別れの季節~さよならシネフェスタ
 大阪に『動物園前シネフェスタ』という映画館があります。

 アジア映画を中心としたラインナップで、韓国映画にはまっていた時期もあり、
近所というわけではないのですが何度か足を運びました。
 JRで行くと、ちょっとデンジェラスな雰囲気もありましたが(お願い、早く信号
変わって~、みたいな)地下鉄も直結しており、交通の便がよかったのです。

 よかった、と過去形で書いたのは、もうこの映画館には行けないからです。
3月31日をもって閉館、そう、今日一日で「サヨナラ」なのです。

 月並みな言い方ですが、とても残念です。いろいろと「大人の事情」あっての閉館
なのだとは思いますが、文化施設が消えてゆくのは何とも言えない寂しさがあります。

 数年前、近鉄劇場が閉鎖したときにも思いました。「ああ、私が大富豪だったら
経営を引き継ぐのに!!」 ・・平民、いや貧民ですから(涙)。

 シネフェスタで鑑賞したいくつかの映画について振り返り、少しだけ、思い出に
浸りたいと思います。

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 『誰も知らない』(2004)

 監督:是枝裕和
 主演:柳楽優弥



「アタシだって幸せになっちゃイケナイの?」子どもたちを置き去りにして、恋に
生きる母親が許せなくて・・・。怒りで頭がどうにかなりそうでした。

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 『親切なクムジャさん』(2005)

 監督:パク・チャヌク
 主演:イ・ヨンエ



 パク・チャヌクによる傑作トリロジー「復讐三部作」最終章。タイプキャストを
嫌ったイ・ヨンエの女優魂。感想はこちら⇒

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 『スキャンダル』(2003)

 監督:イ・ジェヨン
 主演:ペ・ヨンジュン



 ヨン様の映画初主演作。音楽と映像はすごく綺麗な映画だったけれど、私にとって
は何度でも観たいと思うタイプの作品ではありませんでした。

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 『カサノバ』(2005)

 監督:ラッセ・ハルストレム
 主演:ヒース・レジャー



 ヒースがとにかくカッコイイ映画。BBMのイニスとは当然、全くの別人!ヒースの
新作、早く観たいですね。感想はこちら⇒

 サヨナラ上映は盛況だったのでしょうか?シネフェスタのスタッフの皆さん、長い間
本当にありがとうございました。


(今回、思いっ切りローカルネタですみません)
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【2007/03/31 01:07】 | 映画雑談 | トラックバック(3) | コメント(12)
うれしいニュース~『Revolutionary Road』
 最近うれしかった映画関連ニュースといえばコレ。

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 『タイタニック』(1997)
 監督・製作・脚本・編集:
 ジェームズ・キャメロン

 主演:
 レオナルド・ディカプリオ
 ケイト・ウィンスレット



 ご存知、映画史上最高の興行成績を誇り、オスカーを総なめにした『タイタニック』
その主演コンビが再共演!というニュース。

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 アカデミー賞のアフター・パーティにて


 私は『ギルバート・グレイプ』でレオを「発見」し、ほんっとに大・ファンでした。
だから『タイタニック』で世界的に大ブレイクした時は、ちょっと寂しかったなぁぁ。
ケイトは、本当にいい女優さんだと思います。ギリシャ彫刻のような美貌、ダイエット
とは無縁(のように見える)スタイル。演技も素晴らしい!

 ダイエットとは無縁、といえば、時々行く某シネコン、上映前のアニメでケイトの
『タイタニック』における皮下脂肪ネタギャグが流れるんです。私はそこでいつも声
を上げて笑ってしまうのですが、ご存知の方いらっしゃるかな?

 しかも監督はケイトのパートナーである、ジャーヘッドの監督サム・メンデス

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 夫唱婦随(婦唱夫随?)


 レオもケイトも若手演技派から着実に成長し、今やオスカー候補の常連となった感
がありますね。共演作のタイトルは『Revolutionary Road』
どんな作品になるか、今から楽しみです。

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【2007/03/28 20:16】 | 映画雑談 | トラックバック(0) | コメント(1)
春なのに・・・~溜め息またひとつ
Zodiac-Jake2.jpg


 『Zodiac』6月16日(土)公開!


 桜も咲き始め、あと数日で4月という今日この頃ですが、皆さまお元気ですか?
年度末ということでお忙しい方、最後の春休みを過ごされている方、住み慣れた
土地を離れる方・・。春ですね。

 春だと言うのに、我が家にやってきたのは招かれざる客、その名も
インフルエンザ!!

 あの~、先月Bさんがお越しになったばかりなのですが・・。今回はAさんが
いらっしゃいました(泣)。
 毎年予防接種をし、来訪はお断りしているはず、なのですが・・。溜め息。

 皆さまも気をつけて下さいませ~。。

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【2007/03/27 22:48】 | 徒然 | トラックバック(0) | コメント(4)
爆笑!~日→英→日翻訳で意味判らない恋愛を語るバトン
 皆さま、こんにちは。春ですね~、またまた姫のお楽しみ袋チュチュ姫さま
よりバトンをいただきました!姫、ご指名ありがとうございます。
さて、本日のバトンは・・。

【日→英→日翻訳で意味判らない恋愛を語るバトン】
http://honyaku.yahoo.co.jp/transtext翻訳機能を使ったバトンです

例)「私はバトンの回答をするのが大好きです。」

 →「I love that I do an answer of a baton.」
 →「私は、私が棒の答えをすることを好きです。」

 これ、やってる本人は爆笑なんですが、読む方は微妙?かもしれません(汗)
よろしければ読んでやって下さいませ。ではでは、早速スタート!


1:最初は、簡単に自己紹介してください。(まず、簡単に自己紹介をしてくだ
  さい。)


【原文】
 こんにちは、真紅と申します。毎度ブログで好き勝手なことを書いております。
 読んで下さる方、コメント、TBを下さる方、いつもありがとうございます!

【変換文】
 私は、よろしくが深紅であるとそれに話します。私は、毎回、ブログで利己的な
 ものを書きます。1、コメント、TB読書、常にありがとう、を与える人!

【感想】
 真紅って変換すると深紅になるのですね~。確かに利己的かもしれません(汗)

2:突然大好きな人を教えてください。(いきなりですが、好きな人を教えて下さい。)

【原文】
 姫のご指名、ジェイクでいってみたいと思います。ジェイク・ジレンホールくん
 です。

【変換文】
 私は、指名(王女のジェイク)において言おうとしたいです。それは、ジェイク
 ジレンホールです。

【感想】
 王女のジェイクじゃなくて、真紅のジェイクですから!!

Jake01.jpg

 呼んだ?


3:最高は人のどこにありますか?(その人のどこが一番好きですか?)

【原文】
 いろいろあるのですが・・。育ちと頭の良さそうなところかな? インタビューに
 おけるユーモアのある受け答え、あとかわいいところ、弟キャラなところ(年下の
 男性が好みというわけではないのですが)。ダークヘア、ブルーアイも好き。

【変換文】
 それが、いろいろな方向にあります、しかし。それは、育ちと頭がよく見える場所
 ですか? もしもはかわいいです、ころです、それはインタビュー(痕跡)のユー
 モラスな答えです;弟カーラなところ(しかし、より若い男性は、選択を言いません)。
 また、私は黒い髪(青い目)が好きです。

【感想】
 弟カーラって、何ですか?

4:あなたは、人とつきあいたいですか?(その人と付き合いたいと思いますか?)

【原文】
 う~ん、正直、英語がペラペラだったら付き合いたいです!アカデミー賞授賞式に
 連れて行ってもらいます。レッドカーペット、やっぱりお着物かしら?

【変換文】
 うならば - ん、正直、イギリス人はやせています、私は一緒に行きたいです!
 私は、あなたにアカデミー賞授賞式にそれをさせます。結局、赤じゅうたんは着物
 ですか?

【感想】
 イギリス人ってやせているのか・・。初耳やわ。

5:人は突然あなたの部屋にそれを送って、私が「今日からここに住んでいます。」と
  いいました。どのように、あなたはそれを持ちますか?
  (その人が突然あなたの部屋にやってきて、「今日からここに住む。」と言いました。
  あなたはどうする?)


【原文】
 もちろん、大歓迎ですよ!京都とか奈良とか、いろいろ観光に連れていってあげるわ♪
 飽きるまでいていいよ~。ジェイクって結構料理上手そうだし、板場(?)は任せた!

【変換文】
 もちろん、それは元気な歓迎です!私は京都または奈良またはいろいろな
 sightseeing♪に疲れているようになるまで、Thereがそれであると思います、
 そして、そこで、それであってください、そして、それはそうです...
 ジェイクは、料理が全く得意なようです、そして、それはcook
 (です?私がはに残した)!

【感想】
 疲れるまで連れ回しませんって!そして、そこで、それするわけ? そうそう・・。

6:大好きな人は、どうか、よいようである人に、この棒を渡します。
(このバトンを、好きな人がいそうな人に回してください。)

【原文】
 映画『300』大ヒット記念、Gerryさんでお願いします、悠雅さま
 『007/カジノロワイヤル』DVD予約記念、ダニボンでお願いします、武田さま

【変換文】 
 私が大物に作る映画「300」悠雅は、それを打って、記念して、ゲリーとを求めます!
 タケダ、「007/カジノ王族」DVD予約は誰です記念の、そして、わずかボンで尋ねます!

