見通しているような不気味な目をしていると思う。演説シーンのカリスマぶりもさす
が。しかし、理想に燃えていた彼がどうして汚職に手を染めたのか、酒を飲み、手当
たり次第に女に手をつけるようになったのか、その辺りの内面描写がないため、彼が
ただの小悪党に見えてしまう。ケイト・ウィンスレットとマーク・ラファロ兄弟の行動
唐突に見える、彼らは何故あんなにも落ちぶれてしまったのか、兄は何故引きこも
るように暮らしているのかが読めない。演技派を配している割に、ガチンコの演技
合戦が観られず残念。
彼らには役不足の感が否めない。

 対して、知事の側近ジャックの心情は細かく描写される。初恋の人、アン(ケイト・
ウィンスレット)
に対する複雑な思い。真面目で純真、一糸纏わぬアンを前にしても、
「将来を大事にしよう」と言うウブなジャック。その汚れのなさが、逆に相手をどれだけ
傷つけるのかわかっていない。そんな彼が、どうしてウィリーのような「悪い奴」の懐に
いるのか理解に苦しんだ。それも名付け親である恩人、アーウィン判事(アンソニー・
ホプキンス)
を陥れてまで。彼の真面目さ、誠実さが、「雇い主」であるウィリーを裏切
ることを良しとしなかったのか? それともジャックは、ウィリーの中にある「善」を
最後まで信じていたのだろうか。


 並み居るオスカー俳優の中、一際異彩を放っていたのがウィリーの運転手兼用心棒
シュガー・ボーイを演じたジャッキー・アール・ヘイリー
。角砂糖を口に含み、ほと
んど無言ではあるけれど、強烈な負のオーラを放って一番印象に残った。ケイト・ウィン
スレットと共に彼がオスカーにノミネートされた『リトル・チルドレン』超期待!

『オール・ザ・キングスメン』監督・脚本:スティーヴン・ザイリアン
         主演:ショーン・ペン、ジュード・ロウ/2006・USA)

テーマ : 映画感想
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2007-04-15 : 映画 : コメント : 8 : トラックバック : 8
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This is Africa~『ブラッド・ダイヤモンド』

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 1999年、アフリカ・シエラレオネでは、ダイヤの採掘権を巡り内戦が続いていた。
RUF(反政府軍・統一革命戦線)によって息子を奪われたソロモン(ジャイモン・フン
スー)
は、強制労働させられたダイヤ採掘場で、大粒のピンクダイヤを見つける。
ソロモン、アフリカを出たいダイヤ密売人のアーチャー(レオナルド・ディカプリオ)
紛争ダイヤの実態を記事にしたいアメリカ人ジャーナリストのマディ(ジェニファー・
コネリー)
が巡り会い、激化する内戦の中で、家族を探す男とダイヤを探す男の物語
が動き出す。『ラスト・サムライ』エドワード・ズウィック監督による、143分の力作

 長尺は全く気にならなかったのだけれど、酷く疲れた。崩壊する国家体制、理由
もなく撃ち殺される人々、手首を切られ、強制労働させられる大人、拉致され麻薬
を打たれ、少年兵として洗脳されてゆく子どもたち。爆発音、銃撃戦、破壊される
家々。これらはフィクションでなく、事実なのだ。映画館のシートにのほほんと座
っている自分が、申し訳なく情けなく思えてくる。

 中でも、少年兵たちの姿が最も痛ましい。アーチャーは、「ダニー」と呼ぼうとする
マディに「アーチャーと」と言う。何故だ?と思っていると、彼を傭兵に育てた大佐が
アーチャーを「ダニーボーイ」と呼ぶ。アーチャーは、傭兵だった頃の自分を思い出さ
せる「ダニー」という呼び名が居たたまれないのだろう。細く小さな腕に「RUF」と刻
み、銃を掲げて「マザーファッカー!」と叫ぶ少年兵たち。シティ・オブ・ゴッド
リトル・ゼを思い出す。拉致された息子を探すソロモンは、息子はいい子だ、彼が
大人になる頃には、この国は楽園になると言う。神に見放された土地で、希望を託
せるのは子どもたちだけなのに・・。ヴェトナムから帰還したマディの父は、立ち直る
のに20年かかったと言う。彼らは一体、何年かかるのだろう。