【感想】
 悠雅さま、ゲリーと求めて下さい!
 武田さま、わずかボンって・・、しかもお二人とも呼び捨て、ずびばぜん(苦)
 どうかお暇だったらやってみて下さいませ。お忙しいようでしたらスルー!して
 下さいませ~。

----> コピペ用 <----------------------------
【日→英→日翻訳で意味判らない恋愛を語るバトン】
http://honyaku.yahoo.co.jp/transtextの翻訳機能を使ったバトンです

1:最初は、簡単に自己紹介してください。(まず、簡単に自己紹介をしてくだ
  さい。)

【原文】【変換文】【感想】

2:突然大好きな人を教えてください。(いきなりですが、好きな人を教えて下さい。)

【原文】【変換文】【感想】

3:最高は人のどこにありますか?(その人のどこが一番好きですか?)

【原文】【変換文】【感想】

4:あなたは、人とつきあいたいですか?(その人と付き合いたいと思いますか?)

【原文】【変換文】【感想】

5:人は突然あなたの部屋にそれを送って、私が「今日からここに住んでいます。」と
  いいました。どのように、あなたはそれを持ちますか?
  (その人が突然あなたの部屋にやってきて、「今日からここに住む。」と言いました。
  あなたはどうする?)

【原文】【変換文】【感想】

6:大好きな人は、どうか、よいようである人に、この棒を渡します。
(このバトンを、好きな人がいそうな人に回してください。)

【原文】【変換文】【感想】

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【2007/03/26 15:30】 | バトン箱 | トラックバック(2) | コメント(14)
うたかたの日々~『夢を与える』
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「いつも一人の女の子のことを書こうと思っている。いつも。たった一人の。一人
ぼっちの。一人の女の子の落ちかたというものを」
(岡崎京子)

『蹴りたい背中』芥川賞を受賞した著者の、三年半ぶりの受賞第一作。チャイルド
モデルから国民的少女タレントとなった主人公・夕子。芸能界を駆け抜けた彼女の、
激動の18年間を綴った300頁の力作

 実は私は『蹴りたい背中』よりも『蛇にピアス』(金原ひとみ・著)のほうが好きだっ
たので、過剰な期待はせずに本書を手に取った。しかし、最初のページからすぐに
引き込まれ、最後まで概ね面白く読んだ。著者はとても力強い、説得力のある文体
を獲得したと思う。

 一人の女の子が一見華々しい芸能界に生き、孤独感にさいなまれながらやがて
落ちてゆく、というプロットは岡崎京子氏の『ヘルター・スケルター』を思い出させ
る。冒頭の文は『ヘルター・スケルター』の帯に書かれた言葉。まだ20代前半の
綿矢氏はこの漫画を読んで触発され『夢を与える』を著したのでは・・などと、つい
邪推してしまう。

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 『ヘルター・スケルター』

 /岡崎京子・著
 /祥伝社・2003



 両親の不仲、兄弟のいない寂しさ、孤独感。主人公と同じように10代から芸能界
に生き、若くして結婚、離婚を経験した宇多田ヒカルの心情ともダブる。彼女はシ
ンガーとしてまだまだ絶好調だけれど、内に秘めた孤独は愛した人さえも拒絶して
いるかのようで痛々しい。主人公が所属した芸能プロダクション社長が言うように、
ただの「よくあること」なのかもしれないけれど。
 
 同じく10代半ばで文学賞を受賞し、作家デビューした綿矢氏が、同じような孤独
を抱えているのかどうかはわからない。彼女の今後の作品にその答えがあるのかも
しれない。けれど、どうか人生のダークサイドばかり見つめないで欲しい。次回作
も必ず読みます


『夢を与える』綿矢りさ・著/河出書房新社・2007)

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【2007/03/23 19:44】 | 読書 | トラックバック(0) | コメント(2)
あるいは裏切りという名の記憶~『ゆれる』
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 東京でカメラマンとして成功し、「自分にしかできない仕事をして、いろんな人に
会って、金稼いで」;「素晴らしい人生」を送ると、田舎で家業のガソリンスタンドを
継ぎ、「仕事は単調で、女にはモテない、家に帰れば炊事洗濯親父の講釈、おまけに人
殺しちまった」;「つまらん人生」を送る。田舎の渓谷に架る吊橋から転落した二人の
幼馴染。事故なのか、事件なのか? 逮捕された兄、兄を助けようとする弟。裁判の
過程で記憶はゆらぎ、騙し、裏切り、大切なものを奪い去ってゆく。あぶり出される
人間の本性、兄弟の確執が緊張感溢れるタッチで描かれる心理劇。主演は弟・猛に
オダギリジョー、兄・稔に香川照之。2006年、各方面大絶賛も納得の一作。

 映画はキャスティング次第、とどこかの映画監督が言っていたけれど、この映画の
成功はオダギリジョーと香川照之という二人の、優れた俳優の演技に負うところが大
きい気がした。この二人の真っ向、ガチンコ勝負!には痺れた。特に香川照之。本当
に巧い、稀有なる役者さんだなぁとつくづく思う。微妙な表情の変化、情けない仕草、
背中の演技、ひとつひとつが余りにも巧妙で、嫌味ギリギリのところでリアリティを
保っている
。彼が自らを「つまらん人生」だと自嘲する場面から、一気に物語にのめり込
んでしまった。オダジョーもまさしくハマり役。自由奔放に生きる、身勝手で自己中
な弟がそこに生きている。

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 兄弟のいる人なら誰もが感じているだろう、嫉妬や軋轢や遠慮や共感。それらのひ
とつひとつを丁寧に見せながら、観るものの心の襞に忍び込んでくるような映画だと
思う。私は姉も妹もいるから両方の立場になり得るけれど、どちらかと言えば弟の方
に自己投影して観たかもしれない。弟の方がよりわかり易くキャラクター造形されて
いたように思う。

 そう、この兄・稔は一見いい人そうで何を考えているのかわからない、かなり鬱屈
した、複雑なキャラクター
だ。長男だから、兄ちゃんだから、お母さんが死んだから・・。
そうやって誰に言われたわけでもないのに自分を自分で縛って、無意識のうちに抑圧
されて、いい人の仮面を被っている。いや、彼は本当に「いい人」なのかもしれない、誰
だって心の深層は様々な感情で混濁しているものだから。クライマックス、証言台に
立つ弟を見つめる彼の微妙な表情、諦めたような、笑っているような、見下したよう
な・・。この表情の意図するところは何だったんだろう?

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 そしてこの映画は法廷劇でもある。しかし残念なことにこの法廷場面にリアリティ
がない!検察官がいきなりキム兄(木村祐一)で、かなり引いてしまった・・。裁判の
作劇中、検事や兄弟の伯父でもある弁護士(蟹江敬三)の陳述が、ドラマがかってい
て全く嘘臭いのだ。裁判長(田口トモロヲ)も然り。主演二人の迫真の演技で緊迫感
が最後まで持続する中、この裁判場面だけはいただけなかった。

 家族の中で「家」を誰が守っていくか。それは土地と血縁がある限り代々続いていく
課題で、田舎ならば一層重くのしかかる難題だろう。兄弟の父(伊武雅刀)と伯父の間に
も、残ったもの、出ていったものの確執があり、家族だから許せることは家族だから
許せないことでもある。「あの伯父さん、昔からダメなんだよね」伯父と同じく家を捨て、
出て行った弟。家族だから、許さなければならないこと、なのかもしれない。そして
兄は自ら「許せないけれど許さなければならない」存在になろうとする。
 
 記憶が思い出に変わるとき、そこには無意識の脚色が加わる。記憶は嘘をつく。記憶
はゆらぐ。記憶は不確かだ。
しかしそのやっかいな記憶というものに救われることだ
ってある。「兄ちゃん、うちに帰ろうよ、兄ちゃん!」弟の叫びは、兄に向かって確かに
届いたと信じたい。たとえ彼がバスに乗ったとしても。

『ゆれる』監督・脚本:西川美和/主演:オダギリジョー、香川照之/2006・日本)

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【2007/03/22 09:07】 | DVD/WOWOW | トラックバック(17) | コメント(28)
魂の双子~『ヘヴン』
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 *内容に触れています*


 イタリア、トリノの街。ビルに爆弾を仕掛け、尋問されるイギリス人の女。彼女を
見つめ、彼女の言葉を通訳する男。殺人犯と憲兵として出逢ったふたりが、運命に導
かれ「ヘヴン」へと飛び立ってゆく様を、スペースカムによる雄大で美しい映像と、静謐
な音楽
で綴った佳作。ポーランドの巨匠、クシシュトフ・キェシロフスキの遺稿をドイツの
俊英トム・ティクヴァが監督、シドニー・ポラック、アンソニー・ミンゲラ、ハーヴェイ・
ワインスタイン
らが製作総指揮を務めている。嵌りました。素晴らしい作品です。
理屈じゃない。

 まず言及すべきはやはり、ケイト・ブランシェット。主人公のひとり、フィリッパ
を演じた彼女が入魂の演技を見せてくれる。尋問室で真実を知らされ、愕然とするま
での微妙な表情の変化。瞳に宿る復讐への執念、冷たい狂気。頭を丸めた後の穏やか
な微笑。透明感と凄みが混ざり合ったような美しさ。間違いなく、彼女が現代最高の
女優の一人
であることを、十二分に感じさせてくれる。