20070413090720.jpg

 オスカーにノミネートされたレオと、ジャイモン・フンスーの演技は必見。アフ
リカ英語の訛りを徹底的に習得したと言うレオは、元アイドル俳優などとは今後誰
にも言わせないだろう。自らの血をアフリカの赤い土に染み込ませ、生まれた土地
に還る選択をした彼の、穏やかな表情が素晴らしい。レオとW主演と言っても過言
でないジャイモン・フンスー、愚直なソロモンの、父として家族を取り戻そうとす
る一念に泣けた。二人を助ける有能なジャーナリストを演じたジェニファー・コネ
リーは、シンプルな出で立ちながら知的で、独特の美しさ。まさしく紅一点。アー
チャーとマディが互いに好意を持ちながらも、愛を交わすことなく別れていく演出
にも好感した。

 エンドクレジットのオレンジの文字が、流された血が染み込んでいるというアフ
リカの大地を連想させる。先進国に生まれ、戦争も飢餓も知らず、地球の裏側の悲劇
に思いを馳せることもない日常。映画という「娯楽」に、現実を知らされる皮肉。今も
なお、20万人の少年兵が存在するというアフリカで、悲劇が繰り返されるのは何故
なのか。彼らを搾取しているのは誰なのか。私がすべきこと、できることは何だろ
う?高価な煌くダイヤには縁の無い人生でも、せめて「キンバリー・プロセス」という
言葉だけは、忘れないで生きてゆこう。  

『ブラッド・ダイヤモンド』監督:エドワード・ズウィック
     主演:レオナルド・ディカプリオ、ジャイモン・フンスー、
                  ジェニファー・コネリー
/2006・USA)

テーマ : “ブラッド・ダイヤモンド”
ジャンル : 映画

2007-04-13 : 映画 : コメント : 26 : トラックバック : 15
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家族のかたち~『植物診断室』

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 少子・晩婚化の時代と言われて久しい。星野智幸による中篇『植物診断室』の主人公
水鳥寛樹も、そんな時代の申し子なのかもしれない。
「結婚しない40男」である寛樹は、横浜港を望むタワーマンションに住み、趣味は一人
歩き(散歩、または徘徊)と、ベランダを植物の楽園にした「ジャングリング」。会社
の人間とは適度に付き合うが、ほぼ一匹狼。初老の母親からはさり気なく、そして
時にあからさまに「結婚しない理由」を質されている。そして不思議なことに、彼は子
どもにやたらと好かれるのだった。


 純粋に「自分らしさ」や自己実現を追求し、自分のペースで生きていくことを望むな
らば、他者と共生する=結婚は難しいだろう。ましてや、全く未知の他者である「子ども」
を持つことなど論外かもしれない。たとえ結婚したとしても、子どもを持つことに
懐疑的になるのも当然かもしれない。我々の生きるこの時代とこの社会に、本当に
安心して子どもを託せるのかと問われれば、答えはノーだ。中学の教師である寛樹
の義弟が「こんな環境に置かれる子どもはちょっと悲惨すぎる」と子どもを持つことに
対する不安を語る場面は悲観的なようでいてリアルだと思う。

 大人になったら就職して結婚して、子どもを何人か持つ、というモデルケースの
ような人生を、もう誰も無邪気に信じなくなってしまったのかもしれない。それで
も人は一人では生きていけないし、誰かとどこかで繋がりたいと願うだろう。この
小説が提示する新しい家族のかたちは、今の時代に求められる、ごく自然な人とし
ての生き方なのかもしれない。

 結婚はしてもいいし、しなくてもいいと思う。子どももいてもいいし、いなくて
もいいと思う。ましてや子どもの数を誰かに決められたり、何人いるのが健全だ、
などと発言して欲しくもない。様々な家族のかたち、血の繋がりに縛られない生き
方があってもいいのではないだろうか?