 フィリッパと出逢い、予め定められていた運命に身をゆだねようとする男、フィリ
ッポ
を演じたジョヴァンニ・リビシ。彼もケイトに負けず劣らず、この美しく悲しい
物語の主役を熱演している。父の跡を継ぎ、世の中に出たばかりの初々しい青年。愛
ばかりか、恋さえも知らないような、まだあどけなさを残した表情。フィリッパに出
逢い、彼女と運命を共にしようとする彼の静かな眼差しには、深い愛情と揺るぎない
決意
がみなぎっている。

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 灰色の尋問室から、光溢れるトスカーナの大地へ。トンネルを抜けた後、画面いっ
ぱいに広がる風景が素晴らしい。頭を丸め、白いシャツに黒いパンツというシンプル
な、最小限の出で立ちをした二人は、まるで双子のように見える。父の元へ電話をか
けたフィリッポに駆け寄り、抱きつくフィリッパの姿に涙が止まらない。彼らが出逢
ったこと、惹かれあったことは偶然ではない。彼らは互いに魂の半身だったから、二人
でひとつ、彼らの間に愛と呼ばれるものは予め存在していたのだ。それまでに起こっ
た数々の悲劇も、彼らをそこへ導くための必然だとさえ思えてくる。

 ナレーションも説明もなく、極力削ぎ落とされたセリフ。僅かな表情と仕草で、主
人公たちの心のありようを表現する演出も見事。美しいピアノの旋律、何曲かは監督
であるトム・ティクヴァ自身が作曲し、演奏してる音楽も、この静寂が支配する物語
をより一層、印象深いものにさせることに成功している。

「なぜ最も大事な瞬間に、人間は無力なのだろう」愛情深いフィリッポの父のセリフ、
長い間のあと、"Si,"と一言で自らの決意を表現するフィリッパ。夕暮れ時、大きな
木の下で結ばれる二人は、魂の居場所を見つけたかのように荘厳だ。

 ラストシーン、空高く吸い込まれるようにヘリが消えてゆく。逃避行の終わり、彼
らなりの贖罪を、どこまでも青い空が包み込む。これが感動でなくて、何なのだ。

『ヘヴン』監督:トム・ティクヴァ/脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ
      主演:ケイト・ブランシェット、ジョヴァンニ・リビシ
                     2002・独、仏、伊、米、英)

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【2007/03/21 00:03】 | DVD/WOWOW | トラックバック(7) | コメント(15)
取り返しのつかないこと~『16歳の合衆国』
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 ある日突然、恋人の弟を殺した16歳の少年、リーランド。逮捕され、矯正施設へ
収容された彼は、作家を志す教師パールと出会う。聡明で、一見純真なリーランド
に興味を持ったパールは、自作のネタに利用しようとリーランドに近付く。少年の
家族、被害者の家族、彼らを取り巻く状況、崩壊してゆく人間関係をアンサンブル
形式で描いた、静かな問題作。主演はライアン・ゴズリング

 監督・脚本のマシュー・ライアン・ホーグは、実際に矯正施設で殺人を犯した少年
たちと接した経験があり、彼の実体験に基づいた映画なのだという。アメリカだけ
でなく日本でも頻発している少年による凶悪犯罪、その理由について考察しようと
した、議論を呼ぶ作品だと思う。

 ライアン・ゴズリング主演、というだけで興味を持って観始めたが、キャストが
豪華なことに驚いた。リーランドの恋人ベッキーにジェナ・マローン、リーランド
の両親はケヴィン・スペイシーレナ・オリン。矯正施設の教師はドン・チードル
その他マイケル・ペーニャ、ミシェル・ウィリアムズ、ケリー・ワシントン、そし
『ツイン・ピークス』が懐かしいシェリリン・フェン!脚本に惚れ込んだというケヴィ
ン・スペイシーは、製作にも名を連ねている。

「なぜ、人を殺してはいけないのか?」という問いが、様々なメディアに躍った時期が
あった。私はそういう問いかけ自体に「ふざけるな!」と言いたい古いタイプの人間な
ので、当然、この作品の主人公リーランドのしたことに共感も同情もできない。彼
があまりにもセンシティヴで、悲観的過ぎるのはどうしてだろう?それを彼の育っ
た家庭環境や「親のせい」にはしたくないと思う。「どうやって『怪物』を育てたんだ?」
リーランドの親に投げつけられるこの言葉が悲しい。確かに、作家である彼の父親
は、子育てを放棄していただろう。しかし、母親一人で子どもを育てている家庭な
どいくらでもある。経済的にも恵まれていたリーランドは、ありふれた、少しだけ「変わ
った家庭」に育ったに過ぎないと思う。

 しかし、この作品はそうした「問題のある」少年たちを告発し、結末で描かれたよう
断罪することが主題ではないだろう。実は私は、リーランドは犯人ではなく、ラ
ストに真犯人が明かされるのでは・・とずっと思いながら観ていた。パールも感じた
ように、彼をわかりたいと思い、彼を救いたいと思った。誰もが犯した罪は償わね
ばならない、しかしその罪はただの過ち=ミステイクではなく、取り返しのつかな
い間違いなのだと理解
させなければ、どんな贖罪も意味が無い。死だけは、どうあ
がいても取り返しがつかないのだから。

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 Ryan Gosling


 赤いパーカーが印象的なリーランドを演じたライアン・ゴズリング。彼は「ネクスト・
ショーン・ペン」
などと呼ばれ、第79回アカデミー賞では主演男優賞にノミネート
された、ハリウッド期待の若手演技派。1980年生まれ、私の中ではジェイクと同い
年のライバル
、という位置付けである(笑)。神経質そうな瞬き、何を見ているのかわ
からないうつろな眼差し、眉間に刻まれた深い皺。『ハーフ・ネルソン』を観るのがま
すます楽しみになった。

『16歳の合衆国』監督・脚本:マシュー・ライアン・ホーグ/
       主演:ライアン・ゴズリング、ドン・チードル/2002・USA)

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

【2007/03/20 05:59】 | DVD/WOWOW | トラックバック(4) | コメント(10)
うちの子に限って~『緋色の迷宮』
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「誰にでも偏見はあるけれど、僕の偏見を一つだけ言わせていただくなら、トマス・
H・クックを知らない人は小説ファンではない。
トマス・H・クックを読まずして
現代小説を語ることはできない」
これは朝日新聞に掲載された、池上冬樹氏による『緋色の迷宮』書評の冒頭である。
ブログを始めてから読書量は激減、これはいかんと思っていた矢先、こんな風に
書かれたら読まないわけにはいかないではないか!・・と思いつつ早数ヶ月がたっ
てしまった(汗)。

 小さな町で小さな写真店を経営しているエリック・ムーアは、美しい短期大学
講師の妻と、15歳の一人息子キースとの3人で、何の不足もなく穏やかに暮らし
ていた。そんなある日、8歳の少女エイミーが失踪し、彼女のベビーシッターであ
るキースに嫌疑がかけられる。犯人は息子なのか?自分の兄も事件と関わっている
のではないか・・。疑惑が過去の忌まわしい記憶を想起し、事実と妄想との間で苦
しむエリック。彼が父として、夫として、弟として、そして彼自身もまた息子とし
て、自分を作った家族と自分が作った家族との関係を見つめなおし、向き合ってゆ
く過程が、苦く、哀切なストーリーで語られてゆく。久しぶりに、読み始めたら止
められない、読み終るのがもったいない!気分にしてくれた本だった。

 この小説は、ジャンルとしてはミステリーやサスペンスとして括られるが、あく
までも人間の持つ業や内面の葛藤を描く、優れたドラマである。主人公とその家族
が巻き込まれるのは特異な事件のようでいて、一方ではごくありふれた、個人的な
煩悶でもある。そこにはいくつかの過ぎ去った死と、これから訪れるであろう死が
ある。一人の人間が命を落とすことを死と呼ぶならば、家族の崩壊もまた、一つの
と言えるかも知れない。家族を持たない人間はいない。ならば家族の誰か-息子、
娘、父、母、夫、妻-が事件の被害者、被疑者になる可能性を持たない人間もまた
いないのだ。そういう意味で、この小説は万人に死と対峙すること、死への覚悟を
促す力を湛えていると言えるだろう。
  
 愛しているけれど好きではない。家族においては、厳しいけれどそれもまた真実
かもしれない。自分は親として、真剣に子と向き合っているか?妻として、夫とし
て、パートナーと人生に向き合う覚悟はあるか。絶望に打ちひしがれたとき、奈落
の底から救ってくれるのは本当に、家族なのか?人間は誰しも弱く、不安な生き物
だ。その人間が寄り添い集まって作る家族、そこには何よりも深く、強い絆が必要
だ。互いに信じあうこと、たったそれだけの脆い結びつきで家族がかろうじて成り
立っていることに改めて気付かされ、読後は愕然とするしかない。しかしそれでも、
家族と生きてゆきたいと思わせてくれる小説でもある。

 冒頭に挙げた池上氏の書評はこの言葉で締められる。「クックを読め!」御意!

★おまけ:恒例勝手にキャスティング★

 エリック・ムーア:レイフ・ファインズ
 メレディス   :アネット・ベニング
 キース     :ポール・ダノ『リトルミス』の引きこもり兄ちゃん)
 ウォーレン   :フィリップ・シーモア・ホフマン
 エイミー    :エル・ファニング

『緋色の迷宮』トマス・H・クック著/村松潔・訳/文春文庫・2006
 RED LEAVES by Thomas H.Cook/2005・USA)

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

【2007/03/18 01:15】 | 読書 | トラックバック(0) | コメント(6)
映画好き必読!~『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』
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 映画は絶対「字幕派」で、吹替えのTV放映はめったに観ません、というアナタ。面白
い本が出ましたよ~。映画字幕製作の内幕や苦労話、言葉のプロから見た気になる
日本語についてユーモアたっぷり、縦横無尽に叫び倒した、現役字幕翻訳者による
痛快な一冊。これは一気読み確実。映画好きな皆さん、是非手に取ってみて下さい!

 映画字幕翻訳家といえば、露出の多さでは戸田奈津子さん、韓国映画では根本理恵
さんが代表格ですが、意外とたくさんいらっしゃるようで「映画翻訳家協会」なるものも
あるそうです。また、英語以外の言語の字幕翻訳はほとんどの場合「重訳」なんだそうで
す、知ってました?! 外国映画を観ていると、「字幕担当:」というテロップが必ず出
ますよね。英語以外の言語で製作された映画でも、担当がよく名前を見かける方だっ
たりして「この人は、一体何ヶ国語に精通しているんだ?!」と驚愕していたのですが、
英語からの重訳なのですね、なるほど。

 字幕に頼っているくせに、字幕に文句をつけることも多々ある「うるさい観客」である
私ですが、やはり一番腹が立つのが映画の解釈を誘導するような「意訳」です。字幕翻訳
は厳しい字数制限があるため、ほとんど「翻訳でなくて要約」であることは重々承知して
いるつもりですが、映画における一番重要と思える場面、もっとも繊細であるべきセ
リフを「彼はこう言いたいんですよ」と押し付けられるのはご免です何度か書いている
ことですが、そういう点でやはり一番印象深いのがブロークバック・マウンテン
スト、イニスのセリフ
です。

 あの字幕を観て「???」と思った方も多いのではないでしょうか。字幕を担当された
方は、BBMへの熱い思いをパンフレットで語っておられるだけに、「なぜ?」という思い
も大きかったのです。しかし、これも本書を読んで納得。「字幕操作」が配給会社主導で、
宣伝方針にのっとって行われるらしいのです。万人にわかりやすく、なるべく感動で
きる、「泣ける」字幕になるように。時には字幕翻訳者の承諾も得ず、勝手に改悪される
こともあるのだとか。テロップで名前が出される翻訳担当者はたまったもんじゃない
ですよね・・、こういう本を書きたくなる気持ちもわかります。

 そしてこの本の偉い(?)ところは、そうした流れは日本語力の低下・変質から来てい
ると喝破しているところです。メールやブログで一見「書くこと」がブームのようで、
のところコミュニケーション能力は低下
している、字幕もそうした世間の「幼稚化」
迎合しているのだ、と嘆いているのです。

 近頃やたらと目に付く「~させていただく」という謙り過ぎる言い回しについてなど、
自らを振り返って反省させられる部分も多くありました。映画を観て、登場人物の心情
や微妙な表情を読み取れる、深い思考のできる大人にならねば、と思うのでした。
あとは英語の聴き取り能力があれば・・。DVDに必ず英語字幕をつけてくれたら、勉強
になるんだけどなぁ。。

『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』太田直子・著/光文社新書・2007)

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【2007/03/17 00:15】 | 読書 | トラックバック(0) | コメント(4)
独裁者の孤独~『ラストキング・オブ・スコットランド』
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 1970年代、アフリカ中部ウガンダ独裁者として恐怖政治を敷いた実在の大統領、
イディ・アミン。彼の側近であったスコットランド人医師ニコラス・ギャリガン
視点から、悪名高い大統領の真の姿が描かれる、実話に基づくフィクション
アミン大統領を演じたフォレスト・ウィテカーは、アカデミー賞はじめ、2006年度
各映画賞の主演男優賞を総なめにした。確かに、物凄い存在感。圧倒されました。

 大学を卒業したばかりの青年医師ニコラス(ジェームズ・マカヴォイ)は、冒険心と
野心から故郷を後にする。スコットランドの灰色の空から、オレンジ色のアフリカ
の大地へ。新大統領アミンの登場に沸き立つウガンダで、村の医師として働き始め
るニコラス。偶然の出会いから、アミンの主治医となった彼はアミンや家族の信頼
を得、大統領付アドバイザーとして主治医以上の権限を与えられる。知らず知らず
のうちに政権の中枢に近づき過ぎた彼に、特権と背中合わせの危機が迫っていた・・。

 大衆の心を捉える芝居がかった演説、人懐こい笑顔、包容力溢れる大きな身体。
大統領としてのアミンは一見魅力的で、カリスマ性のある人物だ。しかし反体制派
から命を狙われたことをきっかけに精神のバランスを崩して疑心暗鬼となり、残虐
粛清の深みにはまっていく様を、フォレスト・ウィテカーが演じ切る。小心者で
無邪気な反面、激情と狂気を併せ持つ、単純なようで複雑な人物
を、瞬時に切り替
わる表情と声音で表現する。ただの「物真似」に終らない、映画の中に生きる「アミン像」
を見事に創り出している。

 そして本作の真の主人公であるニコラスを演じたジェームズ・マカヴォイも素晴
らしかったと思う。若さゆえの好奇心から、父親に敷かれたレールを拒否して異国
へ向かった青年が、結局は大統領の庇護という父親的なものに絡め取られる。同僚
医師の妻サラとの危うい関係、大統領の第三夫人ケイと一線を越えてしまう彼の振
る舞いからは「若気の至り」としか言いようの無い愚かさ、浅はかさを感じてどうしよ
うもない。ジェームズ・マカヴォイはこの映画が初見だったが、ニコラスの感じた
高揚感や恐怖や虚しさを美しく碧い瞳で表現し、迫真の演技。彼と関係し、非業の
死を遂げたアミンの妻、ケイを演じたケリー・ワシントンも悲しいまでに美しい。

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 近年、アフリカを舞台にした映画が数多く製作・公開されている。ナイロビの蜂
『ホテル・ルワンダ』、未見だが『ダーウィンの悪夢』、そして来月公開されるレオナルド
・ディカプリオ
主演『ブラッド・ダイアモンド』、そして本作。大企業の不正や虐殺、
飢饉、ダイヤ密輸、独裁者の暴挙など、先進国にはないアフリカの諸問題が先進国
の手によって映画化され、世界に発信される
。この状況は映画のラスト、命の危険
を冒してまでニコラスを助けた医師の言葉とダブる。「生き残って、ウガンダの真実
を世界に知らせてくれ。君の言うことは皆信じる、君が白人だから

 映画の最後に「アミンは在任中、30万人以上を虐殺した」とテロップが出る。しかし
彼の蛮行は終盤、一気に映像化されるが、映画全体の流れの中ではさほど強調され
ていない。むしろ一人の独裁者の孤独と、彼の暴走を止められなかった周囲の愚か
さ、虚しさが苦く後味として残る作品だった。

『ラストキング・オブ・スコットランド』監督:ケヴィン・マクドナルド
  主演:フォレスト・ウィテカー、ジェームズ・マカヴォイ/2006・UK)

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【2007/03/16 04:56】 | 映画 | トラックバック(13) | コメント(14)
ホップ、ステップ、ラン!~『ラン・ローラ・ラン』
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パフューム/ある人殺しの物語の感想で「赤毛のローラ」に言及している方が多かっ
たので、トム・ティクヴァ監督のこの作品を観てみることにした。タイトルは何度も
耳にして知っていたし、公開当時かなり話題にもなっていたと思う。主人公がひたす
ら走る、走る、走る、という映画といえばSABU監督『弾丸ランナー』(1996・日本)なんか
が思い浮かぶけれど、本作のヒロイン、ローラ(フランカ・ポテンテ)の走りっぷりはまぁ、
凄い!の一言。どんなに走っても顔色ひとつ変えず、腕の振りも逞しく、Dr.マーチン
のエア・クッションソールでベルリンの街を駆け抜ける。疾走感溢れる快作です。

 恋人マニ(モーリッツ・ブライブトロイ)からの突然の電話。「ボスの金を失くした。
12時までに10万マルク作らないと、俺は終わりだ」「何とかするわ、待ってて」12時
まであと20分
走り出すローラ、挿入されるアニメーション、軽快な音楽にこちらの
膝も揺れる。し、しかし、映画が始まって30分、ローラがなんと○○でしまう!のだ。
「え~、これって夢オチ?」と思ったのも束の間、物語はリセットボタンを押したかの
如く、20分前に戻る。そしてまたローラが、走る、走る・・。

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 斬新なタイトルバック、ローラの赤い髪、コマ落としのような映像、いきなりTV
画面から聴こえてくる日本語。90分足らずという尺にピッタリはまるスピーディな
展開
。ローラは走るだけでなく、絶叫とともに超音波(?)でグラスや時計を破壊し
オスカル@ブリキの太鼓か!)ルーレットを操り、瀕死の病人を蘇生させる!なんと
まぁ猟奇的なプリンセスなのだ。しかも彼女を駆り立てているのは「愛する人を救いた
い」
ただそれだけ。ただ愛という名のもとにのみ、走る、走る、走る!ローラを演
じるフランカ・ポテンテが、力強く、逞しく、物語をグイグイ引っ張ってゆく。

 才能溢れる俊英トム・ティクヴァは、本作でも監督・脚本・音楽を担当している。
20分×3のわかりやすい構成、降りてくるエンドロール、なんて潔い映画なんだ・・
という思いでいっぱいになる。これは面白い!天晴れです、何度でも観たい!