 星野智幸の小説は初めて読んだ。『植物診断室』は芥川賞候補作。共感できる内容、
柔らかくどこか醒めた文体に適度な距離感があって心地よい。
新作は「すばる」5月号
に掲載されている『無間道』。ヤンやラウ(トニーやアンディ)が登場するのだろうか?
しないと思うが読んでみたい。

『植物診断室』星野智幸・著/文藝春秋・2007)

テーマ : 文学・小説
ジャンル : 小説・文学

2007-04-11 : 読書 : コメント : 4 : トラックバック : 1
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過去のない女たち~『かもめ食堂』

 フィンランドといえば一番に思い出すのは何ですか? ムーミン? 白夜? ノキア?
私にとっては「アキ・カウリスマキ」。『かもめ食堂』はカウリスマキの『浮き雲』に似
ている。
それがこの映画を観て一番に思ったことでした。
『浮き雲』は、拙宅のレンタルビデオ店にも置いている大好きな作品です。もう、あの
ガラス張りの食堂の外観といい、ラスト(閑古鳥→満席!)といい、絶対、オマージュ!
なんじゃないかと勝手に思いました。しかも『過去のない男』=マルック・ペルトラまで
出てくるとは・・。セリフの少なさ、ちょっと現実離れしたストーリー。どうしても、カウ
リスマキの映画を思い出さずにいられません。


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 『浮き雲』(1996・フィンランド)

 監督:アキ・カウリスマキ



 フィンランドで一人、「かもめ食堂」と名付けた小さな店を営むサチエ(小林聡美)
「真面目で一生懸命やってれば、きっといいことある」という信念の下、グラスを磨き
続ける彼女と、縁あって店を手伝うことになる二人の日本人女性、ミドリ(片桐はいり)
マサコ(もたいまさこ)。夏のフィンランドの透明な空気と、ゆっくり流れる時間、
過去のない女たちの凛々しい、それでいて「頑張リズム」とは対極にあるような仕事ぶ
りがうれしい、人生賛歌のような作品です。

20070410024450.jpg

 女性たち三人のキャスティングが最高です。このキャスティングが全て、と言って
もいいかもしれない。すっ、と背筋の伸びた「小さい大人」小林聡美さん、いいですね~。
美人では決してないけれど、その生き方が美しい!しがらみとか、嫉妬とか駆け引き
とか執着とか、そんな些事からはとても遠くにいる人。
「明日地球最後の日が来たら、おいしい料理作って、好きな人だけ呼んで、おいしいお酒
でゆっくりごはんが食べたい」
物凄くシンプルに生きている人。彼女の下に集まってくる片桐はいりともたいまさこ、
このおふたりもこれは反則、と言いたいくらい絶妙にはまっています。そんな彼女た
ちの衣装、エプロンやサングラスやバッグがさりげなく、本当に洗練されてオシャレ
なんです。特にマサコさんがフィンランドで買ったブラウス、あれ、着たい!自分に
は似合わないとは思うんだけどね・・・。

「おにぎりは日本のソウルフード」私もほぼ毎日、おにぎりを食べます。東京タワー
オカンとボクと、時々、オトン
(原作)でも、主人公が「オカンのおにぎりが食べたい」
と言う場面が印象的です。サチエにとってはお袋ならぬ「親父の味」だったおにぎり。
マサコさんがおにぎりを頬張るのを、食堂のお客さんたちと一緒に、私も息を止めて
観ていました。そして、口の中には涎が・・。

 食べることは生きること、人間は食べたもので出来ているから、食べ物が一番大事
なのですよね。そしてコーヒーもおにぎりも、自分が作るより誰かが作ってくれた方
がおいしい。よりよく生きるためには、人間は一人でいないほうがいい・・。一人より
ふたり、二人より三人、できれば、かもめ食堂が満席になるくらい。ちょっとシュール
だけど、そんな温かいメッセージを感じた素敵な作品でした。

『かもめ食堂』監督・脚本:荻上直子/
        主演:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ/2005・日本)

テーマ : ★おすすめ映画★
ジャンル : 映画

2007-04-10 : BD/DVD/WOWOW/Streaming : コメント : 26 : トラックバック : 13
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ハッピー・ホリデイ!~『ホリデイ』

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 15歳の時から心に鍵をかけ、泣いたことがないアマンダ(キャメロン・ディアス)。
3年間、思い続けた男に裏切られ、泣きっぱなしのアイリス(ケイト・ウィンスレット)
クリスマス直前に失恋したキャリア・ウーマンふたりが互いに自宅を交換(ホーム・エクス
チェンジ)
し、2週間の休暇を過ごす。ロスとロンドン、地球を半周した場所で彼女
たちに訪れた運命の出逢い。傷ついた心は癒され、本当の自分を取り戻した先に待
っていた笑顔。映画への愛と郷愁に溢れた、心温まる作品