『ラン・ローラ・ラン』監督・脚本・音楽:トム・ティクヴァ
   主演:フランカ・ポテンテ、モーリッツ・ブライブトロイ/1998・独)

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【2007/03/14 09:45】 | DVD/WOWOW | トラックバック(6) | コメント(6)
祝・凱旋上映~『フラガール』
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 日本アカデミー賞、キネマ旬報日本映画ベストワンはじめ、数々の映画賞に輝い
『フラガール』。今週末にはDVDリリースとなるけれど、凱旋上映に行ってきた。
封切りの時から、これはDVDで観たら絶対「映画館で観ればよかった」と後悔する
『ウォーターボーイズ』タイプの映画だと思っていたから。
同じ思いの方が多いようで、劇場は大盛況。一律1,000円という価格設定も功を奏
してか、客席は8割方埋まっていた。新作よりも入りが良いのでは?と思うほどだ。

 物語の舞台は福島県の炭鉱町。昭和40年、エネルギー革命は例外なく日本の炭鉱
にも影を落とし、炭鉱で働く人々はリストラや閉山を恐れる日々。そんな町を再生
・活性化させるために、「常盤ハワイアンセンター」の建設が計画される。センターの
目玉としてフラダンサーが募集され、高校生の紀美子(蒼井優)は親友の早苗(徳永えり)
に誘われ、ダンスチームの一員となる。
 元SKDのダンサーで、東京から都落ちしてきたダンス教師平山まどか(松雪泰子)と、
ダンサーを目指すド素人の炭鉱娘たち。この水と油のように相容れない両者が、フラ
ダンス
という共通語を得、ハワイアンセンター柿落とし公演で遂に一つになるまでを
感動的に描いた「フラガールズ」たちの物語だ。
(そう、この題名単数形なのが不思議なのですが・・。語感の印象からかな?)

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 役者が皆いい。彼らの操る見事な方言は「訛ってて全然わからない」ほど。皆、ごく
自然にセリフを自分のものにしている。まずはなんと言っても蒼井優。この映画は
彼女の成長物語でもあり、ラストのダンスシーンに説得力がなければ感動もカタル
シスもあったものではないが、十分その重責を全うしていると思う。母親譲りの強情
っぱり、「おれの人生おれのもんだ!」と叫ぶ場面は遠い空の向こうにのホーマー
を思い出す。その母親、富司純子も、夫亡き後、女手ひとつで一家を背負う母親を
ほとんどノーメイクで熱演。食卓で炭鉱への熱い思いをぶつ場面は、彼女が一家の
父親でもある
ことを表している。レッスン室に出向いた母に、娘が無言のまま踊る
場面はセリフなしで両者が対峙し、蒼井優のダンス、富司純子の演技ともに圧巻
子の夢を反対する父、見守るやさしい母、という構図がこの映画では成り立ってい
ない。けれどその中間の役割を果たすのが、豊川悦司演じる兄、洋二朗。「妹を
よろしく頼みます」

 
 そして、主演でありながら蒼井優に見せ場をさらわれた感のある松雪泰子、彼女
も素晴らしかったと思う。助演に圧倒的見せ場があり、評価されたところはジェニ
ファー・ハドソンとビヨンセの関係
ドリームガールズとダブる。彼女が踊る
「見せ場」はたった一度しかない、しかし少女たちを指導するその手の美しさ、理不尽
な暴力への体当たりの怒り、ラストの涙・・。私からも言いたい。「いい女になったなぁ」

 早苗と紀美子の別れのシーンは『北の国から』の蛍だし、駅のホームで手話のシーンは
『ブラス!』ダニー・ボーイを思い出す。この確信犯的なベタさ、ハンカチを手放させ
ない演出、鼻につくと言う意見もあるかもしれない、しかし私にはとても心地よいス
トーリー展開だった。登場シーンだけで笑いを取ったしずちゃんも、ちゃんと映画の
中に収まっている。

 ジェイク・シマブクロの奏でる音楽も耳にやさしく響く。古今東西、炭鉱モノに名作
は数あれど
、この映画も十分、その一つに加えるべき出来映えだと思う。

『フラガール』監督・脚本:李相日/主演:松雪泰子、蒼井優/2006・日本)

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【2007/03/13 16:57】 | 映画 | トラックバック(7) | コメント(15)
バトン二連発!~七色七曜ムービーバトン
 公開が待たれるジェイク主演作『Zodiac』、全米BoxOffice初登場2位!
上々ですね。。日本では「初夏公開」ということです、楽しみ~♪

 さて、敬愛する「大和のケイト・ブランシェット」こと悠雅的生活悠雅さま
よりご指名をいただきました。悠雅さま、いつもお世話になり、ありがとうござ
います。今回のバトンは「七色七曜ムービーバトン」。
そのルールとは。。。

1、虹の七色 
  にちなんだ映画をあげてください。
  題名にその色が用いられていればいいですが、
  「あの映画のあの場面のあの色が忘れられない」でもOKです。

2、七曜・・・すなわち、
  日曜日~土曜日にちなんだ映画をあげてください。


 というもの!「うわぁ~、難しそう」と思った瞬間にはもう考え始めているという
いつもの映画好きの性ですわ。というわけでバトン二連発、真紅的七色七曜
ムービーバトン、
早速スタート!
------------------------------------
【赤】パニック・フライト
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 これ原題は『RED EYE』なんですね。
 
 目的地に翌朝到着する深夜便のことです。


【橙】エターナル・サンシャイン
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 ケイト・ウィンスレット演じるクレメンタイン
 の髪の色
。「タンジェリン」です。


【黄】リトル・ミス・サンシャイン
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 幸せの黄色いオンボロミニバス。


【緑】ブロークバック・マウンテン
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 が印象的な映画は数多くありますが、
 こちらを。


【青】グラン・ブルー
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 Go and see my Love!


【藍】藍色夏恋
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 これは未見なのですが。台湾の映画です。


【紫】カラーパープル
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 ウーピー・ゴールドバーグの映画デビュー作。


【日】エニイ・ギブン・サンデー
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 ジェイミー・フォックスも出てますよ。


【月】MONDAY
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 堤さんの酔っ払いダンスが最高なんですから!


【火】ユナイテッド93
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 2001年9月11日、火曜日の朝でした。


【水】ビッグ・ウェンズデー
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 この映画にもベトナム戦争の影が・・。


【木】7月4日に生まれて
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 主人公ロンは1946年7月4日、木曜日の生まれ。

 ロンを演じたトム・クルーズは1962年7月3日
 火曜日生まれです。


【金】13日の金曜日
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 続編の数では他の追随を許さない、ご存知
 古典的ホラー。ジェイソン、怖い!


【土】欲望の翼
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 ご存知、レスリー・チャンにしか言えない名セリフ。

 「1960年4月16日、3時前の1分間、君は俺といた。
  この1分間を忘れない」

 1960年4月16日、土曜日です。


 以上、難しいと思いましたが、案外楽しかったです♪
皆さんも是非挑戦してみて下さいね~。ではでは!

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【2007/03/11 23:23】 | バトン箱 | トラックバック(3) | コメント(18)
あなたなら何をかける?~調味料バトン
 気付いたら三月も半ばです。もうすぐ春ですねぇ。。
 昨日、交差点で信号待ちの「おすもうさん」を見かけました。街中や電車の中で
おすもうさんを見かけると「ああ、春だなぁ~」と思いますわ。今日から春場所で
すね~。
 最近真面目な記事ばっかりなので、気分転換にバトン、やってみたいと思います。
龍眼日記sabunoriさまよりいただいてまいりました「調味料バトン」
何をかけて食べますか?に答えていきます。sabunoriさま、ねいほ~う♪
いつもありがとうございます!香港、楽しんでこられたことと思います。
それでは真紅的調味料バトン、早速スタート!
---------------------------------------
・目玉焼き
 胡椒とお醤油。半熟でお願いします!

・納豆
 パックについているタレとマスタード、すりゴマ、青ねぎ。たまに青のり。
 100回以上、混ぜる、混ぜる・・。

・カレーライス
 何もかけません。福神漬を添えます。

・冷奴
 生姜のすり下ろしと、青ねぎたっぷりと、旭ポンズ。

・ピザ
 タバスコ少々。

・ナポリタン
 粉チーズ。真紅のナポリタンに粉チーズ降り積む・・くらいかけます。
 と言うか、ナポリタンって最近食べてないな~。。

・生キャベツ
 何もかけません。

・トマト
 何もかけない。

・カキフライ
 レモン汁かな?

・メンチカツ
 何もかけないか、ケチャップ+ウスターソース。

・コロッケ
 同上。

・天ぷら
 塩か、天つゆ。でも「天ぷら名人」実家の母の揚げたての天ぷらは何もかけない!

・とんかつ
 これはとんかつソース!

・サラダ
 サラダにもよるけど、ノンオイルごま、とか。
 (以前、ドレッシングくらい作ろうと決意?しましたが結局市販ものを使用してます)

・ご飯(おかずが無いとき)
 三島のゆかりと、のりで巻いて食べます。

・周囲に意外と驚かれる好きな組み合わせは?
 自分が驚かれた記憶はないのですが、姪が目玉焼きにマヨネーズをかけて
 いて驚きました。マヨラー!

・それが一般的だと分かっているのに苦手な組み合わせは?
 お好み焼きにマヨネーズ。胃にもたれるので苦手です。

・バトンを回したい5名は誰ですか?
 どうぞご自由にお持ち帰り下さ~い♪

 私、あんまり「かけない人」かもしれません・・。ははは。

---> コピペ用 <------------------------
・目玉焼き
・納豆
・カレーライス
・冷奴
・ピザ
・ナポリタン
・生キャベツ
・トマト
・カキフライ
・メンチカツ
・コロッケ
・天ぷら
・とんかつ
・サラダ
・ご飯(おかずが無いとき)
・周囲に意外と驚かれる好きな組み合わせは?
・それが一般的だと分かっているのに苦手な組み合わせは?
・バトンを回したい5名は誰ですか?

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【2007/03/11 16:29】 | バトン箱 | トラックバック(1) | コメント(4)
ギドク流ファンタジー~『うつせみ』
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 何度か書いていることだが、数年前『八月のクリスマス』を観たのをきっかけに、二年
ほど韓国映画ばかり観た時期があった。ホ・ジノ、パク・チャヌク、イ・チャンドン
ら、力量ある監督の作品に魅了され、すっかりはまってしまった。中でも最も気にな
る存在だったのが韓国映画界の鬼才、キム・ギドク。映画の専門教育は受けず、いわ
ゆるエリートコースではない一風変わった経歴の持ち主である彼が、2004年度ヴェ
ネチア国際映画祭
において監督賞を受賞した『うつせみ』。やっと、やっと観た。これ
は・・、傑作です。

 多作であるキム・ギドクの作品は半分ほどしか観ていないが、随分丸くなったな、
という印象。「血」「痛み」の描写が、それこそ目を背けたくなるほど強烈だった初期
の作品から、暴力や怒りの描写が随分和らいでいる。原題は『空き家』、英題は『3-IRON』
(ゴルフの3番アイアンのこと)、邦題が『うつせみ』邦題が一番いい。

 留守宅に忍び込み、一宿一飯の恩義とばかりに洗濯・修繕をしてはまた次の留守宅
を探す、不思議な青年。ある日、いつものように留守だと思い込み侵入した邸宅には、
夫の暴力に傷ついた人妻ソナがいた・・。青年とソナ、ふたりの愛のかたちを、あっと
驚く結末に導くギドク流のファンタジー、と言っていいかもしれない。

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 とにかく、この不思議な青年(ジェヒ、イ・ビョンホン似)が、映画の最初から最後
まで一言も言葉を発しない『悪い男』のように、最後の最後にキメてくれるのかと思
いきや、全く一言もなく、その眼と表情だけで演技している。彼に救われる人妻ソナ
(イ・スンヨン、稲森いずみ似)
もほとんどしゃべらない。セリフはたった3つ。それ
だけにこの3つのセリフが物凄く印象的だ。饒舌なソナの夫や、留守宅の持ち主たちは
家族やパートナーでありながら、一方的で不確かな、見せかけの絆でしか結ばれてい
ないように描かれている。しかし言葉のない青年とソナの間には、本物の愛と信頼が
ある。それこそ『絶対の愛』があるように思えてくる。

 ソナは貧しさからヌードモデルとなり、裕福な夫に半ば買われる様に結婚したのだ
ろう。夫に虐げられ、固い表情だった彼女が、青年が殴られた後コンビニでカップラ
ーメンを自ら買い、初めて笑顔になるシーンは印象的だ。慰撫される側が慰撫する側
になれた奇妙な歓びが見て取れる。孤独死した老人を弔う二人。彼らのしていること
は社会常識からしたら褒められたことではないかもしれない、けれど人間として当た
り前の行為だ。それでも社会はふたりを許さない。究極的に青年がソナを愛するため
に選んだ道は、自らの存在を「消す」ことだった。

 どこからが夢で、どこからが現実か、誰にもわからない-。このいかようにも取れ
るラストは、観るものに委ねられていると取ることもできるだろう。青年はソナの作
り出した幻影なのか、彼は本当に「消えた」のか。

 とにかく独創的で魅力的なキム・ギドクの世界。目の付けどころに唸される。過激
な描写もなく、マイルドな仕上がりなので「初ギドク」にもいいかもしれない。観逃がす
のはもったいない、素晴らしい作品である。 

★余談・『うつせみ』と『パフューム』★

 先日パフュームを観てギドクの世界を感じた、と書いた。本作の青年には体臭はな
いのか?と思ってしまった。『パフューム』で、匂いを嗅ぐグルヌイユに赤毛の少女が気
付かないところ、この映画と似ている。
 誰にも気付かれない故に愛を求めたグルヌイユと、愛ゆえに自らの存在を消した青年。
どちらも不思議な余韻が残る。

『うつせみ』監督・脚本・製作:キム・ギドク/主演:イ・スンヨン、ジェヒ
  /2004・韓国)

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【2007/03/10 05:18】 | DVD/WOWOW | トラックバック(7) | コメント(14)
究極の香りを求めて~『パフューム/ある人殺しの物語』
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「香りを捉えたい!」18世紀、悪臭漂うパリで生まれ落ちたジャン=バティスト・
グルヌイユ
は、どんな匂いも嗅ぎ分ける嗅覚の持ち主。その類稀なる才能により、
香水商バルディーニに弟子入りし香水作りを学んだグルヌイユは、更なる技術を
求めて南部の町グラースへと旅立つ。彼が求め、作り出した運命の香りが人々に
もたらしたものとは?ドイツで大ベストセラーとなったパトリック・ジュースキント
の小説を映像化した衝撃の話題作『マリー・アントワネットと同時代の物語でも
ある。観てきました。

 孤独寡黙本能的な欲求に突き動かされ、常軌を逸した行動に走る主人公グル
ヌイユ。何だかキム・ギドク映画の世界と似たものを感じてしまった。ギドクの
映画がそうであるように、この映画をとても受け入れ難いと感じる人は少なからず
いると思う。冒頭、悪臭にまみれたパリの魚市場、吐き気を催すほどリアルな映像。
滑稽さと紙一重なグルヌイユの立ち振る舞い、猟奇的なストーリー、衝撃的なラス
ト。
私はと言うと、ギリギリのところで踏み止まり、147分の長尺を全く感じるこ
となくこの映画を堪能できたと思う。

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 グルヌイユの行動はモラルに反する犯罪行為だけれど、感覚的に彼を拒否する気に
はなれなかった。彼が終生求めていたのはであり、自分自身に決定的に欠けていた
匂いそのものだ。この映画は自身の存在証明を求め続け、得られなかった男の悲劇
ドラマであると思う。映画初主演であるベン・ウィショーは、野生的かつ不気味な存在
でグルヌイユの悲哀を体現している。彼を支えるのが前半、パリのパートでは香水
商バルディーニを演じたダスティン・ホフマン、後半のグラースのパートでは裕福な
商人リシを演じたアラン・リックマン。このベテラン俳優二人はさすがの存在感、特
にアラン・リックマンの渋い声には痺れた。ヒロイン、ローラを演じたレイチェル・
ハード=ウッド
ももちろん、グルヌイユが究極の香りとして求めたことに説得力十分
な美しさだ。

 トム・ティクヴァ監督の作品(『ラン・ローラ・ラン』『ヘヴン』)は未見ゆえ、比較し
て何か言うことはできないけれど、彼が脚本を書き、音楽も担当していることだけで
もその才能は大変なものだと思う。話題のラストについては、思いっきりネタバレを
書いてくれた雑誌を読んでしまっていたので、なんだか普通に観てしまった。ただ、
あの状況を映像化するのは並大抵の仕事でないことはわかる。

 愛し合う人々を見ながら、パリの街で出会った果物売りの赤毛の少女を思い出すグ
ルヌイユ。彼が予め「愛」を知っていたなら、起こりえなかった悲劇だと思うとやるせな
い。社会の底辺で愛を知らず、自分の鼻が感じ取る香りだけを頼りに生きた彼。生ま
れた街で、生まれた場所に還った彼の魂は、香水の最後の一滴となって消え去る。

 裸体の数のわりに官能はさほど感じなかった。ドイツ映画であり、フランスが舞台
でありながら登場人物たちが英語をしゃべるのも、この映画から受けた不思議な感覚
のひとつ。キワモノ一歩手前ながら、「匂い」を映像化するという試みには間違いなく
成功している大作
。映画館で観たい映画です。

★追記:トム・ティクヴァ監督作品を観ました

 『ラン・ローラ・ラン』感想はコチラ⇒
 『ヘヴン』(超オススメ!)感想はコチラ⇒

『パフューム/ある人殺しの物語』監督・脚本・音楽:トム・ティクヴァ
  主演:ベン・ウィショー、ダスティン・ホフマン、アラン・リックマン、
             レイチェル・ハード=ウッド
/2006・独、仏、西)

テーマ:パフューム - ジャンル:映画

【2007/03/08 16:54】 | 映画 | トラックバック(17) | コメント(26)
夢現の迷宮~『ステイ』
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 精神科医のサム(ユアン・マクレガー)は、同僚医師からヘンリー(ライアン・ゴズ
リング)
という青年の診療を引き継ぐ。美術専攻の学生であるヘンリーは未来を予知
し、21歳の誕生日を迎える3日後に自殺すると予告。サムの元患者であり、恋人で
ある美術教師のライラ(ナオミ・ワッツ)は、自らも自殺未遂経験者であることから、
ヘンリーに興味を抱く。サムの日常は、ヘンリーを救おうと奔走するうちに少しず
つ歪み、狂い始める・・。
『チョコレート』『ネバーランド』マーク・フォースター監督が、『25時』の脚本家
デヴィッド・ベニオフと組んだ、NYを舞台とするスリラー。

 マーク・フォースター監督、またまた違った作風の凄い映画を観せてくれた。怖が
りゆえ、スリラー、ホラー、サスペンス全て苦手な私は物凄く怖かったけれど、しっ
かり2回も観てしまった。『ドニー・ダーコ』を観た後のような感覚が残る。これは絶対、
一度観ただけでは消化不良なのでは?