 キャメロン・ディアス&ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット&ジャック・ブラック
という夢のような主演陣、ルーファス・シーウェル、シャニン・ソサモンら豪華な
脇役陣、しかもカメオ出演するスターまでもが凄い面々!ジェームズ・フランコ
で顔を出すとは全く知らなかったので、めちゃくちゃ得した気分♪ これは役者と
その演技を観るだけでも、十分満足できる映画だと思う。135分とやや長尺だけれ
ど、全く退屈もせず、長さも気にならなかった。ロンドンとロスの対照的な風景と、
クリスマスソングを中心とした音楽に酔っていると、あっという間にエンドロール
が上がってくる、という感じ。

 ドアを開けるとそこに、超イケメンが立っていた・・、という展開に「ありえへん!」
と叫ぶよりも、これは「御伽話」なんだと割り切ってジュード・ロウの笑顔にうっとり
していたい。老脚本家の窓辺にさり気なく置かれたオスカー像、キャメロンとケイト
の目尻の皺、お茶目な犬(パグ似)のようなJBの個性的なルック、雪の森に立つ
砂糖菓子のようなコテージ。全てが愛おしい。

 昔からの映画ファンや、映画音楽に詳しい方ならもっともっと楽しめたのではない
だろうか? モリコーネやジョン・ウィリアムズ、ビリー・ワイルダーらへの愛と敬意
が散りばめられ、監督や製作陣がいかに映画に恋しているかが伝わってくる。マイルズ
(JB)の人生を変えたという『ミッション』の音楽、確かに劇場で観た記憶はあるのに
脳内再生して共感できなかった自分が、少しだけ恨めしかった。そして英語に堪能
だったら、アメリカ英語とイギリス英語のアクセントの違いなんかも楽しめたのだ
ろう。字幕では、これはどうしようもない。

 恋愛モード一直線のアマンダ&グラハムのエピソードに比べ、アイリスは老脚本家
との交流がメインで、マイルズとの関係が友達以上に発展して見えないところがちょ
っと苦しかった。そして息遣いも荒く、コトの終わりにベッドに横たわるアマンダ&
グラハム。このシーン、アマンダの白いブラ(!)には興醒め。脱げとは言わないけれ
ど、もう少し上手く撮れないかなぁ、と思ってしまった。キスシーンは素敵なのに、
ここは監督の乙女ゴコロが悪く出てしまったと思う。

 しかし、そんなことは全てどうでもいいと思わせてしまう、ジュード・ロウの素敵さ
よ・・。
スマスマ、観たかった(涙)。

★オマケ:女優のヒトリゴト★
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 「ジュードって素敵だわ~、ジャスティ○より全然大人だし。
  でもホントに3人の子持ちなのよね・・」



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 「ちょっとぉ~、どうして私の相手がジュードじゃないワケ?
  JBに笑わされ過ぎて皺が増えたじゃない!
  まぁいっか、私にはサムがいるんだし♪」



『ホリデイ』監督・製作・脚本:ナンシー・マイヤーズ
       主演:キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、
                ジュード・ロウ、ジャック・ブラック
/2006・USA)
2007-04-07 : 映画 : コメント : 28 : トラックバック : 13
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デイムの恋~『ラヴェンダーの咲く庭で』

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 1930年代のイギリス、コーンウォール地方。海に面した屋敷に、初老の姉妹
ひっそりと暮らしていた。嵐が過ぎ去ったある朝、浜辺に一人の青年が漂着してい
るのを見つけた彼女たちは、青年を自宅で介抱する。青年の名はアンドレア、ポー
ランドからアメリカを目指して乗り込んだ船が難破したという。老姉妹と言葉の
通じない青年との、静かで少し、奇妙な同居生活が始まる・・。

 アンドレア(ダニエル・ブリュール)に恋してしまうアーシュラ(ジュディ・デンチ)
に感情移入してしまい、途中から涙・涙の鑑賞でした。しかし、この御伽話のよう
な恋物語に泣かされるとは・・。私もいよいよ焼きが回ってきたかな(汗)。

 老姉妹、アーシュラとジャネットを演じたジュディ・デンチとマギー・スミス
は、英国が誇る大女優。ともにデイムの称号を持ち、オスカー女優でもある。
イギリスの中産階級、「いいとこのお嬢さん」がそのまま歳を取ったような、純粋で
世間知らずな雰囲気
を見事に醸し出してお二人ともさすが。特にジュディ・デンチ。
アンドレアへのどうしようもない思い、彼の一挙手一投足に注がれる眼差しの、
なんと初々しいことか!戦争で夫(あるいは恋人、婚約者)を奪われた姉、恋をし、
愛を知る機会さえ与えられなかった妹。彼女たちも間違いなく戦争の犠牲者であ
り、「人生は不公平よ」と泣くアーシュラ、そんな妹を抱きしめるしかないジャネッ
トが哀しい。

20070405171440.jpg

 そんなアーシュラにとって、アンドレアは初めての恋の相手だったのかもしれ
ない。彼の髪を拾い、そっとポケットに隠すことくらいしかできない、淡い恋
孫と祖母ほどの年齢差があろうと、彼女はアンドレアを見た瞬間、恋に落ちてし
まったのだ。

 老いと恋情について考えるのと同じくらい、「若さの傲慢さ」についても考えてし
まった。姉妹の近くに滞在する画家・オルガの振る舞いは、アーシュラに感情移
入してしまった自分にはとても無作法で非常識なものに思える。勝手に他人の庭
に入り、庭の花を摘むかのように、姉妹からアンドレアを奪い去ってゆくオルガ。
いつまでも一緒にはいられない、ロンドンに行くことがアンドレアのためになる
とわかってはいても、せめて別れの挨拶くらいしてから去る思いやりが持てなか
ったのか。アンドレアを「囚人」と呼んだオルガには、彼が姉妹、特にアーシュラに
とってどれほど大きな存在か、想像することも出来ないのだろう

 舞台の上で演奏するアンドレアを、自らの眼に、頭に、心の中に刻み込もうと
するかのように見つめるアーシュラ。ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団に
よるものだという美しい音楽、ヴァイオリンの調べが、彼女の人生の哀歓を一層
引き立てる。引き際を心得た彼女たちの、凛とした後姿が美しい

『ラヴェンダーの咲く庭で』監督・脚本:チャールズ・ダンス
 主演:ジュディ・デンチ、マギー・スミス、ダニエル・ブリュール/2004・英)

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

2007-04-05 : BD/DVD/WOWOW/Streaming : コメント : 14 : トラックバック : 6
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過剰な人々~『編集者という病』

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『アクターズ・スタジオ・インタビュー』という番組をご存知だろうか。ジェームズ・
リプトン氏が俳優・監督など著名な映画人をゲストに招き、生い立ちや演技論、
出演作品などについてインタビューする番組だ。表現する人が語ることに興味が
あるので、放送はできるだけチェック、録画してゆっくり観るようにしている。

 登場する映画人たちは皆、魅力的で輝いている。「この仕事に就く気はなかった」な
どと語る人もいるけれど、やはりどこか「過剰」な印象を受ける。物腰は柔らかく、語
る言葉は静かで穏やかでも、誰もがどこかに表現という激情を秘めているのだ。
 見城徹氏の『編集者という病』を読みながら、そんなハリウッドスターたちのことを
考えてしまった。

 幻冬舎社長にしてカリスマ編集者である著者の、仕事と生き様、関わった作家や
ミュージシャンとの交流を語った初めての単行本。ベストセラーを連発し、直木賞
作家を輩出し、出版界の常識を覆し続ける見城徹という人物の人生哲学が読み取れ
る。世界や社会に対する違和感から、表現することによってしか生きられない芸術
家たち。表現すべき衝動を持たない我々「普通の人々」と彼らを繋ぐ触媒で在り続ける
編集者。精神の混沌から作品と言う黄金を紡ぎ出すための「精神のデスマッチ」の数々。
昔大好きだった銀色夏生ユーミンのエピソードが読めたこともうれしい。

 既出や重複内容が多いことが残念。もし「次」があるのなら、見城氏自身の書き下ろ
が読んでみたい。

『編集者という病』見城徹・著/太田出版・2007)

テーマ : 書籍紹介
ジャンル : 本・雑誌

2007-04-04 : 読書 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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阿修羅のごとく~『美しき運命の傷痕』