 ジャンプカットを多様した謎めいた映像、鏡、迷路のような窓枠、壁、螺旋階段。
視覚効果を考え尽くした、物凄く凝ったプロダクション・デザイン。これだけでも観
る価値は大いにアリ、と思わせる。ニューヨーカーを演じるユアン・マクレガー、ナ
オミ・ワッツ、ライアン・ゴズリングの豪華な主演陣が、全て非アメリカンというの
も面白い。ライアン・ゴズリングは特に美形でもカッコイイわけでもないが、何故か
気になる俳優さん。ナオミ・ワッツは観るたびに「来世はブロンドがいい」と思わせてく
れる、美しい!

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 ヘンリーの悲しげな瞳、サイコパスな言動、その彼を必死に助けようとするサム。
これはきっと、ヘンリーはサムの別人格なんじゃないか、精神科医であるサム自身が
多重人格者なのでは?と思い始めたとき、ライラがサムを「ヘンリー」と呼ぶ。ここで私
は自分のサム=ヘンリー説に確信を持ったのだけれど、それはラストであっさりと裏
切られる。


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 初見から、サムのズボンの裾が短いのが気になって仕方なかった。2度観てもわか
らず、公式サイトに行ってみたら「恵比寿ガーデンシネマ限定」って・・。何ソレ?
一体何のために限定するの?他の劇場やDVDで観る人はどうでもいいのか!と思わず
激怒してしまった。わからなかった私が悪いのか?でもわからないものは検証したい
ではないか。幸い心ある方のおかげで「キーワード」を入力することはできた。しかし、
ズボンの裾が短いのは大した理由ではなかった・・。ああ、無駄なエネルギーを使っ
てしまった。
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 ラストで全ての謎が解き明かされるわけだけれど、ライラと初対面のはずであるサム
が、彼女との未来がフラッシュバック(フラッシュフォワード?)するところには唸った。
ヘンリーの意識(思念)が、サムの心理にも影響を与えたのだろうか?

 好きか嫌いか、面白いと感じるか下らないと感じるかは観る人それぞれだけれど、
私は好きだし、面白いと感じた。魂の見る情景や夢を映像化しようとした製作陣、そ
のセンスには拍手を送りたいと思う。NYという街に詳しい方なら、もっと楽しめたの
ではないだろうか。オチがわかってしまうと初見のドキドキ感、謎解きの面白さはな
くなってしまうけれど、2度目以降はそこに切なさが加味される。何度でも鑑賞に耐
えうる作品だと思う。

『ステイ』監督:マーク・フォースター/脚本:デヴィッド・ベニオフ/
 主演:ユアン・マクレガー、ナオミ・ワッツ、ライアン・ゴズリング/2005・USA)

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【2007/03/07 08:58】 | DVD/WOWOW | トラックバック(8) | コメント(12)
男でも女でも~『君さえいれば/金枝玉葉』
20070305230347.jpg

 私は香港映画フリークとは言えない人間ですが、それでも2003年のエイプリル
フールには物凄いショックを受けました。香港映画におけるラブコメディの傑作と
言われるこの映画を今、やっと観ることができましたが、観終わってからもしばら
く涙が止まりませんでした。この映画のレスリーがすごく素敵で、やさしく穏やか
な表情をしていたから。
今まで観たどの作品よりも、ナチュラルな彼本来の魅力を
放つレスリーがいたような気がします。彼の新作は、当たり前ですがもう、観るこ
とはできないのですね・・。悲しいです。ご冥福をお祈りします。

 人気歌手ローズ(カリーナ・ラウ)の大ファンであるウィン(アニタ・ユン)は、ローズ
に会いたい一心から男装してオーディションに臨み、合格してしまう。ローズの恋人
であり、プロデューサーでもあるサム(レスリー・チャン)と同居を始めたウィンと、
ローズ、サムの間に起こるねじれた三角関係を、コミカルに描いたラブコメディです。

 同性愛的な要素がたくさん出てくる映画です。ローズの大ファンであるウィンの
気持ちは女性から女性への恋心のように見えるし、男装したウィンに惹かれるサム
も、「自分はゲイなのか」と悩みます。極めつけはあの曾志偉エリック・ツァンがサム
の同僚で相談相手でもあるゲイ男性を演じていること!エリック・ツァンは本作の
製作も兼ねています。

 レスリーの歌(うっとり)や、かわいいアニタ・ユンの魅力ももちろん見所ですが、
カリーナ・ラウが貫禄のはまり役です。気位の高い大スター、愛する男に素直にな
れず、気を惹くためにわざと我がままに振舞ってみる。彼なしには生きていけない
と言いながら、去ってゆく男に追いすがることなく、「ずっと愛している」という言葉
を残して身を引くのです。カッコイイ、美しい!しかしこの映画10年以上前のもの
なのに、カリーナ・ラウは変わりませんね。最近では『インファナルアフェアⅡ/無間
序曲』
くらいしか観ていませんが、骨細でしなやかな肢体、白くてすべすべの肌、
蓮っ葉な感じでタバコをくゆらす仕草も変わらない。大好きな女優さんです。

★以下、ラストに触れます★

 ラスト近く、ウィンが白いドレス姿でサムの元に走ります。「走れ」と促したウィン
幼馴染の彼が無茶苦茶いいキャラなんですけどそれは置いておいて、ウィンはサム
に「私、女なの」って告白するんですね。この展開には、なんだかすごくひっかかりを
感じました。「男だったらダメなわけ?」と思ってしまったんですよ。でも、その思い
はサムの最後のセリフで吹っ飛んでしまいました。「男でも女でも、君を愛している」

 ピーター・チャン監督の映画は、音楽が印象的に使われることが多いと思うので
すが、本作でもレスリーがピアノの弾き語りで唄う歌は名曲です。ウィンがサムへ 
の恋心を自覚する重要な場面でもありました。監督の温かく、やさしい視点の作風
は大好きですが、ウィンター・ソングはちょっとシビアになっていましたね。

 性差を越えて愛は確かに存在するということ、自分に素直に生きよう!というメ
ッセージもこもった、素敵な作品でした。

『君さえいれば/金枝玉葉』監督:陳可辛ピーター・チャン/1994・香港/
  主演:張國榮レスリー・チャン、袁詠儀アニタ・ユン、劉嘉玲カリーナ・ラウ)

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【2007/03/05 23:14】 | DVD/WOWOW | トラックバック(1) | コメント(10)
想像すること、信じること~『ネバーランド』
20070304214632.jpg

 名作童話『ピーターパン』の誕生にまつわる物語を、実話に基づいて映画化した
作品。著者である劇作家ジェームズ・バリジョニー・デップが演じている。
20世紀初頭のロンドンを舞台に、未亡人シルヴィア(ケイト・ウィンスレット)
その4人の子どもたちとの交流の中で、子どもの心を持った劇作家が後世に残る
傑作を生み出すまでが感動的に描かれる。

 監督があの重々しくシリアスな『チョコレート』マーク・フォースターだと知
って驚いた。作風が全く違う・・。本作はファンタジックな描写が多く、観ている
間ずっと、ティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』を思い出していた。20世紀
初頭のロンドン、上流階級の暮らしぶりや衣装、公園の緑がまぶしく美しい。
この辺りはモーリスに描かれていた情景。

 ズラリ並んだキャストも皆素晴らしい。すっかりメインストリームな俳優とな
った感のあるジョニデは、余裕の演技。童心を忘れず、子どもたちと戯れる彼は
やさしさに溢れている。パイレーツ・オブ・カリビアンのセルフ・パロディのよ
うな場面には笑ったが。

20070304214704.jpg

 お前の名前はウィル・
 ターナーでどうだ?



 海賊つながり(?)でマッケンジー・クルックが出てくるのも見逃せない。いつ
片目が落ちるかと気が気でない(笑)。

20070304214842.jpg

 一度観たら忘れられない
 この個性的なルック!