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 ポーランドの巨匠、故・クシシュトフ・キェシロフスキの遺した三部作『天国』『地獄』
『煉獄』
のうち、『地獄』を映画化した作品。『天国』ヘヴンとして、ドイツの
俊英トム・ティクヴァが映画化している。本作の原題は『L' ENFER』、英題は
『HELL』。いづれも『地獄』というストレートなタイトル。父親(夫)の不在という
心の傷を持つ三姉妹とその母親の生き様と、運命に対峙する姿を描いた佳作。
監督は
旧ユーゴ出身のダニス・タノヴィッチ

 少女が扉を開くと、裸の少年と男が立っている。光と影が万華鏡のように交錯する
タイトルバックに、托卵するカッコウの姿が映し出される。刑務所から出てきた男が、
落とされた雛を巣に戻す。謎めいたオープニング。少女は誰なのか? 男は何処へ向
かうのか。

 主人公である三姉妹は、それぞれに美しく、それぞれに独立した生活を送っている。
夫の浮気を疑い、苦しむ長女ソフィ(エマニュエル・ベアール)。車椅子でしか動けず、
しゃべることもできない老いた母(キャロル・ブーケ)の元に、電車に乗って足繁く通う
次女セリーヌ(カリン・ヴィアール)。友人の父親である大学教授と不倫の関係にある
三女アンヌ(マリー・ジラン)。姉妹の感情のもつれやドロドロではなく、それぞれの
人生がそれぞれに描写されてゆく。

20070402095319.jpg

 何故、母親は動くことも、しゃべることもできないのか。三姉妹は何故、互いに行
き来することなく生きているのか。何故、次女は恋愛もせずひたすら母の元に通い、
孤独に生きているのか。三女は何故、父親ほども歳の離れた家庭のある男性に執着す
るのか。その謎は、次女の元に現れた男性の告白によって明かされることになる。

★以下、内容に触れます★

 長女は母と同じように夫を拒絶し、子どもたちを連れて離婚する。破られた写真が、
そのまま彼女の引き裂かれた心を表しているようで痛々しい。女として愛されない悲
しみ、悔しさが、母親譲りの激情となって長女を駆り立てる。父親の秘密を見てしま
った負い目から愛に臆病になる次女。父親の愛を知らない空洞を埋めるかのように、
不倫に身をやつす三女。三人の女優がそれぞれに魅力的で美しく、業を背負ったもの
の悲哀
を体現していて素晴らしい。親によって傷つけられる子どもたち。血と宿命に
より、それでも親と同じような生き方しかできない女たち。雨に打たれ、自らの肉体
と運命を浄化しようとするかのようなソフィ。愛した男をも父のように喪い、髪を切
るアンヌ。真実を語る男によって、解放されるセリーヌ。三姉妹が初めて集い、母の
元へ向かうクライマックス。

「それでも私は何も後悔していない」母親の言葉に、三姉妹は何を思ったか。私は戦慄し、
この母親に自らの運命と人生を引き受ける強靭さを感じた。果てしない地獄を生き抜
くために、女は強く、決して壊れない。
母親を演じたキャロル・ブーケの、壮絶な凄
みある演技に圧倒される。

 重く苦しい運命が語られるなか、次女に恋する車掌や、彼女と母を優しく見守る施設
の老人(ジャン・ロシュフォール!)がオアシスのように救いになっている。「地獄に仏」、
修羅の道にも一筋の光が見える。

『美しき運命の傷痕』監督・脚色:ダニス・タノヴィッチ
   原案:クシシュトフ・キェシロフスキ/主演:エマニュエル・ベアール、
         カリン・ヴィアール、マリー・ジラン、キャロル・ブーケ

                     2005・仏、伊、ベルギー、日本)

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

2007-04-02 : BD/DVD/WOWOW/Streaming : コメント : 11 : トラックバック : 5
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春休み、日曜日、ファーストデイ、四月馬鹿

今日映画館に行ったら・・

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 映画『300』のパネル。

 Gerryさん、腹筋が凄いことに!

 王の字がお腹にクッキリ。



 春休みど真ん中の日曜日にファーストデイが重なり、劇場はもう「子・子・子・・・」
状態でした。

 そして今日4月1日は、レスリー・チャンの命日でもありました。

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「会いたいと思えば、いつでも、どこでも会える」(『ブエノスアイレス』)

テーマ : 映画関連ネタ
ジャンル : 映画

2007-04-01 : 映画雑談 : コメント : 0 : トラックバック : 1
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Author:真紅
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