 若き未亡人を演じるケイト・ウィンスレット。この女優さんはやはり、こうい
「上流婦人」的役柄がピッタリ。意外な役どころだったエターナル・サンシャイン
も熱演だったけれど、やはりハマリ役とまでは言えなかったというのが正直なと
ころ。お嬢さんだった『いつか晴れた日に』『タイタニック』から随分大人に
なって、母性に悲しみを滲ませる演技が秀逸だ。

 しかし、ジョニデにしろケイトにしろ、実生活でもいい父親であり、母親なの
だと思うと感慨無量。若い頃から見守ってますから(笑)。

 本作の演技によって『チャーリーとチョコレート工場』に大抜擢されたピーター役
フレディ・ハイモア。父の死によって心に傷を受け、冷めた瞳の少年を痛々し
くも好演している。信じれば必ず叶う、バリの言葉に母を見つける彼の眼差し、
悲しみを静かに受け止めるバリ。

20070304215059.jpg

 祖母役のジュリー・クリスティも、美しく気高い上流婦人がドンピシャはまっ
ている。一見悪役だけれど、娘を思う余りに孫たちを厳しく律しようとする姿に
は共感できる。「信じる人は拍手を!」の声に誰よりも強く手を叩く彼女もまた、
よりも強い母性
を持っているのだ。

 美しい映像に、熟練の役者が堅実に仕事をした、手堅くまとまった秀作。マーク
・フォースターの作品、既にDVD化されている『ステイ』や、これから公開される
『主人公は僕だった』など、観るのがとても楽しみになった。

『ネバーランド』監督:マーク・フォースター/主演:ジョニー・デップ、
      ケイト・ウィンスレット、フレディ・ハイモア
/2004・英、米)

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【2007/03/04 22:01】 | DVD/WOWOW | トラックバック(7) | コメント(6)
惨劇の追憶~『ボビー』
20070302191531.jpg

 1968年6月5日、アメリカ大統領予備選挙の最中、ロバート・フランシス・
ケネディ(RFK)上院議員
が暗殺された。カリフォルニア州の民主党予備選に勝利
した直後、遊説先のアンバサダーホテルで彼=ボビーが凶弾に倒れるまでの16時間、
ホテルに居合わせた様々な人種・階層の人々の人間模様を描いた群像劇。監督・
脚本はエミリオ・エステヴェス。製作総指揮も務めたアンソニー・ホプキンスはじ
め、ハリウッドのビッグ・ネームが多数出演している。

 同じく暗殺された、ボビーの兄である第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディ
については子どものころ伝記を読んだこともあるし、「ダラスの熱い日」の映像も何度
も見たことがある。しかし、ロバート・F・ケネディについては暗殺されたという
ことを知っていたくらいで、知識も関心もなかった。しかしこれほど若く、見映え
もよく、多くの人々に愛された人物だったとは・・。彼の死の僅か2ヶ月前、公民権
運動の指導者だったキング牧師を失ったアメリカは、最後の希望の星ともいえる
人物をまたしても凶弾により失ったのだ。

 映画は様々な階層の人物を配することで、人種問題や後に泥沼化するベトナム
戦争
について巧みに登場人物に語らせる。選挙権のない移民たち、ベトナムの戦火
を逃れるための偽装結婚。そして彼らにとって、いかにボビーが希望の星であった
かをあぶり出してゆく。

 ボビーの映像は約40年前のニュース映像が使用され、スピーチも彼の演説その
まま
を流している。暴力の連鎖の阻止、地球環境破壊への危機意識など、来年の
大統領選で全く同じスピーチをしても通じるのではないか
と思うほど、その内容
は現代とリンクしている。彼に先見性があったのか、アメリカの政治に進歩がな
いのか?いや、リンクしているからこそ、この映画が今この時期に作られた意味
があるのだろう。そして少なくとも彼が大統領になっていれば、ベトナム戦争が
あれほどアメリカという国を傷つけることはなかったのではないかと思わせるの
だ。

 もちろん、監督・脚本のエミリオ・エステヴェスはハリウッドリベラル派の代表
である俳優マーティン・シーンの息子であり、彼がボビーに対して崇拝に近い畏敬
の念
を抱いてこの映画を撮ったことは差し引いて観るべきかもしれない。しかし
それでも、S&Gの「サウンド・オブ・サイレンス」が大音量で流れ出す頃には、私も
すっかりボビーの選挙ボランティアの気分になってしまっていた。

 元々群像劇は好きだけれど、懐かしい顔(クリスチャン・スレイター、デミ・ムーア)、
新しい顔(ニック・キャノン、リンジー・ローハン)、おなじみの顔(ヘレン・ハント、
イライジャ・ウッド、ウィリアム・H・メイシーら)
が多数観られ、大満足の一本。
あまりに政治的過ぎるせいかアカデミー協会には無視されていたが、ゴールデン
グローブでは作品賞にノミネートされていた。

20070302191619.jpg

『ボビー』監督・脚本:エミリオ・エステヴェス/2006・USA
  出演:ハリー・ベラフォンテ、ニック・キャノン、エミリオ・エステヴェス、
     ローレンス・フィッシュバーン、ヘザー・グラハム、ヘレン・ハント、
     アンソニー・ホプキンス、ジョシュア・ジャクソン、デミ・ムーア、
     アシュトン・カッチャー、リンジー・ローハン、イライジャ・ウッド、
     マーティン・シーン、クリスチャン・スレイター、シャロン・ストーン、
     ブライアン・ジェラーティ、ウィリアム・H・メイシー

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【2007/03/02 19:30】 | 映画 | トラックバック(8) | コメント(20)
共鳴する魂~『善き人のためのソナタ』
20070301163548.jpg

 1984年、ベルリンの壁崩壊5年前の東ドイツ。強固な一党独裁政治の元、人々は
言論・表現の自由を制限され、逆らうものは「反体制派」として投獄されていた。その
社会体制を支えていたのが国家保安省(シュタージ)の監視システム。劇作家ドライマン
(セバスチャン・コッホ)
とその恋人である女優クリスタ(マルティナ・ゲデック)
監視を命じられた優秀なシュタージ局員ヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)
心の変遷を、抑制されたタッチで緻密に描いた秀作。2006年度アカデミー賞外国
語映画賞
はじめ、多数の映画賞を受賞している。

 1989年のベルリンの壁崩壊はリアルタイムで知っているし、冷戦時代も冷戦の
終結も見てきた。しかし、世界が東と西に分かれていた頃の東側について、自分は
ほとんど何も知らないということを、この映画を観てつくづく思い知った。本作が
長編デビュー作であり、脚本も手がけているフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナー
スマルク監督
は、かの名作『グッバイ、レーニン!』の軽妙さへの反発が、この作品を
撮るきっかけだったと語っている。

 生真面目で優秀なシュタージ局員ヴィースラーは、ただただ純粋に、共産主義の
理想
を信じていたのだろう。残酷で非情に「反体制分子」を尋問する彼からは、人間性
のカケラも感じられない。しかし監視ターゲットであるドライマンとクリスタの間
にある愛と芸術に触れ、彼の内面に少しずつ変化が現れる。

20070301163640.jpg

 ヴィースラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエが素晴らしい。感情的なセリフ
はほとんど無く、その微妙な表情、皺の一本、まばたきのひとつひとつでヴィース
ラーの内面の変化を表現してゆく。全身から立ち上る孤独感、後姿の寂寥感は国家
体制と思想に全身全霊を捧げた男の悲哀を体現していて見事と言うほかない。そん
な彼の心を変えた劇作家ドライマンを演じたセバスチャン・コッホ。ドイツ人らし
からぬ、アントニオ・バンデラス似のラテン系ルックを持つ彼もまた、寒色系の色
彩で統一された映像の中に違った風を吹かせる。

 身近な人々、同僚であろうと友人であろうと、たとえ配偶者でも密告すること、
されることが当たり前になった社会と、権力者の横暴。それは固く愛し合った恋人
たちにも微妙な、しかしくっきりとしたを落とし始める。苛烈な拷問に耐え、信念
を貫き通せる強い人間ばかりではない。「私は弱い女なの、犯した罪を償えないわ」
女優としての自分、愛するものの伴侶としての自分に自信が持てず薬に手を出し、
情報提供者となるクリスタ。「どうして僕は監視されなかった?」自由を得ても一人、
生き延びたことの自責の念からか書くことができないドライマン。映画は人間の、
どうしようもない弱さや、複雑で残酷な運命をもリアルに描き切る。ただの「人間賛歌」
に終っていないところが、この映画に感動だけではない何かを与えている。

 人はなぜ芸術を生み出し、文学や音楽を求めるのか。この作品にはその答えがあ
る。『善き人のためのソナタ』を耳にしたとき、ヴィースラーが流した一筋の涙。
美しい旋律に彼の魂が共鳴し、固い心の殻を溶かし出したのがあの涙だったのだ。
HGW XX/7。記号としてしか生きられなかった彼が、人間として生きる意味と誇り
を手にするラストに、心が震えた。

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 こういう素晴らしい映画がミニシアターの単館上映であり、公開予定のない地域
もあるということが残念でならない。オスカー効果でロングラン・拡大上映の可能性
も無きにしも非ず、是非ご覧になって下さい。

『善き人のためのソナタ』/2006・独
 監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
 主演:ウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック、セバスチャン・コッホ

テーマ:★おすすめ映画★ - ジャンル:映画

【2007/03/01 16:50】 | 映画 | トラックバック(23) | コメント(30)
真紅のthinkingdays


いつまでも青臭い映画好きでいたい。愛おしい映画と、忘れがたき本たち。ときどきカフェとか。 記事は基本的にネタバレあり。 どうぞご贔屓に♪

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